左のおしりの痛みに悩まされていませんか?座っている時、立ち上がる時、歩いている時など、日常生活の様々な場面で感じるお尻の痛みは、非常に不快なものです。特に左側だけに痛みが出ると、「何か悪い病気かも」「この痛みは何が原因なんだろう」と不安になることもあるでしょう。
おしりの痛みは、筋肉の疲れや凝り、姿勢の問題から、坐骨神経痛、さらには腰や股関節の疾患まで、様々な原因が考えられます。原因によって適切な対処法が異なるため、自分の痛みが何からきているのかを知ることが大切です。
この記事では、左のおしりが痛む主な原因や伴う症状、自宅でできる対策、そして医療機関を受診すべき目安や何科に行けば良いのかを詳しく解説します。この記事を読んで、あなたの痛みの原因を探り、和らげるためのヒントを見つけてください。
左のおしりが痛む主な原因とは?
左のおしりが痛む場合、考えられる原因は多岐にわたります。多くの場合、筋肉や神経、関節に関係していますが、中には注意が必要なケースもあります。ここでは、左のおしりの痛みの主な原因として考えられるものをいくつかご紹介します。
坐骨神経痛
おしりの痛みの原因として最もよく知られているものの一つに「坐骨神経痛」があります。坐骨神経は、腰からお尻、太ももの裏を通って足先まで伸びている、人体で最も太くて長い神経です。この坐骨神経が何らかの原因で圧迫されたり刺激されたりすると、お尻や足にかけて痛みやしびれが生じます。左のおしりが痛む場合、左側の坐骨神経に問題が起きている可能性が高いです。
坐骨神経痛を引き起こす原因は複数あり、代表的なものとして以下が挙げられます。
梨状筋症候群
梨状筋(りじょうきん)は、お尻の深部にある筋肉で、股関節を外側にひねる働きをします。坐骨神経は、この梨状筋の下(まれに梨状筋の中)を通っています。長時間座っていたり、激しい運動をしたりすることで梨状筋が緊張したり硬くなったりすると、その下を通る坐骨神経が圧迫されて痛みやしびれを引き起こすことがあります。これが梨状筋症候群です。特に左側の梨状筋が硬くなると、左のおしりから太ももの裏にかけて痛みが出やすくなります。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎(ようつい)は、腰の部分にある背骨です。椎間板(ついかんばん)は、この腰椎と腰椎の間にあるクッション材のようなものです。何らかの理由で椎間板が本来の位置から飛び出してしまい、近くを通る神経(この場合は坐骨神経の根元)を圧迫するのが腰椎椎間板ヘルニアです。重いものを持つ作業、長時間の中腰姿勢、加齢による椎間板の変性などが原因となります。ヘルニアが神経を圧迫すると、腰の痛みに加えて、お尻や足にかけて強い痛みやしびれ(坐骨神経痛)が現れます。左側にヘルニアができると、左のおしりが痛む原因となります。
腰部脊柱管狭窄症
脊柱管(せきちゅうかん)は、背骨の中にあり、その中を脊髄や神経が通っているトンネルのような部分です。腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)は、加齢による骨や靭帯の変性などによってこの脊柱管が狭くなり、中の神経が圧迫される病気です。歩いていると足やお尻が痛くなり、少し休むと楽になる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」が特徴的な症状です。神経の圧迫によって坐骨神経痛が生じ、左側の脊柱管が狭くなると左のおしりが痛むことがあります。
筋肉の緊張や疲労
坐骨神経痛のような明確な神経の圧迫がなくても、お尻の筋肉そのものが原因で痛みが生じることも非常に多いです。お尻には大殿筋(だいでんきん)、中殿筋(ちゅうでんきん)、小殿筋(しょうでんきん)など、いくつかの筋肉があります。これらの筋肉が緊張したり疲労したりすると、凝りや痛みとして感じられます。
長時間のデスクワークや立ち仕事
同じ姿勢を長時間続けることは、お尻の筋肉に負担をかけます。特にデスクワークでは、お尻の筋肉が座面で圧迫され続け、血行が悪くなり硬くなりやすいです。立ち仕事でも、体の重心を支えるためにお尻の筋肉が常に緊張している状態が続きます。これにより筋肉が疲労し、痛みを引き起こすことがあります。座り方や立ち方によっては、左右どちらかのお尻に偏った負担がかかり、左側だけが痛むということも起こり得ます。
スポーツや過度な運動
スポーツやトレーニングでお尻の筋肉を酷使すると、筋肉痛や筋膜の炎症が起こり、痛みが生じます。特にランニング、サイクリング、スクワットなど、お尻の筋肉をよく使う運動で痛みが出やすいです。また、運動前に十分なウォーミングアップをしなかったり、運動後に適切なケア(ストレッチなど)を怠ったりすることも、筋肉の緊張や痛みの原因となります。運動のフォームの偏りによって、左側のお尻の筋肉にだけ過度な負担がかかる場合もあります。
不良姿勢や体の歪み
猫背、反り腰、片側に体重をかける癖、足を組む癖など、日常的な不良姿勢や体の歪みも、お尻の筋肉に偏った負担をかけ、痛みの原因となります。例えば、骨盤が歪んでいると、お尻の筋肉の使われ方が左右で異なり、負担がかかりやすい左側だけが慢性的に緊張して痛むことがあります。また、体の歪みは腰や股関節にも影響を与え、間接的におしりの痛みを引き起こすこともあります。
股関節の異常
お尻の痛みは、股関節の問題からきている場合もあります。股関節は、骨盤と太ももの骨(大腿骨)をつなぐ関節で、お尻の筋肉とも密接に関わっています。
- 変形性股関節症: 加齢や病気、怪我などにより股関節の軟骨がすり減り、関節が変形する病気です。初期には股関節周辺や太ももの付け根に痛みが出やすいですが、進行するとお尻や膝に痛みを感じることもあります。
- 臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん): 股関節の受け皿である臼蓋の発育が不十分な状態です。若い頃は症状がなくても、加齢とともに軟骨がすり減りやすくなり、変形性股関節症に移行して痛みが出ることがあります。
- FAI(Femoroacetabular Impingement:大腿臼蓋インピンジメント): 股関節の骨の形状異常により、股関節を動かしたときに骨同士がぶつかり、痛みを生じる病態です。スポーツ選手などに多く見られますが、一般の人にも起こり得ます。股関節の奥の方やお尻の痛みを引き起こすことがあります。
これらの股関節の異常が左側にある場合、左のおしりが痛む原因となります。股関節の問題による痛みは、歩き始めや長時間立った後に強くなる傾向があります。
その他考えられる原因
お尻の痛みは、上記以外にも様々な原因で起こる可能性があります。
- 仙腸関節(せんちょうかんせつ)の炎症や機能障害: 骨盤の後ろ側にある仙骨と腸骨をつなぐ仙腸関節は、通常は靭帯で強固に固定されています。しかし、出産や外傷、腰の手術などをきっかけに、ゆるんで不安定な状態になることがあります。この不安定性や炎症が原因で、体の動きに伴ってお尻や腰、足に痛みが生じることがあります。これが仙腸関節障害です。片側の仙腸関節に問題があると、その側のお尻が痛むことがあります。(出典:たけだ整形外科クリニック いじんかいブログ)
- 内臓の病気: 非常に稀ですが、婦人科系の病気(子宮内膜症、卵巣嚢腫など)、泌尿器系の病気(尿路結石など)、消化器系の病気(大腸憩室炎など)などが、関連痛としてお尻に痛みを感じさせることがあります。これらの痛みは、通常、お尻の筋肉や関節の動きとは無関係に生じることが多いです。
- 血管の病気: 足の血管が狭くなる閉塞性動脈硬化症などでも、歩行時にお尻やふくらはぎに痛みが生じることがあります。
- 心理的な要因: ストレスや不安が体の痛みを増強させたり、痛みの感じ方を変えたりすることがあります。
左のおしりの痛みの原因は多岐にわたるため、自己判断せず、症状が続く場合や強い痛みの場合は医療機関を受診することが重要です。
左のおしりの痛みに伴う症状
左のおしりの痛みは、単に「痛い」だけでなく、様々な症状を伴うことがあります。これらの症状の種類や特徴を把握することで、痛みの原因を推測する手がかりになります。
痛みの種類(ズキズキ、しびれ、重だるさ)
痛みの感じ方は、原因によって異なります。
- ズキズキ、チクチクする痛み: 神経の圧迫や炎症が原因である場合によくみられます。坐骨神経痛による痛みは、電気が走るような、あるいは焼けるような感覚を伴うこともあります。
- しびれ: 坐骨神経の圧迫が原因の場合、お尻だけでなく、太ももの裏やふくらはぎ、足先にかけてしびれを伴うことがあります。感覚が鈍くなる、ピリピリするといった感じ方があります。
- 重だるさ、鈍痛: 筋肉の疲労や緊張、血行不良が主な原因である場合によくみられます。凝り固まったような、重たい感じや、ジーンとするような鈍い痛みが続きます。
- ピリピリ、ビリビリする感覚: 神経の表面的な刺激や、軽度の圧迫で感じやすい症状です。
痛む場所(お尻の上、横、中央など)
お尻の中でも特に痛む場所によっても、原因をある程度絞り込むことができます。
- お尻の上部(骨盤に近いあたり): 仙腸関節の炎症や機能障害、腰椎の問題(ヘルニア、狭窄症など)による関連痛、大殿筋上部の緊張などが考えられます。
- お尻の中央部からやや下(梨状筋のあたり): 梨状筋症候群による坐骨神経痛、梨状筋自体の緊張やトリガーポイントなどが最も疑われます。
- お尻の横(股関節に近いあたり): 中殿筋や小殿筋の緊張やトリガーポイント、股関節の異常(変形性股関節症、FAIなど)による関連痛などが考えられます。
- お尻全体が重だるい: 広範な筋肉の疲労や血行不良、姿勢の問題などが考えられます。
痛みが強くなる動作(座る、立つ、歩く、寝るなど)
特定の動作によって痛みが強くなったり和らいだりするかも、原因を特定する上で重要な情報です。
- 座っている時: 長時間の座位は、お尻の筋肉への圧迫や梨状筋の緊張を引き起こしやすいため、筋肉の緊張や梨状筋症候群が疑われます。硬い椅子や不安定な座り方でも痛みが強くなることがあります。
- 立つ時、座る時から立ち上がる時: 股関節や骨盤周辺の筋肉、特に殿筋群や股関節周囲の筋肉の緊張や機能不全が考えられます。仙腸関節の問題でも、体重のかけ始めに痛むことがあります。
- 歩く時: 腰部脊柱管狭窄症による坐骨神経痛(間欠性跛行)や、股関節の異常、殿筋群の疲労などが考えられます。歩き始めだけ痛むのか、長く歩くと痛むのかでも原因が異なります。
- 寝ている時: 寝る姿勢によってお尻が圧迫されたり、特定の筋肉が伸ばされたり縮んだりすることで痛みが生じることがあります。特定の体勢でしか痛まない場合は、その体勢がお尻に負担をかけている可能性があります。
- 前かがみになった時: 腰椎椎間板ヘルニアで神経根が圧迫されると、前かがみで痛みが増すことがあります。
- 体を後ろに反らした時: 腰部脊柱管狭窄症では、体を反らすと脊柱管がさらに狭くなり神経が圧迫されやすいため、痛みやしびれが増すことがあります。
歩けないほどの強い痛み
痛みが非常に強く、歩くことが困難な場合や、安静にしていても痛みが和らがない場合は、重症な状態である可能性があります。特に、足の力が入らない(筋力低下)、感覚が鈍くなる(感覚障害)、排尿や排便が困難になる(膀胱直腸障害)といった症状を伴う場合は、神経の圧迫がかなり強い状態であり、緊急性の高い疾患(例:馬尾症候群)の可能性も考えられます。このような場合は、すぐに医療機関を受診してください。
これらの症状は単独で現れることもあれば、複数組み合わさって現れることもあります。自分の痛みがどのような特徴を持っているかを観察し、医療機関を受診する際に医師に正確に伝えることが、早期の診断と治療につながります。
左のおしりの痛みを和らげる自宅ケア・対策
左のおしりの痛みの原因が、坐骨神経痛や股関節の異常などではなく、主に筋肉の緊張や疲労、姿勢の問題からきている場合、自宅でのケアや対策が有効なことがあります。ただし、痛みが強い場合や、原因が特定できていない場合は、無理に行わず、医療機関に相談してから行うようにしましょう。
効果的なストレッチ方法
お尻や腰回りの筋肉をストレッチすることで、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進し、痛みの軽減が期待できます。特に梨状筋や殿筋群のストレッチは、おしりの痛みに効果的と言われています。
梨状筋ストレッチ
梨状筋は、お尻の深部にあるため、ピンポイントで伸ばすのが難しい筋肉ですが、いくつかの方法があります。
方法1:仰向けで行うストレッチ
- 仰向けになり、両膝を立てます。
- 左のおしりを伸ばす場合、左の足首を右の太ももに乗せます。
- 両手で右の太ももの裏を持ち、胸の方にゆっくりと引き寄せます。
- 左のお尻のあたりが伸びているのを感じながら、20秒ほどキープします。
- ゆっくりと元に戻し、数回繰り返します。
- 反対側も同様に行います。
方法2:座って行うストレッチ
- 椅子に座り、背筋を伸ばします。
- 左のおしりを伸ばす場合、左の足首を右の膝に乗せます。
- 左膝を下に押し下げるようにしながら、ゆっくりと上半身を前傾させます。
- 左のお尻のあたりが伸びているのを感じながら、20秒ほどキープします。
- ゆっくりと元に戻し、数回繰り返します。
- 反対側も同様に行います。
どちらの方法も、痛みを感じるほど無理に行わないことが重要です。呼吸を止めず、リラックスして行いましょう。
殿筋群ストレッチ(大殿筋、中殿筋など)
お尻全体の大きな筋肉である殿筋群のストレッチも効果的です。
方法:仰向けで行うストレッチ
- 仰向けになり、両膝を立てます。
- 左のお尻全体を伸ばす場合、左膝を両手で抱え込み、胸の方に引き寄せます。
- 左のお尻全体が伸びているのを感じながら、20秒ほどキープします。
- ゆっくりと元に戻し、数回繰り返します。
- 反対側も同様に行います。
このストレッチは、大殿筋を中心に伸ばすことができます。
中殿筋、小殿筋のストレッチ(横向き)
- 横向きになり、下側の足は伸ばし、上側の足は軽く曲げます。
- 左のお尻(横側)を伸ばす場合、右を下にして横になり、左足を後ろに伸ばします。
- 左のお尻の横側が伸びているのを感じながら、20秒ほどキープします。
- ゆっくりと元に戻し、数回繰り返します。
- 反対側も同様に行います。
これらのストレッチは、痛みが強い時ではなく、痛みが比較的落ち着いている時に行うのがおすすめです。毎日続けることで、筋肉の柔軟性が高まり、痛みの予防や改善につながります。
体を温める方法(入浴など)
お尻の筋肉の緊張や血行不良による痛みには、体を温めることが有効です。
- 入浴: 湯船にゆっくり浸かることで、全身の血行が促進され、お尻の筋肉もリラックスします。38~40℃くらいのぬるめのお湯に15~20分程度浸かるのがおすすめです。シャワーだけでなく、湯船に浸かる習慣をつけましょう。
- ホットパックやカイロ: 痛む部分にホットパックや使い捨てカイロを当てるのも効果的です。ただし、低温やけどに注意し、肌に直接当てず衣類の上から使用してください。寝る際に使用する場合は、外すのを忘れないようにタイマーを設定するなど注意が必要です。
体を温めることで、筋肉の緊張が和らぎ、痛みの物質が流れやすくなる効果が期待できます。
正しい座り方・姿勢の改善
長時間の座り仕事や立ち仕事、日常的な不良姿勢は、お尻の痛みの大きな原因となります。姿勢を改善することで、お尻への負担を減らすことができます。
- 座り方:
- 深く腰掛け、お尻を椅子の背もたれにしっかりとつけます。
- 膝は90度に曲げ、足の裏は床につけます。もし床につかない場合は、フットレストを使用します。
- 背筋を自然に伸ばし、骨盤を立てるイメージで座ります。
- 猫背や反り腰にならないように注意します。
- 長時間座り続ける場合は、30分に一度程度は立ち上がって軽く体を動かしたり、短い休憩を挟んだりしましょう。
- 片側のお尻だけに体重をかける癖や、足を組む癖は避けましょう。
- 立ち方:
- 足は肩幅程度に開き、両足に均等に体重をかけます。
- 背筋を自然に伸ばし、お腹を軽く引き締めます。
- 猫背や反り腰にならないように注意します。
- 長時間立ち続ける場合は、片足ずつ体重を移動させたり、軽い足踏みをしたりして、同じ筋肉ばかりに負担がかからないようにしましょう。
- 寝る姿勢:
- 横向きで寝る場合は、お尻や股関節が不安定にならないよう、両膝の間にクッションや枕を挟むと、骨盤の歪みを防ぎ、お尻への負担を軽減できます。
- うつ伏せ寝は腰に負担がかかりやすいため、避けた方が無難です。
普段から自分の姿勢を意識し、正しい姿勢を心がけることが、お尻の痛みの予防や再発防止につながります。
自宅でのケアは、痛みの緩和や予防に役立ちますが、あくまで対症療法や予防策であり、根本的な原因の治療には医療機関での診断と治療が必要です。特に痛みが続く場合や悪化する場合は、必ず専門家にご相談ください。
こんな症状なら要注意!病院を受診すべき目安
左のおしりの痛みが続く場合でも、「もう少し様子を見よう」「ストレッチで治るかも」と自己判断してしまうことがあるかもしれません。しかし、中には早期に医療機関を受診すべき危険なサインが含まれていることもあります。以下のような症状が現れた場合は、放置せずにすみやかに病院を受診しましょう。
症状 | 可能性のある原因 | 緊急度 | 対応 |
---|---|---|---|
痛みが非常に強い、または急速に悪化している | 重症病態、神経圧迫の進行 | 高 | 速やかに受診 |
安静にしていても痛みが和らがない | 重症な原因(炎症、神経圧迫など) | 高 | 速やかに受診 |
足の広範囲に痛みやしびれが広がっている | 坐骨神経痛悪化 | 中~高 | 受診検討(強い場合は速やかに) |
足に力が入らない、足首や足の指を動かしにくい(筋力低下) | 神経の強い圧迫 | 高 | 速やかに受診 |
感覚が鈍くなっている、触っても感覚がない部分がある | 神経の強い圧迫、馬尾症候群など | 緊急 | 救急医療機関へ |
排尿や排便が困難、便意・尿意を感じにくい(膀胱直腸障害) | 脊髄・馬尾神経の強い圧迫、馬尾症候群など | 緊急 | 救急医療機関へ |
発熱や体重減少を伴う | 感染症、腫瘍など | 高 | 速やかに受診 |
下肢の冷感や色の変化を伴う | 血管の病気(閉塞性動脈硬化症など) | 高 | 速やかに受診 |
転倒や怪我の後に痛みが始まった | 骨折、靭帯損傷などの外傷 | 高 | 速やかに受診 |
これらの症状は、単なる筋肉痛や軽い神経の刺激では起こりにくいものです。特に、神経系の症状(しびれの広がり、筋力低下、感覚障害、膀胱直腸障害)は、放置すると神経の回復が難しくなる場合もあるため、迅速な対応が求められます。
ご自身の痛みがこれらの症状に当てはまる場合は、「もう少し様子を見よう」と思わずに、速やかに医療機関を受診し、専門医の診察を受けるようにしてください。
左のおしりの痛み、何科を受診すべき?
左のおしりの痛みの原因は多岐にわたるため、「何科に行けばいいのだろう」と迷うことがあるかもしれません。痛みの原因として最も可能性が高いのは、骨や関節、筋肉、神経に関わる問題です。
整形外科
おしりの痛みの原因が、坐骨神経痛(梨状筋症候群、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症など)、お尻や腰、股関節の筋肉の問題、股関節の異常、仙腸関節の機能障害などである場合、整形外科が専門となります。
整形外科では、問診や触診、身体診察によって痛みの部位や性質、痛みが強くなる動作などを詳しく調べます。必要に応じて、レントゲン検査、MRI検査、CT検査、神経伝導速度検査などの画像検査や生理学的検査を行い、骨の異常、椎間板の状態、神経の圧迫具合などを詳しく評価します。
診断に基づき、薬物療法(痛み止め、筋肉を和らげる薬、神経の働きを改善する薬など)、リハビリテーション(理学療法士によるストレッチ指導、筋力トレーニング、姿勢指導など)、ブロック注射(痛みを抑えるための注射)、装具療法(コルセットなど)、場合によっては手術療法といった様々な治療法が提案されます。
左のおしりの痛みが、上記で解説した坐骨神経痛や筋肉、骨、関節に関わる可能性が高いと思われる場合は、まず整形外科を受診するのが適切です。
その他考慮すべき診療科
整形外科以外にも、痛みの原因によっては他の診療科の受診を検討する必要がある場合があります。
- 神経内科: 坐骨神経痛の症状が強く、神経自体に病気(例:糖尿病による神経障害など)が疑われる場合や、神経の検査をより専門的に行いたい場合に受診を検討することがあります。ただし、腰や股関節の構造的な問題が原因の場合は整形外科が専門となります。
- 婦人科: 女性の場合、お尻の痛みが子宮や卵巣の病気(子宮内膜症、卵巣嚢腫、子宮筋腫など)に関連している可能性も稀にあります。これらの病気では、生理周期と関連した痛みや、下腹部痛、不正出血などを伴うことが多いです。これらの症状がある場合は、婦人科の受診も検討すべきです。
- 泌尿器科: 尿路結石など、泌尿器系の病気からくる痛みが、お尻や腰に放散することがあります。血尿や排尿時の痛み、頻尿などの症状を伴う場合は、泌尿器科の受診も検討します。
- 消化器内科: 大腸憩室炎や過敏性腸症候群など、消化器系の病気がお尻や腰に関連痛を引き起こす可能性もゼロではありません。腹痛、下痢、便秘などの症状がある場合は、消化器内科を受診することがあります。
- 心療内科・精神科: 明確な身体的な異常が見つからないにも関わらず痛みが続く場合や、強いストレスや不安を抱えている場合は、心理的な要因が痛みを増強させている可能性も考えられます。このような場合は、心療内科や精神科での相談も選択肢の一つとなります。
- 血管外科: 歩行時にお尻や足の痛みが強くなるが、安静にすると改善する症状(間欠性跛行)があり、血管の病気(閉塞性動脈硬化症など)が疑われる場合は、血管外科の受診が必要となることがあります。
受診する際のポイント
- 痛みがいつから始まったのか、どのような時に痛むのか(座る、立つ、歩くなど)、痛みの種類(ズキズキ、しびれ、重だるさなど)、痛む場所(お尻のどのあたりか)などを具体的にメモしておくと、医師に正確に伝えやすくなります。
- これまでにかかった病気や現在服用している薬があれば、お薬手帳などを持参しましょう。
- もし原因が分からない場合でも、まずは整形外科を受診し、そこで他の専門科の病気が疑われる場合は、適切な診療科を紹介してもらうのが一般的な流れです。
まとめ:左のおしりの痛みで困ったら
左のおしりの痛みは、日常生活に大きな影響を与えるつらい症状です。その原因は、坐骨神経痛に関連するもの(梨状筋症候群、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症など)や、長時間のデスクワークや立ち仕事、スポーツなどによる筋肉の緊張や疲労、不良姿勢、股関節の異常など、多岐にわたります。
痛みの種類(ズキズキ、しびれ、重だるさ)、痛む場所(お尻の上、横、中央など)、痛みが強くなる動作などを観察することで、ある程度原因を推測することができます。筋肉の緊張や疲労が主な原因であれば、ストレッチや体を温めること、正しい姿勢を心がけるといった自宅でのケアが有効な場合もあります。
しかし、この記事の「こんな症状なら要注意!病院を受診すべき目安」で解説したような症状がある場合は、自己判断せず、速やかに医療機関を受診することが非常に重要です。これらの症状は、神経の強い圧迫や、筋肉や関節以外の病気が原因である可能性を示唆しており、早期の診断と治療が必要です。
左のおしりの痛みの原因が、骨や関節、筋肉、神経に関わる可能性が高い場合は、まず整形外科を受診しましょう。問診や検査を通じて痛みの原因を特定し、適切な治療法を提案してもらえます。もし、内臓や血管など他の病気が疑われる場合は、整形外科医から適切な専門科を紹介してもらうことができます。
おしりの痛みは、放置すると慢性化したり、症状が悪化したりすることもあります。つらい痛みを我慢せずに、まずは痛みの原因を知ることから始め、必要に応じて専門家の力を借りながら、適切な対処を行うことが大切です。この記事が、あなたの左のおしりの痛みを改善するための一助となれば幸いです。
免責事項: この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスを意図したものではありません。個々の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。この記事の情報によって生じたいかなる損害についても、当方は責任を負いかねます。