足の甲の痛みは、日常生活やスポーツ活動において、多くの人が経験しうる身近な症状の一つです。立ちっぱなしでの作業、ランニング、合わない靴の使用など、原因は多岐にわたります。多くの場合、一時的な負担や疲労によるものですが、中には医療機関での診断や治療が必要な病気が隠れていることもあります。
足の甲の痛みによって、歩くのがつらくなったり、好きな運動を諦めたりすることもあるかもしれません。この痛みはなぜ起こるのでしょうか?そして、自分でできる対処法はあるのでしょうか?また、どのような時に病院に行くべきなのでしょうか?
この記事では、足の甲が痛くなる主な原因、痛みの特徴から考えられる原因、自分でできる対処法、病院を受診する目安、そして何科を受診すべきかについて、詳しく解説します。あなたの足の甲の痛みの原因を知り、適切な対処法を見つける一助となれば幸いです。ただし、この記事は一般的な情報提供を目的としており、自己診断や治療を推奨するものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関で専門医の診断を受けるようにしてください。
足の甲の痛みの主な原因とは?
足の甲が痛む原因は、非常に多様です。骨、関節、靭帯、腱、筋肉、神経、血管など、足の甲には様々な組織があり、これらのいずれかに問題が生じると痛みを引き起こす可能性があります。主な原因を以下に解説します。
使いすぎや負荷による痛み
足に繰り返し加わる負荷や、特定の部位への集中した負担は、痛みの大きな原因となります。
ランニングや立ち仕事による痛み
長時間のランニングや立ち仕事は、足の骨や関節、腱に継続的な負荷をかけます。
特に、ランニングでは着地の度に地面からの衝撃が足に伝わり、立ち仕事では体重が足裏全体、そして足の甲にも分散されながら負荷がかかり続けます。
このような繰り返し動作や持続的な負荷は、筋肉や腱の疲労、微細な損傷を引き起こし、足の甲の痛みに繋がることがあります。特に、急激に運動量を増やした場合や、普段運動習慣がない人が無理をした場合に発生しやすい傾向があります。
足の甲にある複数の骨(中足骨など)や関節、足首から繋がる腱(伸筋腱など)に炎症やストレスがかかることで痛みを感じます。
合わない靴やサンダルが原因の痛み
足の形に合わない靴や、クッション性の低いサンダルなどは、足への不自然な圧迫や衝撃を生み出し、足の甲の痛みの直接的な原因となることがあります。
サイズが小さすぎる靴は、足の甲を締め付けて血行を悪くしたり、神経を圧迫したりします。逆に大きすぎる靴は、靴の中で足が動いてしまい、摩擦が生じたり、不必要な筋肉の緊張を招いたりします。
また、ヒールの高い靴や底の薄い靴、足首の固定が不安定なサンダルなどは、足にかかる体重のバランスを崩し、足の甲に過剰な負担をかけることがあります。
特に、靴の紐をきつく締めすぎることでも、足の甲の血管や神経が圧迫され、痛みやしびれが生じることがあります。
外傷による痛み
物理的な力が足に加わることで生じる痛みです。急性の痛みの原因としてよく見られます。
捻挫
捻挫は、関節に予期せぬ強い力が加わり、靭帯や関節包などが損傷する状態です。足の捻挫と聞くと足首をイメージすることが多いですが、足の甲にある小さな関節でも捻挫は起こりえます。
特に、足首を内側や外側に強くひねった際に、足の甲の骨と骨を繋ぐ小さな靭帯が損傷することで、足の甲に痛みが生じることがあります。
捻挫による痛みは通常、受傷直後から現れ、患部に腫れや内出血を伴うことがあります。痛めた関節を動かしたり、体重をかけたりすると痛みが強まるのが特徴です。
疲労骨折
疲労骨折は、一度に強い力が加わって骨が折れるのではなく、骨の同じ場所に繰り返し比較的弱い力が加わり続けることで、骨に微細なひびが入ったり、完全に折れたりする状態です。
特に、ランニング、ジャンプ、長時間の歩行など、足に継続的な衝撃や負荷がかかるスポーツや活動を行う人に多く見られます。
足の甲の骨では、特に中足骨(足の指の付け根からかかとまでの間にある長い骨)に疲労骨折が多く発生します。
初期には活動中にだけ痛みを感じますが、進行すると安静時にも痛むようになったり、特定の場所を押すと痛みが強くなる(圧痛)といった症状が現れます。見た目には腫れや赤みを伴うこともあります。
通常の骨折と異なり、明確な外傷のきっかけがないまま徐々に痛みが増してくるのが特徴です。
病気や疾患による痛み
外傷や使いすぎといった明確なきっかけがない場合でも、様々な病気が足の甲の痛みの原因となることがあります。
足の甲の関節炎(痛風、関節リウマチなど)
関節炎は関節に炎症が起きることで、痛み、腫れ、熱感、動きの制限などを引き起こす病気です。足の甲には多くの小さな関節があり、これらの関節が炎症を起こすことがあります。
- 痛風:体内の尿酸値が高くなり、尿酸が結晶となって関節に蓄積することで炎症を引き起こす病気です。特に足の親指の付け根の関節に起こりやすいことで知られていますが、足の甲の関節に痛風発作が起こることもあります。痛風発作は突然、非常に激しい痛み、赤み、腫れ、熱感を伴って現れるのが特徴です。夜間から明け方にかけて発症することが多く、あまりの痛みに歩くことはもちろん、服が触れるだけでも痛むことがあります。
- 関節リウマチ:自己免疫疾患の一つで、全身の関節に慢性的な炎症を引き起こします。手の指や足の指の小さな関節から始まることが多く、足の甲の関節も侵されることがあります。関節リウマチによる足の甲の痛みは、朝方に痛みが強く、しばらく動かしていると和らぐ「朝のこわばり」を伴うことが多いのが特徴です。徐々に関節が腫れて変形が進むこともあります。
- 変形性関節症: 関節の軟骨がすり減ることで炎症や痛みを引き起こす病気です。足の甲の小さな関節にも生じることがあり、特に過去にその関節を怪我したことがある場合などに起こりやすくなります。
腱鞘炎
腱鞘炎は、骨と筋肉を繋ぐ「腱」と、その腱を包む「腱鞘」との間で摩擦が起こり、炎症が生じる状態です。足の甲にも、足指を動かすための腱や、足首を曲げるための腱などが通っており、これらの腱や腱鞘に炎症が起きると痛みを生じます。
特に、足の甲を通る伸筋腱(足指を反らせたり、足首を上に向けたりする腱)に負担がかかることで腱鞘炎が起こりやすいです。長時間の立ち仕事や、合わない靴での歩行、スポーツなど、足の指や足首を繰り返し使う動作が原因となります。
特定の動作をした時に痛みが強くなったり、腱の動きが悪くなったり(引っかかり感)、押すと痛む(圧痛)といった症状が現れます。腫れを伴うこともあります。
神経の圧迫(モートン病など)
足の神経が周囲の組織に圧迫されることで、痛みやしびれが生じることがあります。
- モートン病:主に足の指の付け根(足裏側)の神経が圧迫されて痛みを生じる病気ですが、痛みが足の甲や足首の方に放散することもあり、足の甲の痛みとして感じられることがあります。特に、ハイヒールや幅の狭い靴、底の薄い靴などを履く人に多く見られます。足の指の間にできる神経腫(神経組織の腫れ)が神経を圧迫することで起こります。歩いていると足裏の指の付け根あたりにジンジン、ピリピリとした痛みやしびれが生じ、靴を脱いで足を休めると和らぐのが特徴です。
- その他の神経障害: 足の甲を通る神経が、怪我や圧迫、糖尿病などの全身性の病気によって障害されることでも痛みやしびれが生じることがあります。
有痛性外脛骨
有痛性外脛骨は、足の内側の甲にある「舟状骨」の内側に、「外脛骨」と呼ばれる過剰な骨がある場合に、そこに痛みを生じる病気です。外脛骨自体は多くの人が持っている異常ではない骨ですが、その部分が靴に擦れたり、スポーツ活動などで繰り返し力が加わったりすることで炎症を起こし、痛みを生じることがあります。
特に成長期の子どもや、スポーツ活動を盛んに行う若い世代に多く見られます。足の内側の甲に骨の出っ張りがあり、その部分が押すと痛かったり、運動中や靴を履いている時に痛むのが特徴です。
扁平足
扁平足は、足の裏の土踏まず(内側縦アーチ)が低下し、平坦になっている状態です。扁平足自体が痛みの原因になることもありますが、扁平足によって足の構造的なバランスが崩れ、足の甲を含む周囲の関節や筋肉に過剰な負担がかかることで痛みを引き起こすことがあります。
特に、運動時や長時間の歩行・立ち仕事で足の疲労が蓄積しやすく、足の甲の内側などに痛みを感じることがあります。
変形性関節症
関節の軟骨が加齢や過去の怪我などによってすり減り、関節の変形や炎症が生じる病気です。足の甲にも多くの関節があり、これらの関節に生じると痛みや動きの制限を引き起こします。朝起きて動き始めるときや、長時間動かした後に痛みが強くなる傾向があります。
その他の疾患
上記以外にも、稀ではありますが以下のような疾患が足の甲の痛みの原因となることがあります。
- 感染症: 足の甲の骨や関節に細菌などが感染し、炎症を引き起こすことがあります。強い痛み、腫れ、熱感、赤みに加え、発熱などの全身症状を伴うことがあります。
- 腫瘍: 骨や軟部組織に良性または悪性の腫瘍ができることで痛みを引き起こすことがあります。痛みは徐々に強くなる傾向があり、腫れを伴うこともあります。
- 血管の病気: 血栓性静脈炎など、足の血管に問題が生じることで痛みを伴うことがあります。
血行不良やむくみによる痛み
足の血行が悪くなったり、むくみが生じたりすることでも、足の甲に不快感や痛みを伴うことがあります。
特に、長時間同じ姿勢でいたり、冷え性、糖尿病、心臓や腎臓の病気などがある場合に起こりやすくなります。
血行不良による痛みは、ジンジンしたり、重だるい感じを伴うことがあります。
むくみは、足の甲が腫れて靴がきつく感じたり、押すと痕が残ったりするのが特徴です。
ストレスによる関連痛の可能性
心的なストレスが身体の様々な部位に痛みを引き起こすことがあります。足の甲の痛みも、明確な物理的な原因が見つからない場合、ストレスや心理的な要因が関連している可能性も考えられます。ストレスは筋肉の緊張を高めたり、痛みの感じ方を変えたりすることがあります。
足の甲の痛みの種類・特徴から原因を探る
足の甲の痛みの感じ方や、どのような状況で痛むのかといった特徴は、痛みの原因を推測する上で重要なヒントになります。ただし、これはあくまで目安であり、正確な診断には医療機関での診察が必要です。
歩くと足の甲が痛い場合
歩行は足に体重がかかる動作であり、足の甲の骨、関節、腱、筋肉に負担がかかります。歩くことで痛みが誘発される場合、以下のような原因が考えられます。
- 使いすぎや疲労: 長時間の歩行やランニングによる筋肉や腱の疲労、微細な損傷。
- 疲労骨折: 歩行や運動によって特定の骨に繰り返し負荷がかかり、痛む。特に初期の疲労骨折は歩行時や運動時にのみ痛みを感じやすい。
- 腱鞘炎: 足指や足首を動かす腱の動きに伴って痛みが生じる。
- 関節炎: 関節の炎症により、体重がかかる動作で痛む。痛風や関節リウマチ、変形性関節症など。
- 合わない靴: 靴の圧迫や摩擦により、歩行時の動きで痛みが生じる。
- 扁平足: 歩行時に足のアーチが適切に機能せず、足の甲に負担がかかる。
- モートン病: 足裏の神経痛だが、痛みが足の甲に放散し、歩行時に増悪することがある。
腫れてないのに足の甲が痛い場合
痛みがあっても、目に見える腫れや赤みがない場合もあります。このような場合は、炎症が軽度であるか、炎症以外の原因が考えられます。
- 使いすぎや軽度の疲労: 筋肉や腱の疲労、微細な損傷。
- 初期の疲労骨折: 骨の内部での変化が主で、外見上の腫れがまだ現れていない段階。
- 腱鞘炎: 炎症が軽度で、主に腱の動きに伴う痛み。
- 神経の圧迫: 神経自体の問題であり、炎症による腫れは伴わないことが多い(モートン病など)。
- 合わない靴による圧迫: 物理的な圧迫による痛みで、炎症や腫れが起きにくい場合。
- 血行不良: 循環の問題であり、炎症性の腫れではない。
- ストレスによる関連痛: 物理的な損傷や炎症がないため、腫れは伴わない。
片足だけ足の甲が痛い場合
両足同時に痛む場合もありますが、片足だけに痛みが生じることもよくあります。片足だけの痛みは、以下のような原因で説明しやすいです。
- 外傷: 捻挫や打撲など、片足に物理的な力が加わった場合。
- 疲労骨折: 特定のスポーツ動作(片足に重心をかけるなど)や、使い方の偏りによって片足に負担が集中した場合。
- 腱鞘炎: 片足に負荷がかかる動作が多い場合。
- 有痛性外脛骨: 片足に外脛骨がある、あるいは片足の外脛骨に負担がかかりやすい場合。
- 合わない靴: 靴の形状や足の形との相性で、片足にだけ圧迫や摩擦が生じる場合。
- 片側性の病気: 痛風(発作は一つの関節から始まることが多い)、感染症、腫瘍など。
ズキズキと脈打つような痛みの場合
ズキズキ、ジンジン、ドクドクといった脈打つような痛みは、炎症や血行に関連していることが多いです。
- 炎症: 関節炎(特に痛風発作)、腱鞘炎、感染症など、炎症が強い場合に血管の拡張に伴って痛みが脈打つように感じられることがあります。
- 血行不良: 神経の圧迫や血行障害により、ジンジン、ピリピリ、ズキズキといった不快な痛みが感じられることがあります(モートン病、血管の病気など)。
- 外傷後の内出血: 打撲や捻挫による内出血が神経を圧迫したり、周囲組織を刺激したりして痛みを引き起こす場合があります。
骨に異常なしと言われたが痛い場合
病院でレントゲンなどの検査を受け、「骨には異常がない」と診断されたにも関わらず痛みが続く場合、骨以外の組織に原因がある可能性が高いです。
- 腱や靭帯の損傷・炎症: 腱鞘炎、靭帯の微細な損傷など。レントゲンには写りにくい組織です。
- 神経の圧迫: モートン病など。神経自体や神経腫はレントゲンでは確認できません。MRIや超音波検査が必要になる場合があります。
- 筋肉の問題: 筋肉の疲労、筋膜性疼痛症候群など。
- 血行不良: 血管の問題。
- ストレスや心因性: 身体的な器質的異常がない場合。
- 初期の疲労骨折: レントゲンに写るまで時間がかかる場合があります。時間が経ってから再度検査が必要になることもあります。
- レントゲンでは診断が難しい病気: MRIやCTなど、より詳しい検査が必要な病気。
痛風以外の原因を考えたい場合
痛風は足の親指の付け根の激痛が典型的な症状ですが、足の甲にも発作が起こることがあります。しかし、痛風に特徴的な激しい痛み、赤み、腫れ、熱感がなく、徐々に痛みが生じた、特定の動作で痛む、慢性的に痛いといった場合は、痛風以外の原因を考える必要があります。
痛風以外の足の甲の痛みの主な原因としては、前述した「使いすぎや負荷」、「外傷(特に捻挫や疲労骨折)」、「関節炎(リウマチや変形性関節症)」、「腱鞘炎」、「神経の圧迫」、「有痛性外脛骨」、「扁平足」、「血行不良」などが挙げられます。痛みの性質や随伴症状、発症の経過などを詳しく観察し、適切な原因を探ることが重要です。痛風は突然の激痛が特徴ですが、他の原因による痛みは、徐々に始まったり、特定の動作や時間帯に痛みが強くなったりするなど、様々なパターンがあります。
痛みの特徴から考えられる原因について、以下の表にまとめます。
痛みの特徴/症状 | 考えられる主な原因(例) | 補足 |
---|---|---|
歩くと痛い、運動中・後に痛い | 使いすぎ、疲労骨折、腱鞘炎、関節炎、合わない靴、扁平足、モートン病 | 特に運動習慣のある人や立ち仕事の人に多い |
腫れていないのに痛い | 軽度の使いすぎ、初期疲労骨折、神経圧迫(モートン病)、血行不良、ストレス、腱鞘炎(軽度) | 目に見える炎症がない |
片足だけ痛い | 外傷(捻挫、打撲)、疲労骨折(偏った使い方)、有痛性外脛骨、腱鞘炎(偏った使い方)、合わない靴 | 原因が片側に集中している可能性 |
ズキズキ・ジンジン脈打つ痛み | 炎症(痛風、感染症)、血行不良、神経圧迫 | 血管や神経に関連する痛み |
骨に異常なしと言われた | 腱鞘炎、靭帯損傷、神経圧迫(モートン病)、筋肉疲労、血行不良、ストレス、初期疲労骨折(再検査) | レントゲンに写りにくい組織の問題や、器質的異常がない場合 |
痛風発作のような激痛ではない | 使いすぎ、疲労骨折、腱鞘炎、リウマチ、変形性関節症、有痛性外脛骨、扁平足、血行不良、神経圧迫 | 急激な激痛+腫れ+赤み+熱感がなければ痛風以外の可能性を考慮 |
足の甲が痛い時に自分でできる対処法
足の甲の痛みが比較的軽度で、明らかな外傷や病気の兆候が見られない場合は、まずは自分でできる対処法を試してみることができます。ただし、これらの対処法で改善が見られない場合や、痛みが悪化する場合は、必ず医療機関を受診してください。
安静にする
痛む部分に負担をかけないことが最も重要です。痛みが強い時期は、運動や長時間の歩行、立ち仕事などを避け、安静に過ごしましょう。
可能であれば、足を高くして休むと、むくみの軽減にもつながります。痛みが和らいできたら、徐々に活動レベルを戻していくようにしますが、無理は禁物です。
患部を冷却する
痛みや熱感、腫れがある場合、患部を冷却することで炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。
氷嚢や保冷剤をタオルで包み、1回15〜20分程度、1日数回患部に当ててください。直接肌に当てると凍傷の恐れがあるため注意が必要です。
痛みが慢性化している場合や、血行不良が疑われる場合は、温める方が効果的なこともありますが、まずは冷却から試すのが一般的です。
市販薬(湿布や塗り薬)の使用
痛みや炎症を抑える成分(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDsなど)を含む湿布薬や塗り薬は、一時的に痛みを和らげるのに役立ちます。薬剤師や登録販売者に相談し、症状に合ったものを選びましょう。
ただし、これらの市販薬は対症療法であり、痛みの根本原因を治療するものではありません。また、アレルギー反応などの副作用が生じる可能性もあるため、使用上の注意をよく読み、正しく使用してください。内服の痛み止めについては、自己判断せず、医師や薬剤師に相談してから服用することをおすすめします。
サポーターやテーピングで固定する
足の甲や足首をサポーターやテーピングで軽く固定することで、痛む部分への負担を軽減し、動きをサポートする効果が期待できます。特に、歩行時や運動時に痛む場合に有効なことがあります。
固定しすぎると血行が悪くなることもあるため、適切な強さで行いましょう。薬剤師やスポーツ店員に相談したり、インターネットでテーピング方法を調べたりする際には、信頼できる情報源を参考にしてください。長時間の固定は逆効果になる場合もあるため、就寝時などは外すことを検討しましょう。
ストレッチやマッサージを行う
足や足首の筋肉の緊張を和らげるストレッチや、血行を促進するマッサージは、痛みの軽減に繋がることがあります。
ただし、強い痛みがある時や、炎症が疑われる(腫れや熱感がある)時は、ストレッチやマッサージは避け、安静にしてください。
- 足首のストレッチ: 座った状態で、つま先を前後にゆっくり曲げ伸ばししたり、足首を回したりします。
- 足指のストレッチ: 足指を一つずつ優しく反らしたり、曲げたりします。
- ふくらはぎのストレッチ: 壁に手をつき、痛む足とは逆の足を前に出し、痛む足を後ろに引いてかかとを地面につけたまま、前の足に体重をかけてふくらはぎを伸ばします。
- 足裏・足の甲のマッサージ: 足裏や足の甲を、指の腹を使って優しくさすったり、円を描くように揉んだりします。ゴルフボールなどを足裏で転がすのも効果的です。
無理のない範囲で、痛気持ちいいと感じる程度の強さで行いましょう。
インソールや靴の見直し
合わない靴は足の甲の痛みの大きな原因の一つです。現在の靴を見直し、足に合った、適切な機能を持つ靴を選ぶことが重要です。
- サイズの確認: 足長だけでなく、足幅や足囲も考慮し、つま先に適切な余裕があるか確認します。
- クッション性: 地面からの衝撃を吸収するクッション性が高い靴を選びます。
- アーチサポート: 土踏まずを適切に支える機能がある靴や、アーチサポート付きのインソールを使用することで、足のアーチをサポートし、足にかかる負担を分散できます。扁平足が痛みの原因となっている場合に特に有効です。
- 靴紐の調整: 靴紐は締めすぎず、足の甲を圧迫しないように調整します。
新しい靴を選ぶ際は、実際に履いてみて、足の形に合っているか、窮屈なところがないか、歩きやすいかなどをしっかり確認しましょう。購入する際は、足がむくみやすい午後に試着するのがおすすめです。
自分でできる対処法を試しても改善しない場合や、痛みが強い場合、症状が悪化する場合は、迷わず医療機関を受診してください。
こんな時は要注意!病院を受診する目安
足の甲の痛みは、多くの場合、適切な対処で改善しますが、中には医療機関での専門的な診断や治療が必要なケースもあります。以下のような症状がある場合は、早めに病院を受診することをおすすめします。
痛みが強い・我慢できない
日常生活に支障が出るほど痛みが強い場合や、安静にしていても痛みが続く場合は、骨折や重度の炎症など、何らかの病気が隠れている可能性があります。市販薬で痛みを紛らわせるのではなく、専門医の診察を受け、原因を特定し適切な治療を受けることが重要です。
痛みが長期間続く・悪化する
数日から1週間程度自分で対処しても痛みが改善しない、あるいは徐々に痛みが強くなっている場合は、自己判断で放置せず医療機関を受診すべきです。特に、疲労骨折や慢性的な炎症、神経の問題などは、早期に適切な治療を開始しないと症状が悪化したり、治癒が遅れたりすることがあります。
腫れや熱感を伴う
痛みに加えて、足の甲が腫れていたり、触ると熱を持っているような感じがする場合、関節や周囲の組織で強い炎症が起きているサインです。痛風発作、感染症、重度の関節炎などが考えられます。これらの病気は、早期の診断と治療が非常に重要です。特に、腫れや熱感が急激に現れた場合は注意が必要です。
明らかな変形がある
足の甲の骨の形がおかしくなっている、関節が変形している、普段とは違う出っ張りがあるといった明らかな変形が見られる場合は、骨折や脱臼、関節の慢性的な病気などが原因として考えられます。無理に動かしたりせず、早めに医療機関を受診してください。
しびれや感覚異常がある
痛みに加えて、足の甲や足指にしびれ、ピリピリ感、感覚が鈍いといった症状がある場合、神経が圧迫されたり損傷したりしている可能性があります。モートン病やその他の神経障害が考えられます。神経の症状は、放置すると後遺症が残る可能性もあるため、早めに専門医に相談することが重要です。
発熱や全身症状がある
足の甲の痛みに伴って、発熱、倦怠感、食欲不振などの全身症状がある場合、感染症や自己免疫疾患(関節リウマチなど)など、全身的な病気が原因となっている可能性があります。これらの病気は、足だけでなく全身に影響を及ぼす可能性があるため、速やかに医療機関を受診し、全身の状態も含めて診てもらう必要があります。
これらの症状は、足の甲の痛みの原因が、単純な使いすぎや疲労ではなく、医療的な介入が必要な状態であることを示唆しています。不安を感じた場合は、自己判断せずに専門医の診断を仰ぎましょう。
足の甲の痛みは何科で診てもらうべき?
足の甲の痛みで医療機関を受診する場合、最初に検討すべき診療科は整形外科です。
整形外科は、骨、関節、靭帯、腱、筋肉、神経などの運動器に関する病気や怪我を専門としています。足の甲の痛みの原因の多くは、これらの組織の異常によるものです。整形外科医は、問診や身体診察、レントゲン検査、必要に応じてMRIやCT、超音波検査などを行い、骨折、捻挫、関節炎、腱鞘炎、神経の圧迫、疲労骨折、有痛性外脛骨、扁平足などの診断を行います。
ただし、痛みの原因によっては、整形外科以外の診療科が適切な場合もあります。
- 内科: 痛風の疑いがある場合(特に高尿酸血症の既往がある場合や、痛風発作に特徴的な症状がある場合)は、内科でも診察・治療が可能です。痛風は代謝の異常による病気であり、全身的な管理が必要となるため、内科医と連携して治療を進めることもあります。
- リウマチ科: 関節リウマチなど、自己免疫疾患による関節炎が疑われる場合は、リウマチ科が専門となります。関節リウマチは全身の関節に炎症を引き起こす病気であり、専門的な診断と治療が必要です。
- 皮膚科: 足の甲の皮膚に明らかな異常(発疹、ただれなど)があり、それが痛みの原因となっている可能性がある場合は、皮膚科を受診することも考えられます。
- 心療内科・精神科: 明らかな身体的な原因が見つからず、ストレスや心的な要因による関連痛が強く疑われる場合は、これらの診療科に相談することも選択肢の一つです。
しかし、まずは整形外科を受診するのが一般的で、そこで診断がつかない場合や、他の専門分野の病気が疑われる場合に、適切な診療科を紹介してもらえることが多いです。迷う場合は、まず整形外科を受診しましょう。
まとめ:足の甲の痛み、原因を知り適切に対処しましょう
足の甲の痛みは、日々の生活の中でよく起こりうる症状ですが、その原因は単純な使いすぎから、医療的な介入が必要な病気まで多岐にわたります。この記事では、足の甲の痛みの主な原因として、使いすぎや負荷(ランニング、立ち仕事、合わない靴)、外傷(捻挫、疲労骨折)、様々な病気や疾患(関節炎、腱鞘炎、神経の圧迫、有痛性外脛骨、扁平足、変形性関節症、その他)、血行不良やむくみ、ストレスの可能性について解説しました。
痛みの種類や特徴(歩くと痛い、腫れていない、片足だけなど)を観察することで、ある程度原因を推測することは可能ですが、自己判断には限界があります。
痛みが比較的軽く、明らかな外傷や病気の兆候がない場合は、安静、冷却、市販薬の使用、サポーターやテーピングによる固定、ストレッチやマッサージ、インソールや靴の見直しといった自分でできる対処法を試すことができます。
しかし、痛みが強い、我慢できない、長期間続く、悪化する、腫れや熱感を伴う、明らかな変形がある、しびれや感覚異常がある、発熱や全身症状があるといった場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診することが非常に重要です。これらの症状は、より重篤な病気が隠れているサインかもしれません。
足の甲の痛みの原因を診断し、適切な治療を受けるためには、まずは整形外科を受診するのが一般的です。必要に応じて、内科やリウマチ科などの他の診療科の専門医の診察が必要になる場合もあります。
足の甲の痛みは、放置すると慢性化したり、症状が悪化したりすることもあります。原因を正しく理解し、適切な対処を行うことが、痛みを和らげ、再び快適な生活を送るために大切です。この記事が、あなたの足の甲の痛みを解消するための最初の一歩となれば幸いです。しかし、繰り返しになりますが、正確な診断と治療方針については、必ず医療機関で医師に相談してください。
免責事項:
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な助言、診断、治療に代わるものではありません。個々の症状や健康状態については、必ず医療機関を受診し、専門医の診断と指導を受けてください。この記事の情報に基づいて行った行為の結果について、執筆者および掲載元は一切の責任を負いません。