「軽いめまいが続く」「ふわふわする感じがする」。こうした症状は、多くの方が一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
乗り物に乗っているわけではないのに、地面が揺れているように感じたり、まっすぐ歩いているつもりがふらついたり。
日常生活に支障をきたすだけでなく、「何か大きな病気なのでは?」と不安を感じてしまうこともあります。
めまいの原因は多岐にわたるため、一概に特定することは難しいですが、その多くは適切に対処することで改善が期待できます。
このコラムでは、軽いめまいが続く場合に考えられる原因や、危険なサイン、そしていつ病院を受診すべきかについて詳しく解説します。ご自身の症状と照らし合わせながら、原因を探るヒントにしてみてください。
軽いめまいが続く主な原因
軽いめまいが続く場合、その原因は一つとは限りません。耳の内部の異常からくるもの、脳に関わるもの、あるいは自律神経の乱れや日々の生活習慣に起因するものまで、さまざまな可能性が考えられます。それぞれの原因によって、めまいの感じ方や伴う症状も異なります。ここでは、軽いめまいが続く場合に特に多く見られる原因について詳しく見ていきましょう。
耳の病気が原因のめまい
めまいの原因として最も多いのは、耳の異常によるものです。耳の奥には、聴覚だけでなく体のバランスを司る「三半規管」や「耳石器」といった平衡感覚器があります。ここに何らかの問題が生じると、脳が体の傾きや回転を正しく認識できなくなり、めまいとして感じられることがあります。軽いめまいが続く場合、特に以下の病気が考えられます。
良性発作性頭位めまい症
寝返りを打ったとき、起き上がったとき、頭を特定の方向に傾けたときなど、頭の位置を動かした際に突然起こる短時間の回転性めまいが特徴です。通常、めまいは数十秒から1分程度で治まります。「良性」と名がつくように、命に関わる病気ではありませんが、症状が出ている間は非常に不快に感じられます。
内耳にある耳石器から剥がれ落ちたごく小さな「耳石」が、三半規管に入り込んでしまうことで起こると考えられています。この耳石が頭の動きにつれて三半規管内を移動する際に、リンパ液の流れを乱し、平衡感覚に異常をきたすことでめまいが生じます。多くの場合、聴力には異常を伴いません。
メニエール病
繰り返し起こる回転性めまいとともに、片方の耳の難聴、耳鳴り、耳が詰まった感じ(耳閉感)といった聴覚症状を伴うのが特徴です。これらの症状は同時に現れることが多く、症状がないときは全く健康な状態に戻ります。発作の頻度や重症度は人によって異なり、最初は軽いめまいから始まることもあります。
内耳のリンパ液が増えすぎて水ぶくれのような状態(内リンパ水腫)になることが原因と考えられていますが、なぜ内リンパ水腫が起こるのか詳しいことはまだ分かっていません。ストレスや疲労、睡眠不足などが発作の引き金になることもあります。
前庭神経炎
内耳から脳へと平衡感覚の情報を伝える「前庭神経」に炎症が起こることで生じる病気です。突然激しい回転性めまいが起こり、吐き気や嘔吐を伴うことが多いですが、時間の経過とともにめまいの程度が軽くなり、ふわふわするめまいが数週間から数ヶ月続くことがあります。聴力には通常異常を伴いません。
ウイルス感染が原因ではないかと考えられていますが、はっきりしないこともあります。急性期を過ぎると、平衡感覚の回復訓練(前庭リハビリテーション)が有効な場合があります。
脳の病気が原因のめまい(危険なめまい)
めまいの原因としては耳の異常が圧倒的に多いですが、中には脳の病気が原因となっている場合があり、これは特に注意が必要です。脳が原因のめまいは、放置すると重篤な事態に至る可能性があります。脳の病気によるめまいには、軽いめまいとして感じられる場合もありますが、通常は平衡感覚だけでなく、体の運動機能や意識、感覚など、他の機能にも異常を伴うことが多いです。
脳梗塞・脳出血・脳腫瘍の可能性
脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血)して、脳の組織に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなることで、脳の機能が障害されます。脳の中でも特に小脳や脳幹といった平衡感覚に関わる部位に異常が生じると、めまいが起こることがあります。これらの病気によるめまいと、突然の激しいめまいとして現れることが多いですが、軽いめまいとして始まることも否定できません。しかし、多くの場合、めまいの他にも以下のような症状を伴います。
- 片側の手足のしびれや麻痺
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 物が二重に見える(複視)
- 顔の片側がゆがむ
- 強い頭痛
- 意識障害
- うまく歩けない、立てない
- ものがうまく飲み込めない
脳腫瘍も、発生した場所によってはめまいを引き起こすことがあります。特に小脳や脳幹にできた腫瘍は、成長するにつれて周囲の組織を圧迫し、平衡感覚に異常をもたらすことがあります。脳腫瘍によるめまいと、比較的ゆっくりと進行することが多く、徐々にめまいの頻度が増したり、程度が強くなったりする傾向があります。また、頭痛や吐き気、手足の麻痺といった他の神経症状を伴うこともあります。
これらの脳の病気によるめまいと、一刻を争う可能性もあるため、めまいとともに上記のような神経症状が少しでも見られる場合は、すぐに救急車を呼ぶか、速やかに医療機関を受診することが極めて重要です。
脳疾患が疑われるケース
脳疾患によるめまいと、通常、内耳性のめまいとは異なる特徴を持つことが多いです。軽いめまいとして始まることもありますが、時間の経過とともに他の神経症状がはっきりしてくる場合があります。
- めまいの種類: 回転性めまいだけでなく、ふわふわするめまいや、体が傾くような感覚として現れることもあります。
- めまいの持続時間: 比較的長く続くこともあれば、発作的に起こることもあります。しかし、耳の病気によるめまいと異なり、頭の位置を変えてもめまいの種類や程度が大きく変わらないこともあります。
- 随伴症状: 前述したような手足の麻痺、言語障害、視野の異常、強い頭痛などを伴うことが最も重要な判断材料です。
- 聴覚症状: 耳の病気によるめまいと異なり、脳疾患によるめまいでは難聴や耳鳴りを伴わないことが多いです。ただし、脳幹の病気など、例外もあります。
自分でこれらの症状を正確に判断することは難しいかもしれません。しかし、「いつもと違う」「何だかおかしい」と感じたときは、迷わずに医療機関を受診することが大切です。特に、高血圧や糖尿病、高脂血症といった脳卒中のリスク因子を持っている方は、より一層の注意が必要です。
自律神経の乱れによるめまい
現代社会では、ストレスや疲労などによって自律神経のバランスが崩れ、めまいを感じる方が増えています。自律神経は、体のあらゆる機能を調整しており、心臓の拍動や血圧、体温調節、消化器の働き、そして平衡感覚にも深く関わっています。交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、血管の収縮・拡張がうまくいかなくなり、脳への血流が不安定になることでめまいを引き起こすと考えられています。自律神経の乱れによるめまいは、特定の動作や体位に関係なく、常にふわふわとした浮遊感や立ちくらみのような感覚として現れることが多いです。
ストレスや疲労
精神的なストレスや肉体的な疲労が溜まると、自律神経のバランスが大きく崩れます。過剰なストレスは交感神経を優位な状態にさせ、血管を収縮させて血圧を上げたり心拍数を速めたりしますが、これが続くと自律神経全体の調整機能が破綻し、めまいやふらつき、動悸、息切れ、頭痛、肩こり、不眠、消化不良など、様々な不定愁訴を引き起こします。
特に几帳面な方や責任感が強い方、我慢しやすい方などは、ストレスを溜め込みやすく、自律神経の乱れからくるめまいを起こしやすい傾向があります。
不眠や睡眠不足
睡眠は、心身の疲労を回復させ、自律神経のバランスを整えるために非常に重要です。慢性的な不眠や睡眠不足は、それだけで自律神経の乱れを招き、めまいの原因となることがあります。また、寝ている間にリラックスできず、交感神経が緊張している状態が続くと、朝起きたときにふわふわとしためまいや立ちくらみを感じやすくなります。規則正しい睡眠習慣を確保することは、めまいの予防や改善にもつながります。
生活習慣や体の状態によるめまい
耳や脳の病気、自律神経の乱れだけでなく、日々の生活習慣やその時の体の状態によっても、軽いめまいが続くことがあります。これらは比較的軽度であることが多いですが、原因が改善されないと症状が長引くことがあります。
低血圧・貧血
特に若い女性に多く見られるのが、低血圧や貧血によるめまいです。立ち上がったときに急に目の前が暗くなったり、くらくらしたりする「立ちくらみ」は、低血圧が原因であることが多いです。急に立ち上がることで脳への血流が一時的に減少し、めまいとして感じられます。
貧血は、血液中の酸素を運ぶヘモグロビンが不足することで、体全体、特に脳に十分な酸素が供給されにくくなり、めまいや立ちくらみ、息切れ、倦怠感などを引き起こします。これらの症状は、鉄分不足による鉄欠乏性貧血でよく見られます。
首や肩のこり
長時間のデスクワークやスマートフォンの使用などで首や肩の筋肉が慢性的に緊張すると、首の血管や神経が圧迫され、脳への血流が悪くなることがあります。これが原因で、ふわふわとしためまいや頭重感、目の疲れなどを感じることがあります。また、首の筋肉の緊張は、平衡感覚を調整する脳の機能にも影響を与える可能性が指摘されています。
軽いストレッチや適度な運動で、首や肩周りの血行を改善することがめまいの軽減につながることもあります。
寝起きのめまい
朝起きたときに、頭がふわふわしたり、立ち上がるとくらくらしたりするめまいを感じることがあります。これは、寝ている間の血圧の変動や、睡眠中の体の向き、そして自律神経の切り替えがうまくいかないことなどが原因として考えられます。特に、寝返りを打つ際に一時的に耳石が動く良性発作性頭位めまい症や、自律神経の乱れによる起立性調節障害などが関与している場合があります。
ゆっくりと起き上がり、すぐに立ち上がらないようにするなど、寝起きの動作を工夫することで症状が和らぐことがあります。
加齢によるもの
年齢を重ねると、内耳の平衡感覚器の機能が少しずつ低下したり、脳の血流が悪くなったりすることがあります。また、平衡感覚に関わる神経の働きも衰えるため、若い頃に比べてふらつきやすくなったり、ふわふわとしためまいを感じやすくなったりします。加齢に伴うめまいは、明確な病気として診断されないこともありますが、転倒のリスクを高めるため注意が必要です。適度な運動や、バランス能力を高める訓練が有効な場合があります。
軽いめまいの種類と特徴
めまいといっても、その感じ方にはいくつかのタイプがあります。「ぐるぐる回る感じ」「ふわふわ浮いている感じ」「くらくらする感じ」など、表現は様々です。これらのめまいの種類によって、原因として考えられる病気が異なることがあります。軽いめまいが続く場合、特に多く見られるのは「ふわふわするめまい」や「くらくらするめまい」ですが、中には「回転性めまい」が軽く続くケースもあります。
ふわふわするめまい(浮動性めまい)
体が宙に浮いているような、地面が揺れているような、あるいは船の上にいるような感覚のめまいです。「頭がすっきりしない」「足元がおぼつかない」「まっすぐ歩けない」といった表現をされることもあります。このタイプのめまいと、急激に起こるよりも、比較的ゆっくりと始まり、数時間から数日、あるいは数週間、数ヶ月と長く続く傾向があります。常にふわふわする感覚が続いたり、体調が悪いときに悪化したりすることがあります。
原因としては、自律神経の乱れやストレス、疲労、精神的な要因(不安障害など)、脳の軽い血流障害、加齢などが考えられます。耳の病気でも、急性期を過ぎて回復に向かう過程で、回転性めまいから浮動性めまいに移行することがあります。
くらくらするめまい
立ち上がったり、長時間立っていたりするときに、急に目の前が暗くなったり、力が抜けたりするような感覚のめまいです。いわゆる「立ちくらみ」や「気が遠くなる感じ」に近い症状です。座ったり横になったりすると症状が改善することが多いです。
原因としては、低血圧、貧血、急激な血糖値の変化、脱水、薬の副作用などが考えられます。自律神経の機能不全である起立性調節障害でも、このタイプのめまいがよく見られます。
回転性めまい
自分自身や周囲がぐるぐる回っているように感じるめまいです。遊園地のコーヒーカップに乗っているような感覚に例えられることが多いです。吐き気や嘔吐を伴うことも多く、通常は症状が比較的はっきりとしていて、軽いめまいというよりはっきりしためまいとして自覚されます。しかし、良性発作性頭位めまい症のように短時間であったり、症状が比較的軽度であったりする場合もあります。回転性めまいの多くは、内耳の平衡感覚器や、それに関連する神経の異常が原因で起こります。
これらのめまいの種類を把握することは、原因を特定する上で重要なヒントになります。ご自身のめまいがどのタイプに近いか、どのような状況で起こりやすいかを観察し、医師に伝えることで、診断の手助けになります。
危険な軽いめまいのサインと見分け方
軽いめまいが続く場合でも、中には危険な病気が隠されていることがあります。特に、脳の病気が原因である可能性を示すサインを見逃さないことが重要です。めまいそのものが軽くても、他の症状を伴っている場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。ここでは、危険な軽いめまいのサインと、それが脳疾患とどのように関連しているかについて解説します。
こんな症状がある場合は要注意
めまいとともに、以下のいずれかの症状が見られる場合は、脳の病気の可能性を疑い、迅速な対応が必要です。これらの症状は、脳の特定の部位に障害が起きていることを示唆しています。
- 手足のしびれや麻痺: 特に体の片側に力が入らない、感覚が鈍い、しびれるといった症状。
- ろれつが回らない、言葉が出にくい: うまく話せない、他人の言うことが理解できないといった言語障害。
- 物が二重に見える(複視): 片方の目で見たときは問題ないのに、両目で見ると物が二重に見える。
- 顔の片側がゆがむ: 顔の筋肉が麻痺して、片側の口角が下がったり、まぶたが閉じにくくなったりする。
- 強い頭痛: これまでに経験したことのないような突然の激しい頭痛。めまいよりも頭痛が強い場合も注意が必要です。
- 意識がもうろうとする、意識を失う: 周囲の状況がよく分からない、呼びかけへの反応が鈍い、一時的に意識を失うといった症状。
- うまく歩けない、立てない: ふらつく程度ではなく、立っていることや歩くことが困難になる。
- ものがうまく飲み込めない: 嚥下困難。
これらの症状は、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍など、命に関わる病気の可能性を示しています。めまいの程度が軽くても、これらの症状が一つでも現れた場合は、「おかしいな」と感じたらすぐに救急車を呼ぶか、速やかに医療機関を受診することが極めて重要です。
脳疾患が疑われるケース
脳疾患によるめまいと、通常、内耳性のめまいとは異なる特徴を持つことが多いです。軽いめまいとして始まることもありますが、時間の経過とともに他の神経症状がはっきりしてくる場合があります。
- めまいの種類: 回転性めまいだけでなく、ふわふわするめまいや、体が傾くような感覚として現れることもあります。
- めまいの持続時間: 比較的長く続くこともあれば、発作的に起こることもあります。しかし、耳の病気によるめまいと異なり、頭の位置を変えてもめまいの種類や程度が大きく変わらないこともあります。
- 随伴症状: 前述したような手足の麻痺、言語障害、視野の異常、強い頭痛などを伴うことが最も重要な判断材料です。
- 聴覚症状: 耳の病気によるめまいと異なり、脳疾患によるめまいでは難聴や耳鳴りを伴わないことが多いです。ただし、脳幹の病気など、例外もあります。
自分でこれらの症状を正確に判断することは難しいかもしれません。しかし、「いつもと違う」「何だかおかしい」と感じたときは、迷わずに医療機関を受診することが大切です。特に、高血圧や糖尿病、高脂血症といった脳卒中のリスク因子を持っている方は、より一層の注意が必要です。
軽いめまいが続く期間と受診の目安
軽いめまいが続くと、「いつまでこの状態が続くのだろう」「病院に行くべきか、もう少し様子を見ても大丈夫か」と悩むことが多いでしょう。めまいの原因によって症状が続く期間は異なり、病院を受診すべきタイミングも変わってきます。ここでは、軽いめまいが続く期間の目安と、医療機関を受診する判断基準について解説します。
軽いめまいがどれくらいで治る?
- 良性発作性頭位めまい症: 頭を動かしたときに起こるめまいは、通常数十秒で治まりますが、繰り返し起こることがあります。病気自体は自然に改善することも多く、数日から数週間、長くても数ヶ月で症状が消失することが多いです。適切な治療(耳石を元の場所に戻すための頭位治療)を受けると、より早く改善が期待できます。
- メニエール病: めまいの発作は通常数時間から半日程度続きますが、発作と発作の間は無症状です。しかし、病気が進行するとめまいの頻度が増えたり、発作と関係なくふわふわするめまいや難聴、耳鳴りが慢性的に続いたりすることもあります。
- 前庭神経炎: 急性期の激しいめまいは数日から1週間程度で改善しますが、その後ふわふわするめまいや体のふらつきが数週間から数ヶ月続くことがあります。これは平衡感覚が完全に回復するまでの期間です。
- 自律神経の乱れや生活習慣: ストレス、疲労、睡眠不足、低血圧、首こりなどが原因の場合、原因を取り除くか改善しない限り、めまいが慢性的に続くことがあります。体調が良い日は症状が軽かったり感じなかったりすることもあります。
- 脳の病気: 原因となる病気によって異なりますが、初期の軽いめまいから時間とともに症状が進行したり、他の神経症状が出現したりすることがあります。
めまいが毎日続くのはなぜ?
軽いめまいが毎日、あるいはほとんど毎日続く場合、原因として最も多いのは自律神経の乱れや慢性的なストレス、疲労、あるいは生活習慣に起因するものです。これらの要因は、体の状態や心境によって変動しやすく、明確な病気ではないため症状が長引きやすい傾向があります。また、精神的な不安(「いつめまいが起こるか分からない」という恐怖)が、さらに自律神経を乱し、めまいの症状を悪化させるという悪循環に陥ることもあります。
一方で、内耳の病気でも、回復期にふわふわするめまいが続いたり、メニエール病のように症状が慢性化したりする場合もあります。稀ではありますが、進行性の脳腫瘍など、脳の病気が原因でめまいが慢性的に続くこともあります。
病院を受診するタイミング
軽いめまいが続く場合、いつ病院を受診すべきか迷うことがあるでしょう。以下のいずれかに当てはまる場合は、医療機関への受診を検討してください。
- 危険なサインを伴う場合: 前述の「危険な軽いめまいのサイン」で挙げた症状(手足のしびれや麻痺、ろれつ困難、強い頭痛、視野異常など)が一つでも見られる場合は、緊急性が高いと考えられます。すぐに救急車を呼ぶか、速やかに医療機関を受診してください。
- めまいが続く場合: 軽いめまいであっても、数日経っても改善しない、または悪化している場合。
- 日常生活に支障が出ている場合: めまいのために仕事や家事が思うようにできない、外出が怖い、転倒しそうになるといった状態。
- 不安が強い場合: 「何か重大な病気かもしれない」という不安が強く、精神的に参ってしまっている場合。
- 聴覚症状を伴う場合: めまいとともに、片方の耳の聞こえが悪くなった、耳鳴りがするといった症状がある場合(メニエール病や前庭神経炎などの耳の病気が疑われます)。
上記に当てはまらなくても、「一度専門家に見てもらって安心したい」という場合も、遠慮なく受診して構いません。早期に診断を受け、適切な対処や治療を開始することで、症状の改善が期待できます。
何科を受診すべき?
めまいの原因は多岐にわたるため、何科を受診すべきか迷うことがあります。一般的に、めまいの原因として最も多いのは耳の異常であるため、まずは耳鼻咽喉科を受診するのが良いでしょう。耳鼻咽喉科では、聴力検査や平衡機能検査など、耳の専門的な検査を通じてめまいの原因を調べることができます。
しかし、めまいに加えて手足のしびれや麻痺、ろれつ困難、強い頭痛など、脳の病気を疑わせる症状がある場合は、迷わず脳神経内科または脳神経外科を受診してください。これらの科では、MRIやCTといった画像検査を行い、脳に異常がないかを調べます。
また、めまいとともに動悸や息切れがある場合、あるいは低血圧や貧血が疑われる場合は、内科を受診することも考えられます。自律神経の乱れが強く疑われる場合も、まずは内科やかかりつけ医に相談してみるのも良いでしょう。
どの科を受診すべきか判断に迷う場合は、まずかかりつけ医に相談するか、総合病院の内科を受診し、必要に応じて専門科を紹介してもらうのが確実です。
軽いめまいへの対処法・自宅でのケア
軽いめまいが続く場合、医療機関での治療と並行して、自宅でできる対処法や日々のケアも症状の軽減に役立ちます。原因によって効果的なアプローチは異なりますが、ここでは一般的な対処法について解説します。
安静にする
めまいが起こったときは、まずは安全な場所で安静にすることが第一です。無理に動くと転倒する危険がありますし、めまいが悪化することもあります。
- 横になる: 可能であれば、静かで暗い場所で横になりましょう。頭を少し高くすると楽になる場合もあります。
- 急な動きを避ける: 特に、頭を急に動かしたり、急に立ち上がったりする動作は避けてください。ゆっくりと、体の動きを最小限にするように心がけましょう。
- 視覚的な刺激を避ける: 明るすぎる光や、素早い動きのあるもの(テレビなど)を見ると、めまいが悪化することがあります。目を閉じるか、落ち着いた環境で過ごしましょう。
めまいの種類によっては、特定の体位でめまいが誘発されることもあります。その場合は、めまいが起こりにくい体位を見つけて安静にするのが良いでしょう。
ストレスを軽減する
自律神経の乱れが原因のめまいの多くは、ストレスと関連しています。日々のストレスを軽減し、リラックスする時間を確保することが症状の改善につながります。
- 十分な休息と睡眠: 毎日同じ時間に寝起きするなど、規則正しい生活を心がけ、質の良い睡眠を十分にとりましょう。
- 適度な運動: ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことは、ストレス解消になり自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。ただし、めまいが強いときは無理に行わないでください。
- リラクゼーション: 趣味に没頭する、音楽を聴く、お風呂にゆっくり浸かる、アロマテラピー、瞑想、深呼吸など、自分が心地良いと感じる方法でリラックスする時間を作りましょう。
- 信頼できる人に相談する: 抱え込まずに、家族や友人、専門家などに悩みや不安を話すことも、心の負担を軽くするために重要です。
生活習慣の見直し
日々の生活習慣がめまいの原因となっていることもあります。食生活や姿勢などを見直すことも、めまいの改善につながります。
- バランスの取れた食事: 栄養バランスの取れた食事を心がけ、特に貧血気味の方は鉄分を多く含む食品(レバー、ほうれん草、ひじきなど)を意識して摂りましょう。
- 水分補給: 脱水はめまいを引き起こす原因の一つです。こまめに水分を摂りましょう。
- カフェインやアルコールの摂取を控える: これらは自律神経や血行に影響を与える可能性があり、めまいを悪化させることがあります。過剰な摂取は控えましょう。
- 首や肩のケア: 長時間同じ姿勢でいないように注意し、適度に休憩を挟んでストレッチを行いましょう。温湿布などで温めるのも効果的です。
- 姿勢の改善: 猫背など悪い姿勢は、首や肩への負担を増やし、めまいを悪化させる可能性があります。正しい姿勢を意識しましょう。
- 禁煙: 喫煙は血管を収縮させ、血行を悪くするため、めまいを悪化させる可能性があります。
病院での治療法
医療機関を受診した場合、めまいの原因に応じて様々な治療法が選択されます。
- 薬物療法:
- めまい止めの薬: めまいの辛い症状を一時的に抑えるために処方されることがあります。
- 血行改善薬: 内耳や脳への血流を改善することで、めまいを軽減する薬が使われることがあります。
- 抗不安薬・抗うつ薬: ストレスや精神的な要因が強い場合、自律神経のバランスを整える目的で処方されることがあります。
- 利尿薬: メニエール病で内耳のリンパ液が増えている場合に、リンパ液を減らす目的で使われることがあります。
- 原因疾患に対する治療薬: 貧血であれば鉄剤、低血圧であれば昇圧剤など、原因となっている病気に対する治療が行われます。
- リハビリテーション:
- 平衡感覚訓練(前庭リハビリテーション): 特に前庭神経炎の回復期や、加齢による平衡機能の低下に対して行われます。体のバランスをとる能力を高めるための様々な運動を行います。
- 物理療法: 首や肩のこりが原因の場合、マッサージやストレッチ、温熱療法などが行われることがあります。
- 理学療法士による指導: 良性発作性頭位めまい症の場合、剥がれ落ちた耳石を三半規管から出すための特定の頭の動かし方(浮遊耳石置換法)を理学療法士が行うことがあります。
- カウンセリング・精神療法: ストレスや不安がめまいに強く影響している場合、精神的な側面からのアプローチも有効です。
医師の診断に基づいて、ご自身のめまいの原因に合わせた適切な治療法や自宅でのケア方法を取り入れることが、症状改善への近道となります。自己判断で市販薬を使用したり、根拠のない民間療法に頼ったりせず、まずは専門家に相談することをおすすめします。
【まとめ】軽いめまいが続く場合は専門医に相談を
「軽いめまいが続く」「ふわふわする」といった症状は、多くの人が経験する身近な不調ですが、その原因は耳の病気、脳の病気、自律神経の乱れ、生活習慣など多岐にわたります。ほとんどの場合は命に関わる病気ではありませんが、中には脳の病気など、早期の診断と治療が必要なケースも含まれています。
もし、軽いめまいとともに手足のしびれや麻痺、ろれつ困難、強い頭痛、視野の異常といった「危険なサイン」が見られる場合は、迷わずにすぐに医療機関を受診してください。これらの症状は、脳卒中などの緊急性の高い病気の可能性を示唆しています。
危険なサインがない場合でも、軽いめまいが数日以上続く場合、日常生活に支障が出ている場合、あるいはご自身の症状に強い不安を感じている場合は、一度専門医に相談することをおすすめします。めまいの原因を特定するためには、問診や身体診察に加え、耳の検査や必要に応じて脳の画像検査などが行われます。
原因が分かれば、それに応じた適切な治療や対処法を行うことで、症状の改善が期待できます。また、原因がはっきりしない場合でも、対症療法や生活指導によって症状を和らげることができます。
めまいは不安を伴いやすい症状ですが、一人で悩まず、専門家と一緒に原因を探り、適切なケアをしていきましょう。
免責事項
本記事は、一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代替するものではありません。ご自身の症状について不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、一切の責任を負いかねます。