食中毒は、細菌やウイルスなどが付着した食品や水を摂取することで発生する病気です。
多くの場合、嘔吐や下痢といったつらい症状が現れます。
軽症であれば、ご自宅での適切なケアで回復を目指すことも可能ですが、自己判断には限界があります。
この記事では、「食中毒 治し方 自力」というキーワードで情報を探している方のために、ご自宅でできる基本的な対処法や、どのような場合に医療機関を受診すべきかについて詳しく解説します。
正しい知識を持って適切に対処し、早期回復を目指しましょう。
食中毒の症状は、原因となる細菌やウイルス、摂取量、個人の体調などによって大きく異なります。
軽度の場合は、自然治癒力によって数日で回復することも珍しくありません。
この場合、ご自宅での対症療法（症状を和らげるためのケア）が中心となります。
しかし、重症化しやすい食中毒や、脱水症状が進んでしまうケース、あるいは基礎疾患がある方などは、自己判断せずに必ず医療機関を受診する必要があります。
自力での対処は、あくまで症状が軽い場合に限定されると考えるべきです。
最も重要なのは、ご自身の体調をよく観察し、適切な判断をすることです。
食中毒の症状を確認しよう
食中毒の症状は多岐にわたりますが、主に消化器系の症状が中心となります。
食中毒の主な症状
食中毒の代表的な症状は以下の通りです。
- 吐き気・嘔吐: 原因物質を体外に排出しようとする体の防御反応です。激しい嘔吐が続くと脱水のリスクが高まります。
- 下痢: 同様に、原因物質を体外に排出しようとする体の反応です。水のような下痢が何度も続くと、水分や電解質が失われます。
- 腹痛: 胃や腸の炎症、けいれんによって起こります。
- 発熱: 体が病原体と戦っているサインです。原因によっては高熱が出ることもあります。
- だるさ（全身倦怠感）: 体力の消耗や炎症によって起こります。
これらの症状が、特定の食品や水を摂取してから数時間～数日以内に現れる場合、食中毒の可能性が高いと考えられます。
食あたりとの違いは？
「食あたり」という言葉は、食中毒と似た意味合いで使われることが多いですが、厳密な医学的な定義があるわけではありません。
一般的には、特定の食品を摂取した後に起こる、比較的軽い吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状を指して「食あたり」と呼ぶことが多いようです。
食中毒は、原因となる細菌やウイルス、化学物質などが特定できる場合を指すことが多いですが、食あたりも原因が特定されれば食中毒に含まれます。
例えば、サルモネラ菌による食中毒も、アニサキスによる食中毒も、広義では「食あたり」と表現されることがあります。
重要なのは呼び方の違いではなく、症状の程度と、原因が特定されているかいないかです。
症状が重い場合や、原因が不明な場合でも、食中毒の可能性を考えて適切な対処（特に医療機関の受診）を検討することが大切です。
医療機関では、症状や検査結果をもとに「感染性胃腸炎」などと診断されることが一般的です。
自力でできる食中毒の治し方【基本的な対処法】
症状が比較的軽い食中毒の場合、ご自宅でできる基本的な対処法は、体の回復をサポートすることに重点を置きます。
最も重要な水分補給の方法
食中毒で最も警戒すべきは脱水症状です。
嘔吐や下痢によって、体から大量の水分と電解質（ナトリウム、カリウムなど）が失われるため、これを適切に補給することが回復には不可欠です。
- 経口補水液（ORS）の利用: 経口補水液は、水分と電解質をバランス良く含んでおり、体に効率よく吸収されるように設計されています。市販の経口補水液（OS-1など）を利用するのが最も手軽で効果的です。薬局やスーパー、コンビニエンスストアなどで購入できます。
- 飲む量とペース: 一度にたくさん飲むと、かえって吐き気を催すことがあります。少量（一口～二口程度）を頻繁に、例えば10分～15分おきに飲むようにしましょう。症状が落ち着いてきたら、少しずつ量を増やしていきます。
- 経口補水液が手元にない場合: スポーツドリンクも水分と電解質を含みますが、糖分が多いものが多いため、水で薄めて飲むのがおすすめです。また、家庭で作ることも可能です。水1リットルに対し、砂糖大さじ4.5杯（約40g）、塩小さじ0.5杯（約3g）を混ぜたものが簡易的な経口補水液になります。ただし、市販のものに比べると効果は劣るため、可能な限り市販のものを利用しましょう。
- 避けるべき飲み物: コーヒー、紅茶、アルコール、炭酸飲料などは利尿作用があったり、胃腸を刺激したりするため、脱水症状の悪化や症状の悪化につながる可能性があります。避けるようにしてください。
食事はいつから？消化の良い回復食
嘔吐や下痢が続いている間は、無理に食事をとる必要はありません。
胃腸が炎症を起こしている状態なので、休ませることが大切です。
- 食事再開のタイミング: 嘔吐が治まり、下痢の回数が減り、食欲が少し出てきたら、少量ずつ食事を再開してみましょう。無理は禁物です。
- おすすめの回復食:
- 水分: まずは重湯や薄い味噌汁などから。
- 炭水化物: おかゆ（特に米粒のない重湯から始め、徐々に五分粥、全粥へ）、よく煮込んだうどん、食パン（耳なし）などがおすすめです。
- タンパク質: 白身魚のすり身、豆腐、卵豆腐など、脂肪が少なく消化の良いものから少量ずつ始めます。
- 野菜・果物: 加熱して柔らかくした野菜（人参、大根など）、すりおろしりんごなどがおすすめです。
- 避けるべき食品: 脂肪分の多いもの（揚げ物、肉類、乳製品）、繊維質の多いもの（きのこ類、海藻類、ごぼうなど）、刺激物（香辛料、酸っぱいもの、冷たいもの）、アルコール、炭酸飲料などは、胃腸に負担をかけるため回復するまでは避けましょう。
回復食の進め方は、症状を見ながら慎重に行うことが大切です。
少し食べてみて症状が悪化するようなら、無理せず中止し、水分補給に戻りましょう。
十分な安静が回復を早める
食中毒による嘔吐や下痢は体力を大きく消耗させます。
回復のためには、十分な休息をとることが非常に重要です。
- 無理せず休む: 仕事や学校は休み、自宅で安静に過ごしましょう。激しい運動や長時間の外出は避け、体力の回復に専念してください。
- 睡眠: 十分な睡眠をとることで、体の修復機能が高まります。
- 体を冷やさない: 腹痛がある場合は、お腹を温めると症状が和らぐことがあります。ただし、発熱がある場合は無理に温める必要はありません。
安静にすることで、体が原因物質と戦い、ダメージを受けた胃腸を修復するのを助けることができます。
市販薬を使う場合の注意点
食中毒の症状を和らげるために市販薬の使用を考える方もいるかもしれません。
しかし、自己判断での市販薬の使用には注意が必要です。
- 下痢止め薬: 食中毒による下痢は、体内に侵入した細菌やウイルス、毒素を体外に排出しようとする防御反応です。安易に下痢止め薬を使用すると、病原体が体内に留まり、かえって回復を遅らせたり、症状を悪化させたりする可能性があります。特別な理由がない限り、食中毒が疑われる場合の下痢止め薬の使用は避けるべきです。
- 吐き気止め薬: 吐き気や嘔吐も体の防御反応ですが、あまりにひどい場合は体力消耗につながります。ただし、市販の吐き気止め薬の中には、食中毒の診断を難しくしたり、原因によっては使用できないものもあります。
- 解熱鎮痛剤: 発熱や腹痛が辛い場合に使用を考えるかもしれませんが、これも原因によっては慎重な使用が必要です。特に、ロタウイルスなど一部のウイルス性胃腸炎では、特定の解熱鎮痛剤の使用が推奨されない場合があります。
市販薬を使用したい場合は、必ず薬剤師に相談し、食中毒の症状が出ていることを伝えましょう。
症状の原因を特定することが難しいため、自己判断での市販薬の使用は最小限にとどめ、迷ったら医療機関を受診するのが最も安全です。
こんな症状が出たら病院へ行くべき
食中毒の症状が軽い場合はご自宅でのケアも可能ですが、以下のような症状が見られる場合は、迷わず医療機関を受診してください。
これらのサインは、重症化や合併症の可能性を示唆しています。
受診を検討すべき危険なサイン
| 症状 | 具体的な目安 |
|---|---|
| 激しい嘔吐 | 飲んだ水分もすぐに吐いてしまう、1日に何度も吐く |
| 激しい下痢 | 水様便が頻繁に出る、1日に10回以上など |
| 血便 | 便に血液が混ざっている（鮮血やタール便） |
| 高熱 | 38.5℃以上の高熱が続く（特に子どもやお年寄り） |
| 激しい腹痛 | 我慢できないほど痛い、お腹を押すと非常に痛む |
| 脱水症状 | 尿の量が著しく少ない、口の中や唇がひどく乾燥する、皮膚の弾力がない、めまい、立ちくらみ、意識がもうろうとする |
| 症状の長期化 | 症状が数日経っても改善しない、あるいは悪化している |
| 基礎疾患がある | 糖尿病、心臓病、腎臓病など持病がある方、免疫力が低下している方 |
| 子ども・高齢者 | 乳幼児や高齢者は脱水症状になりやすく、重症化しやすい |
| 妊婦 | 胎児への影響も考慮し、早めに受診が必要 |
特に、脱水症状は命に関わる危険があります。
尿が出ない、泣いても涙が出ない（子ども）、ぐったりしている、といったサインに注意が必要です。
迷った場合の判断基準
食中毒の症状が出ているものの、病院に行くべきかどうか迷うこともあるでしょう。
判断に迷う場合は、以下の点を考慮してください。
- 症状の程度: 症状が強く、日常生活に支障が出ているか。
- 症状の変化: 症状が悪化しているか、改善の兆しがないか。
- ご自身の状況: 持病があるか、高齢者か、乳幼児か、妊婦かなど。
- 不安の有無: 少しでもご自身の体調に不安を感じるか。
これらのいずれかに当てはまる場合は、専門家である医師の判断を仰ぐのが最も賢明です。
自己判断で重症化を招くよりも、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
特に、血便や意識障害などの緊急性の高い症状が見られる場合は、救急医療機関の受診も検討してください。
食中毒が治るまでの期間は？
食中毒の症状が治まるまでの期間は、原因となる病原体や個人の免疫力、体調などによって大きく異なります。
軽い食あたり程度であれば数時間で回復することもあれば、数週間かかる場合もあります。
原因菌・ウイルス別の目安
代表的な食中毒の原因物質による一般的な症状持続期間の目安は以下の通りです。
これはあくまで一般的な傾向であり、個人差が大きいことに注意してください。
| 原因物質 | 一般的な潜伏期間 | 主な症状 | 一般的な症状持続期間 |
|---|---|---|---|
| ノロウイルス | 24～48時間 | 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱 | 1～3日 |
| サルモネラ菌 | 8～48時間 | 激しい腹痛、下痢、発熱 | 数日～1週間以上 |
| カンピロバクター | 2～5日 | 発熱、下痢、腹痛（筋肉痛も） | 数日～1週間以上 |
| 腸炎ビブリオ | 数時間～数日 | 激しい腹痛、下痢、嘔吐 | 1～3日 |
| 病原性大腸菌（O157など） | 3～8日 | 激しい腹痛、水様下痢、血便 | 数日～数週間（合併症による） |
| 黄色ブドウ球菌（毒素） | 1～5時間 | 吐き気、嘔吐、腹痛 | 半日～1日 |
毒素型（黄色ブドウ球菌、セレウス菌など）は潜伏期間が短く、嘔吐が主な症状で比較的短時間で回復する傾向があります。
一方、感染型（サルモネラ菌、カンピロバクターなど）やウイルス性（ノロウイルスなど）は、潜伏期間がやや長く、下痢や発熱が主な症状で回復に時間がかかることがあります。
軽い食中毒の場合
比較的軽い食中毒（いわゆる食あたり程度）で、症状が嘔吐や下痢が数回程度で済むような場合は、体の水分や電解質がそれほど失われていなければ、半日～1日程度で症状が改善することも珍しくありません。
しかし、症状が治まった後も、胃腸の調子が完全に回復するまでには時間がかかることがあります。
しばらくは消化の良い食事を心がけるなど、無理をしないようにしましょう。
いずれの場合も、症状が長引く場合や悪化する場合は、原因を特定し適切な治療を受けるために医療機関を受診することが重要です。
食中毒の予防策
食中毒になってしまったら、つらい症状に耐えなければなりません。
最も大切なのは、食中毒にならないように予防することです。
日々の生活で実践できる食中毒予防の基本原則は以下の3つです。
- 菌を「付けない」
- 手洗い: 食事の前、トイレの後、調理の前、生肉や生魚を扱った後には、石鹸を使って丁寧に手を洗いましょう。指の間や爪の間も忘れずに洗います。
- 調理器具の洗浄・消毒: 包丁、まな板、ふきんなどは、肉や魚を使った後に熱湯消毒するなど、清潔に保ちましょう。
- 食品の取り扱い: 生の食品と加熱する食品を分け、まな板や包丁を使い分けるか、その都度洗浄・消毒しましょう。
- 食器の清潔: 食器類も使用後すぐに洗い、清潔に保管しましょう。
- 菌を「増やさない」
- 迅速な調理・食事: 食品は購入後すぐに冷蔵庫に入れ、調理後はできるだけ早く食べましょう。
- 適切な温度管理: 細菌の多くは10℃以下で増殖が遅くなり、マイナス15℃以下で増殖が停止します。冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫はマイナス15℃以下に設定しましょう。加熱調理済みの食品や購入したお惣菜なども、室温に長く放置せず、すぐに冷蔵庫に入れることが大切です。
- 作り置きの注意: 作り置きする際は、粗熱をとってから清潔な容器に入れ、冷蔵庫で保存し、早めに食べきりましょう。
- 菌を「やっつける」
- 十分な加熱: 多くの細菌やウイルスは加熱によって死滅します。肉や魚は中心部まで十分に加熱しましょう。一般的に、75℃で1分間以上の加熱が推奨されます。
- 再加熱の注意: 残った料理を温め直す際も、中心部まで十分に加熱しましょう。
これらの予防策を徹底することで、食中毒のリスクを大幅に減らすことができます。
特に夏場は気温や湿度が高く細菌が増殖しやすいため、より一層注意が必要です。
食中毒の予防には、一人ひとりの意識と行動が大切です。
ご自身やご家族の健康を守るためにも、日頃からこれらの予防策を実践しましょう。
免責事項
本記事は、食中毒に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。
個々の症状や状況については、必ず医師や医療専門家にご相談ください。
本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いません。
