女性ホルモンを増やす6つの方法|食事や運動で心と体の不調を改善

なんだか最近、理由もなくイライラする、急に肌が荒れ始めた、疲れが取れにくい…。そうした心身の不調は、もしかしたら「女性ホルモン」のバランスの乱れが原因かもしれません。

特に30代後半から50代にかけて、女性の体は大きな変化の時期を迎えます。これまでのケアでは追いつかないと感じ、「女性ホルモンを増やすには、一体どうすればいいの?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、医療・美容分野のプロの視点から、女性ホルモンと上手に付き合っていくための具体的な方法を網羅的に解説します。食事や運動といった日々のセルフケアから、つらい症状を改善するための婦人科での専門的な治療まで、あなたの疑問や不安に一つひとつお答えしていきます。

この記事を読み終える頃には、自分の体と向き合い、健やかな毎日を取り戻すための第一歩を踏み出せるはずです。

目次

女性ホルモンの基本|エストロゲンとプロゲステロンの役割

私たちの心と体の健康を生涯にわたって支えてくれる女性ホルモン。まずは、その基本的な働きについて理解を深めましょう。

2つの女性ホルモンの働きとバランスの重要性

女性ホルモンには、主に2つの種類があります。

  1. エストロゲン(卵胞ホルモン)
    「女性らしさのホルモン」とも呼ばれ、丸みを帯びた体つきを作ったり、肌や髪の潤いを保ったりする働きがあります。また、月経周期のコントロール、自律神経の安定、骨の健康維持、記憶力の保持など、その役割は多岐にわたります。
  2. プロゲステロン(黄体ホルモン)
    「母性のホルモン」とも呼ばれ、主に排卵後から月経前にかけて分泌が増えます。子宮内膜を厚くして妊娠しやすい状態に整えたり、妊娠を維持したりする重要な役割を担います。体温を上げる、食欲を増進させる、水分を体に溜め込むといった作用もあります。

この2つのホルモンは、約1ヶ月の月経周期の中で、まるでシーソーのように増えたり減ったりを繰り返しています。このダイナミックな変動とバランスが保たれてこそ、女性の心身は健やかな状態を維持できるのです。どちらか一方が多すぎても少なすぎても、様々な不調の原因となります。

女性ホルモンが乱れる主な原因|加齢・ストレス・生活習慣

非常にデリケートな女性ホルモンのバランスは、様々な要因によって簡単に乱れてしまいます。主な原因は以下の通りです。

  • 加齢:最大の要因は、年齢を重ねることによる卵巣機能の低下です。特に40代半ば頃からエストロゲンの分泌は大きくゆらぎながら減少し始め、閉経を迎える50歳前後で急激に低下します。
  • ストレス:精神的・身体的なストレスは、ホルモン分泌の司令塔である脳の「視床下部」に直接ダメージを与えます。視床下部の機能が乱れると、卵巣へ正しい指令が届かなくなり、ホルモンバランスが崩れてしまいます。
  • 不規則な生活習慣:睡眠不足、栄養の偏った食事、運動不足なども自律神経の乱れを引き起こし、ホルモンバランスに悪影響を及ぼします。
  • 過度なダイエット:急激な体重減少や栄養不足は、体が生命の危機と判断し、生殖機能(月経)をストップさせてしまうことがあります。これにより、ホルモン分泌も停止してしまいます。

【年代別】女性ホルモンの変化と起こりやすい不調

女性ホルモンの分泌量は、ライフステージによって大きく変化します。年代ごとの特徴と、起こりやすい不調を知っておきましょう。

年代 ホルモンの状態 起こりやすい不調
20代~30代前半 分泌量がピークに達し、安定している時期。 過度なストレスやダイエットによる月経不順、PMS(月経前症候群)など。
30代後半~40代前半 ピークを過ぎ、分泌量が少しずつ減少し始める時期。 ライフスタイルの変化も相まって、PMSの悪化、月経周期の乱れ、肌や髪の変化を感じ始める人が増える。
40代半ば~50代前半(更年期) 卵巣機能が低下し、ホルモン量が大きくゆらぎながら急激に減少する時期。 ほてり、のぼせ、発汗(ホットフラッシュ)、イライラ、不眠、気分の落ち込みといったプレ更年期・更年期症状が現れやすい。
50代後半以降(閉経後) エストロゲンの分泌がごくわずかになる時期。 骨粗しょう症、脂質異常症(高コレステロール血症)、動脈硬化、膣の乾燥(萎縮性膣炎)などのリスクが高まる。

女性ホルモンの乱れをセルフチェック|体からのサイン

「もしかして私もホルモンバランスが乱れているかも?」と感じたら、ご自身の心身の状態をチェックしてみましょう。体は正直にサインを送ってくれています。

体のサイン:月経不順・PMS・更年期症状

  • 月経周期が24日以内と短い、または39日以上と長い
  • 月経周期が毎月バラバラで定まらない
  • 経血量が急に増えたり減ったりした
  • 月経前に、胸の張り、腹痛、頭痛、むくみがひどい(PMS)
  • 理由もなく急に顔が熱くなったり、汗が噴き出したりする(ホットフラッシュ)
  • めまい、耳鳴り、動悸、息切れがする
  • 肩こりや腰痛、関節痛がひどくなった
  • 疲れやすく、寝ても疲れが取れない
  • 膣が乾燥する、性交痛がある

心のサイン:イライラ・気分の落ち込み・不眠

  • ささいなことでイライラしたり、怒りっぽくなったりする
  • 不安な気持ちになったり、急に涙もろくなったりする
  • やる気が出ない、何事も億劫に感じる
  • 集中力が続かず、物忘れが増えた
  • 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまう

見た目のサイン:肌荒れ・ニキビ・髪の悩み

  • 肌の乾燥やくすみが気になるようになった
  • 口周りやあごに大人ニキビが繰り返しできる
  • 髪がパサつく、ツヤがなくなった
  • 抜け毛や薄毛が気になるようになった
  • 体重が増えやすくなった、特にお腹周りの脂肪が落ちにくい

これらのサインに複数当てはまる場合は、ホルモンバランスが乱れている可能性があります。次の章から、具体的な対策を見ていきましょう。


ステップバイステップで実践!女性ホルモンを整える6つのステップ

ホルモンバランスを整えるには、特効薬を探すのではなく、生活全体を丁寧に見直すことが最も効果的です。ここでは、今日から始められる具体的なアクションを6つのステップに分けてご紹介します。

ステップ1:食事でホルモンの土台を作る

女性ホルモンそのものを直接増やす食べ物は残念ながらありません。しかし、ホルモンの材料となる栄養素を補い、その働きをサポートする食事を心がけることで、バランスを整えることは可能です。

基本はバランスの取れた食事|五大栄養素を意識する

まず大切なのは、特定の食品に偏るのではなく、炭水化物・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルの五大栄養素をバランス良く摂ることです。

  • タンパク質:肉、魚、卵、大豆製品など。ホルモンや筋肉、肌の材料になります。
  • 良質な脂質:青魚、アボカド、ナッツ類、アマニ油など。ホルモンの材料になるだけでなく、細胞膜を健康に保ちます。
  • ビタミン・ミネラル:野菜、果物、海藻類など。体の調子を整え、ホルモンの代謝を助けます。
  • 炭水化物:ご飯、パン、麺類など。活動のエネルギー源。過度な糖質制限はエネルギー不足となり、ホルモンバランスを乱す原因になるため注意が必要です。

《シナリオ例:栄養相談の現場で》
管理栄養士:「Aさん、最近疲れやすいとのことですが、お食事で何か意識されていますか?」
Aさん(40代):「仕事が忙しくて、平日はコンビニのお弁当やパスタで済ませてしまうことが多いです…。」
管理栄養士:「なるほど。それでしたら、まずはいつもの食事に一品プラスすることから始めてみませんか?例えば、お弁当にお豆腐とワカメのインスタント味噌汁を足すだけでも、タンパク質とミネラルが補えますよ。特に大豆製品は、女性の強い味方ですからね。」
Aさん:「それならできそうです!少し意識してみます。」

大豆イソフラボンとエクオールの女性ホルモン様作用

「女性ホルモンを整える食べ物」として最も有名なのが、豆腐、納豆、豆乳などの大豆製品に含まれる大豆イソフラボンです。大豆イソフラボンは、体内で女性ホルモンのエストロゲンと似た働き(エストロゲン様作用)をすることが知られています。

さらに重要なのが、大豆イソフラボンの一種である「ダイゼイン」が、腸内細菌によって「エクオール」という成分に変換されることです。このエクオールこそが、エストロゲン様作用の主役であり、更年期の不調緩和や骨密度の維持などに高い効果を発揮します。

しかし、残念ながらこのエクオールを体内で作れる日本人は約半数と言われています。自分がエクオール産生菌を持っているかどうかは、市販の尿検査キットで簡単に調べることができます。
▶ 関連情報: 【医師監修】エクオールとは?効果とサプリの選び方、摂取量の目安

もしエクオールを作れない体質だったとしても、がっかりする必要はありません。後述するサプリメントで直接エクオールを補うという選択肢があります。

ホルモンバランスをサポートする栄養素と食材リスト

大豆イソフラボンの他にも、ホルモンバランスを整えるために積極的に摂りたい栄養素がたくさんあります。

栄養素 主な働き 多く含まれる食材
ビタミンB6 エストロゲンの代謝を助け、PMS症状の緩和にも。 マグロ、カツオ、鶏むね肉、バナナ、パプリカ
ビタミンE 「若返りのビタミン」。血行を促進し、卵巣機能の低下を防ぐ。 アーモンド、ナッツ類、アボカド、かぼちゃ、うなぎ
亜鉛 ホルモンの分泌を調整する働きがある。 牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、チーズ、卵
鉄分 月経で失われやすい。不足すると貧血や疲労感の原因に。 レバー、牛肉(赤身)、あさり、小松菜、ほうれん草
オメガ3系脂肪酸 体内の炎症を抑え、血流を改善する。 サバ、イワシ、サンマなどの青魚、アマニ油、えごま油
食物繊維 腸内環境を整え、エクオール産生やホルモンの排出を助ける。 ごぼう、きのこ類、海藻類、玄米、オートミール

女性ホルモンを増やす飲み物は?おすすめと注意点

飲み物では、豆乳が手軽に大豆イソフラボンを摂取できるためおすすめです。無調整豆乳を選ぶと、より多くの大豆成分を摂ることができます。また、リラックス効果のあるハーブティー(カモミール、ラズベリーリーフなど)も、ストレス緩和の観点から良い選択です。

一方で、カフェインの多いコーヒーや緑茶、アルコール、糖分の多いジュース類は、摂りすぎると自律神経を乱したり、体を冷やしたりする可能性があるため、適量を心がけましょう。

ステップ2:適度な運動で心身をリフレッシュする

運動は、ホルモンバランスを整える上で非常に効果的です。

  • 血行促進:全身の血の巡りが良くなることで、卵巣などの臓器に必要な栄養や酸素が効率よく届けられます。
  • 自律神経の調整:適度な運動は、心身をリラックスさせる副交感神経を優位にし、自律神経のバランスを整えます。
  • ストレス解消:体を動かすことで気分がリフレッシュし、ストレスホルモン「コルチゾール」の過剰な分泌を抑える効果が期待できます。

【おすすめの運動】

  • ウォーキング:1日20~30分程度、少し息が弾むくらいのペースで歩くだけでも効果的です。
  • ヨガ・ストレッチ:深い呼吸とともに行うことで、心身の緊張をほぐし、自律神経を整えます。骨盤周りの血流を促すポーズもおすすめです。
  • スロージョギング、サイクリングなどの軽~中程度の有酸素運動。

【多くの方が見落としがちなポイント】

運動で最も大切なのは「頑張りすぎないこと」です。健康のためにと意気込んでハードなトレーニングを課してしまうと、かえって体がストレスを感じ、活性酸素を増やし、ホルモンバランスを乱す原因になりかねません。「気持ちいいな」「楽しいな」と感じられる範囲で、無理なく継続できることが何よりも重要です。

ステップ3:質の高い睡眠でホルモン分泌を正常化する

睡眠は、心と体のメンテナンスを行うための最も重要な時間です。ホルモン分泌の司令塔である脳の視床下部や下垂体は、睡眠中に活発に働きます。

  • 睡眠時間の確保:個人差はありますが、1日7時間程度の睡眠を目指しましょう。
  • 睡眠の質を高める工夫
    • 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるリズムを作る。
    • 就寝1~2時間前に入浴し、体を温める。
    • 寝る直前のスマートフォンやPCの使用は、ブルーライトが脳を覚醒させるため避ける。
    • 寝室は暗く、静かで、快適な温度・湿度に保つ。

ステップ4:ストレスを上手に管理し、コルチゾールを抑える

現代社会でストレスをゼロにすることは不可能ですが、上手に付き合い、溜め込まない工夫が大切です。過度なストレスは、ストレスホルモンである「コルチゾール」を過剰に分泌させます。コルチゾールを作る材料は、女性ホルモンと同じコレステロールであるため、コルチゾールが大量に作られると、その分女性ホルモンの産生が減ってしまう「ホルモン泥棒」のような現象が起こると言われています。

  • リラックスする時間を作る:1日5分でも良いので、意識的にリラックスする時間を取り入れましょう。(例:深呼吸、瞑想、好きな音楽を聴く、アロマを焚く)
  • 五感を満たす:心地よい肌触りの服を着る、好きな香りのハンドクリームを使う、美しい景色を見るなど、五感が喜ぶことを意識してみましょう。
  • 人に話す:友人や家族、カウンセラーなど、信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも、心は軽くなります。

ステップ5:セルフケアを補助するアイテムを知る

食事や生活習慣の改善を基本としながら、サプリメントや漢方薬でセルフケアを補助するのも一つの方法です。

  • サプリメント
    • エクオール:エクオールを体内で作れない人におすすめ。更年期症状の緩和に効果が期待できます。
    • チェストベリー:PMSの症状緩和に使われるハーブ。プロゲステロンのバランスを整える働きがあるとされます。
    • プラセンタ:胎盤由来のエキス。自律神経やホルモンバランスを整える作用が期待されます。
    • ビタミン・ミネラル:食事で不足しがちな栄養素を補う。
  • 漢方薬
    漢方は、個人の体質(証)に合わせて心身全体のバランスを整えることを得意とします。婦人科系の不調には「婦人科三大処方」と呼ばれるものが有名です。
    • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):冷え性で貧血気味、むくみやすい方に。
    • 加味逍遥散(かみしょうようさん):イライラや不安感など、精神的な不調が強い方に。
    • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):のぼせや肩こり、月経痛が気になる体力のある方に。

注意点

サプリメントの過剰摂取や、自己判断での漢方薬の服用は思わぬ不調を招くこともあります。利用する際は、必ず医師や薬剤師、登録販売者に相談しましょう。

ステップ6:つらい症状は我慢せず婦人科へ

セルフケアを続けても症状が改善しない場合や、日常生活に支障が出るほどつらい場合は、決して一人で我慢せず、婦人科を受診してください。専門家の力を借りることは、自分を大切にするための賢明な選択です。

《シナリオ例:婦人科の診察室で》
医師:「こんにちは。今日はどうされましたか?」
Bさん(48歳):「最近、仕事中に急に顔がカッと熱くなって汗が止まらなくなったり、夜も些細なことでイライラして眠れなかったりして…。」
医師:「それはおつらいですね。年齢的にも、更年期の症状かもしれませんね。まずは血液検査でホルモンの状態を客観的に見てみましょうか。」
Bさん:「検査でわかるんですね。少し安心しました。」
医師:「はい。もしエストロゲンが大きく減少しているようなら、それを補うホルモン補充療法(HRT)という治療の選択肢もあります。もちろんメリットだけでなく、知っておくべきリスクもありますので、検査結果を見ながら、Bさんにとって一番良い方法を一緒に考えていきましょう。」
▶ 関連情報: 更年期障害のつらい症状…効果的な対策と治療法を解説

婦人科で受けられる検査

血液検査で、エストロゲン(E2)や卵胞刺激ホルモン(FSH)などの値を測定し、ホルモンバランスの状態や卵巣機能の低下度合いを客観的に評価します。

専門的な治療法

  • ホルモン補充療法(HRT):減少したエストロゲンを、飲み薬や貼り薬、塗り薬などで少量補う治療法です。更年期のほてり、発汗、動悸、膣の乾燥などに高い効果を発揮します。骨粗しょう症の予防効果もありますが、血栓症や乳がんのリスクなどについて、医師とよく相談する必要があります。
  • 低用量ピル(OC/LEP):エストロゲンとプロゲステロンの合剤で、排卵を抑制し、体内のホルモンバランスを安定させます。重い月経痛や過多月経、PMS、子宮内膜症などの治療に用いられます。
    ▶ 関連情報: PMS(月経前症候群)を和らげるには?食事・運動・薬で改善

女性ホルモンに関するよくある質問

ここでは、女性ホルモンに関して多くの方が抱く疑問にお答えします。

Q1. 大豆製品の摂りすぎによる副作用はありますか?

A1. 通常の食事として豆腐や納豆などを食べる範囲では、過剰摂取を心配する必要はほとんどありません。日本の内閣府食品安全委員会は、大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値を、サプリメントなどから追加で摂る量として1日30mg、食事からの摂取と合わせて1日70~75mgとしています。
例えば、豆腐1/3丁(約100g)に含まれるイソフラボンは約20mg、納豆1パック(約50g)では約37mgです。複数の大豆製品を組み合わせると上限に近づく可能性はありますが、毎日大量に食べ続けるのでなければ問題ないでしょう。特にサプリメントで摂取する場合は、用量を守ることが大切です。

Q2. サプリメントはいつ飲むのが効果的ですか?

A2. サプリメントの種類によって推奨されるタイミングは異なりますが、一般的には、胃腸への負担が少なく、食べ物の消化吸収を助ける食後に飲むのがおすすめです。ビタミンやミネラルも食事と一緒に摂ることで吸収率が高まるものが多いです。

しかし、最も重要なのは「毎日継続して飲むこと」です。食後に飲み忘れてしまうなら、ご自身が一番忘れにくいタイミング(例えば朝食後や就寝前など)に習慣づけるのが良いでしょう。

Q3. 女性ホルモンを増やすのに即効性のある方法はありますか?

A3. 食事や運動などのセルフケアでホルモンバランスを整えるアプローチは、体質を根本から改善していくため、残念ながら即効性はありません。効果を実感するまでには、少なくとも3ヶ月程度は継続することが推奨されます。

もし、つらい症状を今すぐにでも和らげたいという場合は、婦人科でのホルモン補充療法(HRT)が最も即効性が期待できる方法と言えます。HRTは開始後、数日から数週間で効果が現れることが多いですが、前述の通りメリットとデメリットを理解した上で、医師の診断のもとで行う必要があります。セルフケアの「じっくり改善」と、医療の「スピーディな改善」、それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合わせて選択することが大切です。

Q4. 低用量ピルを飲むと太るというのは本当ですか?

A4. 「ピルを飲むと太る」という噂を耳にすることがありますが、現在の低用量ピルで、体重そのものが増えるという直接的な作用の医学的根拠はほとんどありません。

ただし、一部のピルに含まれる黄体ホルモンの影響で、むくみ(水分が体に溜まる)や食欲増進を感じる方がいるのは事実です。これが「太った」と感じる原因になることがあります。

もし副作用が気になる場合は、決して自己判断で服用を中止しないでください。ピルには様々な種類があり、ホルモンの種類や量を変えることで、副作用が軽減されることがよくあります。例えば、むくみにくいとされる種類のピル(超低用量ピルなど)もあります。気になる症状があれば、必ず処方してくれた医師に相談し、自分に合ったピルへの変更といった代替策を探すことが可能です。

日常で活かせる!実践のためのヒントとコツ

最後に、ホルモンバランスと上手に付き合っていくための、もう一歩踏み込んだヒントを3つご紹介します。

  1. 「体調日記」をつけて自分のリズムを知る
    基礎体温、月経周期、その日の体調(頭痛、腹痛など)や気分(イライラ、落ち込みなど)を、簡単なアプリや手帳に記録してみましょう。これを続けると、「排卵日あたりは調子がいいな」「月経前はやっぱり落ち込みやすいな」といった自分自身の心身のリズムが見えてきます。パターンが分かれば対策も立てやすくなりますし、婦人科を受診する際にも、医師に正確な情報を伝えられる貴重な資料になります。
  2. 女性のバランスを整える「香り」を味方につける
    香りは、脳の本能的な部分に直接働きかけ、自律神経やホルモンバランスに影響を与えることが知られています。特に、ゼラニウム、クラリセージ、ローズ、イランイランなどのアロマオイル(精油)は、女性ホルモンのバランスを整えるサポートをすると言われています。ハンカチに1滴垂らして持ち歩いたり、アロマディフューザーで部屋に香らせたり、入浴時に数滴垂らしたりと、手軽にリラックスタイムを取り入れてみましょう。
  3. 【意外な盲点】「腸活」こそが究極の「ホル活」である
    女性ホルモンのケアというと、婦人科系の臓器ばかりに目が行きがちですが、実は「腸内環境」が非常に重要な鍵を握っています。ステップ1で解説した「エクオール」は、腸内細菌がいなければ作られません。つまり、いくら大豆製品を食べても、腸内環境が悪ければその効果を十分に得られないのです。また、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の約90%は腸で作られます。セロトニンは精神の安定に不可欠であり、女性ホルモンのゆらぎによる気分の落ち込みをサポートしてくれます。
    食物繊維が豊富な野菜やきのこ、海藻類、そして味噌やヨーグルト、キムチなどの発酵食品を積極的に摂り、腸内環境を整えること。これこそが、女性ホルモンの働きを最大限に引き出すための、見過ごされがちな、しかし最もパワフルな方法の一つと言えるでしょう。

まとめ:女性ホルモンと上手に付き合い、心身の不調を改善しよう

今回は、「女性ホルモンを増やすには?」という疑問をテーマに、その仕組みから具体的な対策までを詳しく解説しました。

【本記事の重要ポイント】

  • 女性の健康はエストロゲンプロゲステロンのバランスで成り立っている。
  • バランスの乱れは、加齢、ストレス、生活習慣が主な原因。
  • ホルモンを整える基本は、「食事」「運動」「睡眠」という生活の土台を見直すこと。
  • 食事ではバランスを第一に、大豆製品、ビタミン、ミネラルを意識する。
  • セルフケアで改善しないつらい症状は、我慢せずに婦人科で専門的な治療を受ける選択肢を持つ。

女性ホルモンのゆらぎは、すべての女性が経験する自然な変化です。その変化に不安を感じるのではなく、自分の体と向き合う良い機会と捉えてみませんか。

まずは今日からできるセルフケアを一つでも始めてみてください。そして、つらいときには専門家の力を借りることをためらわないでください。あなたの心と体が健やかで、毎日を笑顔で過ごせるよう、心から応援しています。


【免責事項】

本記事は、女性ホルモンに関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断、治療、または予防を目的としたものではありません。個々の症状や健康状態に関する具体的なアドバイスは、必ず医師や薬剤師などの医療専門家にご相談ください。本記事の情報に基づいて生じたいかなる結果についても、一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

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