「男の生理」の正体とは?イライラ・不調を改善する5つの対策

「なんだか最近、理由もなくイライラする…」「仕事にも趣味にもやる気が出ないし、体がずっとだるい」。もしあなたがそんな心身の不調を感じているなら、それは「男の生理」が原因かもしれません。

「男性に生理なんてあるの?」と驚かれるかもしれませんが、これは医学的な現象として説明できる、多くの男性が経験しうる不調です。決してあなたの気持ちが弱いわけでも、怠けているわけでもありません。

この記事では、医療の専門的な観点から「男の生理」の正体を解き明かし、その原因からご自身でできる具体的な対処法、そして症状が辛いときの専門家への相談方法まで、ステップバイステップで詳しく解説します。

この記事を読み終える頃には、ご自身の不調の正体への理解が深まり、具体的な次の一歩を踏み出す勇気が湧いてくるはずです。パートナーの不調に悩んでいる方も、男性特有のホルモンの波を理解し、より良い関係を築くためのヒントが得られるでしょう。

目次

男の生理は存在する?

「男の生理」は医学的な病名ではない

女性の生理(月経)のように、出血を伴い、約1ヶ月という明確な周期で訪れる現象とは異なります。「男の生理」は、そうした女性の生理になぞらえて、男性に起こるイライラや気分の落ち込み、倦怠感といった波のある不調を指すための俗称です。

しかし、これらの症状を「気のせい」で片付けてはいけません。その背景には、男性ホルモンの変動という、医学的に説明可能なメカニズムが関わっています。

正体は「イライラ男性症候群(IMS)」や「LOH症候群」

「男の生理」と呼ばれる症状の医学的な正体は、主に「イライラ男性症候群(Irritable Male Syndrome, IMS)」です。これは、スコットランドの生物学者ジェラルド・リンカーン氏が提唱した概念で、男性ホルモンであるテストステロンの急激な低下によって引き起こされる、以下のような精神的な不調を指します。

  • イライラ、怒りっぽさ
  • 不安感、気分の落ち込み
  • 無気力、意欲の低下
  • 過敏さ

さらに、特に40代以降の男性の場合、これらの症状の背後に「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」、いわゆる男性更年期障害が隠れているケースも少なくありません。LOH症候群は、加齢に伴ってテストステロンが慢性的に減少することで起こり、IMSのような精神症状に加えて、身体的な不調も現れるのが特徴です。

女性のPMSとの違い|周期性とホルモンの種類

女性の月経前症候群(PMS)もホルモン変動が原因ですが、「男の生理(IMS)」とはいくつかの点で異なります。

比較項目 男の生理(IMS/LOH症候群) 女性のPMS
主な原因ホルモン テストステロン(男性ホルモン)の低下・変動 エストロゲンプロゲステロン(女性ホルモン)の変動
周期性 不規則(日内、週、月、季節単位など個人差が大きい) 約28日の月経周期に伴う規則的なもの
主な症状 イライラ、不安、無気力、性欲減退、集中力低下など イライラ、落ち込み、腹痛、頭痛、乳房の張りなど
年代 30代以降、特に40代以降で顕著 初経から閉経までの女性

このように、原因となるホルモンや周期性が異なるものの、「ホルモンの波によって心身の不調が引き起こされる」という点では、男女に共通する現象と言えるのです。

「男の生理(IMS)」を引き起こす主な原因

なぜ、心と体を支えるはずのホルモンが、不調の原因になってしまうのでしょうか。その鍵を握るのが、男性ホルモン「テストステロン」です。

中心的原因は男性ホルモン「テストステロン」の低下・変動

テストステロンは、「男性らしさ」を形成するホルモンとして知られていますが、その役割は多岐にわたります。

  • 身体面: 筋肉量の維持、骨の健康、体毛の成長、性機能の維持
  • 精神面: 意欲、競争心、決断力、集中力の向上、精神的な安定

まさに、男性が心身ともに健康で、エネルギッシュに活動するための源と言えるホルモンです。このテストステロンの血中濃度が、何らかの理由で急激に下がったり、不安定に変動したりすることで、脳の機能や自律神経のバランスが乱れ、イライラや気分の落ち込み、倦怠感といった「男の生理」の症状が引き起こされるのです。

出典情報
日本内分泌学会も、男性更年期障害(加齢性腺機能低下症)の原因がテストステロンの低下にあることを示しており、その重要性を指摘しています。(参考: 日本内分泌学会 患者さんとご家族の方へ

テストステロンが減少する要因|ストレス・加齢・生活習慣

テストステロンは、非常にデリケートなホルモンであり、様々な要因によってその分泌量が影響を受けます。

  1. 過度なストレス
    最大の敵とも言えるのがストレスです。人間は強いストレスを感じると、副腎から「コルチゾール」というストレスホルモンを分泌します。このコルチゾールには、テストステロンの生成を抑制する働きがあるため、慢性的なストレスはテストステロン値を直接的に低下させてしまいます。
  2. 加齢
    男性のテストステロン値は20代をピークに、加齢とともに緩やかに減少していきます。これは自然な生理現象ですが、減少のスピードには個人差が大きく、生活習慣などが大きく関わります。
  3. 不規則な生活習慣
    • 睡眠不足: テストステロンは主に深い睡眠中に分泌されるため、睡眠時間が不足したり、質が低下したりすると、分泌量が著しく減少します。
    • 食生活の乱れ: テストステロンの原料となるタンパク質やコレステロール、合成を助ける亜鉛やビタミンDなどの栄養素が不足すると、生成が滞ります。
    • 運動不足と肥満: 運動不足はテストステロンの分泌を低下させます。また、肥満、特に内臓脂肪が増えると、テストステロンを女性ホルモン(エストロゲン)に変えてしまう酵素「アロマターゼ」が活性化し、テストステロン値の低下を招きます。
    • 過度な飲酒: 適量を超えるアルコールは、テストステロンの産生を妨げることが知られています。

これらの要因は、働き盛りでストレスが多く、生活が不規則になりがちな30代〜50代の男性に特に当てはまりやすく、複合的に絡み合うことで症状を深刻化させることがあります。

40代以降は「男性更年期障害(LOH症候群)」に注意

特に40代後半から50代にかけて、前述したような精神症状に加えて、

  • ほてり、のぼせ、異常な発汗
  • 性欲の低下、勃起不全(ED)
  • 筋力の低下、関節痛
  • 頻尿
  • めまい、耳鳴り

といった身体的な症状が強く現れる場合は、加齢による慢性的なテストステロン低下が原因の「LOH症候群(男性更年期障害)」の可能性があります。

一時的な不調だと軽視していると、生活の質(QOL)を大きく損なうだけでなく、放置することで生活習慣病や骨粗しょう症のリスクを高めることも指摘されています。

出典情報
日本泌尿器科学会では、LOH症候群の症状や診断、治療について詳しく解説しており、専門医への相談を推奨しています。(参考: 日本泌尿器科学会 LOH症候群

あなたも当てはまる?「男の生理」セルフチェックリスト

ご自身の最近の状態を振り返り、当てはまる項目がないかチェックしてみましょう。これは医学的な診断ではありませんが、ご自身の状態を客観的に把握するための目安となります。

精神的な症状

  • 以前より些細なことでカッとなったり、イライラしたりする
  • 理由もなく不安な気持ちになることがある
  • 気分が沈みがちで、憂うつな気分が続く
  • かつて楽しかった仕事や趣味に興味や関心が持てなくなった
  • 物事に集中できず、簡単なミスが増えた
  • 何かをするのが億劫で、やる気が出ない
  • 決断力が鈍り、物事を先延ばしにしがち

身体的な症状

  • 8時間以上寝ても疲れが取れない、常に体がだるい
  • 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める
  • 急に顔がカッと熱くなったり(ほてり)、汗が噴き出したりする
  • めまいや立ちくらみ、耳鳴りがすることがある
  • 明らかに性欲が減退したと感じる
  • 朝立ちの回数が減った、または全くなくなった
  • 筋力が落ちて、重いものを持つのが辛くなった

3つ以上当てはまる項目がある場合、テストステロンの低下が影響している可能性があります。特に精神症状と身体症状の両方にチェックがついた方は、一度、生活習慣を見直したり、専門家への相談を検討したりすることをおすすめします。

5つのステップで実践!「男の生理」を乗り越えるセルフケアガイド

幸いなことに、「男の生理」が引き起こす不調の多くは、生活習慣の改善によって乗り越えることが可能です。ここでは、今日から始められる具体的なセルフケアを5つのステップに分けてご紹介します。


ステップ1:現状を把握する「体調日誌」をつけてみる

まず最初に行うべきは、自分の不調を客観的に記録することです。漠然とした「だるさ」や「イライラ」を具体的に可視化することで、原因のヒントが見つかったり、改善の効果を実感しやすくなったりします。

【何を記録するか】

  • 日付と時間
  • その日の体調: 5段階評価(1:最悪~5:最高)など
  • 具体的な症状: (例)午前中に強いイライラ、夕方から無気力、寝つきが悪い
  • その日の出来事: (例)重要な会議があった、上司に叱責された、睡眠時間が5時間だった
  • 食事内容や運動の有無

手帳やスマートフォンのメモアプリで構いません。1〜2週間続けるだけでも、「ストレスが多い週は特に不調だ」「睡眠不足の翌日は決まって気分が落ち込む」といったパターンが見えてきます。これは、後のステップを実践する上での道しるべとなり、もし医療機関を受診する際にも、医師に症状を的確に伝えるための貴重な資料となります。


ステップ2:食事を改善する「テストステロン向上メニュー」

あなたの体は、あなたが食べたもので作られています。テストステロンの分泌を促す食事を意識的に取り入れましょう。

【積極的に摂りたい栄養素】

  • タンパク質: テストステロンの原料。赤身肉、鶏胸肉、魚、卵、大豆製品など。
  • 亜鉛: テストステロンの合成に不可欠。牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類など。
  • ビタミンD: テストステロン値を高める効果が報告されています。鮭やサンマなどの魚、きのこ類、卵黄など。日光を浴びることでも体内で生成されます。
  • 良質な脂質: コレステロールはホルモンの材料。アボカド、ナッツ類、青魚(オメガ3脂肪酸)など。
  • タマネギ・ニンニク・ニラなど: アリシンという成分がテストステロンの維持に役立つと言われています。

【避けるべき食習慣】

  • 過度なアルコール摂取
  • 加工食品やジャンクフード中心の食事
  • 極端なカロリー制限ダイエット

【シナリオ例:多忙なAさんの昼食改善】

(以前のAさん)
「時間がないから、昼はいつもコンビニのカップ麺と菓子パンだな…」

(改善後のAさん)
「同じコンビニでも、今日はサラダチキンとゆで卵、全粒粉のサンドイッチを選んでみよう。タンパク質を意識するだけで、午後の気分の落ち込みが少しマシな気がするぞ。」

小さな選択の積み重ねが、大きな変化に繋がります。


ステップ3:運動を習慣化する「頑張りすぎない」トレーニング

運動はテストステロンを高める最も効果的な方法の一つですが、やり方が重要です。

【推奨される運動】

  1. 筋力トレーニング(週2〜3回):
    特にスクワットデッドリフトベンチプレスなど、大きな筋肉群(脚、背中、胸)をターゲットにしたトレーニングが効果的です。大きな負荷をかけることで、テストステロンの分泌が強力に刺激されます。
  2. 有酸素運動(週2〜3回):
    ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど。ストレス軽減や肥満解消に繋がり、間接的にホルモンバランスを整えます。

【多くの方が見落としがちなポイント】

「テストステロンを増やすぞ!」と意気込んで、毎日ハードなトレーニングをするのは逆効果になることがあります。過度なトレーニング(オーバートレーニング)は、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を促し、かえってテストステロン値を下げてしまう危険性があります。

筋肉の回復と成長には休息が必要です。筋トレは1日おきにするなど、必ず休息日を設け、「心地よい疲労感」で終われる範囲で、継続することを最優先にしましょう。


ステップ4:睡眠を最適化する「質と量」の確保

テストステロンは、主に夜、深い眠り(ノンレム睡眠)の間に最も多く分泌されます。睡眠不足は、テストステロン値を直接的に低下させる致命的な要因です。

【睡眠の質と量を高める工夫】

  • 7〜8時間の睡眠を確保する: まずは目標にしましょう。
  • 就寝・起床時間を一定にする: 体内時計を整え、自然な眠りを誘います。
  • 寝る1〜2時間前はスマホ・PCを見ない: ブルーライトは睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を抑制します。
  • 寝室の環境を整える: 部屋を真っ暗にする、静かな環境を作る、快適な温度・湿度に保つ。
  • 就寝前のカフェイン・アルコールを避ける: アルコールは寝つきを良くするように感じますが、眠りが浅くなり、夜中に目が覚める原因になります。

ステップ5:ストレスと上手に付き合う「リラックス法」を見つける

ストレスはテストステロンの最大の敵です。ストレスをゼロにすることは不可能ですが、上手に受け流し、解消する方法を見つけることが極めて重要です。

【おすすめのストレス解消法】

  • 趣味に没頭する: 音楽を聴く、映画を見る、プラモデルを作るなど、時間を忘れて集中できること。
  • 自然に触れる: 公園を散歩する、森林浴をする、キャンプに行くなど。
  • マインドフルネス・瞑想: 5分間、静かな場所で目を閉じ、自分の呼吸にだけ意識を集中させる。ストレスホルモンを減少させる効果が科学的に証明されています。
  • 親しい人と話す: 信頼できる友人や家族に、ただ話を聞いてもらうだけでも心は軽くなります。

自分に合ったリラックス法をいくつか持っておき、ストレスを感じた時に「今日はこれをしよう」とセルフケアの引き出しを開けられるようにしておきましょう。

パートナーにできること|不調を訴える男性へのサポート方法

男性の不調は、本人だけでなく、最も身近なパートナーにとっても大きな悩みとなり得ます。彼のイライラや無気力な態度に、どう接していいか分からず、関係がギクシャクしてしまうことも少なくありません。しかし、あなたの理解と少しの工夫が、彼の回復を大きく後押しします。

男性にもホルモンの波があることを理解する

まず最も大切なことは、「彼の不調は、あなたへの愛情が冷めたからでも、彼の性格が悪くなったからでもなく、本人にもコントロールが難しいホルモンの仕業かもしれない」と理解することです。

「またイライラしてる」「しっかりしてよ」と感じる前に、「今はホルモンの波で辛い時期なのかもしれない」と一歩引いて考えるだけで、あなたの心にも余裕が生まれます。この理解が、すべてのサポートの土台となります。

関係を悪化させないコミュニケーションのコツとNG行動

彼の不調に寄り添うためには、コミュニケーションの取り方が非常に重要です。

【心がけたいコミュニケーション】

  • まずは聞くことに徹する: 「最近、なんだか辛そうだね。何かあった?」と、心配している気持ちを伝え、彼が話したくなるまで待ちましょう。
  • 共感を示す: 「そうだったんだ、それはしんどいね」「無理もないよ」と、彼の気持ちを肯定的に受け止める言葉をかけます。
  • 具体的なサポートを提案する: 「何か手伝えることはある?」「今日の夕飯は、あなたの好きなものにしようか?」と、具体的な行動で支える姿勢を見せます。

【避けるべきNG行動】

  • 原因を問い詰める: 「なんでそんなにイライラしてるの?」
  • 否定・批判する: 「気のせいでしょ」「そんなことで落ち込まないで」
  • 無理に元気づけようとする: 「もっとポジティブに考えなよ!」
  • 他の男性と比較する: 「〇〇さんの旦那さんはいつも元気なのに」

【シナリオ例:パートナーとの会話】

(NGな会話)
彼女:「ねぇ、最近ずっと不機嫌じゃない?私が何かした?」
彼:「…別に」
彼女:「そういう態度やめてよ!しっかりして!」

(OKな会話)
彼女:「最近、なんだか元気ないみたいだけど、大丈夫?すごく疲れてるように見えるよ」
彼:「…なんか、最近ずっとだるくて、やる気が出ないんだ」
彼女:「そっか、毎日頑張ってるもんね。無理しないでね。何か私にできることある?」

後者のように、非難せず、まずは相手の状態を気遣う一言から始めることで、彼は安心して心を開きやすくなります。

一緒に取り組める生活習慣の改善

「一人で頑張れ」ではなく、「二人で健康になろう」というスタンスは、彼の孤独感を和らげ、モチベーションを高めます。

  • 食事: 「テストステロンに良いらしいから、今夜は牡蠣と牛肉の料理にしてみない?」と提案し、一緒に作る。
  • 運動: 「天気が良いから、週末は一緒にウォーキングに行かない?」と誘う。
  • リラックス: 一緒に映画を見たり、マッサージをし合ったりする時間を作る。

共通の目標を持つことで、二人の絆を深めながら、心身の健康を取り戻していくことができます。

セルフケアで改善しない場合は専門家への相談を

セルフケアは非常に重要ですが、症状が2週間以上続く、悪化する一方だ、あるいは仕事や家庭生活に深刻な支障が出ている場合は、一人で抱え込まずに専門の医療機関を受診することを強くお勧めします。

専門家による適切な診断と治療は、あなたの苦しみを終わらせるための最も確実な近道です。

受診すべき診療科は?泌尿器科・心療内科など

「男の生理」や男性更年期障害(LOH症候群)が疑われる場合、どの診療科を受診すればよいか迷うかもしれません。

  • 泌尿器科 / メンズヘルスクリニック:
    第一選択となる診療科です。男性ホルモンに関する専門家であり、テストステロン値の測定など、専門的な検査や治療(ホルモン補充療法など)を受けることができます。
  • 心療内科 / 精神科:
    イライラ、うつ、不安といった精神症状が特に強い場合に適しています。カウンセリングや、症状に応じた薬(抗うつ薬や抗不安薬など)の処方を通じて、心の負担を和らげます。
  • 内科:
    どの科に行けばいいか全くわからない場合や、かかりつけ医がいる場合は、まず内科で相談してみるのも良いでしょう。症状から適切な専門医を紹介してもらえます。

病院で行われる検査と主な治療法

医療機関では、一般的に以下のような流れで診断と治療が進められます。

  1. 問診・質問票:
    医師があなたの症状や生活習慣について詳しくヒアリングします。LOH症候群のスクリーニングでよく用いられる「AMSスコア」などの質問票に記入することもあります。
  2. 血液検査:
    診断の鍵となるのが血液検査です。血中の「フリーテストステロン(遊離テストステロン)」の値を測定し、基準値よりも低いかどうかを確認します。
  3. 治療法の決定:
    検査結果や症状の重さに基づき、治療方針が決定されます。主な治療法は「テストステロン補充療法(TRT)」です。これは、注射や塗り薬(軟膏)によって、不足しているテストステロンを直接補充する方法で、多くの症状の劇的な改善が期待できます。
    その他、症状に応じて漢方薬やED治療薬、抗うつ薬などが併用されたり、専門家によるカウンセリングが行われたりすることもあります。

「男の生理」に関するよくある質問(Q&A)

ここでは、「男の生理」について多くの方が抱きがちな疑問にお答えします。

Q1. 「男の生理」に決まった周期はありますか?

A. 女性の月経のような、明確な月単位の周期はありません。
テストステロン値は、1日の中でも朝に最も高く、夜にかけて低くなるという「日内変動」があります。それに加え、ストレスの度合い、体調、睡眠の質などによって日々、あるいは週単位、季節単位で変動します。そのため、不調の波が来るタイミングや頻度は人それぞれで、非常に不規則なのが特徴です。

Q2. 何歳くらいから注意が必要ですか?

A. 年齢に関わらず、誰にでも起こりうると考えるべきです。
ストレスや生活習慣の乱れが主な原因となる「イライラ男性症候群(IMS)」は、働き盛りの30代でも十分に起こり得ます。一方で、加齢が大きな要因となる「男性更年期障害(LOH症候群)」は、一般的に40代後半から50代にかけて症状を自覚する方が多くなります。ご自身の年齢に関わらず、この記事で紹介したような症状に心当たりがあれば、注意が必要です。

Q3. 市販のサプリメントは効果がありますか?

A. あくまで補助的なものと考えるべきです。
テストステロンの生成をサポートするとされる亜鉛やビタミンD、あるいはハーブの一種であるテストフェンなどを含むサプリメントは、一部の症状緩和に役立つ可能性はあります。
しかし、その効果には個人差が大きく、医薬品のように確固たる科学的エビデンスが確立されているわけではありません。生活習慣の改善(食事、運動、睡眠)が基本であり、サプリメントはあくまでその補助として捉えるべきです。症状が重い場合は、サプリメントに頼る前に、必ず医療機関を受診してください。

Q4. うつ病との違いは何ですか?

A. 主な原因と、特徴的な症状に違いがあります。
気分の落ち込みや無気力といった症状が共通しているため混同されやすいですが、両者は異なる疾患です。

  • 原因: LOH症候群は「テストステロンの低下」が主因ですが、うつ病は脳内のセロトニンなどの「神経伝達物質の不調」が原因とされています。
  • 症状: LOH症候群は、精神症状に加えて性機能の低下やほてり、筋力低下といった身体症状を伴うことが多いのが特徴です。一方、うつ病では「自分を責める気持ち(自責の念)」が強くなる傾向があります。

ただし、両者の鑑別は専門家でなければ難しく、またLOH症候群とうつ病を合併しているケースも少なくありません。自己判断は非常に危険ですので、必ず専門医による診断を受けるようにしてください。

まとめ|「男の生理」は一人で抱え込まず適切な対処を

「男の生理」と呼ばれる周期的な心身の不調は、決して気のせいでも、性格の問題でもありません。それは、男性の心と体を支える「テストステロン」というホルモンの波によって引き起こされる、医学的に説明可能な現象です。

この記事の要点を振り返ってみましょう。

  • 「男の生理」の正体は、テストステロンの変動による「イライラ男性症候群(IMS)」や、加齢が関わる「男性更年期障害(LOH症候群)」である。
  • 主な原因は、ストレス、加齢、そして睡眠不足や食生活の乱れといった生活習慣にある。
  • 自分でできる対処法として、「食事」「運動」「睡眠」「ストレス管理」の4本柱を見直すことが非常に効果的。
  • パートナーの理解とサポートは、本人の回復を大きく後押しする。非難せず、共感的なコミュニケーションを心がけることが大切。
  • セルフケアで改善しない、症状が辛い場合は、一人で悩まずに泌尿器科や心療内科などの専門医に相談することが解決への近道。

あなたのその不調は、体からの「少し休んで、生活を見直してほしい」というサインなのかもしれません。この記事を参考に、まずはできることから一つ、始めてみてください。そして、どうか一人で抱え込まないでください。あなたの不調を理解し、支えてくれる人や専門家は必ずいます。適切な対処で、健やかでエネルギッシュな毎日を取り戻しましょう。


【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を代替するものではありません。心身の不調に関して具体的な診断や治療を求める場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。

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