いびきの原因と治し方:今日からできるセルフケアと要注意なサイン

いびきは、眠っている間に「ガーガー」「ゴーゴー」と鳴る呼吸音です。多くの人が経験したり、家族にいびきを指摘されたりしたことがあるでしょう。単なる寝相や疲れのせいだと軽く考えがちですが、実は体のSOSサインである場合や、健康に深刻な影響を及ぼす「危険ないびき」である可能性も少なくありません。

本記事では、なぜいびきが起こるのか、そのメカニズムから、考えられる様々な原因、見過ごせない危険ないびきの特徴、そして原因に応じた自宅でできる対策や、医療機関での治療法までを専門家の視点から詳しく解説します。あなたのいびきの原因を知り、適切な対策を講じるための一助となれば幸いです。

目次

いびきとは?音が鳴るメカニズムを理解しよう

いびきは、睡眠中に空気の通り道(上気道)が狭くなることで発生します。上気道とは、鼻の奥から喉にかけての部分です。起きている間は、この上気道が周りの筋肉によってしっかり支えられているため、空気がスムーズに流れます。しかし、眠ると体の筋肉が弛緩し、上気道周りの筋肉も緩みます。これにより、上気道が物理的に狭くなったり、舌の根元(舌根)が喉の奥に落ち込んだりしやすくなります。

狭くなった上気道を空気が無理に通ろうとすると、周囲の粘膜(特に喉の奥にある軟口蓋や口蓋垂など)が振動し、「ガーガー」といった特徴的な音が発生します。これが「いびき」の正体です。

例えるなら、ホースの途中で一部を軽く踏むと、水の流れが速くなり、ホースがブルブルと震えるようなものです。気道という「ホース」が狭くなり、空気という「水」が通過する際に、周囲の「ホースの壁(粘膜)」が振動して音が出る、というイメージです。

誰でも疲れているときや、特定の寝姿勢のときには一時的にいびきをかくことがあります。これは病的なものではなく、「単純いびき」と呼ばれることが多いです。しかし、毎晩のように大きないびきをかいたり、いびきが途中で止まったりする場合は、上気道の狭窄がより重度である可能性があり、注意が必要です。

あなたのいびき、なぜ起こる?考えられる主な原因

いびきの原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていることが少なくありません。ここでは、いびきの主な原因を「構造的な原因」「生活習慣による原因」「その他の原因」に分けて詳しく見ていきましょう。ご自身のいびきに当てはまるものがないか、チェックしてみてください。

構造的な原因

生まれつき、あるいは成長過程で形成された顔や喉の骨格、軟部組織の構造によって、気道が狭くなりやすい場合があります。これは、たとえ痩せていてもいびきをかく人がいる理由の一つです。

鼻が原因の場合(鼻炎、鼻中隔湾曲症など)

鼻は呼吸の最初の通り道です。鼻の通りが悪いと、人は無意識のうちに口呼吸になります。口呼吸になると、舌根が喉の奥に落ち込みやすくなり、気道が狭くなります。また、鼻づまり自体が空気抵抗を増やし、いびきを発生させることもあります。

具体的な鼻の原因としては、以下のようなものがあります。

  • アレルギー性鼻炎・慢性鼻炎: 鼻粘膜の炎症や腫れにより、鼻腔が狭くなり鼻づまりを引き起こします。季節性(花粉症)や通年性(ダニ、ハウスダストなど)があります。
  • 副鼻腔炎(蓄膿症): 副鼻腔に炎症が起こり、鼻づまりや鼻汁が増加します。これも鼻呼吸を妨げ、いびきに繋がります。
  • 鼻中隔湾曲症: 左右の鼻腔を隔てる壁(鼻中隔)が曲がっている状態です。生まれつきや外傷によるものがあり、片側または両側の鼻腔が極端に狭くなることで、慢性的な鼻づまりを引き起こします。
  • 鼻ポリープ(鼻茸): 鼻腔や副鼻腔にできる良性の腫瘍です。これが大きくなると鼻腔を塞ぎ、鼻づまりの原因となります。

これらの鼻の問題がある場合、まず耳鼻咽喉科で適切な治療を受けることが、いびき改善の第一歩となることがあります。

喉(のど)や口の中が原因の場合(扁桃肥大、アデノイド、顎の形状など)

喉や口の中の特定の構造が、気道の物理的な狭窄を引き起こすことがあります。

  • 扁桃腺・アデノイドの肥大: 特に子供にいびきが多い原因の一つです。扁桃腺は喉の奥の左右にあるリンパ組織、アデノイドは鼻の奥の上部にあるリンパ組織です。これらが大きくなると、空気の通り道を塞いでしまい、いびきや無呼吸の原因となります。大人でも慢性的な炎症などで扁桃腺が肥大している場合があります。
  • 舌根沈下: 仰向けに寝た際に、リラックスした舌の根元が重力で喉の奥に落ち込み、気道を塞いでしまう状態です。これは肥満の人に起こりやすいですが、顎が小さい人や筋肉が緩みやすい体質の人にも見られます。
  • 小顎症・下顎後退: 下顎が通常より小さかったり、後方に位置していたりする骨格です。これにより、舌を支えるスペースが狭くなり、舌根が喉に落ち込みやすくなります。
  • 巨大舌: 舌が相対的に大きい場合、気道を圧迫する原因となります。
  • 軟口蓋・口蓋垂の形状: 喉ちんこ(口蓋垂)が長すぎたり、軟口蓋(上あごの奥の柔らかい部分)が厚かったり長かったりすると、睡眠中に振動しやすく、また気道を塞ぎやすくなります。

これらの構造的な問題は、ご自身では気づきにくいため、専門医による診察が必要です。

生活習慣による原因

日々の生活習慣がいびきの発生や悪化に大きく関わっていることがあります。これらの原因は、ご自身の努力や意識で改善できる可能性が高いものです。

肥満によるいびき

いびきの原因として最も一般的かつ重要なものの一つが肥満です。体重が増加すると、首周りや喉の奥にある脂肪組織が増えます。この脂肪が睡眠中に重力によって気道を内側から圧迫し、空気の通り道を狭くします。

特に、首回りの脂肪の厚みは気道の狭窄に直結すると言われています。ウエストサイズやBMI(体格指数)が高い人ほど、いびきをかきやすく、また危険ないびきである睡眠時無呼吸症候群のリスクも高まる傾向があります。

飲酒や喫煙によるいびき

アルコールとタバコは、いびきを悪化させる代表的な要因です。

  • 飲酒: アルコールには筋肉を弛緩させる作用があります。寝る前に飲酒すると、喉や舌の筋肉が緩みやすくなり、舌根沈下や気道の狭窄を引き起こしやすくなります。また、アルコールは鼻粘膜を充血・腫脹させる作用もあり、鼻づまりを悪化させて口呼吸を誘発します。
  • 喫煙: タバコの煙に含まれる有害物質は、喉や鼻の粘膜に慢性の炎症を引き起こします。これにより、粘膜が腫れたり厚くなったりして、気道が狭くなります。また、喫煙者は痰が増えやすいため、これも気道の抵抗を高める原因となります。

疲労やストレスによるいびき

肉体的な疲労や精神的なストレスが溜まっているときも、いびきをかきやすくなることがあります。

  • 疲労: 極度に疲れていると、睡眠が深くなりやすく、全身の筋肉がより強く弛緩する傾向があります。これにより、喉や舌の筋肉も緩みやすくなり、気道が狭まりやすくなります。
  • ストレス: ストレスは自律神経のバランスを乱し、睡眠の質を低下させることがあります。また、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかないことで、睡眠中の筋肉の緊張状態に影響を与え、気道の狭窄を招く可能性も指摘されています。

寝姿勢(仰向け寝)によるいびき

寝姿勢は、いびきの発生に大きく関わります。特に仰向けで寝る姿勢は、舌根が重力で喉の奥に沈み込みやすいため、気道が狭窄しやすくなります。これが、多くの人が仰向けで寝ているときにいびきをかく理由です。横向きやうつ伏せ(推奨はされないが)で寝ると、舌根沈下が起こりにくいため、いびきが軽減されることが多いです。

その他の原因

構造や生活習慣以外にも、いびきに関係する要因があります。

加齢による筋肉の衰え

年齢を重ねると、全身の筋肉量が減少し、筋力も衰えてきます。これは喉や舌の筋肉にも言えることで、加齢によりこれらの筋肉が弛緩しやすくなるため、気道が狭窄しやすくなり、いびきをかきやすくなります。特に、閉経後の女性はホルモンバランスの変化も加わり、いびきが増える傾向があります。

服用している薬の影響

一部の薬には、筋肉を弛緩させる作用や、呼吸を抑制する作用を持つものがあります。

  • 精神安定剤
  • 睡眠薬
  • 一部の抗ヒスタミン薬
  • 筋弛緩剤

これらの薬を服用している場合、通常よりも喉の筋肉が緩みやすくなり、いびきが悪化したり、無呼吸を誘発したりすることがあります。現在服用している薬について心配な場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。

病気が原因の場合

いびきは、直接的・間接的に様々な病気と関連していることがあります。

  • 甲状腺機能低下症: 甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、全身がむくみやすくなり、舌や喉の組織が厚くなることがあります。これが気道を狭窄させ、いびきに繋がる可能性があります。
  • 先端巨大症: 成長ホルモンの過剰分泌により、顔面や手足が肥大する病気です。舌や喉の組織も肥大することがあり、重度のいびきや無呼吸の原因となります。
  • アレルギー疾患: 慢性的なアレルギー反応による鼻や喉の粘膜の腫れがいびきを引き起こすことがあります(前述の鼻炎も含む)。

これらの病気が疑われる場合は、専門医による診察・検査が必要です。

男性に多い原因、女性に多い原因

いびきは一般的に男性に多いとされていますが、これは男女間の体の構造やホルモンの違いが関係しています。

  • 男性: 女性に比べて首回りに脂肪がつきやすく、また喉の軟部組織が比較的緩みやすい傾向があります。さらに、男性ホルモンも上気道の開存性に影響を与える可能性が指摘されています。
  • 女性: 若年女性は、女性ホルモン(特にプロゲステロン)が上気道の筋肉の緊張を保つ働きを助けるため、いびきをかきにくいと言われています。しかし、閉経後に女性ホルモンの分泌が低下すると、喉の筋肉が弛緩しやすくなり、いびきをかくようになる人が増加します。妊娠中の女性も、ホルモンバランスの変化や体重増加、むくみなどにより一時的にいびきをかくことがあります。

このように、いびきの原因は多岐にわたり、一人ひとりで異なります。ご自身のいびきがなぜ起こるのかを考える際には、これらの可能性を考慮することが重要です。

危険ないびきとは?睡眠時無呼吸症候群との関連

いびきの中には、放置すると健康に深刻な影響を及ぼす「危険ないびき」があります。これは主に、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)という病気と関連しています。

危険ないびきのサイン・特徴

単なる大きないびきと危険ないびきを見分けるためのサインをいくつか挙げます。これらのサインが一つでも見られる場合は、専門医に相談することを強く推奨します。

  • いびきの途中で息が止まる、または極端に浅くなる(家族などに指摘される)
  • 大きないびきと静かな呼吸が繰り返される
  • 息が止まった後に、大きな喘ぎ声やむせるような音を伴う
  • 夜中に何度も目が覚める、トイレに行く回数が多い
  • 寝汗をひどくかく
  • 朝起きたときに口が渇いている、頭痛がする
  • 日中に強い眠気を感じる(運転中や会議中など、本来眠るべきでない状況でも眠くなる)
  • 集中力や注意力が低下する
  • 倦怠感がある
  • いらいらしたり、気分の落ち込みが見られたりする

特に、「いびきの途中で息が止まる」という現象は、睡眠時無呼吸症候群の典型的なサインです。ご自身では気づきにくいため、同居する家族やパートナーに指摘されることが多い症状です。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に繰り返し呼吸が止まったり(無呼吸)、極端に浅くなったりする病気です。一般的に、10秒以上の無呼吸または低呼吸(換気量が50%以下になる状態)が、1時間あたり5回以上ある場合にSASと診断されます。

SASの多くは、上気道が物理的に閉塞することで起こる「閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)」です。先述したいびきの原因(肥満、扁桃肥大、顎の形状など)が、睡眠中に上気道を完全に塞いでしまうことで発生します。大きないびきは、この閉塞が起こる直前に、狭くなった気道を空気が無理やり通過する際に発生する音です。そして完全に閉塞すると、呼吸が止まり、いびきも止まります。その後、脳が呼吸の停止を感知して覚醒を促し、呼吸が再開される際に大きな呼吸音や喘ぎ声が出ます。このサイクルが一晩に何十回、何百回と繰り返されるのがOSAの特徴です。

SASには、脳からの呼吸指令が一時的に停止することで起こる「中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSA)」もありますが、いびきを伴うものの多くは閉塞型です。

いびきやSASが引き起こすリスク

単なる一時的ないびきであれば、健康への直接的なリスクは低いと考えられます。しかし、習慣的ないびきや、特に睡眠時無呼吸症候群を伴ういびきは、全身の健康に様々な悪影響を及ぼします。

SASによる無呼吸・低呼吸が繰り返されると、体は睡眠中に酸素不足(低酸素血症)に陥り、覚醒反応が頻繁に起こります。これにより、十分な深い睡眠が得られず、睡眠の質が著しく低下します。また、低酸素状態は血管や心臓に大きな負担をかけます。

SASが引き起こす主なリスクは以下の通りです。

  • 生活習慣病:
    • 高血圧: SASがあると、高血圧になるリスクが2~3倍高まると言われています。また、SASによる高血圧は、通常の降圧剤が効きにくい場合が多いです。
    • 糖尿病: SASはインスリン抵抗性を悪化させ、血糖コントロールを困難にします。
    • 脂質異常症: SASは脂質代謝にも影響を与え、悪玉コレステロールの増加などを招く可能性があります。
  • 心血管疾患:
    • 心筋梗塞: SAS患者さんは心筋梗塞を発症するリスクが高いことが報告されています。
    • 狭心症: 同様に、SASは狭心症のリスクも高めます。
    • 不整脈: SASによる自律神経の乱れや低酸素が、様々な不整脈を引き起こすことがあります。
    • 心不全: 心臓への負担が増えることで、心不全を発症・悪化させるリスクが高まります。
  • 脳血管疾患:
    • 脳卒中(脳梗塞、脳出血): SASは脳卒中の発症リスクも高めることが明らかになっています。
  • 日中の活動への影響:
    • 強い眠気: 日中の耐え難い眠気は、仕事の効率低下や学業不振を招くだけでなく、自動車運転中や機械操作中の事故(居眠り運転など)の危険性を著しく高めます。
    • 集中力・判断力の低下: 認知機能にも影響が出ることがあります。
  • その他:
    • ED(勃起不全): 男性の場合、SASがEDの原因となることがあります。
    • うつ病や不安障害: 睡眠不足や慢性的なストレスが精神的な不調を引き起こす可能性があります。
    • 子供の発育への影響: 子供のSAS(扁桃肥大やアデノイド肥大が主な原因)は、成長障害、集中力不足、多動性などを引き起こす可能性があります。

このように、いびき、特にSASを伴ういびきは、単なる騒音の問題ではなく、全身の健康に関わる深刻な問題です。ご自身やご家族のいびきに危険なサインが見られる場合は、決して軽視せず、早めに専門医に相談することが非常に重要です。

いびきの原因別対策・治し方

いびきの対策や治療法は、その原因によって異なります。まずはご自身のいびきの原因がどこにあるのかを把握することが、効果的な対策を講じるための鍵となります。ここでは、自宅でできるセルフケアから、医療機関で行われる専門的な治療法までをご紹介します。

自宅でできる対策

危険なサインがない単純いびきの場合や、病院を受診する前に試してみたい場合に有効な対策です。ただし、これらの対策だけでSASが完治するわけではないことに注意が必要です。

寝姿勢の工夫(横向き寝など)

仰向け寝は舌根沈下を招きやすいため、横向きで寝ることを習慣づけるのが効果的です。

  • 抱き枕の活用: 体と抱き枕で挟むようにして寝ると、自然と横向き姿勢を維持しやすくなります。
  • 背中にクッションやテニスボールを入れる: パジャマの背中部分にポケットを縫い付け、中にクッションやテニスボールを入れておくと、仰向けになろうとしたときに不快感を感じ、横向きに戻りやすくなります。

ただし、無理な姿勢で寝続けると、体の他の部分(首、肩、腰など)に負担をかける可能性もあるため、自分に合った方法を見つけることが大切です。

適正体重への減量

肥満がいびきの主な原因である場合、減量は最も効果的な対策の一つです。たとえ数キログラムの減量でも、首周りの脂肪が減り、気道が広がることでいびきが大幅に改善することがあります。

  • 具体的な目標設定: BMI25以下を目指すなど、具体的な目標を設定しましょう。
  • 食事の見直し: バランスの取れた食事を心がけ、高カロリー・高脂肪な食事や寝る前の食事を控えます。
  • 運動習慣: ウォーキングや軽いジョギングなど、無理なく続けられる有酸素運動を取り入れます。

減量は簡単ではありませんが、いびきだけでなく全身の健康にも良い影響をもたらします。必要であれば、専門家(医師、管理栄養士など)のサポートを受けることも検討しましょう。

禁酒・禁煙

飲酒や喫煙がいびきを悪化させている場合は、思い切って禁酒・禁煙にチャレンジしましょう。

  • 飲酒: 特に寝る数時間前からの飲酒は避けるようにします。晩酌の量を減らしたり、休肝日を設けたりすることから始めましょう。
  • 喫煙: 禁煙は、いびきだけでなく呼吸器系や心血管系の健康にとって非常に重要です。自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来や禁煙補助薬などを活用することも有効です。

アルコールやタバコの影響は、止めてすぐにいびきが改善するわけではありませんが、続けることで徐々に気道の炎症が治まり、効果を実感できることが多いです。

口呼吸の改善(鼻呼吸への誘導)

口呼吸は舌根沈下を招きやすく、いびきを悪化させます。意識して鼻呼吸をすることが重要です。

  • マウステープ(口閉じテープ): 就寝時に口に貼ることで、口呼吸を物理的に防ぎ、鼻呼吸を促します。ただし、鼻づまりがひどい場合は窒息の危険があるため使用できません。
  • あいうべ体操: 「あー」「いー」「うー」「べー」と口を大きく動かす体操です。舌や口周りの筋肉を鍛え、舌根沈下を防ぐ効果が期待できます。
  • 日中の意識: 普段から口を閉じ、鼻で呼吸することを意識しましょう。

鼻づまりが原因で口呼吸になっている場合は、まず鼻炎などの治療を優先することが大切です。

睡眠環境の整備

快適な睡眠環境を整えることも、いびき軽減に繋がる可能性があります。

  • 適切な枕の選択: 高すぎず低すぎない、首のカーブに合った枕を選ぶことで、気道がまっすぐになりやすくなります。ただし、枕だけでいびきが劇的に改善することは稀です。
  • 寝室の湿度・温度: 乾燥した空気は鼻や喉の粘膜を刺激し、炎症を悪化させる可能性があります。適切な湿度(50~60%程度)を保つことで、粘膜の乾燥を防ぎます。
  • 照明: 寝室を暗くすることで、質の高い睡眠が得られやすくなります。

いびき対策グッズの活用

様々な市販のいびき対策グッズがありますが、その効果は限定的な場合が多く、根本的な原因を解決するものではありません。補助的な手段として活用を検討できます。

  • 鼻腔拡張テープ/クリップ: 鼻の穴を広げ、鼻からの空気の通りを良くすることで、鼻づまりによるいびきに効果がある場合があります。
  • 簡易マウスピース: 睡眠中に下顎を少し前に突き出した状態に保つことで、舌根沈下を防ぎ、気道を広げる効果が期待できます。ただし、歯科医師による専門的なマウスピースとは異なり、調整ができないため効果が不十分であったり、顎関節に負担をかけたりするリスクもあります。
  • いびき防止枕: 特定の寝姿勢(横向きなど)を促すように工夫された形状の枕です。
  • スマートいびきストッパー: いびき音を感知し、振動などで寝返りを促すウェアラブルデバイスなどがあります。

これらのグッズを使用してもいびきが改善しない場合や、危険ないびきのサインが見られる場合は、医療機関への相談を検討すべきです。

専門家による治療法(CPAP、マウスピース、手術など)

特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断された場合、医師の指導のもと、専門的な治療が行われます。原因や重症度に応じて、様々な治療法があります。

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法): SASの最も一般的な治療法です。CPAP装置からチューブとマスクを介して、一定の圧力をかけた空気を鼻または口から送り込むことで、睡眠中に狭くなった気道を広げた状態に保ちます。これにより、無呼吸やいびきを防ぎ、質の高い睡眠と酸素化を維持できます。CPAPは特に中等症~重症のSASに有効で、健康リスクの改善効果も期待できます。
  • OA(口腔内装置:マウスピース): 下顎を前方に突き出すように調整されたマウスピースを就寝時に装着することで、舌根沈下を防ぎ、気道を広げます。主に軽症~中等症のSASに有効ですが、歯並びや顎の状態によっては適応できない場合があります。歯科医師と連携して、患者さん一人ひとりに合ったオーダーメイドのマウスピースを作成します。
  • 手術: いびきやSASの原因となっている構造的な問題(扁桃腺・アデノイド肥大、鼻中隔湾曲症、鼻ポリープ、軟口蓋・口蓋垂の形状など)に対して、手術が検討されることがあります。
    • 扁桃腺・アデノイド切除術: 特に子供のSASの主な原因となっている場合に有効です。
    • UPPP(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術): 軟口蓋や口蓋垂のたるみを取り除く手術です。成人のいびきやSASに対して行われることがありますが、効果には個人差があり、再発することもあります。
    • 顎顔面手術: 下顎や上顎を前方に移動させる手術で、小顎症などが原因で気道が極端に狭い場合に検討されます。SASに対する根治療法となり得ますが、大がかりな手術であり、適応は限られます。
    • 鼻の手術: 鼻中隔湾曲症や鼻ポリープなど、鼻づまりが原因でいびきやSASを悪化させている場合に、鼻の通りを改善する手術が行われます。
  • その他: 減量が必要な場合は減量外来、アレルギー性鼻炎などがあれば投薬治療といったように、根本原因に対する治療も重要です。

どの治療法が適切かは、専門医による精密検査と診断に基づいて決定されます。

いびきで悩んだら病院へ相談しよう

「たかがいびき」と思わずに、少しでも不安を感じる場合は、専門医に相談することをお勧めします。特に、危険ないびきのサインが見られる場合は、放置せずに医療機関を受診することが重要です。

病院を受診すべき目安

以下のような場合は、積極的に医療機関を受診することを検討しましょう。

  • 家族からいびきが不規則で、途中で息が止まっていると指摘された
  • 大きないびきに加え、日中の強い眠気や倦怠感がある
  • 朝起きたときに頭痛や口の渇きが頻繁にある
  • 高血圧、糖尿病、心臓病などの持病がある、またはリスクを指摘されている
  • 肥満があり、いびきもひどくなったと感じる
  • 自宅でできる対策(寝姿勢の工夫、禁酒・禁煙など)を試しても改善しない
  • 小児の場合で、いびきがひどく、口呼吸や寝相の悪さ、日中の集中力低下などがみられる

これらのサインは、睡眠時無呼吸症候群などの病気が隠れている可能性を示唆しています。早期に診断を受け、適切な治療を開始することが、将来的な健康リスクを減らすために非常に重要です。

いびきは何科を受診すれば良い?

いびきの原因は多岐にわたるため、いくつかの診療科が考えられます。

  • 耳鼻咽喉科: 鼻や喉の構造的な問題(扁桃肥大、アデノイド、鼻中隔湾曲症、鼻ポリープなど)がいびきの原因である可能性が高い場合に適しています。いびきや睡眠時無呼吸症候群を専門に診ている耳鼻咽喉科も多くあります。
  • 呼吸器内科: 睡眠時無呼吸症候群の診断と、CPAP療法などの管理を専門的に行います。喫煙による呼吸器疾患なども合併している場合に適しています。
  • 睡眠外来: 睡眠に関する様々な問題(いびき、不眠、むずむず脚症候群など)を専門的に診る外来です。複数の診療科の医師が連携して診療にあたることが多く、いびきの原因が特定しにくい場合や、SASが強く疑われる場合に最適です。

まずはかかりつけ医に相談し、適切な診療科を紹介してもらうのも良い方法です。

病院での検査・治療の流れ

いびきで医療機関を受診した場合、一般的に以下のような流れで診断と治療が進められます。

  1. 問診: 医師が、いびきの状況(音の大きさ、規則性、息が止まるかなど)、日中の症状(眠気、倦怠感、集中力など)、生活習慣(飲酒、喫煙、寝姿勢など)、既往歴、服用中の薬などについて詳しく聞き取ります。
  2. 診察: 鼻や喉の状態を診察し、気道の狭窄を引き起こしそうな構造的な問題がないかを確認します。
  3. 簡易睡眠検査(PSG簡易検査): 睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、自宅で手軽に行える簡易検査を行うことがあります。指にセンサーを付けて血中の酸素飽和度を測定したり、鼻にセンサーを付けて呼吸の状態を記録したりする装置を借り、一晩装着して眠ります。これにより、無呼吸・低呼吸の頻度や低酸素の状態などを大まかに把握できます。
  4. 精密睡眠検査(PSG精密検査): 簡易検査で異常が認められた場合や、より詳細な診断が必要な場合に、医療機関に一泊して行う検査です。脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸、血中酸素飽和度、いびき音、体の動きなど、睡眠中の様々な生体情報を同時に測定します。これにより、睡眠の質、無呼吸・低呼吸の種類と頻度、重症度などを正確に診断することができます。
  5. 診断と治療方針の決定: 精密検査の結果に基づき、睡眠時無呼吸症候群の診断(重症度を含む)が行われます。診断結果と、患者さんのいびきの原因、全身状態、ライフスタイルなどを考慮して、医師が最適な治療方針(CPAP療法、マウスピース、手術、生活習慣改善指導など)を提案します。
  6. 治療の開始と経過観察: 決定した治療を開始します。CPAP療法の場合は、機器の使い方を説明され、定期的に通院してデータの確認や調整を行います。マウスピースの場合は、歯科医師と連携して作成・調整が行われます。治療の効果を確認し、必要に応じて治療法を見直すなど、継続的な経過観察が重要です。

簡易睡眠検査と精密睡眠検査の比較

項目 簡易睡眠検査 (PSG簡易) 精密睡眠検査 (PSG精密)
場所 自宅 医療機関 (入院)
測定項目 呼吸、血中酸素飽和度、いびきなど (限定的) 脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸、酸素、いびきなど (多項目)
診断精度 SASの可能性、おおよその重症度を把握 SASの確定診断、種類、正確な重症度評価
費用 比較的安価 簡易検査より高価 (ただし保険適用)
負担 少ない (自宅で普段通り眠れる) やや大きい (医療機関での宿泊が必要)

簡易検査でSASが疑われた場合でも、確定診断やより適切な治療法を選択するためには、精密検査が必要となるのが一般的です。

【まとめ】いびきの原因を知り、適切に対処しよう

いびきは、睡眠中に上気道が狭くなることで発生する音であり、その原因は肥満、鼻や喉の構造、飲酒、喫煙、寝姿勢など多岐にわたります。一時的ないびきは問題ないことが多いですが、毎晩続く大きないびきや、途中で呼吸が止まるいびきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)という病気のサインである可能性が高く、注意が必要です。

SASを放置すると、高血圧、糖尿病、心臓病、脳卒中などの深刻な病気のリスクを高めるだけでなく、日中の強い眠気による事故にも繋がりかねません。

ご自身のいびきの原因を特定し、生活習慣の改善(減量、禁酒・禁煙、寝姿勢の工夫など)やいびき対策グッズの活用を試みることは有効ですが、これらで改善しない場合や、危険ないびきのサインが見られる場合は、必ず専門医に相談しましょう。

耳鼻咽喉科、呼吸器内科、睡眠外来などで専門的な検査(簡易検査、精密検査)を受けることで、いびきの原因やSASの有無、重症度を正確に診断できます。診断に基づき、CPAP療法、マウスピース、手術など、一人ひとりに合った最適な治療法が提案されます。

いびきは恥ずかしいことではなく、体の不調を示すサインの一つです。原因を知り、適切な対策や治療を講じることで、いびきを改善し、より健康で質の高い睡眠、そして安全な毎日を取り戻すことができます。いびきで悩んだら、まずは専門家への相談を検討しましょう。


【免責事項】
本記事は、いびきの原因や対策に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を保証するものではありません。個別の症状や健康状態については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。本記事の情報に基づいてご自身で判断された結果について、筆者および掲載元は一切の責任を負いかねます。

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