扁桃腺の腫れは、誰でも一度は経験する可能性のある身近な症状です。
風邪の一部として現れることもあれば、扁桃腺自体に強い炎症が起こる「扁桃炎」の場合もあります。
喉の痛みや飲み込むときの辛さに加え、発熱を伴うこともあり、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
原因は様々で、ウイルスや細菌の感染が主なものですが、疲れや乾燥といった要因も影響します。
この記事では、扁桃腺が腫れる原因や具体的な症状、ご自身でできる対処法、そして病院を受診すべき目安や何科に行けば良いのかについて、詳しく解説します。
症状が改善しない、悪化しているといった場合は、我慢せずに医療機関を受診することが大切です。
扁桃腺とは?腫れるとなぜ痛むのか
扁桃腺は、喉の奥にあるリンパ組織の集まりです。正式には「扁桃」と呼ばれ、口を開けて見える左右の「口蓋扁桃」のほか、鼻の奥にある「アデノイド(咽頭扁桃)」、舌の付け根にある「舌根扁桃」など、いくつか種類があります。
これらの扁桃は、体内に侵入しようとするウイルスや細菌などの病原体を最初に食い止める、免疫機能の最前線の役割を担っています。
特に、幼少期には免疫機能が発達段階にあるため、扁桃が大きく、活発に働く傾向があります。
扁桃腺が腫れるのは、この免疫機能が働いている証拠です。
病原体が扁桃に付着すると、扁桃の組織内で免疫細胞が病原体と戦い、炎症が起こります。
この炎症によって扁桃腺が赤く腫れ上がり、痛みを伴うようになります。
痛みは、炎症によって神経が刺激されることや、腫れた扁桃腺が周囲の組織を圧迫することによって生じます。
特に物を飲み込む際には、扁桃腺が刺激されるため強い痛みを感じやすくなります。
扁桃腺が腫れる主な原因
扁桃腺が腫れる原因の多くは、病原体の感染によるものです。しかし、それ以外の要因も腫れを引き起こしたり、悪化させたりすることがあります。
ウイルス感染によるもの
扁桃腺の腫れを引き起こす最も一般的な原因は、ウイルス感染です。
原因となるウイルスは非常に多く、代表的なものには以下のようなものがあります。
- ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなど: 一般的な風邪の原因となるウイルス。扁桃腺の腫れは、風邪の症状の一つとして現れることが多いです。
- インフルエンザウイルス: インフルエンザにかかった際に、喉の痛みや扁桃腺の腫れが見られることがあります。
- EBウイルス: 伝染性単核球症の原因となるウイルスです。特に若年者に多く見られ、扁桃腺の強い腫れ、高熱、首のリンパ節の腫れといった症状が特徴です。
ウイルス感染による扁桃炎の場合、通常は対症療法(症状を和らげる治療)が中心となります。
十分な休息や水分補給で自然に回復することが多いです。
細菌感染によるもの
ウイルス感染に次いで多い原因が細菌感染です。
特に注意が必要な細菌として、「溶連菌(A群β溶血性レンサ球菌)」があります。
- 溶連菌: 溶連菌による扁桃炎は、高熱、強い喉の痛み、扁桃腺に付着する白い膿(膿栓)、首のリンパ節の腫れといった症状が特徴的です。子供に多く見られますが、大人も感染します。溶連菌感染症は、放っておくと腎炎やリウマチ熱などの合併症を引き起こす可能性があるため、医療機関での診断と適切な抗生物質による治療が必要です。
細菌感染による扁桃炎の場合、多くは抗生物質を服用することで症状が改善に向かいます。
医師の指示通り、処方された抗生物質は必ず最後まで飲み切ることが重要です。
風邪との関係性
「扁桃腺が腫れた」という時、それは「風邪をひいて喉が痛い」という状況を指していることも多いです。
風邪はウイルスの感染によって引き起こされる上気道(鼻や喉)の炎症であり、扁桃腺はその炎症が起こりやすい場所の一つです。
風邪の初期症状として扁桃腺が腫れ、喉の痛みが現れることもあれば、風邪によって免疫力が低下したところに、二次的に細菌感染が起こり、扁桃炎を発症することもあります。
つまり、扁桃腺の腫れは風邪の症状の一つであることも、風邪とは区別される扁桃炎であることもあります。
疲れやストレス、乾燥などの誘因
ウイルスや細菌の感染が主な原因ですが、以下のような要因が扁桃腺の腫れを誘発したり、悪化させたりすることがあります。
- 過労・睡眠不足: 体の免疫力が低下し、感染しやすくなります。
- ストレス: ストレスも免疫機能に影響を与える可能性があります。
- 空気の乾燥: 喉や扁桃腺の粘膜が乾燥すると、バリア機能が低下し、ウイルスや細菌が付着しやすくなります。冬場の乾燥や、エアコンの使用時には注意が必要です。
- 喫煙: 喫煙は喉や扁桃腺に直接刺激を与え、炎症を起こしやすくします。また、免疫機能も低下させます。
- アレルギー: アレルギー反応によって喉の粘膜が炎症を起こし、扁桃腺が腫れたように感じることがあります。
これらの誘因は、直接的な原因ではなくても、感染リスクを高めたり、症状を長引かせたりする可能性があるため、日頃から注意が必要です。
扁桃腺の腫れに伴う主な症状
扁桃腺が腫れたときに現れる症状は様々です。
原因や個人の免疫力によって、症状の程度や種類が異なります。
喉の痛みや違和感
扁桃腺の腫れの最も一般的な症状は、喉の痛みです。
初期は軽い違和感やイガイガする感じから始まり、炎症が進むにつれて飲み込むときに強い痛みを感じるようになります。
痛みが強くなると、食事や水分をとるのも辛くなることがあります。
痛みが耳のほうに広がることもあります(放散痛)。
発熱(高熱の場合も)
扁桃腺が炎症を起こすと、発熱を伴うことがよくあります。
微熱の場合もあれば、38℃以上の高熱が出ることもあります。
特に細菌性の扁桃炎や、伝染性単核球症などのウイルス性疾患では、急激な高熱が出やすい傾向があります。
発熱に伴って、寒気や関節の痛み、全身のだるさを感じることもあります。
扁桃腺の見た目の変化(赤み、白い付着物)
口を開けて鏡で見ると、扁桃腺が通常より赤く腫れ上がっているのが確認できます。
炎症が強い場合は、扁桃腺の表面に白い点々や膜のようなものが付着していることがあります。
これは「膿栓(のうせん)」や「白苔(はくたい)」と呼ばれるもので、細菌感染の兆候である場合が多いです。
熱がない扁桃腺の腫れについて
「扁桃腺は腫れているけど熱はない」というケースもあります。
熱がないからといって軽く見てはいけない場合もあれば、それほど心配いらない場合もあります。
熱がない扁桃腺の腫れの可能性:
- ウイルス感染の初期または軽症: ウイルス性扁桃炎でも、症状が軽い場合は熱が出ないことがあります。
- 疲れや乾燥による一時的な炎症: 病原体による感染ではなく、物理的な刺激や体の不調による炎症で腫れている場合。
- 慢性扁桃炎: 普段から扁桃腺が腫れ気味であったり、炎症を繰り返している場合。
- アレルギー: アレルギー反応で喉が炎症を起こし、腫れたように感じることがあります。
- 特定の細菌感染の軽症: 一部の細菌感染でも、免疫力が高ければ熱が出ないこともあります。
熱がない場合でも、痛みが強い、飲み込みにくい、症状が長引く、リンパ節が腫れるといった症状がある場合は、医療機関を受診して原因を調べることが大切です。
特に細菌感染が見過ごされると、症状が悪化したり、合併症を引き起こしたりするリスクがあります。
扁桃腺の腫れはどこで確認できる?
扁桃腺の腫れをご自身で確認するには、まず口を大きく開けて鏡を見ます。
喉の奥の両脇にある、アーモンドのような形をしたピンク色の部分が「口蓋扁桃」です。
これが一般的に「扁桃腺」と呼ばれている部分です。
確認のポイント:
- 色: 通常は周りの粘膜と同じようなピンク色ですが、炎症があると赤く腫れ上がります。
- 大きさ: 通常より大きく腫れているか確認します。
- 表面: 白い点々(膿栓)や白い膜(白苔)が付着していないか確認します。
- 左右差: 片側だけ腫れているか、両方腫れているか確認します。片側だけの強い腫れや痛みは、扁桃周囲膿瘍などの可能性も示唆するため注意が必要です。
ただし、喉の奥にある咽頭扁桃(アデノイド)や舌根扁桃は、鏡では簡単に見ることができません。
これらの扁桃が腫れている場合は、医師が専用の器具(咽頭鏡など)を使って観察する必要があります。
ご自身での確認はあくまで目安とし、正確な診断は医療機関で行うことが重要です。
扁桃腺の腫れの対処法・治し方
扁桃腺の腫れの対処法は、原因や症状の程度によって異なります。
ご自身でできるセルフケアもあれば、医療機関での治療が必要な場合もあります。
自宅でできるセルフケア
症状が比較的軽い場合や、病院に行くまでの応急処置として、自宅でできるセルフケアはいくつかあります。
- 安静にする: 体力を消耗すると免疫力が低下します。十分な睡眠をとり、無理をしないことが大切です。
- 水分・栄養補給: 喉が痛むと食事や水分を摂るのが億劫になりますが、脱水症状を防ぎ、体力を維持するために、こまめな水分補給が必要です。刺激の少ない、喉越しの良いもの(お粥、スープ、プリン、ゼリー、冷たい飲み物など)を選びましょう。
- うがい: 喉を清潔に保つために、こまめにうがいをしましょう。水やお茶でも構いませんが、うがい薬(アズレン系など)を使うと炎症を抑える効果も期待できます。
- 喉飴やトローチ: 唾液の分泌を促し、喉の乾燥を防いだり、痛みを和らげたりする効果があります。殺菌成分が含まれたトローチもあります。
- 加湿: 空気が乾燥していると喉の粘膜が乾燥しやすくなります。加湿器を使ったり、濡れタオルを干したりして、部屋の湿度を適切に保ちましょう。
- 禁煙: 喫煙は喉に負担をかけるため、症状が悪化する可能性があります。禁煙を心がけましょう。
- 刺激物を避ける: 熱すぎるもの、冷たすぎるもの、辛いもの、酸っぱいものなど、喉に刺激を与える飲食物は避けましょう。
市販薬での対処法
薬局やドラッグストアで購入できる市販薬も、扁桃腺の腫れに伴う症状を和らげるのに役立ちます。
- 解熱鎮痛剤: 喉の痛みや発熱に対して使用します。アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの成分を含むものがあります。用法・用量を守って使用してください。
- トローチ・ドロップ: 殺菌成分や抗炎症成分、局所麻酔成分などが含まれているものがあり、喉の痛みや腫れを和らげます。
- うがい薬: 喉の殺菌や消毒に使います。ただし、うがい薬だけで炎症の根本的な原因を取り除くことはできません。
市販薬を使用しても症状が改善しない場合や、症状が悪化する場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
病院での治療法(抗生物質など)
医療機関では、診察によって扁桃腺の腫れの原因を特定し、適切な治療が行われます。
- 問診・視診: いつから症状が出たか、どんな症状かなどを詳しく聞き、口の中を観察します。
- 検査: 必要に応じて、溶連菌迅速検査やインフルエンザウイルス検査、血液検査などが行われます。
- 薬物療法:
- 抗生物質: 細菌感染(特に溶連菌)が原因の場合に処方されます。抗生物質はウイルスには効果がありません。医師の指示通り、処方された分は必ず飲み切ることが重要です。症状が改善しても途中でやめると、菌が完全に死滅せず再発したり、耐性菌ができたりするリスクがあります。
- 消炎鎮痛剤: 喉の痛みや腫れ、発熱を抑えるために処方されます。
- うがい薬: 医療用のうがい薬が処方されることもあります。
- ステロイド: 炎症が非常に強い場合や、腫れがひどく食事が摂れないような場合に、短期間処方されることがあります。
- 切開・排膿: 扁桃周囲膿瘍(扁桃の周りに膿が溜まる状態)になった場合は、膿を出すために切開が必要になることがあります。
- 入院: 症状が重く、経口摂取が困難な場合や、脱水症状が見られる場合、重篤な合併症のリスクがある場合などは、入院して点滴治療などが行われることがあります。
- 手術: 慢性的に扁桃炎を繰り返す場合や、扁桃腺が非常に大きく睡眠時無呼吸症候群の原因になっている場合などは、扁桃腺を摘出する手術が検討されることもあります。
扁桃腺炎は自然に治るのか
扁桃炎が自然に治るかどうかは、その原因によります。
- ウイルス性扁桃炎: ウイルスに対する特効薬はないため、体の免疫力でウイルスを排除するのを待ちます。したがって、安静や水分補給といった対症療法を行いながら、自然に回復するのを待つ形になります。通常は数日から1週間程度で改善します。
- 細菌性扁桃炎: 細菌感染が原因の場合、特に溶連菌などでは、抗生物質による治療が不可欠です。抗生物質を使わなくても軽快する場合もありますが、症状が長引いたり、重症化したり、リウマチ熱や腎炎などの合併症を引き起こすリスクがあるため、自己判断で放置せず、医療機関を受診して適切な治療を受けることが強く推奨されます。
症状が辛い場合や、数日経っても改善しない、悪化するといった場合は、原因を特定し、適切な治療を受けるために必ず医療機関を受診しましょう。
扁桃腺の腫れは何日で治る?
扁桃腺の腫れが改善するまでの期間は、原因となった病原体、症状の重さ、個人の免疫力、受けた治療などによって大きく異なります。
一般的な目安は以下の通りです。
ウイルス性の場合の回復期間
一般的なウイルス性扁桃炎の場合、発症から症状のピークは2〜3日目で、その後徐々に回復に向かうことが多いです。
通常、数日〜1週間程度で症状は軽快します。
熱は2〜3日で下がり、喉の痛みも徐々に和らいでいきます。
ただし、完全に痛みがなくなるまでには、さらに数日かかることもあります。
細菌性の場合の回復期間
細菌性扁桃炎、特に溶連菌によるものの場合は、抗生物質による治療を開始すると、比較的早く効果が見られることが多いです。
抗生物質を飲み始めてから24時間以内に解熱し、症状が改善に向かうことが一般的です。
しかし、治療期間は通常10日間程度必要であり、医師から指示された期間は抗生物質を飲み続ける必要があります。
完治までには1週間〜10日程度かかることが多いでしょう。
慢性化した場合
扁桃炎を年に何度も繰り返す場合や、炎症が完全に治まらずに微熱や喉の違和感が続く場合は、「慢性扁桃炎」と呼ばれます。
この場合、症状が長引いたり、症状がない時期と再燃する時期を繰り返したりします。
自然に短期間で完全に治ることは少なく、体調によって症状が出やすくなります。
根本的な解決のためには、生活習慣の改善や、場合によっては手術が検討されることもあります。
症状が長引く場合(1週間以上経っても改善しない、むしろ悪化しているなど)は、他の病気の可能性も考えられるため、再度医療機関を受診することが重要です。
扁桃腺の腫れは人にうつる?感染経路について
扁桃腺の腫れの原因がウイルスや細菌の感染である場合、当然ながら他の人にうつる可能性があります。
感染経路は、原因となる病原体によって異なりますが、主に飛沫感染と接触感染です。
飛沫感染・接触感染が主な経路
扁桃炎の原因となるウイルスや細菌は、感染者の咳やくしゃみ、会話などによって、空気中に飛び散る小さな飛沫(しぶき)に含まれています。
この飛沫を周囲の人が吸い込むことで感染するのが飛沫感染です。
また、感染者が咳やくしゃみを手で覆った後に、その手でドアノブや共有物に触れ、それを別の人が触り、さらにその手で自分の口や鼻に触れることによって感染するのが接触感染です。
風邪のウイルスや溶連菌なども、これらの経路で広がります。
したがって、扁桃腺が腫れている(特に感染が疑われる場合)ときは、他の人にうさないように配慮することが大切です。
感染を広げないための対策:
- 咳エチケット(マスクを着用する、咳やくしゃみをする際は口や鼻をティッシュやハンカチ、上着の内側で覆う)
- 手洗い、うがい
- タオルの共用を避ける
性行為との関連性は?
扁桃腺の腫れと性行為には、直接的な関連がないことがほとんどです。
しかし、一部の性感染症が原因で、扁桃腺を含む咽頭に炎症(咽頭炎)を引き起こし、腫れや痛みの症状が出ることがあります。
- 淋病(淋菌感染症): オーラルセックスによって咽頭に淋菌が感染し、「淋菌性咽頭炎」を引き起こすことがあります。症状がないことも多いですが、喉の痛みや腫れ、扁桃腺の赤みなどが見られることがあります。
- クラミジア感染症: クラミジアもオーラルセックスによって咽頭に感染することがあります。「クラミジア性咽頭炎」も多くは無症状ですが、軽い喉の痛みや違和感が出ることがあります。
- 梅毒: 梅毒の初期症状として、感染部位にしこり(硬結)ができることがありますが、オーラルセックスによる感染で、口の中や咽頭、扁桃腺に硬結ができることがあります。
これらの性感染症による咽頭炎は、一般的な風邪や扁桃炎と区別がつきにくい場合があり、見過ごされることもあります。
もし、感染の可能性がある行動があり、扁桃腺の腫れや喉の痛みがある場合は、念のため医療機関に相談してみることも検討しましょう。
ただし、扁桃腺の腫れの大多数は、性感染症とは無関係な一般的な感染症やその他の原因によるものです。
過度に心配する必要はありませんが、可能性がある場合は医師に正確な情報を提供することが診断の助けになります。
扁桃腺が腫れやすい人の特徴
「自分は扁桃腺がよく腫れる体質だ」と感じる人もいるかもしれません。
扁桃腺が腫れやすい人には、いくつかの特徴や背景があります。
- 体質・遺伝: 扁桃腺が大きい人や、もともと免疫機能のバランスが偏っている人など、体質的に扁桃腺が炎症を起こしやすい人がいます。
- 慢性扁桃炎: 扁桃炎を年に3〜4回以上繰り返す状態を「慢性扁桃炎」と呼びます。この状態になると、扁桃腺に常に軽い炎症があったり、少しのきっかけで炎症が再燃しやすくなったりします。
- 免疫力の低下: 過労、睡眠不足、栄養不足、ストレス、風邪などで体力が落ちているときは、病原体に対する抵抗力が弱まり、感染しやすくなります。
- アレルギー: アレルギー体質で、鼻炎や喘息などがある人は、喉の粘膜も過敏になっていることがあり、炎症を起こしやすい傾向があります。
- 生活環境: 空気が乾燥している環境、埃っぽい環境、喫煙する人は、喉への刺激が多く、扁桃腺が炎症を起こしやすくなります。
- 口呼吸: 口呼吸をしていると、直接冷たい乾燥した空気が喉に当たるため、扁桃腺が乾燥しやすく、炎症を起こしやすくなります。
慢性扁桃炎とは
慢性扁桃炎は、急性扁桃炎を繰り返したり、扁桃腺に常に慢性的な炎症があったりする状態です。
年に数回、高熱や強い喉の痛みといった急性症状を繰り返すタイプや、症状は軽いものの、微熱や喉の違和感、倦怠感などが続くタイプがあります。
慢性扁桃炎の場合、扁桃腺の表面や内部に常に細菌が潜んでいることがあり、体調が悪くなると菌が増殖して炎症を引き起こします。
また、扁桃腺が「病巣感染」の原因となることがあります。
これは、扁桃腺の慢性的な炎症が原因で、扁桃から細菌やその毒素が全身に広がり、離れた臓器(腎臓、関節、皮膚など)に病気(腎炎、掌蹠膿疱症、IgA血管炎など)を引き起こす状態です。
扁桃炎を繰り返す、症状が長引くといった場合は、慢性扁桃炎の可能性を考え、耳鼻咽喉科で相談することをお勧めします。
場合によっては、扁桃腺摘出術が検討されることもあります。
扁桃腺の腫れ、病院に行く目安と受診すべき科
扁桃腺の腫れで病院を受診するかどうか迷うことがあるかもしれません。
多くの場合、軽症であれば数日で自然に改善しますが、症状が重い場合や長引く場合は、医療機関での診察が必要です。
こんな症状が出たら受診を検討
以下のような症状が見られる場合は、医療機関を受診することを強くお勧めします。
【すぐに受診を検討すべき症状】
- 38℃以上の高熱が続く
- 喉の痛みが非常に強く、水や唾液を飲み込むのも辛い
- 食事が全く摂れない
- 呼吸が苦しい、話しにくい
- 首のリンパ節が大きく腫れて痛む
- 口が開けにくい(開口障害)
- 声が出にくい、こもったような声になる
- 体の片側だけが特に痛い・腫れている
【数日様子を見ても改善しない・悪化する場合】
- 市販薬を使っても症状が改善しない
- 発症から2〜3日経っても症状が改善しない、むしろ悪化している
- 症状が1週間以上長引いている
- 熱がない扁桃腺の腫れでも、痛みが強い、飲み込みにくいなどの症状がある
これらの症状は、単なる風邪ではなく、細菌性の扁桃炎や扁桃周囲膿瘍といった、より専門的な治療が必要な病気である可能性があります。
重症化のリスクについて
扁桃腺炎を放置したり、適切な治療を受けなかったりすると、以下のような重症化や合併症を引き起こすリスクがあります。
- 扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍: 扁桃腺の周りの組織に炎症が広がり、膿が溜まる状態です。強い喉の痛み、開口障害、嚥下困難、耳への放散痛などが特徴で、切開して膿を出す処置が必要になることがあります。
- 咽後膿瘍: 喉の奥の空間に膿が溜まる状態で、特に小児に多いですが、呼吸困難を引き起こす可能性があり危険です。
- レミエール症候群: 扁桃周囲の血管に感染が広がり、血栓ができ、肺などに菌が運ばれて重篤な状態になることがあります。
- 病巣感染: 慢性扁桃炎が原因で、離れた臓器に二次的な病気を引き起こすことがあります(腎炎、関節炎、皮膚病など)。
- 溶連菌感染後の合併症: 特に溶連菌による扁桃炎の場合、適切な治療を受けないと、急性糸球体腎炎(腎臓の病気)やリウマチ熱(心臓や関節などに影響する病気)といった合併症を起こす可能性があります。
これらの合併症は、適切なタイミングで治療を受ければ予防できるものが多いです。
自己判断で放置せず、症状が辛い場合は必ず医療機関を受診しましょう。
何科を受診すれば良い?
扁桃腺の腫れや喉の痛みの症状がある場合、最初に受診すべきは耳鼻咽喉科です。
耳鼻咽喉科は、耳・鼻・喉の専門家であり、扁桃腺の状態を詳しく観察し、正確な診断を下すことができます。
必要に応じて、喉の奥を観察する内視鏡(ファイバースコープ)を使ったり、溶連菌検査などの専門的な検査を行ったりすることも可能です。
もし、近くに耳鼻咽喉科がない場合や、全身の症状(高熱、だるさなど)が強い場合は、内科を受診しても構いません。
内科でも扁桃腺の状態を診察し、一般的な感染症として必要な検査や治療(抗生物質や解熱鎮痛剤の処方など)を受けることができます。
ただし、より詳しい検査や専門的な処置が必要な場合は、耳鼻咽喉科への紹介となることがあります。
いずれにしても、症状が辛い場合は我慢せず、お近くの医療機関を受診してください。
まとめ:扁桃腺の腫れで困ったら早めに医療機関へ
扁桃腺の腫れは、風邪の一部として起こることもあれば、扁桃炎として扁桃腺自体に強い炎症が起こることもあります。
主な原因はウイルスや細菌の感染ですが、疲れや乾燥なども影響します。
症状としては、喉の痛みや飲み込みにくさ、発熱が一般的ですが、熱がない場合もあります。
ご自身でできるセルフケアとして、安静、水分補給、うがい、加湿などがありますが、症状が改善しない場合や、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが非常に重要です。
受診を検討すべき症状 |
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38℃以上の高熱が続く |
喉の痛みが強く、水や唾液を飲み込むのも辛い |
食事が全く摂れない |
呼吸が苦しい、話しにくい |
首のリンパ節が大きく腫れて痛む |
口が開けにくい、声がこもる |
症状が数日経っても改善しない、悪化している |
症状が1週間以上長引いている |
扁桃腺の腫れは、多くの場合、適切な治療によって数日から1週間程度で改善します。
特に細菌性の場合は抗生物質による治療が必要であり、自己判断で放置すると重症化したり、腎炎やリウマチ熱などの合併症を引き起こしたりするリスクがあります。
扁桃腺の腫れや喉の痛みの専門家は耳鼻咽喉科ですが、内科でも診察を受けることは可能です。
症状が辛い時や、いつもと違うと感じた時は、迷わず医療機関を受診し、医師の診断に基づいて適切な治療を受けてください。
日頃から体調管理を心がけ、疲れや乾燥に注意することも、扁桃腺の炎症予防につながります。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療法を推奨するものではありません。ご自身の症状については、必ず医療機関で医師の診断を受けてください。