鼻茸(鼻ポリープ)で悩むあなたへ|知っておきたい原因・症状・治し方

鼻の奥に何かできているような感覚、あるいは頑固な鼻づまりや嗅覚の異常に悩まされていませんか?もしかしたら、それは「鼻茸(はなたけ)」かもしれません。鼻茸は、鼻腔や副鼻腔の粘膜が炎症によって腫れ、きのこのようにぶら下がった状態になる良性のポリープです。多くの人が経験する可能性のある鼻のトラブルですが、放置すると症状が悪化し、日常生活に大きな影響を与えることもあります。
この記事では、鼻茸の原因、具体的な症状、そして適切な診断と治療法について、分かりやすく解説します。ご自身の症状に当てはまるかもしれないと感じたら、ぜひ最後までお読みいただき、専門医への相談を検討するきっかけにしてください。

鼻茸の定義と形成される場所

鼻茸(はなたけ、英名: Nasal Polyp)とは、鼻腔(鼻の穴の奥の空間)や副鼻腔(鼻腔の周りにある骨の空洞)の粘膜が、慢性的な炎症によってむくみ、きのこやぶどうの房のような形になって垂れ下がったものの総称です。一般的には「鼻ポリープ」とも呼ばれます。

鼻茸は主に鼻腔の奥、特に中鼻道と呼ばれる場所にできやすい傾向があります。炎症が長期間続くことで粘膜の血管や組織液が増加し、重力によって下垂することで形成されます。大きさは数ミリ程度の小さなものから、鼻腔を完全に塞いでしまうほど大きくなるものまで様々です。両方の鼻にできることや、複数個できることも珍しくありません。

鼻茸は基本的に良性の腫瘍であり、がんではありません。しかし、放置すると徐々に大きくなり、鼻の機能に様々な障害を引き起こします。また、稀に悪性の腫瘍と見分けがつきにくい場合もあるため、専門医による正確な診断が非常に重要です。

鼻茸ができる主な原因

鼻茸ができる主な原因は、鼻腔や副鼻腔における慢性的な炎症です。この炎症は、様々な要因によって引き起こされます。

最も一般的な原因の一つは、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)です。副鼻腔に細菌やウイルス、真菌などが感染し、炎症が長期間続くことで、副鼻腔の粘膜が腫れて鼻茸が形成されやすくなります。特に、最近注目されているのは好酸球性副鼻腔炎という病気です。これは、アレルギー反応などに関わる「好酸球」という白血球が副鼻腔の粘膜に大量に集まることで起こる、難治性の副鼻腔炎です。好酸球性副鼻腔炎には高率に鼻茸を合併し、治療が難しいケースが多いことが知られています。

その他にも、以下のような要因が鼻茸の形成に関与すると考えられています。

  • アレルギー性鼻炎: 鼻のアレルギー反応による慢性的な炎症が、鼻茸の発生リスクを高めることがあります。特に、通年性アレルギー性鼻炎など、年間を通じて症状がある場合に注意が必要です。
  • 喘息: 喘息と鼻茸は合併することが多く、特にアスピリン喘息(アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬で喘息発作が誘発されるタイプ)の患者さんでは、高率に鼻茸が発生し、難治化しやすい傾向があります。これは、アレルギーや炎症に関わる共通のメカニズムが背景にあると考えられています。
  • 喫煙: 喫煙は鼻腔や副鼻腔の粘膜に慢性的な刺激を与え、炎症を悪化させるため、鼻茸のリスクを高める可能性があります。
  • 遺伝的要因: 一部の研究では、鼻茸の発生に遺伝的な要素が関与している可能性も示唆されています。

これらの要因が単独または複合的に作用し、鼻粘膜の慢性的な炎症が引き起こされ、最終的に鼻茸の形成につながると考えられています。特に、原因がはっきりしないまま鼻炎症状が長引いている場合は、鼻茸ができている可能性を考慮する必要があります。

鼻茸による主な症状(鼻づまり、嗅覚障害など)

鼻茸が形成されても、初期の小さなうちは自覚症状がないことも少なくありません。しかし、鼻茸が徐々に大きくなったり、数が増えたりすると、様々な症状が現れます。最も代表的な症状は以下の通りです。

  • 鼻閉(鼻づまり): 鼻茸が鼻腔の空気の通り道を塞ぐことで起こります。片側だけの場合もあれば、両側にできると完全に鼻が詰まってしまうこともあります。特に寝ている間に口呼吸になったり、集中力が低下したりと、日常生活に大きな影響を与えます。風邪でもないのに長期間鼻づまりが続く場合は、鼻茸を疑うサインの一つです。
  • 嗅覚障害: 鼻茸が鼻腔の天井付近にある嗅細胞の存在する領域を圧迫したり、空気の流れを妨げたりすることで起こります。食べ物の匂いがしない、香りが分からないなど、生活の質が著しく低下します。嗅覚障害は鼻茸の重要な症状の一つであり、治療の目標となることも多いです。
  • 鼻汁(鼻水)/後鼻漏: 炎症の結果として、粘液が増加し、鼻汁が出やすくなります。鼻茸が大きいと鼻汁の排出が滞り、粘り気の強い鼻水が出たり、喉の奥に流れ落ちる後鼻漏(こうびろう)を感じたりすることがあります。
  • 顔面の圧迫感や痛み: 副鼻腔にまで広がった鼻茸や、それに伴う副鼻腔炎が原因で、頬、額、目の周りなどに圧迫感や痛みを感じることがあります。頭痛を伴うこともあります。
  • 声の変化: 鼻腔が詰まることで、鼻にかかったような話し方(鼻声)になることがあります。
  • いびき: 鼻づまりがひどくなると、いびきをかくようになったり、ひどくなると睡眠時無呼吸症候群の原因になったりすることもあります。

これらの症状は、風邪やアレルギー性鼻炎などの他の鼻の病気と似ているため、自己判断は難しい場合があります。特に、市販薬を使っても改善しない、症状が長期間続くといった場合は、鼻茸ができている可能性を考え、耳鼻咽喉科を受診することが大切です。早期に発見し、適切な治療を受けることで、症状の改善が期待できます。

目次

鼻茸の診断方法

鼻茸が疑われる症状がある場合、耳鼻咽喉科ではいくつかの検査を行って診断を確定します。

どのような検査で診断する?

鼻茸の診断は、主に以下の方法を組み合わせて行われます。

  1. 問診:
    まず、いつ頃からどのような症状があるのか(鼻づまりの程度、嗅覚の状態、鼻水の性状、顔面の痛みなど)、アレルギーの既往や喘息の有無、これまでの鼻の病歴や治療歴、喫煙習慣などについて詳しくお伺いします。
  2. 鼻鏡検査:
    外来の診察室で行われる最も基本的な検査です。鼻の入り口から専用の器具(鼻鏡)を使って鼻腔の内部を直接観察します。大きな鼻茸であれば、この検査で確認できることがあります。
  3. 内視鏡検査(鼻咽腔スコープ検査):
    細くしなやかなファイバースコープ(内視鏡)を鼻の穴から挿入し、鼻腔の奥や鼻咽腔(鼻の奥と喉の境目)を詳細に観察する検査です。小さな鼻茸や、鼻鏡では見えにくい場所にある鼻茸、副鼻腔の開口部の状態などを直接確認できます。通常、局所麻酔のスプレーを使用して検査を行いますので、痛みはほとんどありません。粘膜の状態や炎症の程度も観察できます。
  4. 画像検査(CTスキャン):
    CTスキャンは、鼻茸の診断において非常に重要な検査です。レントゲンとは異なり、鼻腔や副鼻腔の内部構造を輪切りにした画像として詳細に映し出すことができます。
    • 鼻茸の大きさや数、広がり(鼻腔だけでなく、どの副鼻腔にまで広がっているか)を正確に把握できます。
    • 副鼻腔炎の有無や程度、副鼻腔の換気の状態などを評価できます。
    • 骨の形態異常や、他の病気(稀ではありますが、悪性腫瘍など)との鑑別にも役立ちます。
    • 手術が必要な場合の、手術計画を立てる上で不可欠な情報を提供します。

    X線被ばくはありますが、診断に必要な情報が多いため、多くのケースで実施されます。

  5. その他の検査:
    必要に応じて、以下のような検査が行われることもあります。
    • アレルギー検査: アレルギー性鼻炎が疑われる場合に、原因アレルゲン(ハウスダスト、花粉など)を特定するために行います。血液検査や皮膚テストがあります。
    • 血液検査: 特に好酸球性副鼻腔炎が疑われる場合に、血液中の好酸球の数などを調べることがあります。
    • 組織検査: 診断が難しい場合や悪性の可能性が否定できない場合に、鼻茸の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる組織検査(生検)を行うことがあります。

これらの検査結果を総合的に判断することで、鼻茸の診断が確定し、その原因や重症度に応じた最適な治療方針が決定されます。特にCTスキャンは、見た目だけでは分からない鼻茸の広がりや副鼻腔の状態を明らかにするため、正確な診断と治療のために非常に重要です。

鼻茸の治療法

鼻茸の治療は、鼻茸の大きさ、数、症状の程度、原因となっている病気(副鼻腔炎など)の種類や重症度、患者さんの全身状態などを考慮して決定されます。治療法には、主に薬による治療と手術による治療があります。

薬による治療(ステロイド点鼻薬、内服薬)

鼻茸が比較的小さかったり、症状が軽度であったりする場合、あるいは手術のリスクが高い場合などは、まず薬物療法が選択されることが一般的です。薬物療法は、鼻茸の原因となっている炎症を抑えることを目的とします。

  • ステロイド点鼻薬:
    鼻茸治療における第一選択薬とされることが多い薬剤です。鼻の粘膜の炎症を強力に抑える作用があり、鼻茸の腫れを軽減させたり、大きくなるのを抑制したりする効果が期待できます。全身への影響が少ないため、比較的長期間使用することが可能です。ただし、効果を十分に得るためには、正しい方法で継続的に使用することが重要です。スプレータイプやミストタイプなど様々な種類があり、医師の指導のもと、自身の鼻の状態や使いやすさに合ったものを選びます。正しく使用すれば副作用のリスクは低いとされています。
  • ステロイド内服薬:
    鼻茸が大きい場合や、ステロイド点鼻薬だけでは効果が不十分な場合に、一時的に使用されることがあります。短期間(数日~数週間)服用することで、鼻茸を急速に縮小させる効果が期待できます。しかし、長期間の服用は全身への副作用(糖尿病の悪化、骨粗しょう症、胃潰瘍など)のリスクが高まるため、漫然と使うことはありません。用量や服用期間は、症状や病状に応じて医師が慎重に判断します。
  • その他の内服薬:
    • 抗アレルギー薬: アレルギー性鼻炎が鼻茸の原因や悪化要因となっている場合に用いられます。アレルギー反応を抑えることで、鼻の炎症を軽減し、鼻茸の発生や増大を抑える効果が期待できます。
    • 抗生物質: 細菌感染による副鼻腔炎が合併している場合に処方されます。細菌を排除することで副鼻腔の炎症を鎮め、鼻茸の状態を改善させることを目指します。
    • ロイコトリエン受容体拮抗薬: 喘息やアレルギー性鼻炎の治療薬ですが、特に好酸球性副鼻腔炎に伴う鼻茸に対しても効果があるとする報告もあり、補助的に用いられることがあります。

薬による治療は、症状の緩和や鼻茸の進行抑制に有効ですが、鼻茸を完全に消失させることは難しい場合もあります。また、治療を中止すると鼻茸が再び大きくなることもあります。

手術による治療(内視鏡手術)

薬物療法で十分な効果が得られない場合や、鼻茸が非常に大きくて鼻腔を完全に塞いでいる場合、あるいは嗅覚障害が強い場合などには、手術が検討されます。現在の主流は内視鏡を用いた手術です。

  • 内視鏡下副鼻腔手術(ESS: Endoscopic Sinus Surgery):
    この手術は、鼻の穴から細い内視鏡や手術器具を挿入し、鼻腔や副鼻腔の内部をモニター画面で拡大して確認しながら、鼻茸を切除したり、副鼻腔の開口部を広げたりする手術です。
    • メリット:
      • 鼻の外に傷がつかないため、整容性に優れています。
      • 内視鏡で病変部を拡大して観察できるため、より正確に、安全に手術を進めることができます。
      • 副鼻腔の換気や排泄を改善させる目的で、副鼻腔の構造を整えることも同時に行えます。
      • 従来の、鼻の外から切開して行う手術に比べて、体への負担(侵襲)が少なく、回復も比較的早い傾向があります。
    • 手術の目的:
      • 鼻茸そのものを切除し、鼻腔や副鼻腔の空気の通り道を確保する。
      • 鼻茸の原因となっている副鼻腔炎があれば、炎症を起こしている粘膜や貯留物を除去し、副鼻腔の換気と排泄を改善させるための通り道(自然口)を広げる。
    • 手術の方法:
      全身麻酔または局所麻酔下で行われます。鼻茸を専用の鉗子(かんし)やシュエイバー(吸引・切除装置)などを用いて切除します。副鼻腔炎が広範囲に及んでいる場合は、病変のある副鼻腔の開口部を拡大したり、隔壁を除去したりする処置も併せて行われます。
      手術時間や入院期間は、鼻茸の大きさや広がり、合併している副鼻腔炎の程度によって異なりますが、通常は1時間~数時間程度、入院は数日~1週間程度が多いようです。

手術によって鼻茸が除去され、副鼻腔の換気が改善されることで、鼻づまりや嗅覚障害などの症状の著明な改善が期待できます。しかし、手術で鼻茸を取り除いても、原因となった炎症が残っていれば再発する可能性があります。特に好酸球性副鼻腔炎の場合は再発率が高いため、手術後も継続的なケアが必要です。

副鼻腔炎(蓄膿症)と鼻茸の関係、およびその治療

鼻茸は、多くの場合、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)と密接に関連して発生します。慢性副鼻腔炎は、副鼻腔の粘膜に炎症が長期間続き、膿や粘液が溜まる病気です。この慢性的な炎症が、鼻腔や副鼻腔の粘膜を腫れさせ、鼻茸の形成を促進します。

特に、近年増加傾向にある「好酸球性副鼻腔炎」は、鼻茸を伴うことが非常に多い病気です。このタイプの副鼻腔炎は、一般的な細菌性の副鼻腔炎とは異なり、アレルギー反応などに関わる好酸球という白血球が粘膜に浸潤して強い炎症を引き起こします。症状としては、両側の鼻に多発する大きな鼻茸、高度な嗅覚障害、喘息やアスピリン喘息の合併が多いことが特徴です。通常の抗生物質があまり効かず、ステロイド薬も効果は一時的で、手術をしても再発しやすい傾向があります。

慢性副鼻腔炎に伴う鼻茸の治療では、単に鼻茸を切除するだけでなく、原因となっている副鼻腔炎の治療も同時に行うことが重要です。

  • 慢性副鼻腔炎の薬物療法:
    鼻茸の薬物療法と同様に、ステロイド点鼻薬や内服薬が炎症を抑えるために用いられます。マクロライド系抗生物質の少量長期投与が、抗菌作用だけでなく粘膜の炎症を抑える効果を期待して用いられることもあります。アレルギー性副鼻腔炎の場合は、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬なども使用されます。
  • 慢性副鼻腔炎の手術療法:
    内視鏡下副鼻腔手術は、鼻茸切除だけでなく、副鼻腔の病変粘膜を除去し、副鼻腔の自然口を拡大することで、副鼻腔の換気と排泄を改善させる目的で行われます。これにより、慢性的な炎症の改善を図ります。
  • 生物学的製剤:
    特に難治性の好酸球性副鼻腔炎や、重症の鼻茸・嗅覚障害があり、従来の治療(手術を含む)でも十分な効果が得られない、あるいは再発を繰り返すようなケースに対して、近年「生物学的製剤」による治療が選択肢として増えています。生物学的製剤は、炎症を引き起こす特定の物質(サイトカインなど)の働きをピンポイントで抑える注射薬です。これにより、鼻茸の縮小や嗅覚の改善に高い効果が期待されています。ただし、治療の対象となる患者さんには基準があり、専門医による診断と処方が必要です。比較的高額な治療となりますが、重症例においては生活の質を大きく改善させる可能性があります。

副鼻腔炎と鼻茸は密接に関連しているため、鼻茸の治療を成功させるためには、合併している副鼻腔炎を正確に診断し、そのタイプや重症度に応じた適切な治療を併せて行うことが非常に重要です。

鼻茸の再発について

鼻茸は、治療によって一度症状が改善しても、残念ながら再発することが少なくありません。特に特定の病態を持つ場合には、より注意が必要です。

鼻茸は再発しやすい?

はい、鼻茸は特に原因となっている炎症がコントロールされない場合や、特定の疾患に合併している場合に再発しやすい傾向があります。

特に再発リスクが高いとされるのは、前述の好酸球性副鼻腔炎に伴う鼻茸です。好酸球性副鼻腔炎は、粘膜に炎症を引き起こすメカニズムが複雑で、ステロイドや手術で一時的に改善しても、炎症の根本的な原因が解決しない限り、再び好酸球が集まって炎症を起こし、鼻茸が再形成されやすいとされています。手術後数ヶ月から数年で、再び鼻茸が出現し、症状が悪化するケースが多く見られます。

また、喘息やアスピリン喘息を合併している患者さんでも、鼻茸の再発リスクが高いことが知られています。これは、これらの疾患が全身的な炎症体質と関連しているためと考えられています。

一般的な慢性副鼻腔炎に合併する鼻茸も再発する可能性はありますが、好酸球性副鼻腔炎に比べると再発率は低い傾向にあります。

再発のメカニズムとしては、炎症が持続することで鼻粘膜の血管透過性が亢進し、組織液が漏れ出しやすくなること、炎症細胞が集積することなどが挙げられます。手術で鼻茸を切除しても、炎症を起こしやすい体質や環境が変わらないと、再び粘膜がむくみ、ポリープが形成されてしまうのです。

再発予防のためにできること

鼻茸の再発を防ぐためには、治療後の維持療法やセルフケアが非常に重要になります。再発リスクを軽減するために、以下の点を心がけましょう。

  1. 継続的な薬物療法:
    手術後や薬物療法で症状が改善しても、医師の指示なしに自己判断で治療を中止しないことが重要です。特にステロイド点鼻薬は、炎症をコントロールし、鼻茸の再形成を抑制する効果が期待できるため、症状が落ち着いてからも維持量での継続が推奨されることが多いです。再発リスクが高い好酸球性副鼻腔炎の場合は、長期的なステロイド点鼻薬の使用が特に重要となります。生物学的製剤による治療を受けている場合は、その治療計画を遵守することが再発予防に繋がります。
  2. 原因疾患の管理:
    アレルギー性鼻炎や喘息など、鼻茸の原因や悪化要因となっている病気がある場合は、これらの疾患の適切な治療と管理を継続することが、鼻茸の再発予防にも繋がります。アレルギーの原因物質(アレルゲン)を可能な限り避ける努力も大切です。
  3. 鼻腔・副鼻腔の衛生を保つ(鼻うがいなど):
    鼻うがいは、鼻腔や副鼻腔に溜まった鼻水や炎症物質を洗い流し、粘膜を清潔に保つのに有効なセルフケアです。特に慢性副鼻腔炎がある方や手術を受けた方にとって、炎症を抑え、粘膜の状態を良好に保つ助けとなります。ただし、正しい方法で行わないと逆効果になることもあるため、医師や薬剤師に相談の上、適切な生理食塩水などを使用し、無理のない範囲で行いましょう。
  4. 生活習慣の見直し:
    喫煙は鼻粘膜に慢性的な刺激を与え、炎症を悪化させるため、禁煙は非常に重要です。また、規則正しい生活、バランスの取れた食事、十分な睡眠など、全身の免疫力を高めるような生活を心がけることも、炎症を抑え、再発しにくい体質を作る上で助けとなる可能性があります。
  5. 定期的な診察:
    鼻茸や慢性副鼻腔炎は、症状が落ち着いていても、定期的に耳鼻咽喉科を受診し、鼻の中の状態をチェックしてもらうことが非常に重要です。特に内視鏡検査や必要に応じてCT検査を行うことで、小さな鼻茸の再発や副鼻腔炎の悪化を早期に発見し、症状がひどくなる前に適切な処置や治療を開始することができます。再発リスクの高い好酸球性副鼻腔炎の場合は、医師と密に連携し、計画的なフォローアップを行うことが不可欠です。

再発は完全に防ぐことが難しい場合もありますが、これらの対策を根気強く続けることで、再発までの期間を長くしたり、再発した場合でも症状を軽く抑えたりすることが期待できます。医師とよく相談し、ご自身の状態に合わせた再発予防策を継続していくことが大切です。

鼻茸が気になる方は耳鼻咽喉科にご相談ください

鼻づまりが長く続く、以前より匂いが感じにくくなった、鼻水がずるずる出てくる、といった症状は、鼻茸ができているサインかもしれません。これらの症状は、風邪や一時的なアレルギー性鼻炎と間違えられやすいため、自己判断で市販薬を使っても改善しない場合は、早めに専門医の診察を受けることが重要です。

鼻茸は放置すると大きくなり、鼻の機能に深刻な影響を与えたり、慢性副鼻腔炎を悪化させたりする可能性があります。早期に発見し、原因を特定した上で適切な治療を開始することで、症状の改善が見込めます。

耳鼻咽喉科では、問診や内視鏡検査、CTスキャンなどを用いて、鼻の中の状態を詳しく調べ、鼻茸の有無や大きさ、原因となっている病気を正確に診断します。診断結果に基づいて、薬物療法、手術、あるいは生物学的製剤による治療など、患者さん一人ひとりに最適な治療法を提案してもらえます。

特に、好酸球性副鼻腔炎に伴う鼻茸や、再発を繰り返す難治性の鼻茸では、専門的な診断と治療、そして継続的なフォローアップが不可欠です。最近は生物学的製剤のような新しい治療選択肢も登場しており、重症例でも症状の改善が期待できるようになっています。

「たかが鼻づまり」と思わずに、気になる症状がある場合は、お近くの耳鼻咽喉科を受診してみてください。医師にしっかりと症状を伝え、検査を受けることで、ご自身の鼻の状態を正しく理解し、適切な治療への第一歩を踏み出すことができます。本記事が、皆様の受診を後押しするきっかけとなれば幸いです。

鼻茸についてよくある質問

ここでは、鼻茸に関してよく寄せられる質問とその回答をご紹介します。

Q1: 鼻茸は自分で取ることはできますか?

A1: 絶対に自分で取ろうとしないでください。 鼻茸は粘膜の一部であり、無理に引っ張ったり切ったりすると、大量出血や感染、粘膜の損傷を引き起こす危険があります。また、鼻茸だと思っていたものが、実は別の病変である可能性も否定できません。鼻茸の治療は必ず専門の医療機関で行ってください。

Q2: 鼻茸はがんになることがありますか?

A2: 鼻茸自体は良性のポリープであり、がん(悪性腫瘍)に変化することはありません。 ただし、非常に稀ですが、鼻腔や副鼻腔にできる悪性腫瘍が鼻茸のように見えることがあります。そのため、正確な診断のために耳鼻咽喉科を受診し、必要に応じて画像検査や組織検査を受けることが重要です。特に、片側の鼻だけにできる鼻茸や、出血しやすい鼻茸、急速に大きくなる鼻茸などには注意が必要です。

Q3: 子供にも鼻茸はできますか?

A3: はい、子供にも鼻茸はできます。 ただし、大人の鼻茸の主な原因が慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎であるのに対し、子供の場合は嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)という遺伝性の病気に合併して鼻茸ができることが多いです。子供の鼻づまりや鼻水が続く場合は、風邪やアレルギー性鼻炎だけでなく、鼻茸の可能性も考慮して小児耳鼻咽喉科医に相談することが大切です。

Q4: 鼻茸があると、手術しないと治りませんか?

A4: 小さな鼻茸や症状が軽度の場合、薬(特にステロイド点鼻薬や内服薬)で縮小したり、症状が改善したりすることもあります。 必ずしもすべての場合に手術が必要というわけではありません。しかし、薬物療法で効果がない、鼻茸が大きい、症状が重い(特に嗅覚障害が強い)、再発を繰り返すなどの場合には、手術が有効な治療選択肢となります。治療方針は、鼻茸の状態や原因を正確に診断した上で、医師とよく相談して決定します。

Q5: 手術をすればもう鼻茸はできませんか?

A5: 手術によって現在の鼻茸を除去し、鼻腔・副鼻腔の状態を改善させることはできますが、原因となっている炎症が残っていたり、体質的な問題があったりする場合には、残念ながら再発する可能性があります。 特に好酸球性副鼻腔炎では再発率が高いです。手術後も、ステロイド点鼻薬の使用や定期的な通院など、医師の指示に従って継続的なケアを行うことが、再発予防のために非常に重要です。

【まとめ】鼻茸は早期の診断と適切な治療が大切

鼻茸(鼻ポリープ)は、慢性的な鼻や副鼻腔の炎症によってできる良性の腫瘍です。主な症状としては、頑固な鼻づまりや嗅覚障害があり、日常生活の質を著しく低下させることがあります。特に、慢性副鼻腔炎、中でも好酸球性副鼻腔炎との関連が深く、喘息などのアレルギー疾患を合併することもあります。

診断は、問診、鼻鏡検査、内視鏡検査、そして副鼻腔の状態を詳しく把握するためのCTスキャンが中心となります。正確な診断に基づいて、鼻茸の大きさや原因、症状の程度に応じた最適な治療法が選択されます。

治療には、ステロイド点鼻薬や内服薬による薬物療法と、内視鏡を用いた手術療法があります。近年では、難治性の鼻茸に対して生物学的製剤が有効な選択肢となる場合もあります。

鼻茸は再発しやすい性質があるため、治療によって症状が改善した後も、継続的な薬物療法や定期的な診察による経過観察が非常に重要です。原因となっている副鼻腔炎やアレルギー疾患の管理も、再発予防には欠かせません。

もし、長引く鼻づまりや嗅覚の異常など、鼻茸が疑われる症状がある場合は、自己判断せずに、まずは耳鼻咽喉科を受診しましょう。早期に正確な診断を受け、適切な治療を開始することが、症状の改善と良好な状態の維持に繋がります。気になる症状は我慢せず、専門医に相談してください。

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、診断や治療を保証するものではありません。個々の症状や治療法については、必ず医師の診察を受け、専門医の指示に従ってください。本記事の情報に基づいて行ったいかなる行為についても、当方は一切の責任を負いません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次