突然の鼻血は、量の多さや止血に時間がかかることで不安を感じやすいものです。
特に「鼻血が止まらない」という状況は、慌ててしまう方も多いでしょう。
しかし、ほとんどの鼻血は正しく対処すれば数分で止まります。
この記事では、鼻血が止まらないと感じたときに冷静に対処できるよう、正しい応急処置の方法から、考えられる様々な原因、そして「この鼻血はいつもと違うかも?」と感じたときに病院を受診するべき目安について、分かりやすく解説します。
いつ病院に行くべきか迷っている方も、ぜひ参考にしてください。
鼻血が止まらない時の応急処置
鼻血が出たとき、どのように対処すれば良いかご存知でしょうか?
間違った方法で止血しようとすると、かえって出血を長引かせたり、誤嚥(ごえん)のリスクを高めたりすることがあります。
まずは、鼻血が出たときに落ち着いて行うべき正しい応急処置について解説します。
正しい止血方法
鼻血のほとんどは、鼻の入り口から1~1.5cmほど奥にある「キーゼルバッハ部位」と呼ばれる場所からの出血です。
この部分は毛細血管が網の目のように集まっており、粘膜も薄いため、少しの刺激でも出血しやすい特徴があります。
正しい止血方法は、このキーゼルバッハ部位を外側から圧迫することです。
- 落ち着いて座る: まずは慌てずに、椅子などに座りましょう。
立っていたり横になったりするよりも、血圧が安定しやすく、止血効果が高まります。
特に横になると、鼻血が喉に流れ込みやすくなるため避けましょう。 - 少しうつむき加減になる: 顔は少しだけ下を向けます。
こうすることで、鼻血が喉の奥に流れ込むのを防ぎ、口から出すことができます。
完全にうつむくと呼吸が苦しくなる場合があるので、楽な姿勢で少し前かがみになるイメージです。 - 小鼻をしっかりと押さえる: 人差し指と親指を使って、鼻のやわらかい部分(小鼻)をしっかりとつまみます。
骨のある硬い部分ではなく、その下のやわらかい部分です。
両方の小鼻を内側に向かって、鼻の穴を塞ぐように強く押さえます。
片方の鼻だけから出血している場合でも、両方の小鼻を押さえるのが効果的です。
これは、鼻の血管が左右で繋がっているため、片側を押さえても両側の血流が抑制されるからです。 - 10~15分間、指を離さず押さえ続ける: ここが重要なポイントです。
途中で指を離してしまうと、固まりかけた血が再び流れ出し、止血に時間がかかってしまいます。
時計を見ながら、最低でも10分間はしっかりと圧迫を続けましょう。
子供の場合は5~10分程度でも良いですが、可能であれば大人と同じくらい行うと効果的です。
この間、口で呼吸をします。 - 口に流れてきた血は飲み込まずに出す: 鼻血が喉に流れてきたら、飲み込まずに口から出してください。
飲み込むと気分が悪くなったり、吐いてしまったりすることがあります。 - 圧迫を終えたら、そっと指を離す: 指定された時間が経過したら、ゆっくりと指を離して出血が止まったか確認します。
もし止まっていなければ、再度同じ方法で10分~15分間圧迫を繰り返します。 - 止血後は安静にする: 鼻血が止まっても、しばらくは激しい運動を避け、安静に過ごしましょう。
鼻を強くかんだり、こすったりすることも、再出血の原因となるため控えてください。
入浴も、湯船に浸かるのは避け、シャワーで済ませる方が安全です。
冷たいタオルや氷を鼻の付け根やおでこに当てると、血管が収縮して止血に役立つと言われることがありますが、これはあくまで補助的な方法です。
最も重要なのは、キーゼルバッハ部位をしっかりと圧迫することです。
冷やすことで圧迫がおろそかにならないように注意しましょう。
やってはいけないこと
鼻血が出たときに、反射的にやってしまいがちな行動の中には、止血効果を妨げたり、危険を伴ったりするものがあります。
これらの「やってはいけないこと」を理解しておくことも、適切に対処するために重要です。
- 顔を真上に向けたり、仰向けになったりする: これが最もよく見られる間違いです。
顔を上に向けると、鼻血が喉の奥に流れ込み、気管に入ってむせたり、誤嚥性肺炎の原因になったりするリスクがあります。
また、流れてくる血液を飲み込むと、胃を刺激して吐き気をもよおすことがあります。
血液を飲み込んでしまうと、実際に出血した量が分からなくなり、医療機関を受診した際に正確な情報を伝えられなくなるという点でも望ましくありません。
必ず座って少しうつむき加減になりましょう。 - 鼻の穴にティッシュやガーゼなどを詰める: 鼻の穴に異物を詰めると、取り出す際に固まった血栓が剥がれて再び出血したり、粘膜を傷つけたりする可能性があります。
また、詰めたものが奥に入り込んでしまう危険性もあります。
市販の止血用コットンやスポンジなど、鼻血のために作られた専用の製品以外は使用を避けましょう。 - 頻繁に指を離して確認する: 前述の通り、圧迫中は血が固まるのを待つ必要があります。
数分おきに指を離して「まだ出てるかな?」と確認すると、せっかく固まりかけた血栓が剥がれてしまい、止血が遅れます。
指示された時間(10~15分)は辛抱強く圧迫を続けましょう。 - 鼻を強くかむ: 鼻血が出ている最中や止まった直後に鼻を強くかむと、鼻の粘膜が傷ついたり、固まった血栓が剥がれたりして、再び出血してしまう可能性が非常に高いです。
鼻をかむのは、完全に止血され、時間が経ってからにしましょう。
鼻血が固まって鼻の穴を塞いでいる場合は、無理に取ろうとせず、自然に剥がれるのを待つか、湿らせた綿棒などで優しく拭き取る程度に留めましょう。 - 興奮したり、激しく動いたりする: 興奮したり運動したりすると、血圧が上昇し、出血量が増えたり止まりにくくなったりします。
鼻血が出たときは、できるだけ落ち着いて安静に過ごすことが大切です。
これらの「やってはいけないこと」を避け、正しい応急処置を実践することで、多くの鼻血は自宅で適切に止血することが可能です。
鼻血が止まらない原因は?
正しい応急処置をしても鼻血が止まらなかったり、頻繁に鼻血が出たりする場合、その背景には様々な原因が考えられます。
多くは鼻の粘膜の一時的な変化によるものですが、中には病気が隠れている可能性もゼロではありません。
ここでは、鼻血が止まらない、あるいは出やすい原因について詳しく見ていきましょう。
一般的な原因(鼻ほじり、乾燥、炎症など)
鼻血の最も一般的な原因は、鼻の粘膜、特にキーゼルバッハ部位への直接的な刺激です。
- 鼻ほじり: 子供だけでなく、大人でも無意識に鼻をほじってしまうことがあります。
指の爪や摩擦によって粘膜が傷つき、出血を引き起こします。
これが最も多い原因の一つです。 - 鼻を強くかむ: 風邪やアレルギーなどで鼻がつまっているときに、強く鼻をかむと、粘膜に強い圧力がかかり、毛細血管が破れて出血することがあります。
特に片方の鼻だけを強くかむ癖がある人は、そちら側から鼻血が出やすい傾向があります。 - 鼻の乾燥: 空気が乾燥していると、鼻の粘膜も乾燥しやすくなります。
乾燥した粘膜は弾力性が失われ、ひび割れたり傷つきやすくなったりするため、些細な刺激(鼻を触る、空気を吸うなど)でも出血しやすくなります。
特に冬場や、エアコンの効いた室内では注意が必要です。 - アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎: これらの炎症によって鼻の粘膜が腫れたり弱くなったりしていると、血管が破れやすくなり、鼻血が出やすくなります。
くしゃみや鼻をかむ回数が増えることも、刺激の要因となります。 - 風邪やインフルエンザなどの感染症: ウイルス感染などにより鼻の粘膜に炎症が起きたり、咳やくしゃみによって粘膜に負担がかかったりすることで鼻血が出やすくなることがあります。
また、発熱によって血行が良くなることも影響する場合があります。 - 気候の変化(寒暖差、気圧の変化): 急激な温度や気圧の変化も、鼻の粘膜の血管に影響を与え、鼻血の原因となることがあります。
例えば、暖かい部屋から急に寒い外に出たときなどです。 - 物理的な外傷: 鼻をぶつける、転倒するなどの物理的な衝撃によって、鼻の粘膜や骨が損傷し、出血することがあります。
これらの一般的な原因による鼻血は、ほとんどがキーゼルバッハ部位からの出血であり、正しい応急処置で止まることがほとんどです。
しかし、頻繁に繰り返す場合は、粘膜が慢性的に弱っている可能性があり、専門医に相談した方が良いでしょう。
大人特有の原因や病気
子供の鼻血の多くはキーゼルバッハ部位からの刺激によるものですが、大人の場合、特に高齢になると、基礎疾患や服用している薬が原因で鼻血が出やすくなったり、止まりにくくなったりすることがあります。
- 高血圧: 高血圧がある人は、鼻の粘膜の血管も硬くなっていたり、圧力がかかっていたりするため、血管が破れやすくなります。
特に血圧が急激に変動した際に鼻血が出ることがあります。
高血圧性鼻出血は、鼻の奥の方からの出血であることもあり、その場合は出血量が多く、止まりにくい傾向があります。 - 動脈硬化: 動脈硬化が進むと、血管が硬くもろくなり、破れやすくなります。
鼻の血管も例外ではなく、鼻血の原因となることがあります。 - 血液の病気:
- 血小板減少症: 血液を固める役割を持つ血小板の数が少ない、あるいは機能が低下している病気です。
血小板が少ないと、一度出血すると血が固まりにくくなり、鼻血が止まりにくくなります。
鼻血の他にも、歯茎からの出血や、体に覚えのないあざができやすいといった症状が見られることがあります。 - 白血病: 血液のがんの一種です。
正常な血液細胞が作られなくなるため、血小板が減少したり、血液を固める凝固因子に異常が出たりして、出血しやすくなります。
鼻血の他にも、発熱、だるさ、貧血、リンパ節の腫れなどの症状を伴うことがあります。 - 血友病: 血液を固めるために必要な凝固因子が遺伝的に不足している病気です。
軽いケガでも出血が止まりにくく、鼻血もその症状の一つとして現れることがあります。
- 血小板減少症: 血液を固める役割を持つ血小板の数が少ない、あるいは機能が低下している病気です。
- 肝臓病や腎臓病: 肝臓は血液を固める凝固因子を作る重要な臓器です。
肝機能が低下すると凝固因子が十分に作られず、出血しやすくなります。
腎臓病も、血小板の機能に影響を与えたり、高血圧を合併したりすることで鼻血の原因となることがあります。 - 服用している薬の影響:
- 抗凝固薬(ワーファリンなど) や 抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレルなど) は、血液をサラサラにして血栓ができるのを防ぐ薬です。
心筋梗塞や脳梗塞などの治療・予防のために用いられますが、これらの薬を服用していると、止血に必要な血液を固める働きが弱まるため、一度出血すると止まりにくくなります。
鼻血もその一つです。
医師の指示なく自己判断で服用を中止することは危険ですので、鼻血が出やすい場合は必ず主治医に相談しましょう。 - 非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs) の一部にも、血小板の働きを抑制する作用があり、出血しやすくなることがあります。
- 抗凝固薬(ワーファリンなど) や 抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレルなど) は、血液をサラサラにして血栓ができるのを防ぐ薬です。
- 鼻や副鼻腔の腫瘍: 非常に稀ですが、鼻腔や副鼻腔にできた良性または悪性の腫瘍が出血源となることがあります。
この場合、片方の鼻だけから出血が続く、鼻づまりが悪化する、顔面の痛みや腫れを伴うなどの症状が見られることがあります。 - オスラー病(遺伝性出血性末梢血管拡張症): 血管が異常に拡張し、出血しやすくなる遺伝性の病気です。
鼻の粘膜の血管も拡張するため、頻繁に鼻血を繰り返すのが特徴的な症状です。
皮膚や粘膜にも小さな赤い斑点(毛細血管拡張)が見られることがあります。
大人の場合、特に持病があったり、薬を服用していたりする場合は、鼻血の原因としてこれらの可能性も考慮する必要があります。
繰り返し鼻血が出たり、止まりにくかったりする場合は、自己判断せず医療機関を受診することが重要です。
片方だけ鼻血が出る・繰り返す原因
鼻血は通常、左右どちらかの鼻腔から起こります。
片方の鼻だけから鼻血が出やすい、あるいは何度も繰り返すといった場合、いくつかの原因が考えられます。
- キーゼルバッハ部位の損傷: 鼻ほじりや鼻を強くかく癖がある場合、特定の側のキーゼルバッハ部位の粘膜が慢性的に傷ついていることが多く、そのため片側からばかり出血を繰り返すことがあります。
- 鼻中隔弯曲症: 鼻の真ん中を仕切る壁である鼻中隔が曲がっている状態です。
鼻中隔が強く曲がっていると、狭くなった側の鼻腔の空気の流れが悪くなり乾燥しやすくなったり、曲がった部分の粘膜が物理的な刺激を受けやすくなったりして、鼻血が出やすくなります。
また、空気の通り道が狭いために、反対側で強く鼻をかむことになり、その結果、曲がっている側の粘膜に負担がかかり出血することもあります。 - 鼻ポリープ: 鼻の粘膜が炎症によって慢性的に腫れ、きのこのようなできもの(ポリープ)ができることがあります。
大きなポリープがあると、粘膜が弱くなったり、物理的な刺激を受けやすくなったりして出血の原因となることがあります。
多くは両側にできますが、片側だけの場合もあります。 - 鼻腔・副鼻腔の腫瘍: 前述のように、鼻腔や副鼻腔に腫瘍ができると、その部分からの出血が起こり、片方の鼻だけから出血が続くという症状が現れることがあります。
これは稀なケースですが、特に繰り返したり、鼻血以外に鼻づまりや顔面の症状を伴う場合は注意が必要です。 - 特定の部位の血管の異常: 鼻腔の比較的奥の方にある太い血管(スペノパラタイン動脈など)からの出血は、キーゼルバッハ部位からの出血よりも量が非常に多く、止まりにくいのが特徴です。
この場合も片側からの出血であることがほとんどで、緊急性の高い出血となります。
片方だけから頻繁に鼻血が出たり、繰り返したりする場合は、単なる乾燥や刺激だけでなく、鼻の内部の構造的な問題や、まれに病気が隠れている可能性も考えられます。
自己判断で放置せず、耳鼻咽喉科を受診して原因を調べてもらうことをお勧めします。
ストレスとの関係性
直接的に「ストレスが鼻血の原因になる」と断言することは難しいですが、ストレスが間接的に鼻血の誘因となる可能性はあります。
ストレスを感じると、自律神経のうち交感神経が優位になります。
交感神経は血管を収縮させる働きがありますが、慢性的なストレスは自律神経のバランスを乱し、血圧の変動を引き起こしやすくなります。
特に、急な強いストレスや緊張は一時的に血圧を上昇させることがあり、これが鼻の粘膜の弱い血管に負担をかけて出血につながる可能性が考えられます。
また、ストレスによって鼻をいじる癖が出てしまったり、睡眠不足や不規則な生活によって体の抵抗力が落ち、風邪をひきやすくなり鼻炎が悪化したりすることも、間接的に鼻血のリスクを高める要因となり得ます。
さらに、心理的な要因として、鼻血が出ることへの不安や恐怖自体がストレスとなり、交感神経を刺激して血圧を上げ、さらに出血を助長するという悪循環に陥る可能性も否定できません。
したがって、明確な医学的証明があるわけではありませんが、ストレスが多い時期に鼻血が出やすくなったと感じる場合は、ストレス管理を意識することも、予防策の一つとして有効かもしれません。
しかし、ストレスだけが原因と決めつけず、特に頻繁に繰り返したり、量が多い鼻血の場合は、他の原因がないか医療機関で診察を受けることが重要です。
病院受診の目安と危険なサイン
ほとんどの鼻血は応急処置で止まりますが、中には医療機関の受診が必要な場合や、緊急性の高い危険なサインが隠れていることがあります。
「鼻血が止まらない」と感じたときに、どのような状況であれば病院に行くべきか、その目安と危険なサインについて知っておきましょう。
何分止まらなければ受診が必要?
一般的な目安として、正しい応急処置(座ってうつむき、小鼻をしっかりと10~15分間圧迫する)を20分以上続けても出血が止まらない場合は、医療機関を受診することを検討してください。
ただし、この「20分」という時間はあくまで目安です。
出血量が多い場合や、後述する他の危険なサインが見られる場合は、20分経たなくてもすぐに受診や救急車の手配が必要となることがあります。
大量に出血している場合
出血量が非常に多い場合は、時間に関わらず危険なサインと考えられます。
- 衣服がびしょ濡れになるほど出血量が多い
- 洗面器やバケツに出した血があっという間にいっぱいになる
- 血が塊でどんどん出てくる
など、見た目で「これは尋常じゃない量だ」と感じる場合は、速やかに医療機関を受診するか、迷わず救急車を呼びましょう。
大量出血は、体内の血液量が急激に減少し、貧血や血圧低下、ショック状態を引き起こす可能性があります。
特に高齢の方や、心臓・血管系の病気がある方、血液をサラサラにする薬を服用している方は、大量出血によるリスクが高まります。
鼻血以外の症状(発熱など)がある場合
鼻血だけでなく、全身に関わるような他の症状を伴う場合は、単なる鼻の局所的な問題ではなく、全身の病気が原因で鼻血が出ている可能性があります。
- 発熱、だるさ、体重減少
- 皮膚に覚えのないあざができやすい、小さな点状出血がある
- 歯茎や他の部位からも出血しやすい
- めまい、立ちくらみ、顔色が悪いなどの貧血症状
- 激しい頭痛、手足のしびれ
- 呼吸困難
これらの症状と同時に鼻血が出ている場合は、白血病などの血液の病気、肝臓病、腎臓病、重症感染症、高血圧性緊急症、脳出血などが原因である可能性も考えられます。
これらの症状が見られた場合は、早急に医療機関を受診する必要があります。
繰り返し鼻血が出る場合
短期間(例えば1ヶ月以内)に何度も鼻血を繰り返す場合や、以前から頻繁に鼻血が出る癖がある場合は、原因を詳しく調べる必要があります。
- 週に複数回、あるいは毎日鼻血が出る
- 軽い刺激で簡単に出血する
- 毎回同じ側から出血する
このような場合は、鼻の粘膜が慢性的に弱っている、鼻中隔弯曲症などの構造的な問題がある、あるいは前述した大人特有の原因や病気(高血圧、血液疾患、腫瘍など)が隠れている可能性があります。
自己判断で放置せず、耳鼻咽喉科で診察を受け、適切な診断と治療を受けることが重要です。
危険なサインと受診目安をまとめると以下のようになります。
サイン/目安 | 詳細 | 対応 |
---|---|---|
応急処置で止まらない | 正しい方法で15~20分圧迫しても出血が止まらない | 医療機関を受診(耳鼻咽喉科または内科など) |
出血量が非常に多い | 衣服や周囲が大量の血液で汚れる、血塊がどんどん出るなど | 速やかに救急車を呼ぶか、救急外来を受診 |
鼻血以外の全身症状 | 発熱、あざ、だるさ、めまい、激しい頭痛、呼吸困難など | 速やかに医療機関を受診(内科、耳鼻咽喉科) |
繰り返し鼻血が出る | 短期間に何度も(週に複数回、毎日など)出血を繰り返す | 医療機関を受診(耳鼻咽喉科) |
抗凝固薬などを服用中 | 血液をサラサラにする薬を服用していて出血量が多い、あるいは止まりにくい | かかりつけ医に相談、または医療機関を受診 |
鼻の変形や痛みを伴う | 外傷後に鼻血が止まらず、鼻の形が変わった、強い痛みがある | 医療機関を受診(耳鼻咽喉科、救急外来) |
これらの目安を参考に、ご自身の状況に合わせて適切な行動を取ってください。
迷う場合は、医療機関に電話で相談するか、救急相談窓口(#7119など)に問い合わせるのも良いでしょう。
病院での診断・治療について
「鼻血が止まらない」「頻繁に繰り返す」「何か他の症状もある」といった理由で医療機関を受診した場合、どのような診断が行われ、どのような治療を受けることになるのでしょうか。
何科を受診すべき?
鼻血の主な原因は鼻の粘膜の血管からの出血ですので、まずは耳鼻咽喉科を受診するのが最も適切です。
耳鼻咽喉科医は鼻の中を詳しく観察し、出血部位を特定したり、鼻の内部の異常(鼻中隔弯曲症やポリープなど)を確認したりすることができます。
ただし、鼻血の原因が全身の病気(高血圧、血液疾患、肝臓病など)である可能性が高い場合や、鼻血以外の全身症状が強く出ている場合は、かかりつけの内科医に相談したり、総合病院の内科を受診したりすることも考えられます。
救急性の高い大量出血や、頭を強く打った後の鼻血などは、救急外来を受診する必要があります。
どの科を受診すべきか判断に迷う場合は、まずはかかりつけ医に相談するか、受診を希望する病院に電話で問い合わせてみると良いでしょう。
医療機関で行われる治療法
医療機関では、まず問診で鼻血が出始めた状況、量、頻度、既往歴、服用中の薬などについて詳しく聞かれます。
次に、鼻鏡や内視鏡を使って鼻腔内を観察し、出血部位や鼻の内部の状態を確認します。
出血部位が特定できた場合の主な治療法は、出血を止めることです。
- 圧迫止血: 再度、医師や看護師によって適切に鼻を圧迫して止血を試みます。
自宅での応急処置よりも専門的な知識に基づいて行われます。 - 局所止血剤の使用: 出血部位に血管収縮作用のある薬剤を含ませたガーゼや綿球などを当てて圧迫し、止血効果を高めます。
- 電気凝固や化学物質による焼灼(しょうしゃく): 出血している血管を、電気や化学物質(硝酸銀など)を使って焼いて塞ぐ方法です。
キーゼルバッハ部位からの出血に対してよく行われます。
処置の際に少し痛みを感じることがありますが、通常は麻酔薬を使用します。 - 鼻腔パッキング(タンポン圧迫): 出血量が多い場合や、鼻の奥からの出血が疑われる場合など、簡単な圧迫では止まらないときに行われます。
止血用のガーゼやスポンジ、バルーンなどを鼻腔内に詰めて、内側から圧迫することで止血します。
パッキング材は通常1~2日後に抜去します。
鼻に詰め物が入るため、鼻づまりや痛みを伴うことがあります。 - 血管塞栓術: 鼻の奥にある比較的太い血管からの出血で、上記の処置でも止まらないような難治性の鼻血に対して行われることがあります。
カテーテルを血管内に挿入し、出血している血管を塞ぐ方法です。
入院が必要となる専門的な治療です。 - 原因疾患の治療: 鼻血の原因が全身の病気(高血圧、血液疾患など)である場合は、その病気の治療を並行して行います。
血圧が高い場合は血圧を下げる薬を調整したり、血液の病気に対しては専門的な治療を行ったりします。
薬の副作用が疑われる場合は、医師と相談の上、薬の種類や量を調整することもあります。
医療機関での治療は、出血の場所や量、原因によって異なります。
医師は、患者さんの状態に合わせて最適な止血方法と、必要に応じて原因に対する治療を行います。
頻繁に鼻血を繰り返す場合や、鼻の構造に問題がある場合は、根本的な治療として手術が検討されることもあります(例: 鼻中隔矯正術)。
鼻血を予防する方法
鼻血を繰り返しやすい方は、日頃からいくつかの点に注意することで、鼻血の発生を予防することができます。
主な予防策は以下の通りです。
- 鼻の乾燥を防ぐ: 空気が乾燥する季節や、エアコンの効いた部屋では、加湿器を使用したり、濡れタオルを室内に干したりして湿度を保ちましょう。
鼻の粘膜の乾燥対策として、ワセリンなどの保湿剤を鼻の入り口付近に塗布したり、生理食塩水や専用の保湿剤を使った点鼻を行うのも効果的です。 - 鼻ほじりや鼻を強くかくのを避ける: 鼻に痒みや異物感があるときは、強くこすったりほじったりせず、優しく拭き取る程度にしましょう。
鼻をかむ際は、片方ずつ、ゆっくりと力を入れすぎずに行います。 - アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の治療をしっかり行う: これらの病気があると鼻の粘膜が常に炎症を起こして弱くなっています。
適切な治療を受けることで、鼻粘膜の状態が改善され、鼻血が出にくくなります。 - 基礎疾患の管理: 高血圧や糖尿病などの基礎疾患がある場合は、主治医の指示に従い、適切に管理することが鼻血の予防にも繋がります。
特に高血圧の方は、血圧を安定させることが重要です。 - 服用中の薬について医師と相談する: 血液をサラサラにする薬などを服用していて鼻血が出やすい場合は、自己判断で中止せず、必ず処方した医師に相談しましょう。
薬の種類や量の調整、あるいは止血しやすくするための他の薬の併用などを検討してくれる場合があります。 - 生活習慣の見直し: 規則正しい生活、バランスの取れた食事、十分な睡眠は、体の抵抗力を高め、粘膜の状態を健康に保つのに役立ちます。
ストレスを溜め込まないように、適度な休息やリフレッシュも大切です。 - 入浴時の注意: 熱すぎるお湯での長時間の入浴は、血行を良くしすぎて鼻血を誘発することがあります。
シャワーで済ませるか、ぬるめの湯に短時間浸かる程度にしましょう。
これらの予防策は、必ずしもすべての鼻血を防げるわけではありませんが、特に一般的な原因による鼻血や、習慣性の鼻血の予防には有効です。
日頃から意識して取り入れてみてください。
まとめ
「鼻血が止まらない」という状況は不安になりますが、まずは落ち着いて正しい応急処置を行うことが最も重要です。
座って少しうつむき、両方の小鼻を10~15分間しっかりと圧迫することで、ほとんどの鼻血は止めることができます。
顔を真上に向けたり、鼻にティッシュを詰めたりするのは避けるべき間違った方法です。
鼻血の原因は、鼻ほじりや乾燥といった一般的なものから、高血圧や血液の病気、服用中の薬の影響といった大人特有のもの、あるいは鼻の構造的な問題まで様々です。
片方だけから繰り返す鼻血や、鼻血以外の全身症状を伴う場合は、隠れた病気のサインである可能性も考えられます。
医療機関を受診する目安としては、
- 正しい応急処置を20分以上続けても止まらない
- 出血量が非常に多い(洗面器がいっぱいになるなど)
- 発熱、あざができやすい、だるさなどの全身症状がある
- 短期間に何度も鼻血を繰り返す
といった状況が挙げられます。
これらのサインが見られる場合は、自己判断で放置せず、速やかに耳鼻咽喉科などの医療機関を受診してください。
病院では、出血部位の特定と止血処置(圧迫、薬剤、焼灼、パッキングなど)が行われ、必要に応じて原因疾患の診断と治療が行われます。
鼻血を予防するためには、鼻の乾燥対策、鼻への刺激を避ける、基礎疾患の適切な管理、規則正しい生活などが有効です。
この記事が、鼻血で不安を感じている方の助けとなり、落ち着いて対処し、必要に応じて適切な医療を受けられるための一助となれば幸いです。
ただし、この記事は一般的な情報提供であり、個々の状況については必ず医療機関で専門医の診断・治療を受けてください。