しっかり寝ても眠い…過眠症の治し方!病院に行くべき?治療法まとめ

日中の耐え難い眠気は、日常生活や仕事に大きな支障をきたします。「ただの寝不足だろう」と軽視されがちですが、もしかしたら「過眠症」という病気かもしれません。

過眠症は、夜間の睡眠時間が十分にもかかわらず、日中に強い眠気を感じ、居眠りを繰り返してしまう睡眠障害の一つです。
単なる眠気ではなく、適切な診断と治療が必要な場合があります。

この記事では、過眠症で悩む方が、つらい眠気を克服し、より活動的な日々を取り戻すための一助となるよう、以下の内容を詳しく解説します。

  • 過眠症の基本的な症状と種類
  • 過眠症の様々な原因(病気、ストレス、生活習慣など)
  • 自分でできる簡単チェックテストと病院での診断方法
  • 病院での治療法(薬物療法、認知行動療法など)
  • 日常生活でできる自分でできる対策
  • 病院に行くべき目安と受診すべき科

この記事を最後まで読んでいただくことで、過眠症に対する理解を深め、ご自身の症状と向き合い、適切な「治し方」を見つけるための一歩を踏み出すことができるでしょう。

目次

過眠症とは?|症状と種類

過眠症とは、夜間に十分な睡眠をとっているにもかかわらず、日中に強い眠気を感じ、日常生活に支障をきたす状態を指します。
単なる生理的な眠気や、一時的な寝不足によるものではありません。
過眠症はいくつかの種類に分類され、それぞれ症状の現れ方や原因が異なります。

過眠症の主な症状

過眠症の中核となる症状は、日中の過度な眠気 (Excessive Daytime Sleepiness; EDS) です。
しかし、その現れ方は人によって様々です。

  • 日中の強い眠気と居眠り: 会議中、食事中、運転中など、通常は起きていられる状況でも強い眠気を感じ、抵抗できずに眠り込んでしまうことがあります。
    短い居眠りでは眠気が解消されず、目が覚めてもすぐにまた眠くなることがあります。
  • 睡眠時間の増加: 夜間の睡眠時間が極端に長くなることがあります(例: 10時間以上)。
    しかし、長時間寝てもすっきりせず、日中の眠気が残ります。
  • 覚醒困難(睡眠慣性): 朝起きるのが非常に困難で、目覚まし時計を何個も使ったり、家族に起こしてもらったりしても、なかなか起き上がれません。
    起きた後もすぐに覚醒せず、ぼーっとしてしまう状態が続きます。
  • 睡眠酩酊: 起きた直後や、居眠りから覚めた直後に、意識がはっきりせず、混乱したり、ろれつが回らなかったりする状態です。
    記憶が曖昧になることもあります。
  • ナルコレプシーに特徴的な症状: 過眠症の一種であるナルコレプシーでは、上記に加えて以下のような特徴的な症状が見られることがあります。
    • 情動性脱力発作(カタプレキシー): 強い感情の動き(笑う、怒る、驚くなど)をきっかけに、突然体の力が抜けてしまう発作です。
      数秒から数分続き、意識は保たれることが多いですが、重度の場合は転倒する危険があります。
    • 入眠時幻覚・入眠時麻痺(金縛り): 眠りに入る直前や、目が覚めた直後に、現実感のある幻覚を見たり(入眠時幻覚)、体が動かせなくなる(入眠時麻痺、いわゆる金縛り)ことがあります。

これらの症状は、学業や仕事のパフォーマンス低下、対人関係の問題、事故のリスク増加など、深刻な影響を及ぼす可能性があります。

過眠症の種類|特発性過眠症・ナルコレプシーなど

過眠症は、その原因や特徴によっていくつかの主要なタイプに分類されます。

分類 主な特徴 診断のポイント 治療の方向性
ナルコレプシー 日中の強い眠気、情動性脱力発作(カタプレキシー)、入眠時幻覚、金縛り、睡眠麻痺。夜間睡眠の分断。 PSG、MSLT、髄液オレキシン濃度測定。 薬物療法(日中の眠気、カタプレキシー対策)。
特発性過眠症 日中の強い眠気。長時間睡眠をとっても眠気が解消されにくい。覚醒困難(睡眠慣性)。情動性脱力発作は伴わない。 PSG、MSLT。ナルコレプシーや他の原因を除外。 薬物療法(日中の眠気対策)。
クライネ・レビン症候群 数日から数週間にわたる過眠期と、正常な覚醒期を繰り返す。過眠期には多食や性欲亢進を伴うことも。 特徴的な経過、他の原因を除外。発作時のPSG。 過眠期には対症療法。発作予防薬が試みられることも。
反復性過眠症 クライネ・レビン症候群に似るが、多食などを伴わない場合。 クライネ・レビン症候群に準じる。 対症療法、予防薬。
長時間睡眠者 10時間以上の睡眠を日常的に必要とするが、日中の眠気はほとんどない。 PSG、MSLT。日中の眠気がないことを確認。 治療は不要。体質として受け入れる。
他の睡眠障害による過眠 睡眠時無呼吸症候群(SAS)、周期性四肢運動障害など、他の睡眠障害が原因で夜間睡眠の質が低下し、日中の眠気を引き起こす。 原因となる睡眠障害の診断(PSGなど)。 原因となる睡眠障害の治療。
医学的疾患による過眠 神経疾患、内分泌疾患、感染症などが原因で過眠が生じる。 原因疾患の診断(血液検査、画像検査など)。 原因疾患の治療。
精神疾患による過眠 うつ病(特に非定型うつ病)、双極性障害などが原因で過眠が生じる。 精神科医による診断と治療。 精神疾患の治療。
薬剤または物質による過眠 鎮静作用のある薬(抗ヒスタミン薬、抗精神病薬など)、アルコール、薬物などが原因で過眠が生じる。 服薬歴や物質使用歴を確認。 原因薬剤の中止または変更。
睡眠不足症候群 慢性的な睡眠不足(睡眠時間の短縮)が原因で日中の眠気が生じる。 睡眠日誌、アクチグラフィ。適切な睡眠時間を確保すると症状が改善する。 睡眠時間の確保、睡眠衛生教育。

過眠症の診断には、これらの種類を適切に鑑別することが重要です。
特に、ナルコレプシー特発性過眠症は「中枢性過眠症」と呼ばれ、脳の覚醒維持機能に問題があるとされる主要な過眠症です。
これらの診断には専門的な検査が必要となります。

過眠症の原因

過眠症の原因は多岐にわたり、一つではなく複数の要因が組み合わさっていることも珍しくありません。
原因を特定することが、適切な治し方を見つけるための第一歩となります。

病気による原因|睡眠時無呼吸症候群など

過眠症の原因として最も一般的なのが、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」です。
SASがあると、夜間睡眠中に何度も覚醒が起こり、睡眠の質が著しく低下します。
その結果、たとえ長時間寝ていても脳や体が十分に休息できず、日中に強い眠気を引き起こします。
大きないびきや、睡眠中の呼吸停止を指摘されたことがある場合は、SASの可能性が高いと言えます。

SAS以外にも、以下のような様々な病気が過眠の原因となり得ます。

  • ナルコレプシー: 脳の覚醒を維持する神経伝達物質「オレキシン」を作る細胞が減少し、オレキシンが不足することが主な原因と考えられています。
    遺伝的な要因も関与すると言われています。
  • 特発性過眠症: 睡眠検査を行っても、ナルコレプシーや他の明確な原因となる睡眠障害が見つからない過眠症です。
    脳の機能異常が示唆されますが、具体的なメカニズムはまだ十分に解明されていません。
  • 周期性四肢運動障害/むずむず脚症候群: 睡眠中に足などが不随意にピクついたり(周期性四肢運動障害)、寝ようとすると足に不快な感覚が生じ動かさずにはいられなくなったり(むずむず脚症候群)することで、睡眠が妨げられ、日中の眠気を招きます。
  • 神経疾患: パーキンソン病、多発性硬化症、脳炎、頭部外傷など、脳の機能に影響を与える病気は、睡眠・覚醒の調節機構を障害し、過眠を引き起こすことがあります。
  • 内分泌疾患: 甲状腺機能低下症、糖尿病、アジソン病(副腎皮質機能低下症)など、ホルモンバランスの異常も過眠の原因となることがあります。
  • その他の身体疾患: 腎不全、肝不全、慢性疼痛を伴う病気、炎症性疾患、貧血なども、体の疲労や睡眠の質の低下を通じて過眠に関与することがあります。

これらの病気が原因で過眠症が疑われる場合は、それぞれの疾患に対する専門的な検査と治療が必要となります。

精神的な原因|ストレスやうつ病

精神的な要因も、過眠症の原因として重要です。
特にうつ病は、過眠を伴うことがあります。
「非定型うつ病」と呼ばれるタイプでは、気分の落ち込みや無気力感に加え、過食や過眠といった症状が強く現れることがあります。
単に睡眠時間が長くなるだけでなく、どれだけ寝ても疲れが取れない、日中の眠気が強いといった形で現れます。

うつ病以外にも、不安障害心的外傷後ストレス障害(PTSD)なども、精神的なストレスや脳機能への影響を通じて睡眠パターンを乱し、結果的に日中の過度な眠気を引き起こすことがあります。

  • ストレス: 慢性的なストレスは、自律神経やホルモンバランスを乱し、睡眠の質を低下させます。
    夜間によく眠れないことで、日中の眠気につながることもありますし、ストレス自体が脳の覚醒レベルに影響を与える可能性も指摘されています。
  • 精神的な疲労: 精神的に追い詰められている、燃え尽き症候群のような状態も、過度の眠気を引き起こすことがあります。

精神的な原因による過眠症は、精神科や心療内科での専門的な評価と治療が必要となる場合が多いです。

生活習慣による原因

日常の生活習慣も、過眠症の原因や悪化要因となり得ます。
厳密には過眠症そのものとは区別される「睡眠不足症候群」や「概日リズム睡眠障害」も、広義には日中の過度な眠気を引き起こすため、原因として考慮する必要があります。

  • 慢性的な睡眠不足: 日々の睡眠時間が推奨される時間(多くの成人では7〜8時間)よりも著しく短い状態が続くことです。
    体が睡眠負債を抱え込み、強い眠気として現れます。
  • 不規則な生活リズム: 夜勤や交代勤務、海外への頻繁な移動(時差ボケ)などにより、睡眠・覚醒のリズムが乱れることです。
    体内時計が外部の環境とずれることで、適切な時間に眠れず、日中に眠気が生じやすくなります(概日リズム睡眠障害)。
  • 睡眠を妨げる習慣:
    • 就寝直前のカフェインやアルコール、ニコチンの摂取。
      これらは睡眠を浅くしたり、途中で目が覚めたりする原因となります。
    • 就寝前のスマホやPCの使用。
      画面のブルーライトは脳を覚醒させ、寝つきを悪くします。
    • 寝る前の激しい運動。
    • 寝室の環境が悪い(明るすぎる、うるさい、温度や湿度が不適切)。
  • 過度の食事や運動の不足/過多: バランスの取れない食事や運動不足、または過度な運動も、体のリズムや疲労感に影響し、睡眠パターンを乱す可能性があります。

これらの生活習慣による過眠は、睡眠衛生と呼ばれる健康的な睡眠習慣を身につけることで大きく改善する可能性があります。

原因不明の場合(特発性過眠症)

前述したように、特発性過眠症は、睡眠ポリグラフ検査などの専門的な検査を行っても、ナルコレプシーや睡眠時無呼吸症候群、その他の明らかな医学的・精神的な原因、薬剤、または慢性的な睡眠不足が見つからない過眠症です。

この場合、脳の覚醒を維持するシステムに何らかの機能的な異常があると推測されていますが、そのメカニズムはまだ完全に解明されていません。
診断には、他の可能性を全て除外することが必要となります。

特発性過眠症と診断された場合でも、日中の過度な眠気という症状自体は日常生活に大きな影響を及ぼすため、症状を緩和するための治療が行われます。
原因が不明であるからといって、治療法がないわけではありません。

過眠症のセルフチェック・診断

「自分の眠気は過眠症なのか?」と疑問に思っている方は、まず簡単なセルフチェックを行ってみることから始められます。
ただし、セルフチェックはあくまで目安であり、正確な診断のためには必ず専門医の診察を受ける必要があります。

簡単チェックテスト

日中の眠気の程度を客観的に評価するための指標として、エプワース眠気尺度 (Epworth Sleepiness Scale; ESS) がよく用いられます。
これは、特定の状況下で居眠りをする可能性を自己評価する質問票です。
以下のリストはESSを参考に、一般的な過眠症の症状に焦点を当てた簡易チェックリストです。

過去1ヶ月間を振り返り、以下の状況でどのくらいの確率で居眠りをしてしまうか、一番近いものを選んでください。

  • 座って本を読んでいるとき
  • 午後にじっと座ってテレビを見ているとき
  • 大勢の中で座って動かないでいるとき(例:会議中、映画館)
  • 乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき
  • 午後に横になって休息をとっているとき
  • 座って人と話しているとき
  • 昼食後(アルコールなし)静かに座っているとき
  • 自動車を運転中に数分間停車しているとき(信号待ちなど)

可能性の選択肢:

  • 0: まったくない
  • 1: 少しある
  • 2: かなりある
  • 3: 非常に高い

それぞれの項目で選んだ数字を合計してください。

合計スコア 可能性
0〜9点 正常な範囲の眠気です。
10〜15点 平均以上の眠気があります。睡眠障害の可能性を疑い、専門医に相談することを検討しましょう。
16点以上 強い眠気があります。過眠症や他の深刻な睡眠障害の可能性が高く、早急に専門医の診察を受けることを強く推奨します。

【ご注意】 このチェックテストは簡易的なものであり、医学的な診断ではありません。
高得点が出た場合や、日中の眠気で日常生活に支障を感じている場合は、必ず医療機関を受診してください。

病院での診断方法

過眠症の診断は、専門医による詳細な問診、睡眠に関する様々な情報の収集、そして客観的な睡眠検査によって行われます。

  1. 詳細な問診:
    • 現在の主な症状(日中の眠気の程度、居眠りの頻度、覚醒困難の有無など)。
    • 睡眠時間、就寝・起床時間、睡眠の質(寝つき、中途覚醒、早朝覚醒など)。
    • いびき、呼吸停止、脚のぴくつきなどの有無(ご家族に確認してもらうことも重要)。
    • 情動性脱力発作、入眠時幻覚、金縛りなどのナルコレプシーに特徴的な症状の有無。
    • これまでの病歴、精神疾患の有無、現在服用中の薬(市販薬やサプリメントも含む)。
    • 飲酒、喫煙、カフェイン摂取の習慣。
    • 仕事や学業、生活習慣(夜勤、交代勤務など)。
    • 家族の睡眠に関する病気の既往歴。
  2. 睡眠日誌:
    • 1〜2週間程度、毎日の就寝・起床時間、夜間覚醒の回数や時間、日中の仮眠の回数や時間、眠気の程度などを記録します。
      ご自身の睡眠パターンを客観的に把握するのに役立ち、診断の重要な手がかりとなります。
  3. 客観的な睡眠検査:
    • 終夜睡眠ポリグラフ検査 (Polysomnography; PSG): 医療機関に一泊入院し、睡眠中の脳波、眼球運動、顎の筋電図、呼吸(鼻・口の気流、胸腹部の動き)、心電図、血中酸素飽和度、体位、脚の動きなどを同時に記録する検査です。
      睡眠の深さや質、睡眠中に起こる異常(無呼吸、低呼吸、周期性四肢運動など)を詳細に調べることができ、睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害の診断に不可欠です。
    • 反復睡眠潜時検査 (Multiple Sleep Latency Test; MSLT): PSGの翌日に行われることが多い検査です。
      日中の眠気の程度を客観的に評価し、ナルコレプシーや特発性過眠症の診断に用いられます。
      2時間おきに計4〜5回、暗く静かな部屋で仮眠を試みてもらい、眠りにつくまでの時間(睡眠潜時)を測定します。
      ナルコレプシーでは睡眠潜時が著しく短縮し、REM睡眠が早期に出現するという特徴が見られます。
    • 維持睡眠検査 (Maintenance of Wakefulness Test; MWT): MSLTと同様に日中に行われますが、こちらは「眠気をこらえて起きていられる能力」を評価する検査です。
      過眠症の診断よりは、治療効果の判定や、特定の職業(運転手など)の適性評価に用いられることが多いです。
    • アクチグラフィ: 腕時計のような小型装置を装着し、数週間から1ヶ月程度、活動量を測定します。
      これにより、客観的な睡眠・覚醒パターンを把握し、睡眠日誌の信頼性を補完したり、概日リズム睡眠障害の診断に役立てたりします。
  4. その他の検査:
    • 原因となる病気が疑われる場合、血液検査(甲状腺ホルモン、血糖値、炎症反応など)、頭部MRIなどの画像検査が行われることもあります。
    • ナルコレプシーが強く疑われる場合、髄液中のオレキシン濃度を測定することもあります。

これらの検査結果と問診の内容を総合的に判断し、専門医が過眠症の種類と原因を確定診断します。

1日何時間寝るのが目安?

「適切な睡眠時間は何時間か?」という疑問はよく聞かれますが、必要な睡眠時間には個人差が非常に大きく、年齢によっても変化します。
一般的に成人の場合、7〜8時間の睡眠をとる人が多いとされていますが、これはあくまで目安です。

重要なのは、睡眠時間だけでなく、日中の眠気の有無です。

  • ショートスリーパー: 6時間未満の睡眠でも日中に眠気を感じず、元気に活動できる人。
  • ロングスリーパー: 9時間以上の睡眠が必要で、長時間寝ないと日中に眠気を感じるが、必要な睡眠時間を確保すれば日中の活動に支障がない人。

過眠症の場合は、推奨されるか、あるいはそれ以上の十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、日中に強い眠気を感じてしまうという点が、単に睡眠時間が長いロングスリーパーとは異なります。
ロングスリーパーは病気ではなく、体質と考えられます。

過眠症と診断された場合は、必要な睡眠時間を確保する努力をしても日中の眠気が解消されないため、睡眠時間の調整だけで「治る」わけではありません。
専門医の診断に基づいた治療が必要となります。

過眠症の治し方|病院での治療法

過眠症の治し方は、その根本的な原因や過眠症の種類によって異なります。
専門医による診断に基づき、個々の患者さんに最適な治療計画が立てられます。
多くの場合、原因への対処と、日中の眠気という症状そのものを緩和するための治療が並行して行われます。

薬物療法

過眠症による日中の強い眠気を改善するために、薬物療法が用いられることがあります。
特に、中枢性過眠症(ナルコレプシー、特発性過眠症)に対する治療の中心となります。

薬剤の種類 主な効果 特徴・注意点 過眠症の種類
モダフィニル 覚醒を促進し、日中の眠気を軽減する。 依存性が比較的少なく、副作用も少ないとされるが、頭痛、吐き気、不眠などが起こりうる。精神疾患がある場合や心血管疾患がある場合は慎重な投与が必要。 ナルコレプシー、特発性過眠症。
アルモダフィニル モダフィニルと同様の覚醒促進作用。 モダフィニルよりも半減期が長い。効果や副作用はモダフィニルに類似。 ナルコレプシー、特発性過眠症。
メチルフェニデート 中枢神経刺激薬。覚醒作用が強い。 依存性や副作用(動悸、血圧上昇、不眠、神経過敏など)のリスクがあるため、慎重な管理が必要。効果が高い反面、使用には十分な注意が求められる。 ナルコレプシー、特発性過眠症(モダフィニルで効果不十分な場合など)。
ペモリン 中枢神経刺激薬。(現在、日本国内での製造・販売は中止されているが、海外や過去の治療法として言及されることがある) 肝機能障害や依存性のリスクがあり、現在はほとんど使用されない。 ナルコレプシー(過去の選択肢)。
ナトリウムオキシベート 夜間睡眠を改善し、日中の眠気やナルコレプシーの情動性脱力発作を軽減する。 就寝前と夜間に2回服用する。依存性や呼吸抑制のリスクがあるため、専門施設での処方・管理が必要。味覚異常、吐き気、頭痛などの副作用も報告されている。 ナルコレプシー。
クロミプラミン 三環系抗うつ薬。ナルコレプシーの情動性脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺に効果がある場合がある。 口渇、便秘、排尿困難、眠気などの副作用。日中の眠気そのものへの効果は強くない。 ナルコレプシー。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) / セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 (SNRI) 抗うつ薬。クロミプラミンと同様に、ナルコレプシーの情動性脱力発作などに効果がある場合がある。うつ病が原因の過眠症にも使用される。 三環系抗うつ薬よりは副作用が少ないとされるが、吐き気、不眠、性機能障害などが起こりうる。 ナルコレプシー、精神疾患による過眠。

これらの薬剤は、日中の眠気を完全に消失させるわけではなく、軽減することで日常生活を送りやすくすることが目的です。
効果には個人差があり、副作用のリスクも伴うため、必ず医師の指示のもと、用法・用量を厳守して服用することが重要です。
自己判断での増量や中止は危険です。

認知行動療法

認知行動療法 (Cognitive Behavioral Therapy; CBT) は、精神的な要因や生活習慣が過眠症に関与している場合に有効な治療法です。
特に、健康的な睡眠習慣を身につけるための「睡眠衛生教育」が含まれます。

  • 睡眠衛生教育: 規則正しい生活リズムの重要性、寝室環境の整備、就寝前の過ごし方、カフェインやアルコール、ニコチンの影響など、質の高い睡眠をとるための基本的な知識と具体的な方法を学び、実践します。
  • ストレス管理: ストレスは睡眠の質を低下させ、過眠症を悪化させる要因となり得ます。
    リラクゼーション技法(深呼吸、筋弛緩法、瞑想など)や、ストレスの原因となる考え方や状況への対処法を学びます。
  • 睡眠に関する誤った考え方の修正: 「眠れないといけない」「昼間に眠くなるのはだらけているからだ」といった、睡眠に関するネガティブな考え方や、不適切な行動パターンを特定し、より現実的で健康的な考え方や行動へと修正していきます。
  • 生活リズムの調整: 不規則な勤務などで生活リズムが乱れている場合、可能な範囲で規則正しい生活を送るための具体的なアドバイスやサポートを行います。

認知行動療法は、薬物療法と併用されることもありますし、精神疾患が原因の過眠症においては、その根本治療として重要な役割を果たします。

原因疾患への対処

過眠症の原因が他の病気である場合(睡眠時無呼吸症候群、うつ病、神経疾患など)、その原因疾患に対する治療を優先的かつ並行して行うことが、過眠症の改善に繋がります。

  • 睡眠時無呼吸症候群 (SAS) の場合:
    • CPAP療法 (持続陽圧呼吸療法): 睡眠中に専用の装置を使って鼻マスクから空気を送り込み、気道が開いた状態を保つ治療法です。
      SASによる過眠症に対して非常に効果的です。
    • 口腔内装置: 歯科医師が作成するマウスピースのような装置で、睡眠中に下顎を前方に保持し、気道を広げます。
      軽症〜中等症のSASに用いられます。
    • 手術: 肥満やアデノイド・扁桃肥大など、気道が狭くなっている構造的な原因がある場合、手術によって改善が期待できることがあります。
    • 減量: 肥満はSASの大きなリスク要因であり、体重を減らすことでSASが改善し、過眠も軽減されることがあります。
  • 周期性四肢運動障害/むずむず脚症候群の場合:
    • ドーパミン作動薬などの薬物療法が用いられ、睡眠中の不随意運動や不快な感覚を抑制し、睡眠の質を改善します。
  • うつ病などの精神疾患の場合:
    • 抗うつ薬や精神療法など、精神疾患そのものに対する治療を行います。
      精神状態が安定することで、過眠を含む睡眠障害が改善することが多いです。
  • その他の医学的疾患の場合:
    • 甲状腺機能低下症であれば甲状腺ホルモンの補充療法、糖尿病であれば血糖コントロールなど、それぞれの疾患に対する標準的な治療を行います。

原因疾患を適切に治療することが、過眠症を「治す」あるいは「改善させる」上で最も重要となるケースが多いです。

根治的な治療法は?

過眠症の種類や原因によっては、根治が難しい場合もあります

  • 睡眠時無呼吸症候群 (SAS): CPAP療法は症状を劇的に改善させますが、装置を使わないと無呼吸が再発するため、根本的な「治癒」というよりは「コントロール」に近いと言えます。
    ただし、手術や減量によって完治することもあります。
  • ナルコレプシー: 現在の医療では、ナルコレプシーを完全に治す方法は見つかっていません。
    脳内のオレキシン細胞の減少という根本原因を修復することは難しいため、薬物療法などによって日中の眠気や情動性脱力発作などの症状をコントロールし、日常生活を送りやすくすることが治療の主な目標となります。
  • 特発性過眠症: 同様に、明確な原因が不明であるため、根治的な治療法は確立されていません。
    症状を和らげるための薬物療法が中心となります。

過眠症の治療は、必ずしも「完全に治す」ことだけを目標とするのではなく、「症状を軽減し、生活の質 (QOL) を向上させる」ことを重視します。
適切な治療を受けることで、日中の眠気をコントロールし、以前よりも活動的な生活を送れるようになる可能性は十分にあります。
長期的な視点で、病気とうまく付き合っていくための治療計画を立てることが重要です。

過眠症を自分で治す・緩和する方法

過眠症の診断を受けたり、その可能性を疑ったりしている方が、医療機関での治療と並行して、あるいは受診を検討する段階で、ご自身でできる対策もいくつかあります。
これらは過眠症そのものを「治す」というよりは、症状を「緩和」したり、治療の効果を「サポート」したりすることを目的としています。
自己判断で専門的な治療を中断したり、これらの対策だけで済ませたりせず、必ず専門医の指導のもとで行ってください。

睡眠習慣の改善

「睡眠衛生」と呼ばれる、健康的な睡眠をとるための習慣を実践することは、過眠症の症状を和らげる上で非常に重要です。

  • 規則正しい生活リズム: 毎日、できるだけ同じ時間に寝て、同じ時間に起きるようにしましょう。
    週末も平日との差を1〜2時間以内にとどめるのが理想です。
    体内時計が整うことで、睡眠・覚醒のリズムが安定しやすくなります。
  • 寝室環境の整備: 寝室は睡眠に適した環境に整えましょう。
    • 光: 寝る前に強い光を浴びないようにし、寝室は真っ暗にするか、ごく弱い常夜灯にとどめましょう。
      朝は日光を浴びることで覚醒を促せます。
    • 音: 静かで落ち着ける環境を作りましょう。
      必要であれば耳栓の使用も検討します。
    • 温度・湿度: 快眠のためには、室温は20〜22℃程度、湿度は50〜60%程度が目安とされています。
      ご自身にとって快適な環境を見つけましょう。
  • 就寝前のルーチン: 就寝1時間前からは、心身をリラックスさせるための習慣を取り入れましょう。
    ぬるめのお風呂に入る、軽い読書、穏やかな音楽を聴く、ストレッチなどがおすすめです。
  • 就寝前の刺激物を避ける: 就寝数時間前からは、カフェイン(コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなど)、アルコール、ニコチンの摂取を避けましょう。
    これらは覚醒作用や睡眠を浅くする作用があります。
  • 寝る前のスマホ・PCを避ける: 画面から発せられるブルーライトは脳を覚醒させてしまいます。
    就寝1〜2時間前からは使用を控えるようにしましょう。
  • 寝床は眠るためだけの場所にする: 寝床で食事をしたり、テレビを見たり、考え事をしたりするのは避けましょう。
    「寝床=眠る場所」という関連付けを強くすることで、寝つきが良くなることがあります。

短い仮眠の効果的な取り方

日中の強い眠気がある場合、適切なタイミングで短い仮眠をとることが、眠気を緩和し、その後の活動効率を高めるのに有効です。
ただし、長時間や遅すぎる時間の仮眠は、夜間の睡眠を妨げる可能性があるため注意が必要です。

  • パワーナップ: 15分から20分程度の非常に短い仮眠を指します。
    覚醒度を高め、集中力や注意力を回復させる効果が期待できます。
    眠りが深くなる前に起きることで、寝覚めも比較的すっきりしやすくなります。
  • 仮眠のタイミング: 午後、眠気のピークを感じる時間帯(多くの人は昼食後から午後にかけて)にとるのが効果的です。
    夕方以降の遅すぎる時間の仮眠は、夜間の寝つきを悪くする可能性があるため、できるだけ避けましょう。
  • 仮眠時間の厳守: 目覚まし時計をセットするなどして、設定した時間以上に寝てしまわないように注意しましょう。
    長く寝すぎると、かえってだるさを感じたり、夜間の睡眠に悪影響を及ぼしたりすることがあります。
  • 静かで暗い環境: 可能であれば、仮眠をとる際も静かで暗い環境を確保しましょう。

ナルコレプシーの患者さんでは、短い仮眠(「居眠り発作」と区別される計画的な仮眠)が日中の眠気対策として有効な場合があります。

日中の眠気対策

仮眠以外にも、日中の眠気を乗り切るための工夫があります。

  • 適度な運動: 日中に軽い運動やウォーキングをすることで、覚醒レベルを高め、眠気を紛らわせることができます。
    ただし、就寝直前の激しい運動は避けましょう。
  • 日光を浴びる: 特に午前中に日光を浴びることは、体内時計を調整し、覚醒を促す効果があります。
  • 休憩を挟む: 集中力が途切れて眠気を感じ始めたら、無理せず休憩を挟みましょう。
    立ち上がって体を動かす、顔を洗う、ストレッチをする、深呼吸をするなどが有効です。
  • 作業の工夫: 眠気を感じやすい時間帯には、単調な作業は避け、可能であれば集中力が必要な作業は眠気が少ない時間帯に行うように計画します。
  • 刺激を利用する: ガムを噛む、冷たい水を飲む、ミント系の香りを嗅ぐなども一時的な眠気対策として有効な場合があります。
  • 重要な活動前の対策: 会議や運転など、眠気が許されない状況の前には、あらかじめ短い仮眠をとったり、カフェイン(医師の許可がある場合)を上手に利用したりといった対策を検討します。

ストレス管理

ストレスは過眠症の悪化要因となり得るため、適切に管理することが重要です。

  • リラクゼーション技法: 瞑想、ヨガ、腹式呼吸、自律訓練法など、ご自身に合ったリラクゼーション方法を見つけ、習慣的に行うことで、心身の緊張を和らげ、睡眠の質を高める効果が期待できます。
  • 趣味や気分転換: ストレスの原因から一時的に離れ、好きなことや楽しいことに時間を使うことも重要です。
  • 人に相談する: 友人、家族、職場の同僚など、信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることがあります。
  • 専門家のサポート: ストレスの原因が複雑であったり、ご自身での管理が難しい場合は、心理士やカウンセラーといった専門家のサポートを受けることも有効です。
    認知行動療法などでストレスへの対処法を学ぶこともできます。

これらの自分でできる対策は、あくまで治療の補助や日常生活での工夫です。
過眠症の症状が強い場合や、原因疾患が疑われる場合は、必ず専門医の診断と指導を受けるようにしてください。

過眠症は病院に行くべき?何科を受診すべきか

日中の眠気が続くと、「これは病気なのだろうか?」「病院に行くべきか?」と悩む方も多いでしょう。
過眠症は、適切な診断と治療によって症状が改善し、生活の質を大きく向上させることが可能な病気です。
一人で抱え込まず、必要であれば医療機関を受診することが大切です。

受診を検討すべき目安

以下のような状態に当てはまる場合は、医療機関を受診することを強く検討してください。

  • 日中の眠気が強く、日常生活や仕事、学業に支障をきたしている:
    • 集中力が持続しない、ミスが増える。
    • 会議中や授業中に頻繁に居眠りしてしまう。
    • 人と話している最中に寝てしまう。
    • 運転中に眠気に襲われたり、ヒヤリとした経験がある。
    • 趣味や社会活動を楽しめなくなった。
  • 十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、日中の眠気が取れない:
    • 夜に8時間以上寝ているのに、昼間も耐え難い眠気に襲われる。
    • 週末に長時間寝ても、週明けの眠気が解消されない。
  • 睡眠に関する他の症状がある:
    • 大きないびきをかく、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された(睡眠時無呼吸症候群の可能性)。
    • 寝ている間に足がピクつく、むずむずする(周期性四肢運動障害/むずむず脚症候群の可能性)。
    • 笑ったり驚いたりした時に体の力が抜ける(情動性脱力発作)、金縛りや怖い夢を見る(ナルコレプシーの可能性)。
    • 朝、起きるのが非常に困難で、すぐに活動できない(覚醒困難)。
  • 原因として考えられる他の病気がある:
    • うつ病やその他の精神疾患の既往がある。
    • 神経疾患や内分泌疾患など、過眠の原因となりうる病気を指摘されている。
  • 市販薬やサプリメント、アルコールなどに頼っても眠気が改善しない、または悪化する。
  • ご家族に過眠症や睡眠関連疾患の人がいる。

これらのサインが見られる場合、単なる疲労や寝不足ではなく、専門的な治療が必要な過眠症や他の睡眠障害である可能性が高いです。
早めに受診することで、適切な診断を受け、症状を改善させることができます。

脳神経内科、精神科、睡眠専門医など

過眠症の診断・治療は、専門的な知識と設備が必要となる場合があります。
受診すべき科は、過眠症の原因や疑われる病気によって異なりますが、最も理想的なのは「睡眠専門医」や「睡眠外来」を設けている医療機関です。

  • 睡眠専門医/睡眠外来: 日本睡眠学会の認定医などが在籍しており、睡眠障害全般に対する専門的な診断・治療が可能です。
    睡眠ポリグラフ検査(PSG)や反復睡眠潜時検査(MSLT)といった専門的な検査を受けることができます。
    過眠症の原因が特定されていない場合や、複雑な症状がある場合に最初から受診するのに適しています。
  • 脳神経内科: ナルコレプシーや特発性過眠症といった中枢性過眠症は、脳の機能異常と関連があるため、脳神経内科で診察・検査を行うことがあります。
  • 精神科/心療内科: うつ病や不安障害など、精神的な要因が過眠症の原因となっている場合に受診します。
    精神疾患の治療と並行して睡眠障害の改善を目指します。
  • 呼吸器内科/耳鼻咽喉科: 大きないびきや睡眠中の呼吸停止などがあり、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が強く疑われる場合に受診します。
    SASの診断とCPAP療法などの治療を行います。

どの科を受診すべきか迷う場合:

  • まずはかかりつけ医に相談し、症状を説明して適切な専門医を紹介してもらうのが良い方法です。
  • 総合病院には複数の診療科があるため、睡眠外来がなくても、症状に応じて適切な科(脳神経内科、精神科、呼吸器内科など)を紹介してもらえる可能性があります。
  • 日本睡眠学会のウェブサイトなどで、お住まいの地域の睡眠専門医や認定施設を検索することができます。

初めての受診では、これまでの症状の経過、睡眠日誌、服用中の薬などが診断の助けとなりますので、事前に準備しておくとスムーズです。

過眠症に関するよくある質問

過眠症に関して、患者さんやご家族からよく寄せられる質問にお答えします。

Q1: 過眠症は放っておいても治りますか?

A1: 過眠症の原因が一時的な体調不良や環境の変化によるものである場合は、原因が解消されれば改善することもあります。
しかし、睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシー、特発性過眠症などの病気が原因である場合は、自然に治ることはほとんどありません
適切な診断と治療を受けずに放置すると、症状が悪化したり、日常生活に深刻な影響が出たり、合併症のリスクが高まったりする可能性があります。
日中の強い眠気が続く場合は、自己判断せず専門医に相談することが重要です。

Q2: 睡眠時間が十分なのに眠いのはなぜですか?

A2: 睡眠時間が十分でも眠いのは、睡眠の質が低下しているか、脳の覚醒維持機能に問題があることが考えられます。

  • 睡眠の質の低下: 睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害などがあると、夜間睡眠中に覚醒が頻繁に起こり、脳が十分に休息できていません。
  • 脳の覚醒維持機能の問題: ナルコレプシーや特発性過眠症では、脳が日中に覚醒状態を適切に保つことが難しくなります。

その他、うつ病や慢性的な疲労、一部の薬剤なども原因となり得ます。
睡眠時間だけでなく、睡眠の質や日中の眠気の質(眠り込むか、ぼんやりするだけかなど)も診断の重要な要素となります。

Q3: 過眠症は遺伝しますか?

A3: 過眠症の種類によっては、遺伝的な要因が関与することが分かっています。
特にナルコレプシーは、特定の遺伝子型(HLA-DQB1*0602)を持つ人に発症しやすいことが知られています(ただし、この遺伝子型を持っていても必ず発症するわけではありません)。
特発性過眠症でも家族内での発症が見られることがありますが、遺伝のメカニズムはまだ完全には解明されていません。
ご家族に過眠症の方がいる場合は、ご自身の症状についても注意が必要です。

Q4: 過眠症の治療薬は安全ですか?副作用はありますか?

A4: 過眠症の治療薬は、専門医が患者さんの状態を評価した上で処方されます。
適切に使用すれば、日中の眠気を効果的に軽減し、生活の質を向上させることが期待できます。
しかし、どのような薬にも副作用のリスクは伴います
中枢刺激薬であれば、不眠、頭痛、動悸、血圧上昇、神経過敏などが起こりうるほか、依存性のリスクも考慮が必要です。
ナトリウムオキシベートなど、特定の薬剤は厳重な管理のもとで使用されます。
重要なのは、医師の指示された用法・用量を守り、気になる副作用があればすぐに医師に相談することです。
自己判断で薬の量を調整したり、服用を中止したりすることは絶対に避けてください。

Q5: 過眠症と「ロングスリーパー」は同じですか?

A5: 同じではありません
「ロングスリーパー」は、一般的に推奨されるよりも長い睡眠時間(9時間以上など)を必要としますが、必要な睡眠時間を確保すれば日中の眠気はなく、問題なく活動できる人を指します。
これは体質的なものであり、病気ではありません。
一方、過眠症は、十分な睡眠時間をとっているにもかかわらず、日中に強い眠気を感じ、それが日常生活に支障をきたしている状態です。
日中の過度な眠気の有無が、ロングスリーパーと過眠症を区別する重要なポイントです。

Q6: 眠気覚ましの方法(コーヒーなど)は過眠症に効果がありますか?

A6: コーヒーなどに含まれるカフェインは一時的に覚醒レベルを高める効果がありますが、過眠症による強い眠気を根本的に解消することはできません。
一時的に眠気を紛らわせることはできても、効果が切れるとより強い眠気に襲われたり、夜間の睡眠を妨げて過眠症を悪化させたりする可能性があります。
また、カフェインの摂取量が過剰になると、動悸や不安などの副作用を引き起こすこともあります。
医師の指示なく多量のカフェインで眠気をごまかすことは推奨されません。
どうしても必要な場合は、医師に相談し、摂取量やタイミングについてアドバイスを受けてください。

まとめ

過眠症は、夜間十分な睡眠をとっているにもかかわらず日中に耐え難い眠気に襲われる病気であり、その原因は睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、特発性過眠症といった様々な病気、精神的な要因、生活習慣など多岐にわたります。
単なる「寝不足」や「怠け」として軽視されがちですが、適切な診断と治療が必要であり、放置すると日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります

この記事では、過眠症の主な症状や種類、考えられる様々な原因、ご自身でできる簡単なチェックテスト、そして病院での診断方法や具体的な治療法(薬物療法、認知行動療法、原因疾患への対処)について解説しました。
また、睡眠習慣の改善や日中の眠気対策など、ご自身でできる緩和方法もご紹介しました。

もしあなたが、日中の強い眠気で悩んでおり、それが日常生活や仕事、学業に支障をきたしている場合は、一人で抱え込まず、まずは医療機関に相談することを強く推奨します。
「睡眠専門医」や「睡眠外来」のある医療機関が最も適していますが、かかりつけ医に相談したり、症状に応じて脳神経内科、精神科、呼吸器内科などを受診することも検討できます。

過眠症は、原因を特定し、適切な治療を受けることで、症状を軽減し、生活の質を大きく改善することが可能な病気です。
諦めずに専門家のサポートを受けながら、つらい眠気を克服するための「治し方」を見つけていきましょう。


免責事項: 本記事は、過眠症に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスや診断を代替するものではありません。ご自身の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。治療の決定は、医師と相談の上、ご自身の判断で行ってください。


監修者情報

(監修者氏名・所属・肩書きなどが入ります)
例:〇〇 〇〇(睡眠専門医/〇〇大学附属病院 精神科 医師)

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