顔や体の気になる赤み。それはもしかしたら「毛細血管拡張症」かもしれません。
皮膚の表面近くにある毛細血管が拡張し、透けて見えてしまうことで生じるこの症状は、見た目の問題だけでなく、原因によっては underlying な皮膚疾患や全身疾患が隠れていることもあります。
なぜ毛細血管が目立つようになるのでしょうか?そして、その赤みを改善するためにはどのような方法があるのでしょうか?
この記事では、毛細血管拡張症の原因、顔や体に現れる症状の特徴、自力で治せるのかどうか、そして現在主流となっているレーザー治療や保険適用、費用について、詳しく解説します。
長年の悩みである赤みを改善し、自信を取り戻したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
毛細血管拡張症とは?原因と症状を解説
毛細血管拡張症の定義とメカニズム
毛細血管拡張症(Telangiectasia)とは、皮膚の真皮の浅い部分にある細い血管(毛細血管や細静脈)が異常に拡張し、皮膚を通して赤い線や網目状、点状に見える状態を指します。
通常、毛細血管は肉眼ではほとんど見えませんが、拡張することで皮膚の表面から透けて認識できるようになります。
この拡張は、血管の壁が弱くなったり、周囲の組織からの圧力が変化したり、血流の調節機能に異常が生じたりすることで起こると考えられています。
拡張した血管は、一時的に押すと色が消えることがありますが、すぐに再び赤みが現れるのが特徴です。
特に顔や首、デコルテなど、皮膚の薄い部分や外部刺激を受けやすい部分にできやすい傾向があります。
毛細血管拡張症自体は、多くの場合健康に直接的な悪影響を及ぼすものではありませんが、美容的な観点から悩みの種となることが少なくありません。
しかし、中には特定の疾患のサインとして現れる場合もあるため、安易に自己判断せず、専門医の診断を受けることが重要です。
主な原因の種類(一次性・二次性)
毛細血管拡張症が発生する原因は多岐にわたります。
大きく分けて、特定の病気や外的な要因によらない「一次性」のものと、何らかの原因疾患や外的要因によって引き起こされる「二次性」のものがあります。
一次性毛細血管拡張症
原因がはっきりしないものを指します。
遺伝的な体質や、加齢による皮膚の変化などが関係していると考えられています。
思春期以降に自然に現れ、徐々に増えたり目立つようになったりすることがあります。
特定の症候群(遺伝性出血性毛細血管拡張症など)に伴うものも一次性に分類されることがありますが、これらは全身症状を伴う特殊なケースです。
二次性毛細血管拡張症
特定の病気や薬剤、環境要因などが原因となって発生するものです。
こちらの方が原因が特定できることが多く、その原因へのアプローチも治療において重要になります。
主な二次性の原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 皮膚疾患:
- 酒さ(Rosacea): 顔の慢性的な炎症性皮膚疾患で、頬や鼻の赤み、ニキビに似た吹き出物、そして毛細血管拡張が特徴的に見られます。
寒暖差や刺激物で赤みが悪化しやすいのが特徴です。 - 慢性的な皮膚炎: アトピー性皮膚炎などで皮膚を掻きむしったり、長期間炎症が続いたりすることで毛細血管が拡張することがあります。
- ステロイド皮膚症: ステロイド外用薬を長期間、特に強いランクのものを漫然と使用することで、皮膚が萎縮して薄くなり、毛細血管が透けて見えやすくなることがあります。
- 放射線皮膚炎: 放射線治療を受けた部位の皮膚に生じることがあります。
- 酒さ(Rosacea): 顔の慢性的な炎症性皮膚疾患で、頬や鼻の赤み、ニキビに似た吹き出物、そして毛細血管拡張が特徴的に見られます。
- 全身疾患:
- 強皮症(Scleroderma): 皮膚や内臓が硬くなる自己免疫疾患で、顔や指などに毛細血管拡張が見られることがあります(クモ状血管腫など)。
- 肝疾患: 慢性肝炎や肝硬変など、肝臓の機能が低下した場合に、顔や胸などにクモ状血管腫が現れることがあります。
これは女性ホルモンの代謝異常が関係していると考えられています。 - 内分泌疾患: クッシング症候群など、特定のホルモン異常が原因で生じることもあります。
- 外的要因:
- 紫外線: 長期間紫外線を浴びることで皮膚の老化が進み、弾力性が失われて毛細血管が拡張しやすくなります。
- 寒暖差: 急激な温度変化に繰り返しさらされることで、血管の収縮・拡張機能が疲弊し、毛細血管拡張が生じやすくなります。
特に冬場の乾燥と暖房、夏場の冷房などが影響します。 - 摩擦や刺激: 皮膚を強くこする、刺激の強い化粧品を常用するなど、物理的な刺激も原因となります。
- アルコール・喫煙: アルコールは一時的に血管を拡張させ、喫煙は血管に負担をかけるため、長期的な影響が考えられます。
- 妊娠: 妊娠中はホルモンバランスの変化や血流量の増加により、一時的に毛細血管拡張が見られることがあります。
- 薬剤:
- 上記で触れたステロイド外用薬の長期使用は代表的な原因の一つです。
このように、毛細血管拡張症の原因は様々であり、単なる体質的なものから、治療が必要な皮膚疾患や全身疾患のサインである可能性もあります。
そのため、原因を正確に診断することが、適切な治療法の選択に不可欠となります。
顔の毛細血管が目立つ原因
顔は体の中でも特に毛細血管拡張症が目立ちやすい部位です。
その主な原因は、顔の皮膚が体に比べて薄く、皮膚のすぐ下にある血管が透けて見えやすいためです。
加えて、顔は外部環境に常にさらされており、様々な刺激を受けやすいため、毛細血管が拡張しやすい条件が揃っています。
顔に毛細血管拡張が目立つ具体的な原因としては、以下のものが挙げられます。
- 酒さ: 顔の赤みの代表的な原因であり、頬、鼻、顎、額にかけて慢性的な赤みや毛細血管拡張が見られます。
しばしばニキビに似た丘疹や膿疱を伴います。
寒暖差、香辛料、アルコール、紫外線などで症状が悪化しやすい特徴があります。 - 寒暖差による赤ら顔: 冷たい外気から暖かい室内に入った時など、急激な温度変化によって顔が真っ赤になる状態が繰り返されることで、毛細血管の柔軟性が失われ、拡張したまま戻りにくくなることがあります。
- 脂漏性皮膚炎: 特に鼻の周りや眉間などに赤みやカサカサが見られる皮膚炎ですが、慢性化すると毛細血管拡張を伴うことがあります。
- ニキビ跡: 炎症性のニキビが治った後に、一時的に赤みが残ることがありますが、炎症が長引いた場合や、体質によっては毛細血管が拡張した状態で跡として残ってしまうことがあります。
- ステロイド皮膚症: 顔はデリケートな部位であるため、アトピー性皮膚炎や湿疹などでステロイド外用薬を指示通りに使わなかったり、自己判断で長期間使い続けたりすると、皮膚が薄くなり毛細血管が透けて見えやすくなることがあります。
- 紫外線ダメージ: 顔は一年中紫外線を浴びやすいため、紫外線による皮膚の光老化が毛細血管拡張の一因となります。
- 体質・遺伝: 特に肌の色が白い方など、生まれつき毛細血管が皮膚の浅い部分にあり、目立ちやすい体質の方がいます。
- 加齢: 皮膚のコラーゲンやエラスチンが減少し、弾力性が失われることで、血管を支える力が弱まり、拡張しやすくなります。
このように、顔の毛細血管拡張症は様々な要因が複雑に絡み合って生じることが多く、単なる美容の問題としてだけでなく、酒さなどの疾患の可能性も考慮して診断・治療を行う必要があります。
体の毛細血管が目立つ原因
顔だけでなく、体にも毛細血管拡張症が現れることがあります。
体の部位によって原因や特徴が異なる場合があります。
- 足:
- 網目状静脈瘤・クモの巣状静脈瘤: 足の毛細血管拡張症の多くは、下肢静脈瘤の初期段階または軽症型です。
皮膚の浅い部分にある細い静脈や毛細血管が拡張したもので、青紫色や赤色に見えます。
長時間の立ち仕事や座り仕事、妊娠、遺伝、加齢などが原因となります。
むくみやだるさを伴うこともあります。
これらは毛細血管拡張症というよりは「静脈瘤」に分類されることが多いですが、見た目は毛細血管拡張症と区別がつきにくい場合もあります。 - ステロイド皮膚症: 体の特定の部位にステロイド外用薬を長期使用した場合、皮膚が萎縮して毛細血管が目立つことがあります。
- 網目状静脈瘤・クモの巣状静脈瘤: 足の毛細血管拡張症の多くは、下肢静脈瘤の初期段階または軽症型です。
- 胸・デコルテ・首:
- クモ状血管腫: 体幹(特に胸の上部、首、肩、腕など)にできる中心から放射状に細い血管が広がる形をした血管病変です。
指で押すと中心部から色が消えます。
妊娠中や肝疾患(慢性肝炎、肝硬化など)がある場合にしばしば見られますが、健康な人にもできることがあります。 - 光老化: 胸やデコルテは顔と同様に紫外線を浴びやすいため、光老化によって毛細血管拡張が生じることがあります。
- クモ状血管腫: 体幹(特に胸の上部、首、肩、腕など)にできる中心から放射状に細い血管が広がる形をした血管病変です。
- 手:
- 手の甲に毛細血管拡張が目立つ場合がありますが、これは加齢による皮膚の変化(皮膚の菲薄化)や、長年の紫外線曝露による光老化、寒暖差などが原因となることが多いです。
- 全身:
- 全身に広範囲に毛細血管拡張が見られる場合は、遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー・ウェバー・レンド病)などの全身性の病気を考慮する必要があります。
この病気は鼻血や消化管出血などを伴うことが特徴です。 - 強皮症などの全身性自己免疫疾患でも、体幹や四肢に毛細血管拡張が見られることがあります。
- 全身に広範囲に毛細血管拡張が見られる場合は、遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー・ウェバー・レンド病)などの全身性の病気を考慮する必要があります。
体の毛細血管拡張症の場合も、見た目の問題だけでなく、下肢静脈瘤の症状や、肝疾患など他の病気の可能性も考慮して、専門医による診断を受けることが重要です。
毛細血管拡張症の見た目・具体的な症状
毛細血管拡張症の見た目は、その原因や部位によって様々ですが、一般的には以下のような特徴が見られます。
- 色: 赤色、または青紫色、時に紫がかった色に見えます。
これは拡張している血管の種類(動脈性の毛細血管か、静脈性の細静脈か)や、皮膚からの深さによって異なります。 - 形:
- 線状: 細い直線状の血管が1本または複数本見えます。
顔(特に頬、鼻、顎)によく見られます。 - 網目状: 細い血管が網の目のように広がっている状態です。
足にできる静脈瘤の一部(網目状静脈瘤)や、顔の広範囲に見られる場合があります。 - クモの巣状(星芒状血管腫): 中心に赤い点があり、そこから細い血管が放射状にクモの巣のように広がっている形です。
顔や胸、腕などに見られ、押すと中心部から色が消えるのが特徴です。
肝疾患や妊娠に関連することがあります。 - 点状: 小さな赤い点がいくつか集まっているように見える場合もあります。
- 線状: 細い直線状の血管が1本または複数本見えます。
- 部位: 顔(頬、鼻、顎、額、目の周り)や首、デコルテ、手、足などが主な発生部位です。
- 触感: 基本的には平らで、皮膚の表面に盛り上がりはありません。
ただし、足の静脈瘤が進行すると血管がボコボコと盛り上がってくることもあります。 - 圧迫による変化: 指で押すと一時的に赤みが薄くなったり消えたりしますが、圧迫を解除するとすぐに元の赤みに戻ることが多いです。
これは血管の中にあった血液が一時的に押し出されるためです。
毛細血管拡張症自体に痛みやかゆみなどの自覚症状がないことが多いですが、原因疾患によっては、赤み以外に以下のような症状を伴うことがあります。
- ほてり感: 特に顔の酒さの場合、赤みとともに顔がカーッと熱くなるほてり感を伴うことがあります。
- チクチク、ヒリヒリ感: 皮膚の炎症や乾燥に伴って、刺激感を感じることがあります。
- かゆみ: 原因が慢性的な皮膚炎や乾燥である場合に、かゆみを伴うことがあります。
- むくみ、だるさ: 足の静脈瘤が原因の場合、足のむくみや重だるさを感じることがあります。
これらの症状を伴う場合は、単なる毛細血管拡張症ではなく、 underlying な皮膚疾患や全身疾患の可能性を考慮し、専門医による診断と治療が必要です。
自然治癒はする?自力で治せるか
残念ながら、一度できてしまった毛細血管拡張症が、自然に完全に消えることはほとんどありません。
特に、原因が体質や加齢によるもの、あるいは慢性的な皮膚疾患によるものである場合、放置しておくと徐々に悪化したり、範囲が広がったりする可能性もあります。
「自力で治したい」と考えて、市販の化粧品やクリーム、マッサージなどを試される方もいらっしゃいますが、毛細血管拡張症は皮膚の真皮層にある血管の構造的な変化であるため、皮膚の表面からのアプローチだけで根本的に改善することは難しいのが現状です。
- 市販の化粧品・クリーム: 一時的に赤みをカバーしたり、保湿によって皮膚の状態を整えたりする効果は期待できるかもしれませんが、拡張した血管そのものを縮小させる効果はありません。
中には、刺激成分が含まれているものを使用すると、かえって赤みが悪化する可能性もあります。 - マッサージ: 血行を良くするという意図で行われることがありますが、皮膚への過度な摩擦は炎症を招き、毛細血管拡張を悪化させる可能性があります。
避けるべきです。 - 食事やサプリメント: ビタミンCやポリフェノールなど、血管を強くすると言われる成分を摂取することも、健康維持には良いかもしれませんが、確立された毛細血管拡張症への治療効果はありません。
二次性の原因である酒さなどに対する「炎症を抑える治療」や、紫外線対策、適切なスキンケアは、これ以上の悪化を防ぐためには重要ですが、すでにできてしまった毛細血管拡張そのものをなくす効果は限定的です。
したがって、毛細血管拡張症の見た目の改善を本気で目指すのであれば、医療機関での専門的な治療が必要となります。
特に、拡張した血管をターゲットとするレーザー治療が、現在の主流の治療法となっています。
毛細血管拡張症の治療法(レーザー・外用薬など)
医療機関での根本治療が中心
毛細血管拡張症を根本的に改善するためには、医療機関での治療が必要です。
特に、拡張した血管を選択的に破壊するレーザー治療が最も効果的な方法とされています。
毛細血管拡張症の治療において、医療機関を受診する最大のメリットは、まず正確な診断を受けられることです。
単なる体質によるものか、酒さや他の全身疾患が隠れているのかを医師が見極め、原因に応じた適切な治療方針を立ててもらえます。
治療の目標は、拡張して目立つ血管を破壊し、皮膚の赤みを軽減することです。
自然治癒が期待できない症状であるため、見た目の改善には積極的な介入が必要となります。
現在、医療機関で提供されている主な治療法は以下の通りです。
- レーザー治療: 拡張した血管に特定の波長の光(レーザー)を照射し、熱によって血管を破壊・凝固させる方法です。
最も効果が高く、主流の治療法です。 - 外用薬(塗り薬): 一部のタイプの毛細血管拡張症に対し、一時的な赤みの軽減効果が期待できる薬剤がありますが、根本的な治療にはなりません。
- その他: 電気凝固法、硬化療法(主に足の静脈瘤)、外科的治療(重度の静脈瘤)など、症状や部位に応じて選択される場合があります。
これらの治療法の中から、患者さんの症状、原因、部位、肌質、ライフスタイル、そして治療に対する期待値などを総合的に考慮して、医師が最適な方法を提案します。
レーザー治療の詳細(効果・種類・回数)
毛細血管拡張症の治療において、レーザー治療は非常に有効な選択肢です。
特定の波長のレーザー光は、血液中のヘモグロビン(赤血球に含まれる赤い色素)に選択的に吸収される性質があります。
拡張した血管にレーザーを照射すると、ヘモグロビンがレーザーエネルギーを吸収して熱を発生させ、その熱によって血管の内壁が損傷し、血管が閉塞・破壊されます。
破壊された血管は時間とともに体内に吸収され、目立たなくなります。
レーザーの効果
- 顔や体の赤み、線状・網目状の血管を軽減・消失させる効果が期待できます。
- 酒さによる赤みや炎症にも効果がある場合があります。
- 適切に照射すれば、周囲の正常な皮膚組織へのダメージは最小限に抑えられます。
レーザーの種類
毛細血管拡張症の治療に用いられる主なレーザーにはいくつかの種類があります。
使用するレーザーの種類は、拡張している血管の太さや深さ、部位、肌質によって選択されます。
- 色素レーザー(パルス色素レーザー、PDL): 主に585nmまたは595nmといった波長のレーザーで、ヘモグロビンへの吸収率が非常に高いのが特徴です。
比較的細い血管や浅い層にある血管の治療に適しています。
代表的な機種に「Vビーム」があります。 - Nd:YAGレーザー: 1064nmといった長い波長のレーザーで、皮膚の深部まで光が届くため、色素レーザーでは効果が得られにくい太めの血管や、皮膚の深層にある血管の治療に適しています。
- KTPレーザー: 532nmといった波長のレーザーで、ヘモグロビンへの吸収率が高いですが、皮膚表面での吸収も起こりやすいため、浅い血管や、肌の色が白い方への使用が適しています。
治療回数
毛細血管拡張症の治療に必要なレーザー照射の回数は、症状の程度、範囲、血管の太さや深さ、使用するレーザーの種類、そして個人差によって大きく異なります。
- 一般的には、1回の治療で完全に血管を消し去ることは難しく、複数回の治療が必要となる場合が多いです。
- 目安としては、3回から5回程度の照射が必要になることがよくあります。
- 治療間隔は、レーザーの種類やダウンタイムによりますが、通常1ヶ月半から数ヶ月おきに行われます。
- 症状が重い場合や、範囲が広い場合は、より多くの回数が必要になることもあります。
医師が症状を診断し、最適なレーザーの種類と必要な治療回数の目安を提示してくれます。
根気強く治療を続けることが、効果を実感するためには重要です。
Vビームレーザーについて
Vビームレーザー(Vbeam®)は、毛細血管拡張症の治療において最も代表的かつ汎用性の高いパルス色素レーザー(PDL)の一種です。
特に顔の赤みや酒さの治療において広く用いられており、健康保険が適用される疾患(単純性血管腫、いちご状血管腫、毛細血管奇形、酒さなど)にも対応している場合があります。
Vビームの特徴
- 波長: 主に595nmの波長を使用します。
この波長はヘモグロビンに効率よく吸収される一方で、メラニン色素への吸収は比較的少ないため、周囲の皮膚へのダメージを抑えながら血管をターゲットにしやすいという特徴があります。 - パルス幅: レーザーの照射時間を調整することで、細い血管からやや太い血管まで、様々な太さの血管に対応可能です。
- ダイナミッククーリングデバイス(DCD): 照射直前に冷却ガスを噴射することで、皮膚表面を冷やし、痛みを軽減するとともに火傷のリスクを低減します。
これにより、比較的安全に治療を受けることができます。 - 適応症: 毛細血管拡張症、酒さによる赤みや炎症、単純性血管腫、いちご状血管腫、毛細血管奇形、ニキビ跡の赤み、ケロイド・肥厚性瘢痕の赤みなど、血管性の病変に対して広く用いられます。
治療の実際
Vビームによる治療は、通常、冷却ガスによる保護と同時に行われます。
照射時には輪ゴムでパチンと弾かれたような痛みを伴いますが、DCDによって痛みが軽減されるため、我慢できる程度であることが多いです。
必要に応じて麻酔クリームを使用する場合もあります。
治療後には、照射部位に赤みや腫れ、軽度の熱感が生じることがありますが、数時間から数日で改善することがほとんどです。
血管が破壊された部分に一致して、内出血(紫斑)が生じることがよくあります。
特に太い血管を治療した場合に目立ちやすく、この内出血は1週間から2週間程度で徐々に吸収されて消えていきます。
この内出血は、効果が出ている証拠とも言えます。
メイクは翌日から可能なことが多いですが、内出血が目立つ場合はコンシーラーなどで隠す必要があります。
治療期間中は、紫外線対策をしっかり行うことが非常に重要です。
Vビームは、保険適用になるケースも多い信頼性の高いレーザーですが、治療効果には個人差があり、複数回の治療が必要となることを理解しておく必要があります。
レーザー治療の注意点や失敗リスク
レーザー治療は毛細血管拡張症に非常に有効ですが、いくつかの注意点やリスクも伴います。
治療を受ける前に、医師から十分な説明を受け、理解しておくことが重要です。
注意点
- 痛み: 照射時に輪ゴムで弾かれるような痛みを伴います。
多くの場合は我慢できますが、痛みに弱い方は麻酔クリームの使用を検討しましょう。 - ダウンタイム: 治療後には赤み、腫れ、熱感、内出血(紫斑)が生じます。
特に内出血は個人差がありますが、数日から2週間程度続くことがあります。
治療部位や範囲によっては、日常生活や仕事に影響が出る可能性があります。 - 紫外線対策: 治療期間中、特に治療後数週間は、照射部位が敏感になっているため、徹底した紫外線対策(日焼け止めの使用、帽子、日傘など)が必要です。
紫外線を浴びると、色素沈着(皮膚が茶色くなる)のリスクが高まります。 - 皮膚の状態: 治療部位に強い日焼けをしている場合や、炎症(ニキビ、湿疹など)がある場合は、治療を受けられないことがあります。
- 妊娠・授乳: 妊娠中や授乳中のレーザー治療は、安全性が確立されていないため避けるのが一般的です。
- 持病・内服薬: 光線過敏症を引き起こす可能性のある薬剤を服用している場合や、光線過敏症の既往がある場合は、治療できないことがあります。
また、出血傾向のある病気がある場合や、抗凝固剤を服用している場合なども注意が必要です。
失敗・合併症のリスク
レーザー治療は比較的安全性の高い治療法ですが、可能性は低いものの、以下のような合併症やリスクもゼロではありません。
- 効果不十分: 血管の太さや深さ、肌質、照射設定などによっては、期待したほど効果が得られない場合があります。
複数回の治療が必要になることが多いのはこのためです。 - 色素沈着(PIH: Post-inflammatory Hyperpigmentation): 治療後に炎症が起こり、皮膚が茶色くなることがあります。
特に肌の色が濃い方や、治療後に紫外線対策を怠った場合に起こりやすいリスクです。
通常は数ヶ月で自然に薄れていきますが、長引くこともあります。 - 色素脱失: まれに、メラニン色素を作る細胞にもダメージが及び、皮膚が白っぽくなることがあります。
- 水ぶくれ・びらん・かさぶた: 照射エネルギーが強すぎた場合や、肌が敏感な場合に起こる可能性があります。
適切に処置すれば痕に残ることは少ないですが、注意が必要です。 - 瘢痕(はんこん): ごくまれに、深い熱傷となり、痕として残ってしまうリスクがあります。
- 毛包炎: 照射部位の毛穴に炎症が生じ、小さな赤いブツブツができることがあります。
- 照射漏れ: 広い範囲を治療する際に、部分的に照射が不十分な箇所が生じ、血管が残ってしまう可能性があります。
- 再発: 治療によって一時的に血管が消えても、原因(体質、酒さなど)が改善されない場合や、新しい血管ができてくることで、再発する可能性があります。
これらのリスクを最小限に抑えるためには、経験豊富な医師が在籍する医療機関で、適切な診断と治療計画のもと、最新の機器を使用することが重要です。
また、治療後のケア(冷却、保湿、紫外線対策など)を指示通りに行うことも、安全で効果的な治療のためには不可欠です。
外用薬(塗り薬)による治療
毛細血管拡張症に対して、外用薬(塗り薬)が使用されることもありますが、その効果はレーザー治療に比べて限定的であり、主に一時的な赤みの軽減を目的とするか、原因疾患(酒さなど)に対する炎症を抑えるために用いられます。
一時的な赤み軽減効果のある外用薬
- ブリモニジン酒石酸塩(例:ミルヴァソ): これは主に顔の酒さによる赤みに対して処方される外用薬です。
アルファ2アドレナリン受容体に作用し、一時的に血管を収縮させることで、塗布後数時間だけ赤みを軽減する効果があります。
ただし、血管拡張そのものを治すわけではないため、薬が切れると再び赤みが出現します。
また、健康保険は適用されず、自費診療となることが多いです。
すべての毛細血管拡張症に効果があるわけではなく、効果の程度や持続時間には個人差があります。
原因疾患に対する外用薬
毛細血管拡張症の原因が酒さや慢性的な皮膚炎である場合は、その原因疾患に対する治療として炎症を抑える外用薬が処方されることがあります。
- メトロニダゾール、アゼライン酸など: これらは酒さの炎症や丘疹・膿疱に効果があり、赤みの軽減にも繋がる場合があります。
ただし、毛細血管拡張そのものを直接的に消す効果は期待できません。 - 非ステロイド系抗炎症薬(タクロリムス、ピメクロリムスなど): ステロイド皮膚症を避けたい場合や、顔の炎症が強い場合に用いられることがあります。
ステロイド外用薬の使用について
ステロイド外用薬は、炎症を抑える効果は非常に高いですが、毛細血管拡張症の直接的な治療薬ではありません。
むしろ、ステロイド外用薬の長期使用自体が毛細血管拡張症の原因(ステロイド皮膚症)となるため、自己判断での使用や漫然とした継続は絶対に避けるべきです。
毛細血管拡張症がある部位に、安易にステロイドを塗布することは、症状を悪化させるリスクがあります。
医師の指示のもと、必要最低限の期間と強さで使用することが重要です。
外用薬による治療は、レーザー治療が適さない場合や、レーザー治療と並行して行われることがありますが、毛細血管拡張症の根本的な改善を目指す上では、その効果には限界があることを理解しておく必要があります。
ヒルドイドは効果がある?
「保湿剤のヒルドイドを塗ると毛細血管拡張症が良くなる」という話を耳にすることがあるかもしれませんが、これは誤りです。
ヒルドイド(成分名:ヘパリン類似物質)は優れた保湿剤であり、乾燥肌やアトピー性皮膚炎など、皮膚の乾燥に伴う様々な症状の改善に用いられます。
血行促進作用も謳われていますが、これは主に皮膚表面の血行を促すものであり、真皮の拡張した毛細血管を収縮させたり消滅させたりする効果はありません。
むしろ、毛細血管拡張症の原因が酒さである場合、ヒルドイドのような保湿剤を塗布すると、酒さの病態である毛包虫の増殖や炎症を悪化させ、かえって赤みが強くなる可能性があるという報告もあります。
また、ヒルドイドに含まれる基剤(クリームや軟膏の成分)が、敏感になっている皮膚に刺激を与え、赤みを増強させることも考えられます。
したがって、ヒルドイドは毛細血管拡張症そのものを治す効果はなく、不適切な使用は症状を悪化させるリスクさえあります。
毛細血管拡張症に対する治療は、必ず医師の診断に基づき、原因に合わせた適切な方法を選択することが重要です。
安易な自己判断でヒルドイドを塗布することは避けましょう。
その他治療法
毛細血管拡張症の種類や部位、程度によっては、レーザー治療や外用薬以外の治療法が選択されることがあります。
- 電気凝固法: 細い針を拡張した血管に刺し、電流を流して熱で血管を凝固・破壊する方法です。
非常に細い血管や、レーザー治療が難しい部位の治療に用いられることがあります。
ただし、施術者の技術に左右されやすく、痛みを伴い、色素沈着や瘢痕のリスクもゼロではありません。 - 硬化療法: 主に足の比較的太い静脈瘤に対して行われる治療法です。
拡張した血管に硬化剤という薬剤を注入し、血管を閉塞・委縮させる方法です。
毛細血管拡張症の中でも、足の網目状静脈瘤やクモの巣状静脈瘤に適用されることがあります。 - 外科的治療: 重度の下肢静脈瘤で、血管のボコボコがひどい場合や、むくみ、痛みなどの症状が強い場合に、血管を結紮(縛る)したり抜去したりする手術が行われることがあります。
これは毛細血管拡張症というよりは、静脈瘤に対する治療法です。 - 原因疾患の治療: 二次性毛細血管拡張症の場合、原因となっている疾患(酒さ、肝疾患、全身性疾患など)の治療を優先的に行うことが重要です。
原因疾患が改善すれば、毛細血管拡張症の進行を抑えられたり、一部改善が見られたりすることもありますが、既に拡張してしまった血管は治療しないと消えないことが多いです。
これらの治療法は、レーザー治療と組み合わせて行われたり、レーザー治療が適さない場合に選択されたりします。
どの治療法が適切かは、医師が患者さんの状態を詳しく診察し、判断します。
毛細血管拡張症の治療費用と保険適用
保険適用の条件
毛細血管拡張症の治療に健康保険が適用されるかどうかは、その原因や診断名によって決まります。
単純な美容的な「赤ら顔」や体質による毛細血管拡張症は、原則として保険適用外の自費診療となります。
保険適用となる可能性があるのは、以下のような疾患に伴う毛細血管拡張症や血管病変です。
- 単純性血管腫(ポートワイン母斑): 生まれつきの赤あざの一種で、通常は保険適用となります。
- いちご状血管腫(乳児血管腫): 乳児期にできる赤い盛り上がりで、成長とともに自然に消退することも多いですが、治療が必要な場合は保険適用となります。
- 毛細血管奇形: 先天性の血管病変で、保険適用となる場合があります。
- 酒さ: 顔の慢性的な炎症性疾患で、診断基準を満たし、医師が治療の必要性を認めた場合に、保険適用となる場合があります。
特にレーザー治療(Vビームなど)が適用されることが多いです。 - ニキビ跡の赤み: 一部の施設や症例において、保険適用となる場合がありますが、一般的には自費診療となることが多いです。
- その他: 特定の全身疾患(例:遺伝性出血性毛細血管拡張症)に伴う血管病変で、出血などの症状がある場合など、疾患の治療として血管病変を治療する必要がある場合に保険適用となることがあります。
重要なポイントは、「なぜ毛細血管が拡張しているのか」という診断名です。
単に「毛細血管拡張症」という見た目だけでは保険適用とはならず、診断された疾患名が保険診療の対象となっているかどうかが基準となります。
そのため、保険適用を希望する場合は、皮膚科専門医に相談し、正確な診断を受けることが不可欠です。
すべてのクリニックで保険診療に対応しているわけではないため、事前に確認することも重要です。
保険適用時の費用目安
保険適用で毛細血管拡張症の治療(主にレーザー治療)を受ける場合、医療費の自己負担割合に応じて費用が決まります。
通常、健康保険が適用されるのは、医師が疾患として診断し、治療の必要性を認めた場合です。
例えば、酒さや単純性血管腫などの疾患でVビームレーザー治療を受ける場合、3割負担の保険診療となることが一般的です。
治療にかかる費用は、治療する範囲(面積)によって細かく定められています。
治療部位の面積 | 保険点数(1回あたり) | 3割負担の自己負担額目安(1点=10円換算) |
---|---|---|
10㎠未満 | 約2,000点 | 約6,000円 |
10㎠以上30㎠未満 | 約3,000点 | 約9,000円 |
30㎠以上60㎠未満 | 約4,000点 | 約12,000円 |
60㎠以上 | 約5,000点 | 約15,000円 |
※上記はあくまで目安であり、病院やクリニック、治療内容、診断名、使用する機器、初診料・再診料、処方箋料、薬剤料などが別途かかる場合があります。
正確な費用は、受診する医療機関にご確認ください。
複数回の治療が必要な場合は、治療を受ける回数分だけ上記の費用がかかります。
例えば、顔全体の酒さで30㎠以上60㎠未満の範囲を5回治療した場合、レーザー治療費だけで単純計算で約12,000円 × 5回 = 60,000円(税抜)程度が目安となります。
これに診察料や薬剤料が加わります。
保険診療では、高額療養費制度の対象となる場合もありますが、通常の外来診療でこの制度が適用されるほど高額になることは稀です。
保険適用での治療は、費用負担を抑えられるという大きなメリットがありますが、治療できる疾患や範囲、回数などに制限がある場合があります。
保険適用外の場合の費用
美容目的の毛細血管拡張症や、保険適用とならない診断名の場合、治療は自費診療(自由診療)となります。
自費診療の場合、クリニックが自由に料金を設定できるため、費用は医療機関によって大きく異なります。
自費診療でのレーザー治療費用は、治療する部位、範囲(面積)、使用するレーザーの種類、照射密度、そしてクリニックの価格設定によって幅があります。
自費診療費用の目安(1回あたり)
部位・範囲 | 費用目安(税抜) |
---|---|
鼻のみ | 1万円~3万円 |
頬のみ | 2万円~5万円 |
顔全体 | 3万円~10万円以上 |
足(部分) | 2万円~5万円 |
足(広範囲) | 5万円~20万円以上 |
その他部位(10㎠) | 1万円~3万円 |
※上記はあくまで一般的な目安であり、クリニックによってはさらに高額になる場合や、キャンペーンなどで安価になる場合もあります。
自費診療の場合も、通常複数回の治療が必要となります。
例えば、顔全体の毛細血管拡張症を自費診療で5回治療した場合、1回5万円とすると、合計で25万円(税抜)程度の費用がかかる計算になります。
多くのクリニックでは、複数回分の治療をセットにしたコースを用意しており、1回あたりの料金が割安になる場合があります。
また、初診料や再診料、麻酔クリーム代、治療後の外用薬代などが別途かかる場合がありますので、事前に総額費用についてクリニックに確認しておくことが重要です。
自費診療は保険の制約を受けないため、治療できる範囲や回数、使用するレーザーの種類などの選択肢が広がるというメリットがあります。
しかし、費用負担が大きくなるため、治療の必要性や期待できる効果、リスクなどを十分に理解した上で検討する必要があります。
毛細血管拡張症に関するよくある質問(Q&A)
毛細血管拡張症について、患者さんがよく抱く疑問にお答えします。
質問1:毛細血管拡張症は完全に元に戻りますか?
治療によって毛細血管拡張症を改善させ、目立たなくすることは十分に可能です。
特にレーザー治療は拡張した血管を破壊するため、高い効果が期待できます。
しかし、完全に元の、毛細血管が全く見えない状態に戻せるかどうかは、症状の程度や原因、体質によって異なります。
軽度な毛細血管拡張症であれば、数回のレーザー治療でほとんど目立たなくなり、見た目には「治った」と感じられることが多いです。
しかし、血管の構造自体を完全に作り直すわけではないため、拡大鏡などで見ると細い血管が残っている場合もあります。
また、治療によって既存の血管が消えても、毛細血管拡張を起こしやすい体質の方や、原因疾患(酒さなど)が活動性の場合、あるいは寒暖差や紫外線などの外的要因に繰り返しさらされることで、新しい血管ができてきて再び毛細血管拡張が現れる「再発」の可能性もゼロではありません。
そのため、治療によって改善した後も、原因に応じた適切なスキンケアや生活習慣の見直し、紫外線対策などを継続することが、再発予防のためには重要です。
再発が見られた場合は、再度治療を検討することになります。
質問2:毛細血管拡張症を治すにはどうすればいいですか?
毛細血管拡張症を治したい、見た目を改善したいと考えたら、まずは皮膚科を受診することをお勧めします。
1. 正確な診断を受ける: 毛細血管拡張症の原因が何なのか、酒さなどの疾患が隠れていないかを医師に診断してもらうことが最初のステップです。
診断によって、保険診療の対象となるかどうかも分かります。
2. 原因に応じた治療:
- 原因が酒さなどの疾患であれば、その疾患に対する治療(外用薬、内服薬など)を並行して行うことが重要です。
- 原因がステロイド外用薬の使い過ぎであれば、正しい使用法や減量・中止の指導を受けます。
3. 根本的な改善を目指す治療:
- 現在、最も効果が期待できるのはレーザー治療です。
拡張した血管を直接破壊することで、赤みを軽減します。
症状や原因、保険適用の可否に応じて、VビームやNd:YAGレーザーなどが選択されます。
複数回の治療が必要となることが多いです。 - その他、症状や部位によっては、電気凝固法や硬化療法などが選択される場合もあります。
4. 適切なスキンケアと生活習慣: 治療効果を高め、再発を予防するためには、日頃のスキンケアや生活習慣の見直しも重要です。
- 紫外線対策を徹底する。
- 皮膚への摩擦や刺激を避ける。
- 寒暖差対策を行う(急激な温度変化を避ける)。
- 香辛料やアルコールなど、赤みを誘発するものを控える(酒さの場合)。
- 保湿は適切に行うが、過剰な油分や刺激物は避ける。
「これを塗れば治る」「これを飲めば治る」といった単純なものではなく、原因の特定、適切な治療法の選択、そして日頃のセルフケアを組み合わせることが、毛細血管拡張症の改善には必要です。
まずは専門医に相談し、自分に合った治療計画を立ててもらいましょう。
質問3:毛細血管拡張症の保険適用はいくらですか?
毛細血管拡張症の治療で保険が適用される場合、費用は診断された疾患名や治療する範囲、回数、そして自己負担割合(通常3割)によって異なります。
「毛細血管拡張症」という見た目だけでは保険適用にならず、「単純性血管腫」「いちご状血管腫」「毛細血管奇形」「酒さ」などの疾患として診断された場合に、レーザー治療(主にVビーム)が保険適用となる可能性があります。
保険適用時の費用は、治療する面積によって細かく定められた診療報酬点数に基づいて計算されます。
例えば、Vビームで顔の治療を行う場合、1回のレーザー照射にかかる費用目安(3割負担)は以下の通りです。
- 10㎠未満: 約6,000円(自己負担額)
- 10㎠~30㎠未満: 約9,000円
- 30㎠~60㎠未満: 約12,000円
- 60㎠以上: 約15,000円
これに加えて、診察料、再診料、必要に応じて処方される薬剤料などが別途かかります。
合計すると、1回あたりの総額は、上記金額に数千円が上乗せされるイメージです。
治療は通常複数回(3~5回程度)必要になることが多いため、総額費用は「1回あたりの費用 × 治療回数」が目安となります。
例えば、顔全体の酒さで30㎠~60㎠の範囲を5回治療する場合、単純計算で約6万円(レーザー照射費のみ)プラス諸費用がかかることになります。
正確な費用は、受診する医療機関や症状によって異なりますので、診察時に医師やスタッフに確認するようにしてください。
すべての医療機関が保険診療で毛細血管拡張症の治療を行っているわけではないため、事前に確認することも重要です。
質問4:毛細血管拡張症の見た目の特徴を教えてください。
毛細血管拡張症の見た目は、皮膚の表面に赤い、または青紫色の細い血管が透けて見えることです。
具体的な形やパターンは様々です。
- 線状: 最も一般的な形で、髪の毛のように細い赤い線が1本または複数本、直線状や不規則なカーブを描いて見えます。
顔の頬や鼻の脇、顎によく見られます。 - 網目状: 細い血管が交差して、網の目のように広がっているように見えます。
顔の広範囲や、足の静脈瘤の一部として現れることがあります。 - クモの巣状(星芒状血管腫): 中心地に赤い点があり、そこから放射状に細い血管が枝分かれしている形です。
まるでクモの巣のように見えるためこう呼ばれます。
指で押すと中心部から赤みが消えるのが特徴です。
顔、首、デコルテ、腕などに見られます。
肝疾患や妊娠との関連が指摘されています。 - 点状: 小さな赤い点が集まっているように見えることもあります。
- 広範囲の赤み: 個々の血管は細くても、多数の血管が密集して存在することで、皮膚全体が赤く見える「赤ら顔」や「紅斑」として認識される場合もあります。
特に酒さの場合に、頬や鼻を中心にこのような広範囲の赤みが見られます。
これらの血管は、皮膚の表面から盛り上がっているわけではなく、平らです。
また、押すと一時的に赤みが消えるという特徴もよく見られます(ただし、常にそうなるわけではありません)。
このような見た目の特徴に加えて、原因疾患によっては、ほてり、かゆみ、チクチク感などの自覚症状を伴うこともあります。
ご自身の肌に気になる赤い血管や赤みがある場合は、これらの特徴と照らし合わせて、毛細血管拡張症の可能性があるか考えてみましょう。
そして、正確な診断のために皮膚科を受診することをお勧めします。
まとめ:毛細血管拡張症の改善を目指すには
毛細血管拡張症は、皮膚の浅い部分の血管が拡張して目立つようになる状態です。
顔や体の赤みとして現れ、見た目の悩みの種となることが多いですが、中には酒さや全身疾患のサインとして現れることもあります。
体質や加齢による一次性のものと、疾患や外的な要因による二次性のものがあり、その原因は様々です。
残念ながら、一度できた毛細血管拡張症が自然に消えたり、市販薬やセルフケアで根本的に治ったりすることはほとんど期待できません。
毛細血管拡張症の改善を目指す上では、医療機関での専門的な診断と治療が最も効果的です。
特に、拡張した血管をピンポイントで破壊するレーザー治療(Vビームなど)が現在の主流であり、高い改善効果が期待できます。
ただし、レーザー治療には複数回の照射が必要な場合が多く、治療後の赤みや内出血といったダウンタイム、そして色素沈着などのリスクも伴うため、治療を受ける前に医師から十分な説明を受けることが重要です。
治療費用については、診断された疾患が保険適用となるか(単純性血管腫、いちご状血管腫、毛細血管奇形、酒さなど)によって大きく異なります。
保険適用となる場合は費用負担を抑えられますが、美容目的や保険適用外の診断名の場合は自費診療となり、高額になる傾向があります。
正確な診断名と保険適用の可否については、必ず医療機関で確認してください。
ご自身の顔や体の赤い血管や赤みが気になっている方は、まずは皮膚科を受診し、専門医に相談することをお勧めします。
正確な診断を受けることで、原因に応じた適切な治療法を選択し、長年の悩みを解決するための第一歩を踏み出すことができるでしょう。
【免責事項】
本記事で提供する情報は、毛細血管拡張症に関する一般的な知識の提供を目的としており、個々の症状の診断や治療法を推奨するものではありません。
毛細血管拡張症の診断、治療法の選択、費用については、必ず医療機関を受診し、医師の判断に従ってください。
本記事の情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当方は一切責任を負いません。
情報の正確性については万全を期しておりますが、医学的な知見は常に更新される可能性があります。