いぼ痔の症状チェック!出血・痛み・脱出…内痔核・外痔核の違いとは?

いぼ痔は、日本人の3人に1人が悩むともいわれるほど身近な病気です。しかし、その症状は人によって異なり、どこからがいぼ痔なのか、どうすれば治るのかなど、分からずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。この記事では、いぼ痔の主な症状、種類、進行度による見た目の変化、原因、そして自宅でできるケアから病院での治療、予防法までを詳しく解説します。いぼ痔について正しい知識を得て、適切な対処とケアを始めるための一歩を踏み出しましょう。

目次

いぼ痔の主な症状と種類

いぼ痔(痔核)は、肛門の「クッション」と呼ばれる部分がうっ血して腫れ、いぼのように膨らんだ状態を指します。できる場所によって「内痔核」と「外痔核」の2種類に分けられ、それぞれ症状が異なります。

内痔核の症状

内痔核は、肛門の奥、歯状線という部分より内側にできるいぼ痔です。神経が通っていない部分にできるため、初期の段階では痛みをほとんど感じないのが特徴です。主な症状としては、以下のようなものがあります。

  • 出血: 排便時に紙に血がついたり、便器が真っ赤になったりすることがあります。鮮やかな赤い血が出ることが多いです。痛みがないのに出血だけが見られる場合は、内痔核が最も疑われます。
  • 脱出: 進行すると、排便時やいきんだ時にいぼが肛門の外に出てくるようになります。最初は自然に戻りますが、悪化すると指で押し込まないと戻らなくなったり、常に外に出たままになったりします。
  • 分泌物・かゆみ: 脱出した内痔核から粘液が分泌されたり、残便感やかゆみを伴ったりすることがあります。
  • 異物感: 肛門の中に何か挟まっているような、または外に出ているような違和感や異物感を感じることがあります。

痛みがないため放置されがちですが、進行すると脱出が頻繁になり、日常生活に支障をきたすこともあります。

外痔核の症状

外痔核は、肛門の歯状線より外側、皮膚に近い部分にできるいぼ痔です。この部分は神経が豊富に通っているため、痛みを伴うことが多いのが特徴です。主な症状としては、以下のようなものがあります。

  • 痛み: 炎症を起こしたり、血栓(血の塊)ができたりすると強い痛みを伴います。特に排便時や座っているときに痛みが強くなることがあります。
  • 腫れ: 肛門の周りに、触ると硬くぷにぷにとした感触の腫れやしこりができます。血栓性外痔核の場合、急に腫れて激しい痛みを感じることがあります。
  • 出血: 内痔核に比べて出血は少ない傾向がありますが、いぼが傷つくと出血することもあります。
  • かゆみ: 腫れや炎症によって、かゆみを感じることがあります。

外痔核は目で見て確認しやすいですが、痛みが強い場合が多く、早めに対処が必要になることがあります。

いぼ痔かどうかの判断方法・セルフチェック

「これはいぼ痔かな?」と不安に思ったら、まずはご自身の状態を落ち着いて観察してみましょう。ただし、自己判断には限界があり、他の病気(肛門周囲膿瘍や直腸がんなど)の可能性もあるため、異変を感じたら必ず専門医の診察を受けることが重要です。

自分でできるいぼ痔チェックリスト

以下の項目に当てはまるか確認してみましょう。

  • 排便時に肛門から出血がある(鮮やかな赤い血が多い)
  • 排便時に肛門から何か飛び出してくる感じがする
  • 飛び出したものが自然に戻らない、または指で押し込まないと戻らない
  • 肛門の周りにぷにぷにとした腫れやしこりがある
  • 肛門に痛みや違和感がある(特に座っているときや排便時)
  • 肛門にかゆみや湿り気がある
  • 下着に粘液や分泌物がつくことがある

これらの項目のうち複数が当てはまる場合や、症状が続く場合は、いぼ痔である可能性が高いと考えられます。特に、痛みがない出血は内痔核のサインとして見逃されがちですが、痔瘻や大腸の病気の可能性もゼロではないため注意が必要です。

いぼ痔の進行度と見た目の変化

内痔核の進行度は、その脱出の程度によって4つの段階(I度からIV度)に分類されます。これはICD分類と呼ばれ、治療法を選択する上で重要な目安となります。外痔核には進行度分類はありませんが、血栓ができるなど急激に状態が変化することがあります。

いぼ痔の進行度(ICD分類)

内痔核の進行度は、以下のように分類されます。

  • I度: いぼは肛門の中にあり、外には脱出しない段階です。症状は主に排便時の出血です。痛みはほとんどありません。この段階では、自分でいぼを触って確認することは難しいでしょう。
  • II度: 排便時にいぼが肛門の外に脱出しますが、排便が終わると自然に肛門の中に戻る段階です。出血や異物感のほか、脱出を感じることがあります。
  • III度: 排便時やいきんだ時だけでなく、重いものを持ったり、長時間立ったり座ったりしただけでもいぼが肛門の外に脱出する段階です。脱出したいぼは、指で押し込まないと肛門の中に戻りません。出血、痛み、かゆみ、異物感などの症状が強くなる傾向があります。
  • IV度: いぼが常に肛門の外に出たままになってしまい、指で押し込んでも戻らない段階です。常に下着が汚れたり、痛みを伴ったり、嵌頓(かんとん:脱出したいぼが肛門で締め付けられて血流が悪くなり、激しく腫れ上がって強い痛みを伴う状態)を起こすリスクが高まります。

進行度別のいぼ痔の見た目(写真/ぷにぷに)

進行度によって、いぼ痔の見た目や感触は変化します。

  • I度: 肛門の中にあり、通常は見えません。
  • II度: 排便時に肛門から丸みを帯びた、赤っぽいあるいは青みがかったいぼが出てきます。触ると比較的柔らかく、ぷにぷにとした感触であることが多いです。
  • III度: 排便時以外でも脱出し、指で戻す必要があります。脱出した状態では、複数のいぼがぶどうの房のように見えることもあります。長時間外に出ていると腫れて硬くなることもあります。
  • IV度: 常に肛門の外にいくつかのいぼが見えている状態です。炎症を起こすと赤く腫れたり、血栓ができると黒っぽく硬くなったりします。慢性的に脱出しているいぼは、皮膚が伸びて大きくなることもあります。

外痔核の場合、急に肛門の周りに丸い腫れやしこりができます。血栓性外痔核では、青黒いぷにぷにとしたしこりができ、触ると非常に強い痛みを感じます。

(※この記事では具体的な写真の掲載はできませんが、インターネット検索などで「いぼ痔 進行度 写真」と調べると、各段階のいぼの見た目の参考画像を見ることができます。ただし、正確な診断は医師に委ねてください。)

末期のいぼ痔症状とは

いぼ痔における「末期」という言葉は、一般的にIV度まで進行して重症化した状態を指すことが多いです。末期のいぼ痔では、以下のような症状が見られます。

  • 常時脱出: いぼが常に肛門の外に出ており、自分で戻すことができない。
  • 激しい痛み: 炎症、血栓、または嵌頓を起こしている場合に強い痛みが続く。
  • 出血の悪化: 慢性的、あるいは大量の出血。
  • 日常生活への支障: 痛みや不快感、下着の汚れなどにより、座る、歩くなどの日常的な動作が困難になる。仕事や外出もままならなくなることがある。
  • 合併症: 嵌頓による組織の壊死リスク、慢性の炎症による肛門周囲皮膚炎、貧血(慢性出血による)など。

末期のいぼ痔は、自然に治ることは絶対にありません。生活の質が著しく低下し、合併症のリスクも高まるため、速やかに専門医の診察を受け、適切な治療を開始することが不可欠です。多くの場合、手術が必要となります。

いぼ痔の原因とは

いぼ痔は、肛門にかかる過度な負担や、血行不良によって肛門のクッション部分がうっ血し、腫れたり垂れ下がったりすることで発生します。様々な要因が複雑に絡み合って発症するため、特定の原因を一つだけ特定するのは難しいこともあります。

いぼ痔ができるメカニズムとしては、まず肛門の最も奥にある「クッション」と呼ばれる組織が重要です。このクッション部分は、血管や結合組織が集まってできており、便がスムーズに通過するのを助けたり、肛門を閉じる補助をしたりする役割があります。しかし、様々な原因によってこのクッション部分の血管がうっ血して拡張したり、クッションを支える組織が弱くなったりすると、腫れていぼ状になり、進行すると肛門の外に垂れ下がるようになります。

日常生活に潜むいぼ痔の原因

私たちの普段の生活習慣の中に、いぼ痔を引き起こす様々な原因が隠されています。

  • 長時間同じ姿勢: デスクワークなどで長時間座り続けたり、立ち仕事で長時間立ち続けたりすると、重力によって肛門周辺に血液が滞りやすくなり、うっ血を招きます。タクシーやトラックの運転手、美容師、調理師などにいぼ痔が多い傾向があるのはこのためです。
  • 体を冷やす: 寒さや冷たい飲食物の摂取は、体の血行を悪くします。肛門周辺の血行が悪くなると、うっ血がいぼ痔の原因となります。特に冬場や冷房の効いた場所に長時間いるときは注意が必要です。
  • ストレスや疲労: ストレスや疲労は、体の自律神経のバランスを崩し、血行不良や便通異常(便秘や下痢)を引き起こすことがあります。これらはいぼ痔の悪化要因となります。
  • 妊娠・出産: 妊娠中は、大きくなった子宮が骨盤内の血管を圧迫し、肛門周辺の血行が悪くなりやすくなります。また、ホルモンの影響で便秘になりやすいことも原因です。出産時の強いいきみも、肛門に大きな負担をかけ、いぼ痔を発症・悪化させる可能性があります。
  • 加齢: 年齢を重ねると、肛門周辺の組織が弱くなったり、血管の弾力性が失われたりすることで、いぼ痔ができやすくなります。

排便習慣といぼ痔(うんちの仕方)

いぼ痔の原因として最も重要なものの一つが、毎日の排便習慣です。間違った「うんちの仕方」が、肛門に過度な負担をかけていぼ痔を招いたり、悪化させたりします。

  • 便秘: 硬くなった便を排出しようと強くいきむことが、肛門の血管に強い圧力をかけ、うっ血を招きます。また、硬い便が肛門を通過する際に傷つけることもあります。
  • 下痢: 頻繁な下痢は、肛門の皮膚を刺激し炎症を起こしやすくします。また、勢いよく便が出ることで肛門のクッション部分に負担がかかることもあります。
  • 長時間のトイレ: トイレに座っている時間が長いと、肛門がうっ血しやすい姿勢が続くことになります。特に、スマホを見ながら、新聞を読みながらなど、排便に関係なく長時間座る習慣はいぼ痔の原因となります。便意がないのに無理にトイレに行ったり、いきんだりすることも良くありません。
  • 強いいきみ: 排便時に必要以上に強くいきむことは、肛門の血管に強い圧力をかけ、クッション部分を傷め、うっ血させます。「うんちが出ない」と感じても、無理にいきむのは避けましょう。便意があったらできるだけすぐにトイレに行くことが大切です。

これらの排便習慣を見直すことが、いぼ痔の予防や改善には非常に重要です。

いぼ痔を放置するとどうなる?

「痛くないから大丈夫」「そのうち治るだろう」と、いぼ痔の症状を放置してしまう方は少なくありません。特に内痔核の初期段階では痛みが少ないため、軽視しがちです。しかし、いぼ痔は放置しても自然に治ることはほとんどなく、むしろ症状が進行し、様々なリスクを伴う可能性があります。

いぼ痔は自然には治らない

残念ながら、一度できてしまったいぼ痔が、特別なことをしなくても自然に完全に消えてなくなる可能性は非常に低いです。

  • 内痔核: 初期(I度、II度)の内痔核であれば、生活習慣の改善やセルフケアによって症状が軽快したり、脱出の頻度が減ったりすることは期待できます。しかし、いぼそのものが完全に元に戻ることは少ないです。進行してIII度、IV度になったいぼ痔は、自然に治ることはまずなく、治療なしでは悪化の一途をたどることがほとんどです。
  • 外痔核: 炎症や血栓による急性の腫れや痛みは、安静や市販薬などで数日から数週間で和らぐことがあります。しかし、いぼそのものは残ることが多く、再び炎症を起こしたり、血栓ができやすくなったりします。慢性的にできた皮膚のたるみ(皮垂)は自然には消えません。

したがって、「そのうち治るだろう」と放置せず、早い段階で適切な対処を始めることが重要です。

放置によるいぼ痔のリスクと悪化

いぼ痔を放置すると、症状が悪化するだけでなく、様々な不快な症状や合併症を引き起こすリスクが高まります。

  • 痛みの悪化: 内痔核が進行して脱出するようになると、肛門の外で締め付けられて痛みが生じたり、炎症を起こしたりして痛みが強くなることがあります。外痔核は、血栓ができると激しい痛みを伴うことがあります。
  • 出血の悪化: 出血が頻繁になったり、量が増えたりすることがあります。慢性的な出血は貧血の原因となることもあります。
  • 脱出の進行: 内痔核がII度からIII度、IV度へと進行し、常時脱出するようになると、日常生活に大きな支障をきたします。下着が汚れる、座るのが辛い、ニオイが気になるなど、精神的なストレスも大きくなります。
  • 嵌頓(かんとん): 脱出した内痔核が肛門の筋肉によって強く締め付けられ、血流が悪くなる状態です。いぼが急激に腫れ上がり、激しい痛みと腫れを伴います。放置するといぼの組織が壊死する危険もあり、緊急の処置が必要になることがあります。
  • 血栓性外痔核の再発・悪化: 一度血栓性外痔核になった場所は、再び血栓ができやすくなる傾向があります。繰り返すと、肛門周辺の皮膚がたるんでしまい、見た目の問題や清潔を保ちにくいといった問題が生じることがあります。
  • 感染: 脱出した内痔核や外痔核が常に外に出ていると、汚れが付着しやすく、細菌感染を起こすリスクが高まります。炎症が周囲に広がる可能性もあります。
  • 生活の質の低下: 痛みやかゆみ、出血、脱出といった症状が続くと、仕事やレジャー、スポーツなどが制限され、QOL(Quality of Life:生活の質)が著しく低下します。

いぼ痔の症状に気づいたら、放置せずにできるだけ早い段階で対策を始めることが、症状の悪化を防ぎ、辛い状態を長引かせないために非常に大切です。

いぼ痔の治療方法と治し方

いぼ痔の治療法は、症状の種類や進行度によって様々です。セルフケアで改善が見られる場合もあれば、薬を使ったり、病院で専門的な治療(注射や手術など)を受けたりする必要がある場合もあります。

治療の基本方針は、まず保存療法(手術以外の治療法)で症状の改善を目指し、それだけでは不十分な場合や進行した場合は専門的な治療を検討するという流れになることが多いです。

自分でできるいぼ痔のセルフケア

比較的軽度のいぼ痔(特に内痔核I度、II度や軽度の外痔核)の場合、日々のセルフケアで症状を和らげたり、進行を遅らせたりすることが可能です。

  • お風呂で温める(温浴): ぬるめのお湯(38〜40℃程度)にゆっくり浸かることで、肛門周辺の血行が促進され、うっ血や炎症が和らぎます。シャワーだけで済まさず、湯船に浸かる習慣をつけましょう。1日に数回、洗面器などにお湯を張り、腰湯(座浴)をするのも効果的です。
  • 肛門を清潔に保つ: 排便後は、ゴシゴシこすらずに、温水洗浄便座を使ったり、ウェットティッシュを使ったりして優しく拭きましょう。ただし、刺激の強いウェットティッシュはかえって肌を傷めることがあるので注意が必要です。清潔に保つことで、炎症や感染を防ぎます。
  • 食生活の改善: 便通を整えることが最も重要です。
  • 食物繊維を多く摂る: 野菜、海藻、きのこ類、果物、豆類などを積極的に摂りましょう。食物繊維は便の量を増やし、柔らかくする効果があります。
  • 水分を十分に摂る: 水分不足は便を硬くします。意識して水分を摂りましょう。特に起床時にコップ一杯の水を飲むのはおすすめです。
  • 刺激物を避ける: 唐辛子などの香辛料やアルコールは、肛門を刺激したり、血行を悪くしたりすることがあります。摂りすぎは控えましょう。
  • 適度な運動: ウォーキングなどの適度な運動は、全身の血行を良くし、便秘解消にも効果的です。ただし、過度な運動や、長時間座りっぱなし・立ちっぱなしになるような運動は避けた方が良い場合もあります。
  • 下着や衣類: 締め付けの強い下着や衣類は血行を妨げます。ゆったりとした通気性の良いものを身につけましょう。
  • 市販薬の使用: 薬局やドラッグストアで購入できるいぼ痔用の市販薬(軟膏、坐剤、内服薬)も、症状を和らげるのに役立ちます。詳しくは次の項目で解説します。

薬によるいぼ痔の治療法

いぼ痔の症状を緩和するために、様々な種類の薬が使われます。医師の処方箋が必要な医療用医薬品と、薬局で購入できる一般用医薬品(市販薬)があります。

  • 塗り薬(軟膏): 肛門の外側や、肛門のすぐ内側に塗るタイプの薬です。炎症を抑えるステロイド、痛みを和らげる局所麻酔薬、血行を促進する成分などが配合されています。外痔核や、肛門周囲のいぼ痔、かゆみ、痛みに有効です。
  • 注入軟膏: 軟膏がアプリケーターに入っており、肛門の中に直接注入して使用するタイプです。内痔核や、肛門の奥の方の炎症に効果的です。外側に塗布することもできます。
  • 坐剤(座薬): 肛門の中に挿入して使用するタイプの薬です。体温で溶けて肛門の内側から作用します。内痔核による出血や痛み、腫れなどに効果的です。塗り薬よりも肛門の奥に届きやすいのが特徴です。
  • 内服薬: 炎症や腫れを抑える成分(消炎酵素薬)、血行を促進する成分(ヘスペリジンなど)、便を柔らかくする成分(緩下剤)などがあります。体の内側から作用し、いぼ痔全体の症状を改善します。他の薬と併用されることもあります。

市販薬を選ぶ際は、ご自身の主な症状(出血、痛み、腫れ、かゆみなど)に合った成分が配合されているかを確認しましょう。薬剤師や登録販売者に相談するのも良い方法です。症状が重い場合や、市販薬を使っても改善しない場合は、必ず病院を受診してください。

病院でのいぼ痔の治療法(手術など)

セルフケアや薬物療法で効果が見られない場合や、進行した内痔核(III度、IV度)、血栓性外痔核による強い痛みなどには、病院での専門的な治療が必要になります。治療法は多岐にわたりますが、大きく分けて保存療法、注射療法、手術療法があります。

治療法 概要 主な適用 メリット デメリット/注意点
保存療法 生活習慣指導、薬物療法(内服薬、外用薬)など。主に軽度の場合や、手術が難しい場合に行われる。 I度、II度の内痔核、軽度の外痔核 体への負担が少ない。 進行した痔核には効果が限定的。症状の緩和が目的となることが多い。
注射療法 いぼ痔に薬剤を注入して、いぼを硬くして退縮させる方法。主にALTA療法(ジオン注射)が用いられる。 主にII度、III度の一部 手術よりも痛みが少なく、入院不要なことが多い。 IV度には適用できない場合が多い。再発の可能性もある。まれに発熱や合併症。
手術療法 いぼ痔を根本的に切除する方法や、いぼを吊り上げる方法など。 III度、IV度の内痔核、重度の外痔核、血栓性外痔核など 根本的な治療が可能。再発率が比較的低い。 入院が必要な場合がある。術後の痛みを伴うことがある。回復に時間がかかる場合がある。
(代表例1)結紮切除術 いぼ痔の根元を縛ってから切除する方法。最も一般的で再発率が低い。 III度、IV度、血栓性外痔核など 根治性が高い。 術後の痛みが比較的強い。入院が必要なことが多い。
(代表例2)PPH法 (自動吻合器使用痔核切除術) 肛門の入口近くの粘膜を切除・縫合して、いぼ痔を吊り上げる方法。切除範囲が狭いため痛みが少ないとされる。 III度、一部のIV度 術後の痛みが比較的少ない。回復が早い傾向。 適用できるいぼ痔のタイプに限りがある。まれに合併症。

どの治療法が適しているかは、いぼ痔の種類、進行度、症状、患者さんの全身状態、ライフスタイルなどを総合的に判断して医師が決定します。まずは専門医に相談し、診断を受けることが治療への第一歩です。

いぼ痔がどれくらいで治るか?治療期間の目安

いぼ痔の治療期間は、選択した治療法やいぼ痔の状態、そして個人の回復力によって大きく異なります。

  • セルフケアのみ: 症状の緩和や悪化防止が主な目的です。完全に治癒するわけではないため、「治るまで」という明確な期間はありませんが、日々の継続が大切です。症状が和らぐまでには数週間から数ヶ月かかることもあります。
  • 薬による治療: 市販薬や処方薬を使用する場合、数日から数週間で症状が和らぐことが多いです。しかし、薬はあくまで症状を抑えるものであり、根本的な原因やいぼ痔そのものがなくなるわけではありません。症状が改善しても、再発予防のために生活習慣の改善は続ける必要があります。
  • 注射療法(ALTA療法など): 注射自体は短時間で済みますが、いぼ痔が退縮して効果を実感できるようになるまでには数週間かかります。日帰りで受けられることが多いですが、術後の安静期間は必要です。
  • 手術療法:
  • 結紮切除術: 手術時間は30分〜1時間程度ですが、術後の痛みが伴うため、多くの場合数日〜1週間程度の入院が必要です。完全に痛みがなくなり、日常生活に支障がなくなるまでには、術後2週間〜1ヶ月程度かかることが多いです。傷が完全に治癒するには1ヶ月半〜2ヶ月ほどかかる場合もあります。
  • PPH法など: 比較的痛みが少ないとされる手術法でも、数日間の入院や、術後1週間程度の安静が必要な場合があります。完全に回復するまでの期間は、結紮切除術より短い傾向がありますが、個人差があります。

いずれの治療法を選択した場合でも、治療後の生活習慣の改善は再発予防のために非常に重要です。医師の指示に従い、根気強く治療に取り組むことが大切です。

いぼ痔の予防法と再発防止

いぼ痔は一度できると再発しやすい病気です。治療によって症状が改善しても、原因となった生活習慣や排便習慣を改善しない限り、再びいぼ痔に悩まされる可能性があります。いぼ痔を予防し、治療後の再発を防ぐためには、日々の心がけが重要です。

  • 正しい排便習慣を身につける: これが最も重要です。
  • 便意を我慢しない: 便意を感じたらすぐにトイレに行きましょう。我慢すると便が硬くなり、いきむ原因になります。
  • 長時間トイレに座らない: トイレに座るのは排便時のみとし、3分以内を目安にしましょう。スマホや本を持ち込まないようにします。
  • 強くいきまない: 自然な力で排便することを心がけましょう。硬くて出にくい場合は、無理にいきまず、便を柔らかくする対策をします。
  • 便通を整える: 便秘や下痢にならないように、食生活と水分摂取に気をつけます。
  • 食物繊維と水分を十分に摂る: 前述の通り、便を柔らかくし、量を増やすために不可欠です。
  • バランスの取れた食事: 偏食せず、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。
  • 肛門への負担を減らす:
  • 長時間同じ姿勢を避ける: デスクワーク中も1時間に一度は立ち上がって体を動かす、立ち仕事の合間に座って休憩するなど、同じ姿勢を長時間続けないようにします。
  • 体を冷やさない: 特にお腹や腰、お尻周りを冷やさないように注意します。入浴でしっかり体を温めるのは効果的です。
  • 適度な運動を習慣にする: 全身の血行促進と便通改善に役立ちます。無理のない範囲で、ウォーキングや軽いジョギングなどを続けましょう。
  • ストレスをためない: ストレスは体の様々な不調の原因となります。自分に合った方法でストレスを解消する習慣を持ちましょう。
  • お尻を清潔に保つ: 排便後は優しく洗浄し、清潔に保つことで、炎症や感染を防ぎます。

これらの予防策は、すでにいぼ痔の症状がある方の症状緩和にも役立ちます。日々の生活の中で意識して取り組むことが、いぼ痔と上手に付き合っていく、あるいは克服していくための鍵となります。

免責事項: 本記事は、いぼ痔症状に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の診断や治療を推奨するものではありません。個々の症状については個人差があり、本記事の情報だけで自己判断せず、必ず医師の診断を受けるようにしてください。本記事の情報に基づくいかなる行動についても、当社は責任を負いかねます。

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