突然の嘔吐に襲われ、「なぜだろう?」「何かの病気?」と原因が分からず、強い不安を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
吐き気や嘔吐は、体からの大切なサインであり、原因はごく一時的なものから、早期の対応が必要な病気に至るまで、非常に多岐にわたります。
この記事では、「嘔吐 原因 わからない」と不安な方のために、考えられる様々な原因を消化器系、消化器系以外、精神的なものなどに分類して解説します。また、ご自身の状態を把握するためのチェックポイントや、家庭でできる応急処置、そして特に注意が必要な「危険なサイン」についても詳しくご紹介します。
原因不明の嘔吐は、自己判断せず、適切な対処と必要に応じた医療機関への相談が非常に重要です。この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、次の行動への一助となれば幸いです。
消化器系の病気が原因の場合
原因不明の嘔吐や吐き気の最も一般的な原因は、胃や腸などの消化器系の問題です。食べ過ぎや飲み過ぎといった一時的なものから、炎症や閉塞、潰瘍といった病気が原因となっているケースまで幅広く考えられます。消化器系の病気による嘔吐は、多くの場合、腹痛や下痢などの他の消化器症状を伴いますが、症状の出方には個人差があります。
胃・十二指腸の病気(急性胃炎、胃潰瘍など)
- 急性胃炎
暴飲暴食、アルコールの過剰摂取、唐辛子などの刺激物の摂りすぎ、またはストレスなどが原因で、胃の粘膜が急性に炎症を起こした状態です。突然の激しい吐き気や嘔吐、みぞおちの痛み、胃もたれなどが特徴です。ひどい場合は、少量の出血を伴うこともあります。原因を取り除き、胃を休ませることで比較的早く改善することが多いですが、症状が強い場合は医療機関での治療が必要です。 - 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜が深く傷つき、えぐられた状態です。主な原因はヘリコバクター・ピロリ菌感染や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用、ストレスなどです。典型的な症状はみぞおち周辺の痛みですが、胃潰瘍では食後に、十二指腸潰瘍では空腹時に痛みが強くなる傾向があります。嘔吐は、潰瘍が進行して胃の出口付近を狭窄させたり、激しい痛みや炎症によって引き起こされたりします。吐血(コーヒーの出し殻のようなものが多い)やタール便(黒い便)を伴う場合は、緊急性の高いサインです。 - 機能性ディスペプシア
内視鏡検査などを行っても明らかな異常が見つからないにも関わらず、胃もたれ、早期満腹感(少し食べただけでお腹がいっぱいになる)、みぞおちの痛みや灼熱感といった不快な胃の症状が慢性的に続く病気です。吐き気や嘔吐も比較的よく見られる症状の一つです。胃や十二指腸の動きの異常、知覚過敏、精神的ストレス、ピロリ菌感染などが関与していると考えられています。
腸の病気(腸閉塞、虫垂炎など)
- 腸閉塞(イレウス)
何らかの原因で腸の内容物が流れなくなり、詰まってしまう状態です。開腹手術後の癒着、ヘルニア、腫瘍、炎症などが原因となります。激しい腹痛(波があることが多い)、お腹の張り、排便・排ガスの停止に加えて、頻繁な嘔吐が特徴的です。嘔吐物は、最初は胃液や胆汁ですが、進行すると腸の内容物、ひどい場合は便のような臭いのするものを吐くこともあります。放置すると腸が壊死するなど命に関わる状態になるため、緊急性の高い病気です。 - 虫垂炎(盲腸)
盲腸からぶら下がっている虫垂という小さな器官に炎症が起こる病気です。初期はみぞおちやお臍の周りが漠然と痛み、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。炎症が進むにつれて痛みが右下腹部に移動し、次第に強くなるのが典型的な経過です。発熱を伴うこともあります。放置すると虫垂が破裂して腹膜炎を起こす危険があるため、早期の診断と治療が必要です。 - 感染性腸炎
細菌やウイルスなどの病原体が腸に感染して炎症を起こす病気です。いわゆる「お腹の風邪」や「食中毒」の原因となることが多く、汚染された食品や水、感染者との接触によってうつります。突然の激しい嘔吐で始まることがあり、その後、腹痛や下痢、発熱などが現れることが多いです。原因となる病原体によって症状の程度や潜伏期間は異なります。体内の病原体や毒素を排出しようとする体の防御反応として嘔吐が起こります。
その他消化器関連の疾患
- 胆嚢炎・胆管炎
胆嚢や胆管に炎症が起こる病気です。胆石が原因となることが多いですが、細菌感染などでも起こります。右上腹部から背中にかけての強い痛み、発熱、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などの症状に加え、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。炎症がひどくなると重篤な状態になることもあります。 - 急性膵炎
膵臓に急性の炎症が起こる病気で、主な原因はアルコールの過剰摂取や胆石です。みぞおちから背中にかけての非常に激しい痛みが特徴で、体を丸めると楽になる姿勢をとることがあります。吐き気や嘔吐を高頻度で伴い、顔色が悪くなったり、お腹が張ったりすることもあります。重症化すると命に関わる病気です。 - 肝炎
ウイルスの感染や薬剤、アルコールなどによって肝臓に炎症が起こる病気です。全身の倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐、黄疸、尿の色が濃くなるなどの症状が現れることがあります。慢性化することもあり、注意が必要です。
消化器系以外の病気が原因の場合
嘔吐は消化器系の問題だけでなく、全身のさまざまな病気の一部として現れることもあります。脳や心臓、内分泌系の異常など、一見お腹とは関係なさそうな病気でも嘔吐が起こりうるため、「お腹が痛くないから大丈夫」と安易に考えないことが大切です。
脳・神経の病気(脳腫瘍、片頭痛など)
- 脳腫瘍・頭蓋内圧亢進
脳の中に腫瘍ができたり、頭部の外傷などによって頭蓋骨の内側の圧力(頭蓋内圧)が高まったりすると、吐き気を引き起こすことがあります。脳圧の上昇による嘔吐は、食事とは無関係に突然起こることが多く(噴水様嘔吐)、特に朝方に強い傾向があります。激しい頭痛やめまい、視力障害、手足の痺れや麻痺などの神経症状を伴う場合は、緊急性の高いサインです。 - 片頭痛
血管の拡張などが原因と考えられている慢性の頭痛です。頭の片側または両側にズキンズキンとした拍動性の痛みが特徴ですが、光や音に過敏になったり、吐き気や嘔吐を伴ったりすることも少なくありません。頭痛発作が起こるたびに吐き気が現れる場合、原因が分からず不安になることがあります。 - メニエール病・前庭神経炎など(めまいを伴う疾患)
内耳の異常によって起こるめまいや平衡感覚の障害を伴う病気です。ぐるぐると回るような強いめまいに襲われ、平衡感覚を失い、立っていられなくなることもあります。この強いめまいに伴って、吐き気や嘔吐が高頻度で現れます。メニエール病では難聴や耳鳴りも伴うことが多い一方、前庭神経炎ではめまいと吐き気が突然起こり、難聴などは伴わないことが多いです。
心臓・血管の病気(心筋梗塞など)
- 心筋梗塞
心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が詰まり、心筋が壊死してしまう非常に危険な病気です。典型的な症状は、胸の中央部や左胸が締め付けられるような、または圧迫されるような激しい痛みですが、人によってはあまり痛みがなく、吐き気や嘔吐、みぞおちの痛み、背中の痛み、肩や腕への放散痛、冷や汗、息苦しさ、強い倦怠感など、一見心臓と関係ないような症状だけが現れることもあります。特に女性や高齢者、糖尿病患者では非典型的な症状が多い傾向があります。吐き気は、心臓の痛みや虚血によって迷走神経が刺激されることで起こると考えられています。胸痛がなくても、突然の吐き気やみぞおちの痛み、息苦しさ、冷や汗などがある場合は、心筋梗塞の可能性も否定できないため、迷わず救急車を呼ぶなど迅速な対応が必要です。 - 狭心症
冠動脈が狭くなることで、心臓が必要とする血液が十分に供給されず、一時的に心筋が酸素不足になる状態です。労作時(体を動かした時)に胸痛や圧迫感が生じ、休憩すると治まるのが典型的ですが、やはり吐き気やみぞおちの痛みを伴うことがあります。
内分泌・代謝の異常(糖尿病など)
- 糖尿病性ケトアシドーシス
糖尿病のコントロールが極度に悪化し、インスリンが不足することで体内でケトン体が異常に増えてしまう状態です。血糖値が非常に高くなり、強い喉の渇き、多尿、全身の倦怠感、意識障害などの症状に加え、吐き気や嘔吐、腹痛を伴うことがあります。重症化すると命に関わるため、緊急入院が必要となることが多いです。 - 副腎クリーゼ
副腎皮質ホルモンが急激に不足する命に関わる状態です。全身の強い倦怠感、筋力低下、血圧低下、意識障害などに加え、激しい腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状を伴うことが特徴的です。特定の病気やストレスが誘因となります。
薬剤の副作用
様々な薬剤が副作用として吐き気や嘔吐を引き起こす可能性があります。特に、抗がん剤、抗生物質、痛み止め(特に非ステロイド性抗炎症薬)、ジギタリス製剤(心臓の薬)、麻薬性鎮痛薬などは、吐き気や嘔吐を起こしやすいことで知られています。新しい薬を飲み始めた後や、薬の量が増えた後に嘔吐が始まった場合は、薬剤の副作用である可能性を考える必要があります。自己判断で薬を中止せず、処方した医師や薬剤師に相談することが重要です。
妊娠
妊娠初期には、多くの女性がつわり(悪心・嘔吐)を経験します。これはホルモンバランスの変化などが原因と考えられており、妊娠5~6週頃から始まり、妊娠12~16週頃には落ち着くことが多いです。吐き気だけでなく、特定の匂いに過敏になったり、食の好みが変わったりすることもあります。症状がひどく、十分に水分や食事が摂れない状態(妊娠悪阻)になると、脱水や栄養障害を引き起こすため、医療的な管理が必要となります。
精神的・心因性の原因(ストレス、不安など)
心と体は密接に関係しており、精神的なストレスや強い不安、緊張などが体の症状として現れることがあります。自律神経のバランスが崩れることで、胃腸の動きが悪くなったり、胃酸の分泌が増えたりして、吐き気や嘔吐につながることがあります。特定の状況下(例えば、人前での発表前や満員電車の中など)で症状が現れやすい場合は、心因性が強く疑われます。心療内科や精神科での相談が有効な場合もあります。過敏性腸症候群など、ストレスが症状を悪化させる消化器疾患もあります。
その他の原因(乗り物酔い、誤飲など)
- 乗り物酔い
乗り物の揺れなどによって、視覚情報と体の平衡感覚情報にずれが生じ、脳が混乱することで起こります。吐き気や嘔吐、冷や汗、生あくびなどが主な症状です。乗り物から降りて安静にすることで改善します。 - 誤飲・誤食
体にとって有害な物質(洗剤、灯油、たばこ、観葉植物など)を誤って飲み込んでしまった場合、中毒症状の一つとして吐き気や嘔吐が起こることがあります。特に子供や判断能力が低下した高齢者で起こりやすく、緊急性の高い状況です。何を、いつ、どれくらい飲み込んだかを確認し、すぐに医療機関に連絡または受診することが必要です。安易に吐かせたり、水などを飲ませたりしない方が良い場合もあるため、専門家の指示を仰ぐことが重要です。 - 過度な疲労、寝不足
全身の疲労や寝不足によって自律神経が乱れ、吐き気を引き起こすことがあります。十分な休息を取ることで改善することが多いです。 - 熱中症
特に夏の暑い時期に、体温調節機能が破綻して起こる熱中症でも、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。めまい、頭痛、大量の汗、全身の倦怠感などの症状も見られます。重症化すると意識障害などを引き起こす危険があるため、涼しい場所に移動して体を冷やし、水分・塩分を補給するなどの応急処置を行い、症状が改善しない場合は医療機関を受診してください。
このように、原因がわからない嘔吐には非常に多くの可能性があるため、症状だけで自己判断するのは危険です。
嘔吐の原因を特定するためのポイント
病院を受診する際、医師は患者さんからの情報をもとに原因を探っていきます。ご自身の症状を詳しく把握しておくことが、原因を特定し、適切な診断や治療を受けるために非常に役立ちます。以下のポイントをチェックしてみてください。
嘔吐以外の随伴症状を確認する
嘔吐単独で起こることもありますが、多くの場合は他の症状を伴います。その「随伴症状」が原因を特定する重要な手がかりとなります。
- 発熱: 感染症(胃腸炎、虫垂炎、肺炎など)の可能性
- 腹痛: 胃腸炎、虫垂炎、腸閉塞、胆嚢炎、膵炎、胃潰瘍などの可能性。痛む場所や痛みの性質(差し込むような痛み、鈍痛、波があるかなど)も重要な情報です。
- 下痢: 感染性胃腸炎、食中毒の可能性
- 頭痛: 片頭痛、脳出血、脳腫瘍、髄膜炎などの可能性。頭痛の性質(拍動性、締め付けられるようかなど)や痛む場所も重要です。
- 胸痛: 心筋梗塞、狭心症、大動脈解離などの可能性。胸の痛みや圧迫感に加えて、腕や肩、顎、背中への放散痛がないかも確認します。
- めまい: 内耳の疾患(メニエール病、前庭神経炎)、脳の病気(脳梗塞、脳出血など)の可能性
- 手足の痺れ、ろれつが回らない、意識障害: 脳梗塞、脳出血、糖尿病性ケトアシドーシス、重度の脱水などの可能性。緊急性の高いサインです。
- 息苦しさ、呼吸困難: 心臓病、肺炎、肺血栓塞栓症などの可能性
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる): 肝炎、胆道閉塞などの可能性
- 全身の倦怠感: 様々な病気で起こりうる症状ですが、感染症や代謝異常などで強く現れることがあります。
- 体の特定の部位の痛み: 右下腹部痛(虫垂炎)、右上腹部痛(胆嚢炎、胆管炎)、みぞおちの痛み(胃炎、胃潰瘍、膵炎、心筋梗塞など)など、痛む場所が原因臓器の手がかりになります。
嘔吐物の性状をチェックする(黄色、緑、血など)
嘔吐物の色や内容物も、原因を推測する上で役立ちます。
嘔吐物の性状 | 考えられる原因 |
---|---|
透明または白い液体(胃液) | 食事とは無関係の吐き気、空腹時の嘔吐、吐き始めなど。 |
黄色または緑色の液体(胆汁) | 胃の内容物がなくなり、十二指腸から逆流した胆汁。繰り返し吐いている場合。腸閉塞の可能性も。 |
食べたもの、消化途中のもの | 食後比較的すぐの嘔吐、急性胃炎、食中毒、胃の動きが悪い場合など。 |
コーヒーの出し殻のようなもの(茶色) | 胃や十二指腸からの出血。血液が胃酸と反応して変色したもの。潰瘍や腫瘍の可能性。緊急受診が必要です。 |
鮮やかな赤い血 | 食道や胃の入り口付近からの出血、または激しい嘔吐で食道粘膜が傷ついた(マロリーワイス症候群)。緊急受診が必要です。 |
便のような臭いのする液体または内容物 | 腸閉塞が進行している場合。腸の内容物が逆流しているサイン。緊急性の高い状況です。 |
吐いてもすっきりしない、何度も吐き続ける | 腸閉塞、重症の胃腸炎、脳圧亢進など。 |
嘔吐が起こるタイミング(突然、夜中など)
嘔吐がどのようなタイミングで起こるかも重要な情報です。
- 突然、前触れなく起こる: 脳の病気(脳圧亢進による噴水様嘔吐)、心筋梗塞、急性胃腸炎、食中毒、片頭痛など、急性の病気の可能性。
- 食後すぐ: 胃炎、食中毒、胃潰瘍、胃の動きが悪い(機能性ディスペプシアなど)場合。
- 空腹時: 十二指腸潰瘍、つわり、精神的なストレスなど。
- 朝方: つわり、脳圧亢進による嘔吐など。
- 特定の匂いや状況: つわり、精神的なストレス(心因性)、乗り物酔いなど。
- 運動後: 心臓病、熱中症など。
- 夜間: 逆流性食道炎(胃酸が逆流して吐き気や嘔吐につながる)、睡眠時無呼吸症候群に伴う胃酸逆流など。
周囲で同様の症状の人がいないか
家族や職場の同僚、一緒に食事をした人など、周囲に同じように吐き気や嘔吐、下痢などの症状を訴えている人がいないか確認することも大切です。集団発生している場合は、食中毒や感染性の胃腸炎、インフルエンザなどの感染症の可能性が高まります。
これらのポイントを整理し、受診時に医師に詳しく伝えることで、より迅速かつ正確な診断につながることが期待できます。
原因不明の嘔吐への応急処置と注意点
原因がはっきりしない嘔吐の場合、不安になりますが、まずは落ち着いて適切な応急処置を行い、体の状態を観察することが大切です。ただし、後述する危険なサインがある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
脱水症状を防ぐ水分補給
嘔吐を繰り返すと、体から水分や電解質(ナトリウム、カリウムなど)が失われ、脱水症状に陥りやすくなります。脱水は、全身倦怠感、めまい、頭痛、意識障害などを引き起こし、特に乳幼児や高齢者では重篤化しやすいので注意が必要です。
- 経口補水液を活用する: 水だけを飲むよりも、水と電解質、糖分がバランス良く含まれている経口補水液(OS-1など)が最も適しています。薬局やコンビニエンスストアで購入できます。
- 少量ずつ頻回に飲む: 一度にたくさん飲むと、胃が刺激されて再び吐いてしまうことがあります。スプーン1杯やペットボトルのキャップ1杯分など、ごく少量を5分〜15分間隔でゆっくりと飲みましょう。吐き気が落ち着いてきたら、少しずつ量を増やしていきます。
- 冷たい飲み物の方が飲みやすい場合も: 飲む物の温度は、冷たい方が吐き気が和らぐ場合があります。ただし、冷たすぎると胃を刺激することもあるため、常温に近いものや少し冷やした程度が良いでしょう。
- ジュースや炭酸飲料は避ける: 糖分が多すぎたり、刺激が強かったりするため、脱水を悪化させたり、胃を刺激したりする可能性があります。避けるのが無難です。
- スポーツドリンクは状況に応じて: スポーツドリンクも水分と電解質を含みますが、経口補水液に比べて糖分が多いものもあります。軽い脱水には有効ですが、下痢を伴っている場合などは糖分が腸の水分吸収を妨げることもあるため、経口補水液の方が推奨されます。
- 吐き気が強く、何も飲めない場合: 経口補水液も飲めずに嘔吐を繰り返す場合は、点滴による水分補給が必要になることがあります。我慢せずに医療機関を受診しましょう。
安静にして体を休める
嘔吐は体力を消耗します。無理に活動せず、体を横にして安静にしましょう。体を締め付ける衣類は緩め、楽な姿勢で過ごしてください。特に、吐き気がある場合は、横になることで症状が和らぐことがあります。吐きそうになったときにスムーズに吐けるよう、洗面器やビニール袋などを近くに用意しておくと安心です。横になる際は、吐いた物が気管に入らないよう、顔を横に向けて寝るようにしましょう。
食事を控える・消化の良いものから始める
嘔吐がある間は、胃腸が炎症を起こしたり、機能が低下したりしている可能性があります。無理に食事を摂ると、症状が悪化したり、再び吐いてしまったりすることがあります。
- 嘔吐が落ち着くまで食事は控える: 少なくとも数時間は固形食を控え、水分補給に専念しましょう。
- 吐き気が落ち着いたら、消化の良いものから少量ずつ: 嘔吐や吐き気が落ち着いてきたら、まずは重湯、お粥の上澄み、具なしのスープなど、消化の良い液体や半固形食から始めます。
- 徐々に固形食へ: 症状の経過を見ながら、軟らかく煮たうどん、 well煮た野菜、豆腐、白身魚など、脂質が少なく消化しやすいものへと段階的に移行します。
- 避けるべき食品: 脂っこいもの、辛いもの、冷たいもの、食物繊維が多いもの(きのこ類、こんにゃくなど)、アルコール、カフェインなどは胃腸に負担をかけるため、しばらくは避けましょう。
- よく噛んでゆっくり食べる: 食事を再開する際は、急いで食べず、よく噛んでゆっくりと少量ずつ食べるように心がけましょう。
市販薬の選択について
原因が不明な嘔吐の場合、安易に市販の吐き気止めや胃薬を使用することは推奨できません。市販薬によって一時的に症状が和らいでも、原因となっている病気が隠れてしまい、診断が遅れて重症化する危険があるためです。
- 自己判断での市販薬使用は控える: 特に、激しい腹痛や頭痛、発熱などの他の症状を伴う場合や、危険なサインが見られる場合は、市販薬でごまかさずに必ず医療機関を受診してください。
- どうしても使用したい場合は薬剤師に相談: かかりつけ医にすぐに相談できない場合で、症状が比較的軽い場合でも、薬局の薬剤師に症状を詳しく説明し、相談した上で適切な薬を選ぶようにしましょう。
- 対症療法としての吐き気止め: 市販の吐き気止めは、主に乗り物酔いや食べ過ぎによる吐き気など、原因がある程度特定できる場合に使用されるものです。原因不明の嘔吐に対して、根本的な解決にはなりません。
原因不明の嘔吐が続く場合は、たとえ症状が軽くても、早めに医療機関を受診して原因を特定することが大切です。
こんな嘔吐・吐き気はすぐに病院へ
原因不明の嘔吐でも、中にはすぐに医療機関を受診したり、救急車を呼んだりする必要があるケースがあります。以下のような「危険なサイン」が見られる場合は、様子を見ずに迅速な対応が必要です。
すぐに受診すべき危険なサイン
以下のサインは、重篤な病気の可能性を示唆しています。一つでも当てはまる場合は、ためらわずに医療機関を受診してください。
- 突然発症した非常に激しい頭痛を伴う嘔吐: 脳出血、くも膜下出血などの可能性
- 胸痛、息苦しさ、冷や汗、左腕や顎への痛みを伴う嘔吐: 心筋梗塞、狭心症などの可能性
- 手足の痺れ、麻痺、ろれつが回らない、顔の歪み、意識がもうろうとする: 脳梗塞、脳出血などの可能性
- 腹部を触ると激しい痛みがある、お腹が硬く張っている: 腹膜炎、急性膵炎、腸閉塞などの可能性
- 吐血(鮮やかな赤い血やコーヒーの出し殻のようなもの)、または黒い便が出る: 胃や十二指腸からの出血。潰瘍や腫瘍、食道静脈瘤破裂などの可能性
- 激しい下痢と高熱を伴う嘔吐: 重症の感染性胃腸炎、食中毒などの可能性
- 脱水症状がひどい(尿が出ない、皮膚が乾燥している、ぐったりしている): 点滴による治療が必要な可能性
- 持病がある方(糖尿病、心臓病、腎臓病など)で、いつもと違う強い症状が出ている: 基礎疾患の悪化や合併症の可能性
- 誤飲・誤食の可能性がある: 中毒の可能性
- 頭部を強く打った後の嘔吐: 頭蓋内損傷の可能性
- 小児や高齢者で、ぐったりしている、泣き方が弱い、意識がはっきりしない: 重症化しやすいサイン
これらのサインは、時間との勝負となる病気の可能性もあります。迷った場合は、救急相談センター(#7119など)に電話して指示を仰ぐか、ためらわずに救急車を呼びましょう。
何科を受診すべきか
原因が分からない嘔吐の場合、まずはかかりつけ医や内科を受診するのが一般的です。医師が問診や診察を行い、必要に応じて血液検査、尿検査、腹部超音波検査、胃カメラなどの検査を行い、原因を探ります。
- 一般的な嘔吐・吐き気: 内科、消化器内科
- 激しい頭痛を伴う: 脳神経外科、神経内科
- 胸痛を伴う: 循環器内科
- めまいを伴う: 耳鼻咽喉科、脳神経外科、神経内科
- 妊娠の可能性がある: 産婦人科
- 精神的な要因が疑われる: 心療内科、精神科
- 誤飲・誤食: 小児の場合は小児科、成人の場合は救急外来
まずは内科を受診し、必要であれば専門医を紹介してもらうのがスムーズでしょう。受診する際は、いつから症状が出たか、どのような症状(嘔吐以外の随伴症状、嘔吐物の性状、タイミングなど)があるか、服用している薬、持病などを伝えられるようにまとめておくと良いでしょう。
嘔吐の原因が分からない時のQ&A
原因が分からない嘔吐に関して、よくある疑問とその回答をまとめました。
Q. 突然嘔吐する原因は何ですか?
A. 突然の嘔吐は、急性胃腸炎や食中毒などの消化器系の急性の病気だけでなく、片頭痛の発作、心筋梗塞、脳出血や脳梗塞といった脳血管疾患、急性膵炎、胆嚢炎など、比較的緊急性の高い病気でも起こり得ます。食事と関係なく突然起こる場合や、激しい頭痛や胸痛などを伴う場合は特に注意が必要です。原因を特定するためにも、医療機関での診察をおすすめします。
Q. 胃腸炎じゃないのに嘔吐するのはなぜ?
A. 嘔吐の原因は胃腸炎だけではありません。脳や神経の病気(脳腫瘍、片頭痛、めまいなど)、心臓や血管の病気(心筋梗塞など)、内分泌や代謝の異常(糖尿病性ケトアシドーシスなど)、薬剤の副作用、妊娠、過度のストレスや不安といった精神的な要因など、全身の様々な病気や状態が原因となります。胃腸炎のような腹痛や下痢がなくても嘔吐する場合は、消化器以外の原因を疑う必要があります。
Q. 急に吐いた大人の原因は何ですか?
A. 大人が急に吐く原因としては、急性胃腸炎や食中毒が最も多いですが、前述のように心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気の可能性も否定できません。特に、激しい頭痛、胸痛、息苦しさ、手足の痺れ、意識障害などを伴う場合は、緊急性が非常に高いため、すぐに医療機関を受診する必要があります。薬剤の副作用や、一時的な体調不良(寝不足、疲労)でも起こることがあります。
Q. 嘔吐した場合、何を疑うべき?
A. まずは最も頻度の高い急性胃腸炎や食中毒などを疑いますが、それ以外の可能性も考慮することが重要です。嘔吐に加えて、どのような随伴症状があるか、嘔吐物の性状やタイミングなどを詳しく観察し、総合的に判断する必要があります。特に、危険なサイン(激しい頭痛、胸痛など)がないかを必ず確認してください。これらのサインがあれば、胃腸炎以外の重篤な病気を強く疑い、迅速に医療機関を受診すべきです。
Q. 吐くと楽になる理由は何ですか?
A. 吐くことで、胃や腸の中に溜まっている原因物質(毒素、病原体など)や、消化不良の内容物、過剰な胃液などが体外に排出されます。これにより、胃や腸への刺激や負担が軽減され、一時的に不快感や吐き気が和らぐことがあります。これは体が有害なものを排出しようとする防御反応ですが、根本的な原因が解決されたわけではありません。吐いてもすぐにまた吐き気をもよおしたり、他の症状(腹痛、発熱など)が続いたりする場合は、根本原因に対する治療が必要です。
まとめ|原因不明の嘔吐は自己判断せず医師に相談を
「嘔吐 原因 わからない」という状況は、非常に不安を感じるものですが、その背景には一時的なものから、早期発見・治療が必要な病気まで、様々な原因が考えられます。暴飲暴食や乗り物酔いなど、明らかな原因が分かっている場合を除き、原因不明の嘔吐が続く場合や、特に他の症状を伴う場合は、安易に自己判断せず、医療機関を受診することが非常に重要です。
この記事でご紹介したように、嘔吐物の性状や随伴症状、嘔吐が起こるタイミングなどを注意深く観察し、受診時に医師に詳しく伝えることで、より正確な診断につながります。また、激しい頭痛、胸痛、意識障害などの「危険なサイン」が見られる場合は、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。
原因が分からず不安な時こそ、専門家である医師の診察を受け、適切なアドバイスや治療を受けることが、あなたの健康と安心を守る第一歩となります。早めに医療機関にご相談ください。
免責事項: 本記事の情報は、一般的な知識提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を代替するものではありません。個々の症状については、必ず医師または他の資格を持った医療専門家にご相談ください。本記事の情報によって生じたいかなる結果についても、当方は一切の責任を負いかねます。