もしかして弛緩性便秘?原因・特徴・今日からできる対策を徹底解説

多くの人が経験する便秘。その中でも、「弛緩性便秘」は、特に年齢を重ねた方や女性に多く見られるタイプです。お腹が張る、便は出るのにすっきりしない、硬い便ではないのに排出しにくいなど、つらい症状に悩まされている方もいるかもしれません。この記事では、弛緩性便秘のメカニズムから、その原因、具体的な症状、そして自分でできる改善策や病院での治療法、さらには予防法まで、専門的な視点から分かりやすく解説します。この記事を読み終える頃には、あなたの便秘の悩みが少しでも解消され、快適な毎日を取り戻すためのヒントが見つかるはずです。

目次

弛緩性便秘とは?特徴とメカニズム

弛緩性便秘(しかんせいべんぴ)とは、大腸のぜん動運動(蠕動運動)が低下し、便を肛門へ送り出す力が弱くなることで起こる便秘のタイプです。ぜん動運動とは、腸が波打つように収縮・弛緩を繰り返すことで、内容物を移動させる運動のこと。この運動が弱まると、便が大腸内をスムーズに進まず、長く留まることになります。

便が大腸に長く留まると、水分が過剰に吸収されてしまい、便の量が減ったり、硬くなりすぎたりすることがあります。しかし、弛緩性便秘の特徴は、必ずしも便がカチカチに硬くなるわけではない点です。むしろ、やわらかい便や、通常の硬さの便であっても、腸の送り出す力が弱いため、スムーズに排出しづらくなることが多いのです。

他の便秘タイプと比較すると、弛緩性便秘は「運動不足」「腹筋力の低下」「加齢」などが主な原因となりやすい傾向があります。

便秘の種類 主な原因 特徴
弛緩性便秘 運動不足、腹筋低下、加齢、水分・食物繊維不足 ぜん動運動低下。
便が停滞しやすい。
便は硬くないこともある。
残便感。
痙攣性便秘 ストレス、過敏性腸症候群 腸の過緊張。
ウサギのフンのようなコロコロ便。
腹痛を伴うことが多い。
直腸性便秘 便意の我慢 直腸に便が溜まっても便意を感じにくい。
出口で詰まる感じ。
高齢者に多い。
器質性便秘 腸の病気(腫瘍、狭窄など) 腸自体に物理的な通過障害がある。
血便や体重減少など他の症状を伴うことも。

弛緩性便秘の場合、便はゆっくりとしか移動しないため、直腸に到達するまでに時間がかかり、便意も感じにくくなります。そして、ようやく直腸に到達しても、排出を助ける腹筋や骨盤底筋の力が弱っていると、いきんでも便が出にくいという状況に陥ります。このように、弛緩性便秘は「腸の動きの弱さ」と「排出力の弱さ」が複合的に関わっていることが多いのです。

弛緩性便秘の主な原因

弛緩性便秘は、一つだけでなく複数の要因が絡み合って発生することがよくあります。その主な原因について、さらに詳しく掘り下げていきましょう。自分がどの原因に当てはまるかを知ることは、改善の第一歩となります。

食物繊維や水分の不足

現代の食生活は、加工食品や外食が多くなり、食物繊維の摂取量が不足しがちです。食物繊維は、便の材料となり、適度な「かさ」を作ることで腸を刺激し、ぜん動運動を促す重要な役割を果たします。また、腸内の善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える効果もあります。食物繊維が不足すると、便の量が減り、腸への刺激が少なくなるため、ぜん動運動が鈍化しやすくなります。

水分不足も弛緩性便秘の大きな原因の一つです。便の約70~80%は水分で構成されており、適切な水分量がないと便は硬くなり、動きが悪くなります。特に、弛緩性便秘の場合は便が腸内に長く留まるため、より多くの水分が吸収されてしまい、さらに便が硬く、排出しにくくなるという悪循環に陥りやすいです。意識的に水分を摂取しないと、知らず知らずのうちに脱水気味になり、便秘を悪化させてしまうことがあります。ジュースやお茶だけでなく、純粋な「水」をこまめに飲むことが大切です。

運動不足と腹筋力の低下(女性に多い理由も)

腸のぜん動運動は、体の動きとも密接に関係しています。適度な運動は、腸への物理的な刺激となり、ぜん動運動を活発にする効果があります。特にウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、お腹周りの筋肉を動かし、腸を揺らすことでぜん動運動を助けます。しかし、デスクワーク中心の生活や、運動習慣がない人は、腸への刺激が不足しがちです。

さらに、排便時には腹筋や骨盤底筋の力を使って便を押し出す必要があります。運動不足はこれらの筋肉を衰えさせ、排便に必要な「いきむ力」を弱めてしまいます。特に、女性は男性に比べて元々腹筋が弱い傾向があり、さらに妊娠・出産によって腹筋や骨盤底筋が緩みやすくなるため、弛緩性便秘になりやすいと言われています。無理なダイエットによる筋力低下も、原因の一つとなることがあります。

加齢に伴う腸の機能低下

年齢を重ねると、体全体の機能が少しずつ衰えていきます。腸の機能も例外ではありません。腸のぜん動運動を司る神経の働きが鈍くなったり、腸自体の筋力が低下したりすることがあります。また、排便に必要な腹筋や骨盤底筋の力も衰えがちです。これらの生理的な変化により、高齢者は便をスムーズに送り出し、排出することが難しくなり、弛緩性便秘になりやすい傾向があります。若い頃と同じような食事や生活習慣を続けていても、便秘になるのはこのためです。

排便反射の低下(便意の我慢など)

便が直腸に到達すると、直腸の壁が刺激されて脳に信号が送られ、「便意」を感じるようになります。これが「排便反射」です。しかし、日常生活で便意を感じても、すぐにトイレに行けない状況(通勤中、仕事中など)で我慢することを繰り返していると、この排便反射が徐々に鈍くなってしまいます。便意を感じにくくなり、便が直腸に溜まり続けてしまうのです。

便が長く直腸に留まると、さらに水分が吸収されて硬くなり、より排出しにくくなります。また、直腸が常に便で引き伸ばされている状態が続くと、刺激に対する感受性が低下し、ますます便意を感じにくくなるという悪循環に陥ります。忙しさや環境が原因で、つい便意を我慢しがちな人は注意が必要です。

薬剤の副作用

一部の薬剤は、副作用として腸の動きを抑えたり、便を硬くしたりすることがあります。これにより、便秘を引き起こしたり、既存の便秘(特に弛緩性便秘)を悪化させたりすることが知られています。

便秘を引き起こしやすい代表的な薬剤:
抗うつ薬、向精神薬: 腸の動きを抑える作用を持つものがあります。
鎮痛薬(特にオピオイド系): 腸のぜん動運動を強く抑制します。
降圧薬(カルシウム拮抗薬など): 腸の筋肉を弛緩させる作用を持つことがあります。
制酸薬(アルミニウムやカルシウム含有): 便を硬くする性質があります。
抗ヒスタミン薬: 副交感神経の働きを抑え、腸の動きを鈍らせることがあります。
鉄剤: 消化管刺激や便を黒く硬くする性質があります。

これらの薬剤を服用している場合、便秘が副作用として現れている可能性があります。自己判断で薬を中止するのではなく、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。薬剤性の便秘は、薬の種類を変更したり、下剤を併用したりすることで改善できる場合があります。

弛緩性便秘の代表的な症状

弛緩性便秘は、他のタイプの便秘とは少し異なる特徴的な症状が現れることがあります。「便が出ない」という共通の悩みはありますが、その状態や感覚に違いが見られます。

便が硬くなくとも排出困難

多くの人が便秘と聞くと、「便が硬くて出ない」というイメージを持つかもしれません。しかし、弛緩性便秘の場合、便の硬さは普通か、むしろやわらかいのに、排出しにくいという症状がよく見られます。これは、便自体に問題があるのではなく、大腸が便を送り出す力が弱まっていることや、排便に必要な腹筋・骨盤底筋の力が足りないために起こります。

便意はあるのにいきんでも出ない、あるいは便意自体があまりないけれどお腹の張りを感じる、といった症状が特徴的です。便が直腸に溜まっても、排便反射が鈍いために強い便意を感じにくく、結果として排便のタイミングを逃してしまうこともあります。

残便感・腹部膨満感

弛緩性便秘の代表的な症状の一つが「残便感」です。排便しても便が完全に排出されず、お腹の中にまだ便が残っているような不快な感覚が続きます。これは、腸のぜん動運動が弱いため、一度の排便で腸の内容物をすべて出し切ることが難しいからです。

また、腸内に便やガスが溜まりやすくなるため、「腹部膨満感」、つまりお腹が張った感じや、ぽっこりとしたお腹になることもよくあります。ガスが溜まることで、お腹がゴロゴロ鳴ったり、おならが増えたりすることもあります。これらの症状は、日常生活における不快感や、食欲不振にもつながることがあります。

腹痛、吐き気、食欲不振

腸内に便が長期間停滞すると、便が腐敗し、有害物質やガスが発生しやすくなります。これらの物質が腸を刺激したり、腸内環境を悪化させたりすることで、腹痛を引き起こすことがあります。特に、便が大量に溜まっている場合は、お腹のあちこちが痛む「不定愁訴」として現れることもあります。

また、腸の動きが悪く、内容物がスムーズに進まないことで、胃や小腸にも影響が及ぶことがあります。食欲がなくなったり、吐き気を感じたりすることもあります。慢性的な便秘は、消化器系全体の不調につながる可能性があるのです。

痔や肌荒れなどの二次症状

慢性的な便秘、特に排出しにくい弛緩性便秘では、排便時に強くいきむことが多くなります。強いいきみは肛門周辺の血管に負担をかけ、痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)などの痔の原因となったり、悪化させたりします。また、硬くない便でも、排出しづらさからくる過度のいきみは肛門に負担をかけるため、注意が必要です。

腸内環境が悪化し、有害物質が溜まると、それが血流に乗って全身に運ばれ、肌の状態にも悪影響を与えることがあります。ニキビや吹き出物が増える、肌がくすむ、といった肌荒れも、便秘の二次症状としてよく見られます。さらに、慢性的な便秘は全身倦怠感、肩こり、頭痛、イライラなど、精神的な不調にもつながることがあります。

弛緩性便秘の診断方法

弛緩性便秘は、自分で症状から推測することもできますが、正確な診断や、他の病気が隠れていないかを確認するためには、医療機関を受診することが重要です。医師は、患者さんの症状や既往歴、生活習慣などを詳しく聞き取ることから始めます。

まず行われるのは「問診」です。便秘になったのはいつからか、便の回数や硬さ、色、形、血が混じっていないかなど、便の状態について詳しく聞かれます。また、お腹の張りや痛み、吐き気などの有無、食事や運動の習慣、普段服用している薬の種類、過去の病歴、妊娠・出産経験なども重要な情報となります。便秘の経過や症状の特徴を聞き取ることで、ある程度便秘のタイプを絞り込むことができます。

次に「身体診察」として、お腹を触る触診が行われることがあります。お腹の張り具合や、大腸に便が溜まっているかどうかなどを確認します。

必要に応じて、さらに詳しい検査が行われることもあります。

腹部X線検査: お腹のレントゲン写真を撮ることで、大腸内に便やガスがどの程度溜まっているか、その分布などを視覚的に確認できます。弛緩性便秘では、大腸全体に便が広がって溜まっている様子が見られることが多いです。
大腸通過時間検査: 特殊なカプセルやマーカーを飲み込み、一定時間経過後にX線写真を撮ることで、大腸の内容物が肛門までどのくらいの時間をかけて移動するかを調べます。弛緩性便秘では、通過時間が著しく延長していることが確認できます。
血液検査: 貧血や炎症の有無、甲状腺機能異常など、便秘の原因となりうる他の病気を調べるために行われることがあります。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ): 大腸の中に器質的な病変(ポリープやがん、炎症、狭窄など)がないかを確認するための精密検査です。特に、便秘が急に始まった場合、血便がある場合、体重が減少している場合など、他の病気が疑われる場合に強く推奨されます。弛緩性便秘そのものを診断する検査ではありませんが、器質性便秘を除外するために非常に重要です。

医師はこれらの情報や検査結果を総合的に判断し、弛緩性便秘であると診断したり、他の病気が隠れていないかを確認したりします。自己診断だけで済ませず、症状が続く場合は一度専門医に相談することが大切です。

弛緩性便秘の改善策と治療法

弛緩性便秘の改善には、まずは日々の生活習慣の見直しが非常に重要です。セルフケアで改善が見られない場合や、症状が重い場合は、医療機関での治療が必要となります。

食事での改善(食物繊維、水分、発酵食品)

弛緩性便秘の改善には、食事内容が大きく影響します。

食物繊維: 便の量を増やし、腸を刺激するため、積極的に摂取しましょう。
不溶性食物繊維: 便のかさとなり、腸を刺激します。(例: 野菜、きのこ、豆類、穀類)
水溶性食物繊維: 便を柔らかくし、排出しやすくします。(例: 海藻、こんにゃく、果物、里芋)
どちらか一方に偏らず、バランス良く摂取することが理想です。目標は1日20g以上と言われています。野菜のおかずを増やしたり、主食を玄米や雑穀米に変えたり、果物や海藻類を意識的に食事に取り入れましょう。ただし、急に大量に摂るとガスが溜まってお腹が張ることもあるため、徐々に量を増やしていくのがポイントです。
水分: 便を柔らかくするために不可欠です。1日に1.5~2リットルを目安に、水やお茶をこまめに飲みましょう。特に朝起きてすぐにコップ一杯の冷たい水を飲むと、腸が刺激されてぜん動運動が促されやすいと言われています。食事中だけでなく、食事と食事の間にも水分補給を意識しましょう。
発酵食品: 腸内環境を整える善玉菌を増やし、腸の動きを活性化する効果が期待できます。ヨーグルト、納豆、味噌、キムチ、漬物などを毎日の食事に取り入れると良いでしょう。ただし、特定の種類の乳酸菌などが効果的な場合もあるため、自分に合うものを探してみるのも良いかもしれません。
オリゴ糖: 善玉菌のエサとなり、腸内環境を改善します。玉ねぎ、バナナ、蜂蜜、大豆製品などに含まれています。甘味料として利用できる市販のオリゴ糖もあります。

逆に、便秘を悪化させる可能性のある、消化に時間がかかるものや腸内環境を乱すものを避けることも考慮しましょう。例としては、脂っこい食事、刺激物、加工食品などです。

運動での改善(腹筋運動、ウォーキング)

運動は腸を物理的に刺激し、腹筋や骨盤底筋を鍛えることで排便力を高めます。

ウォーキング: 最も手軽で効果的な運動の一つです。1日20~30分程度、少し速足で歩くことを目標にしましょう。歩くことでお腹が揺れ、腸に刺激が伝わります。通勤中や買い物など、日常生活の中に歩く機会を増やすだけでも効果があります。
腹筋運動: 排便に必要な腹筋力をつけるのに役立ちます。仰向けになり膝を立てて行う簡単な腹筋運動や、ドローイン(息を吐きながらお腹をへこませる)など、無理のない範囲で続けられるものを取り入れましょう。
腸マッサージ: お腹を「の」の字を描くように優しくマッサージすることで、腸のぜん動運動を促す効果が期待できます。特に、おへその周りから時計回りにマッサージするのが一般的です。食後すぐは避け、リラックスした状態で行いましょう。
ストレッチやヨガ: 体を動かすことで血行が促進され、自律神経のバランスを整える効果も期待できます。特に腰回りをひねる動きや、開脚など、骨盤周辺を動かすストレッチは腸への刺激につながります。

重要なのは、毎日継続することです。激しい運動である必要はなく、軽い運動でも毎日続けることが弛緩性便秘の改善には効果的です。

生活習慣の見直し(規則正しい排便、ストレス管理)

食事や運動に加えて、生活習慣そのものを見直すことも弛緩性便秘の改善に不可欠です。

規則正しい排便習慣: 朝食後など、毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつけましょう。たとえ便意がなくても、トイレに座る時間を設けることで、排便反射を促す訓練になります。便意を感じたら我慢せず、すぐにトイレに行くことも重要です。
リラックスできるトイレ環境: トイレはリラックスできる空間であるべきです。焦らず、ゆったりと時間をかけて排便できるよう、環境を整えましょう。スマホを見たり本を読んだりする人もいますが、集中して排便に向き合うことも大切です。足台を使って膝をお腹よりも高くすると、排便しやすい姿勢になります。
十分な睡眠: 睡眠不足や不規則な生活は、自律神経の乱れにつながり、腸の働きを鈍らせることがあります。毎日決まった時間に寝て起きるなど、規則正しい生活を心がけましょう。
ストレス管理: ストレスは自律神経のバランスを崩し、腸の動きに悪影響を与えます。自分なりのストレス解消法(趣味、リラクゼーション、適度な休息など)を見つけ、上手にストレスを解消することが大切です。
体を冷やさない: 体が冷えると、腸の動きが悪くなることがあります。特に夏場でも冷たい飲み物ばかり飲むのは避け、温かい飲み物や食事を摂るようにしましょう。腹巻きなどでお腹を温めるのも効果的です。

薬物療法(下剤の種類と使い分け)

セルフケアで改善が見られない場合や、症状が重い場合は、医師の指導のもとで下剤を使用することがあります。弛緩性便秘に適した下剤の種類や使い方は、便秘の状態によって異なります。自己判断での安易な使用は、かえって便秘を悪化させたり、副作用が出たりするリスクがあるため、必ず医師や薬剤師に相談してください。

弛緩性便秘でよく使用される下剤には以下のような種類があります。

下剤の種類 主な作用メカニズム 特徴・弛緩性便秘への適性 注意点
膨張性下剤 水分を吸収して便の容積を増やし、腸を刺激する。 便のかさが増えてぜん動運動を促すため、弛緩性便秘に比較的適している。自然な排便に近い。効果発現まで時間がかかる。 十分な水分と一緒に服用が必要。
水が少ないと詰まる可能性。
腹部膨満感を感じることがある。
浸透圧性下剤 腸管内に水分を引き寄せ、便を柔らかくして排出しやすくする。 便が硬い場合にも有効だが、弛緩性便秘で便が硬くない場合でも、便の移動を助ける効果がある。比較的穏やかな作用。 効果発現まで時間がかかる(数時間~1日程度)。
腹部膨満感を感じることがある。
刺激性下剤 大腸の粘膜を刺激し、ぜん動運動を強制的に促進する。 即効性があり効果が強い。
頑固な便秘に短期間使用されることがある。
常用すると腸が刺激に慣れて効きにくくなる(耐性)。
腹痛を伴うことがある。
長期連用は避けるべき。
上皮機能変容薬 腸管からの水分・電解質分泌を促進したり、吸収を抑えたりして、便を柔らかく、出しやすくする。 比較的新しいタイプの下剤。
弛緩性便秘を含む慢性便秘に用いられる。
刺激性は少なく、腸の機能改善が期待されるものもある。
種類によって作用機序や副作用(吐き気など)が異なる。
漢方薬 体質や症状に合わせて、腸の働きを整えたり、水分バランスを調整したりする。 比較的穏やかな作用で、体質改善を目指す。
一人ひとりに合わせた処方が可能。
効果が出るまで時間がかかることがある。
体質に合わない場合もある。
専門医や薬剤師に相談が必要。
坐薬・浣腸 直腸に直接作用し、便を柔らかくしたり、直腸を刺激したりして、排便を促す。 緊急性の高い場合や、出口付近に便が詰まっている場合に一時的に使用。 常用すると排便反射がさらに鈍くなる可能性があるため、頓用での使用が基本。

弛緩性便秘の場合、腸のぜん動運動を助ける膨張性下剤や、便の水分量を調整する浸透圧性下剤が第一選択肢となることが多いです。即効性のある刺激性下剤は、腸の筋力をさらに弱める可能性があるため、医師の指導のもと、必要な場合にのみ短期間使用するのが望ましいとされています。最近では、慢性便秘のメカニズムに働きかける新しいタイプの上皮機能変容薬も選択肢の一つとなっています。どの薬が適しているかは、便秘の重症度、他の症状、全身の状態などを考慮して医師が判断します。

弛緩性便秘の予防法

弛緩性便秘は、一度改善しても再発しやすい便秘のタイプです。そのため、日頃からの予防が非常に重要になります。予防の基本は、これまでに述べてきた改善策を、症状がない時でも継続することにあります。

バランスの取れた食事: 食物繊維と水分を意識的にたっぷり摂る食生活を習慣にしましょう。毎食、野菜やきのこ、海藻類、豆類などを取り入れ、果物も適量食べるように心がけましょう。意識しないと不足しがちな食物繊維は、手軽に摂れる食品(シリアルやドリンクなど)も利用できますが、まずは食事からの摂取を基本としましょう。水分は、喉が渇く前にこまめに飲むのがポイントです。
適度な運動の継続: 毎日少しでも体を動かす習慣をつけましょう。ウォーキングや軽い体操など、無理なく続けられる運動を見つけ、生活の一部に組み込みます。エスカレーターではなく階段を使う、一駅分歩くなど、日常生活の中で活動量を増やす工夫も効果的です。腹筋や体幹を意識した軽いトレーニングも、予防につながります。
規則正しい生活リズム: 毎日同じ時間に寝て起きる、三食きちんと食べるなど、規則正しい生活は自律神経のバランスを整え、腸の働きを正常に保つのに役立ちます。
排便習慣の定着: 便意の有無にかかわらず、朝食後など毎日同じ時間にトイレに座る習慣を続けましょう。排便反射が鈍くなるのを防ぎます。そして、便意を感じたら絶対に我慢しないことが最も大切です。
ストレスを溜め込まない: ストレスは腸の働きに悪影響を及ぼします。自分なりのストレス解消法を見つけ、心身ともにリラックスできる時間を持つようにしましょう。十分な休息や睡眠も重要です。
体を冷やさない: 体が冷えると、腸の動きが悪くなることがあります。特に夏場でも冷たい飲み物ばかり飲むのは避け、温かい飲み物や食事を摂るようにしましょう。腹巻きなどでお腹を温めるのも効果的です。

弛緩性便秘は慢性化しやすい傾向がありますが、日々の小さな習慣の積み重ねで十分に予防・改善が可能です。健康な腸を保つためには、継続が何よりも大切です。

専門家への相談は必要?受診の目安と適切な診療科

弛緩性便秘は、セルフケアで改善できる場合も多いですが、以下のような場合は専門家である医師に相談することをお勧めします。他の病気が隠れている可能性や、適切な診断・治療が必要な場合があるからです。

医療機関を受診する目安:
セルフケア(食事、運動、生活習慣の見直し)を試しても改善が見られない: 2週間以上続けても効果がない場合は、専門医に相談しましょう。
症状が重い、または悪化している: 強烈な腹痛、吐き気、嘔吐、お腹の張りがひどくて苦しいなどの症状がある場合。
便秘以外の気になる症状がある:
血便が出る(便に血が混じる、便が黒い)。
原因不明の体重減少。
発熱。
お腹にしこりを感じる。
便が細くなった、または形が変わった。
便秘と下痢を繰り返す。
新しい薬を飲み始めてから便秘になった。
これらの症状は、弛緩性便秘以外の病気(大腸がん、炎症性腸疾患、甲状腺機能異常など)の可能性も示唆するため、速やかに医療機関を受診する必要があります。
市販薬を使っても効果がない、または副作用が気になる: どの市販薬を選べば良いかわからない、あるいは使ってみたが効果がない、お腹が痛くなるなどの副作用が出る場合は、医師に相談して適切な薬を処方してもらいましょう。
長期にわたり便秘に悩んでいる: 何年も慢性的な便秘に悩まされている場合は、一度専門医に相談し、根本的な原因や体質を調べてもらうと良いでしょう。
高齢者や持病がある方: 高齢者や、心臓病、腎臓病などの持病がある方は、便秘が持病に影響を与えたり、持病の薬が便秘の原因になっていることもあります。自己判断せず、かかりつけ医や専門医に相談しましょう。

適切な診療科:

便秘について相談する場合、まずは「消化器内科」または「胃腸内科」を受診するのが一般的です。これらの診療科は、消化器系の疾患を専門としており、便秘の原因を詳しく調べ、適切な診断と治療法を提案してくれます。かかりつけ医がいる場合は、まずかかりつけ医に相談し、専門医を紹介してもらうのも良いでしょう。

専門家である医師は、あなたの便秘の状態を正確に診断し、隠れた病気がないかを確認してくれます。そして、あなたの体質や生活習慣に合わせて、食事指導、運動指導、適切な下剤の選択や使用方法など、一人ひとりに最適な改善策や治療法を提案してくれます。つらい便秘の悩みを抱え込まず、勇気を出して相談してみましょう。

【まとめ】弛緩性便秘は適切なケアで改善・予防が可能

弛緩性便秘は、大腸のぜん動運動の低下や排便力の弱さが主な原因となる、比較的多く見られる便秘のタイプです。便が硬くないのに出にくい、残便感がある、お腹が張るといった症状に悩まされている方は、ご自身の便秘が弛緩性便秘である可能性を考えてみましょう。

弛緩性便秘の主な原因は、食物繊維や水分の不足といった食生活の乱れ、運動不足による筋力低下、加齢による体の変化、便意の我慢による排便反射の鈍化、そして薬剤の副作用など、様々な要因が複合的に関わっています。

改善と予防のためには、これらを一つずつ見直していくことが大切です。具体的には、食物繊維と水分をたっぷり摂るバランスの取れた食事、ウォーキングや腹筋運動などの適度な運動、規則正しい生活リズム、そして便意を我慢しない排便習慣の定着が基本となります。

これらのセルフケアで改善しない場合や、症状が重い、他の気になる症状がある場合は、遠慮なく消化器内科や胃腸内科などの専門医に相談しましょう。医師は正確な診断を行い、あなたの状態に合わせた適切な薬物療法などを提案してくれます。

弛緩性便秘は、適切なケアと治療によって十分に改善・予防が可能な症状です。つらい便秘から解放され、毎日を快適に過ごすために、今日からできることから始めてみましょう。一人で悩まず、必要であれば専門家の力を借りることも忘れないでください。

【免責事項】

本記事は、弛緩性便秘に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。個々の症状については個人差がありますので、自己判断せず、必ず医療機関を受診して医師の診断と指導を受けてください。

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