血尿の原因とは?考えられる主な病気と見過ごせないサイン

「血尿」と聞くと、多くの方が不安を感じるのではないでしょうか。尿の色がいつもと違う、ピンク色や赤っぽい、あるいはコーラのような色になっているのを見て、何か重大な病気なのではないかと心配になるのは当然のことです。血尿は、文字通り尿に血液が混じる状態を指しますが、その原因は非常に多岐にわたります。軽い炎症から、緊急性の高い疾患、そして悪性腫瘍まで、様々な可能性が考えられます。この記事では、血尿の原因について、見え方や痛みの有無による分類、考えられる主な病気、そして病院での検査や受診の目安について詳しく解説します。ご自身の血尿について、適切な知識を得て、安心して対処するための一助となれば幸いです。

目次

血尿とは?見え方と痛みの有無による分類

血尿とは、尿の中に通常は混じらない血液が混じる状態を指します。その見え方によって大きく二つに分類されます。

一つは肉眼的血尿です。これは、目で見て尿の色が赤やピンク、褐色などに変化している状態です。混じる血液の量が多い場合や、出血してから時間が経過して色が変化した場合などに見られます。尿全体が均一に赤くなることもあれば、排尿の最初だけ、あるいは最後だけ血が混じる場合など、出方も様々です。肉眼的血尿は、多くの人が血尿だとすぐに認識できるため、早期に病院を受診するきっかけとなります。

もう一つは顕微鏡的血尿です。これは、肉眼では尿の色に異常がないように見えても、尿検査で顕微鏡を使って調べると、基準値以上の赤血球が検出される状態です。学校や職場の健康診断で尿潜血陽性を指摘され、初めて血尿があると知るケースの多くはこの顕微鏡的血尿です。自覚症状がないため気づきにくく、放置されやすい傾向がありますが、肉眼的血尿と同様に様々な原因が考えられるため、精密検査が必要です。

また、血尿は痛みの有無によっても分類されます。

痛みを伴う血尿は、多くの場合、炎症や結石など、急性の疾患が原因であることが多いです。例えば、膀胱炎による排尿時の痛み、尿路結石が尿管を通過する際の激痛などが挙げられます。痛みが伴うことで、患者さんは症状に気づきやすく、比較的早期に受診につながりやすい傾向があります。

一方、痛みのない無痛性血尿は、特に注意が必要な場合があります。痛みを伴わないため、つい放置してしまう方も少なくありませんが、無痛性血尿の背景には、膀胱癌や腎癌、尿管癌といった悪性腫瘍が隠れている可能性があるからです。これらの癌は、初期の段階では痛みを伴わないことが多く、血尿だけが唯一の自覚症状であることも珍しくありません。無痛性血尿が見られた場合は、「痛くないから大丈夫」と安易に考えず、速やかに医療機関を受診することが極めて重要です。

このように、血尿は「見えるか見えないか」「痛いか痛くないか」といった様々な特徴を持ちますが、どのタイプの血尿であっても、必ず何らかの原因があります。自己判断せず、医療機関で検査を受け、原因を特定することが大切です。

血尿の主な原因疾患

血尿を引き起こす病気は、尿を作る腎臓から、尿が流れる尿管、一時的に尿を貯める膀胱、そして尿を体外に出す尿道に至るまでの尿路系の様々な部位で発生する可能性があります。また、尿路系以外の病気が原因となることもあります。ここでは、血尿の主な原因となる疾患について詳しく解説します。

膀胱炎

膀胱炎は、細菌が尿道から膀胱に入り込み、膀胱の粘膜に炎症を起こす病気です。女性に非常に多く見られる疾患ですが、男性もかかることがあります。血尿は膀胱炎の代表的な症状の一つであり、炎症によって傷ついた膀胱粘膜から出血します。

膀胱炎の主な症状は、血尿の他に、排尿時の痛み(特に排尿の終わり際)、頻尿(何度もトイレに行きたくなる)、残尿感(排尿後も尿が残っている感じがする)、尿の濁り、下腹部の不快感などがあります。これらの症状が急に現れることが多く、特に女性の場合は、性行為や生理などがきっかけとなることもあります。

診断は、尿検査で白血球や細菌、赤血球の増加を確認することで比較的容易に行えます。治療は、主に抗生物質の内服です。適切な抗生物質を服用すれば、数日で症状は改善することがほとんどですが、自己判断で服用を中止せず、処方された期間は飲み切ることが大切です。再発を繰り返す場合や、男性の膀胱炎の場合は、他の病気が隠れている可能性もあるため、さらに詳しい検査が必要になることがあります。

尿路結石

尿路結石は、尿に含まれるミネラルなどの成分が結晶化し、石となって尿路に詰まる病気です。腎臓、尿管、膀胱、尿道のどこにでもできる可能性がありますが、特に腎臓や尿管にできることが多いです。結石が尿路を移動する際に、粘膜を傷つけて出血するため、血尿の原因となります。

尿路結石の最も特徴的な症状は、激しい痛みです。特に尿管結石では、結石が尿管を塞いで尿の流れを妨げ、尿管が痙攣することで、わき腹から下腹部、足の付け根にかけて、七転八倒するような激痛が突然現れます。この痛みは「疝痛発作」と呼ばれ、冷や汗や吐き気を伴うこともあります。結石が膀胱に近い場所まで下がってくると、頻尿や排尿痛といった膀胱炎に似た症状が出ることもあります。腎臓の中に結石がある場合は、症状がないことも多いですが、大きくなると鈍い痛みを伴うこともあります。

診断は、痛みの特徴、尿検査での潜血反応、そして超音波検査やCT検査で結石の有無や位置、大きさを確認することで行います。小さな結石であれば、水分をたくさん摂って尿と一緒に自然に排出されるのを待つこともありますが、大きな結石や痛みが強い場合、尿の流れが完全に閉塞している場合は、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や内視鏡手術(TUL、PNL)などの治療が必要になります。

腎盂腎炎

腎盂腎炎は、細菌感染によって腎臓や腎盂(腎臓で作られた尿が最初に集まる場所)に炎症が起こる病気です。膀胱炎が進行して、細菌が尿管を逆行して腎臓に達することで発症することが多いですが、血液を介して細菌が運ばれて発症することもあります。腎臓の炎症により、組織が破壊されたり、出血したりすることで血尿が見られることがあります。

腎盂腎炎の主な症状は、発熱腰や背中の痛みです。特に片側の腰や背中(肋骨の下あたり)に、ズキズキとした痛みを伴うことが多く、悪寒や震えを伴う高熱が出ることもあります。吐き気や嘔吐、全身のだるさ、食欲不振といった全身症状も現れます。膀胱炎のような排尿時の痛みや頻尿といった症状を伴うこともあります。

診断は、症状、尿検査(白血球、細菌、赤血球)、血液検査(炎症反応の上昇)、超音波検査などで腎臓の腫れや炎症の程度を確認することで行います。治療は、主に抗生物質の点滴や内服です。重症の場合は入院が必要となることもあります。適切な治療を行わないと、腎機能が低下したり、感染が全身に及んだりするリスクがあるため、早めの受診と治療が重要です。

膀胱癌、腎癌、尿管癌など

尿路系の悪性腫瘍(癌)は、血尿の最も重要な原因の一つです。特に、痛みを伴わない肉眼的血尿が見られた場合に、これらの癌の可能性を強く疑う必要があります。癌によって腫瘍の表面がもろくなり、出血することで血尿が生じます。

  • 膀胱癌: 膀胱の粘膜から発生する癌です。喫煙が最大の危険因子とされています。初期の段階では、多くの場合、無痛性の肉眼的血尿が唯一の症状です。血尿は出たり止まったりを繰り返すこともあり、一度止まったからといって安心はできません。
    進行すると、頻尿、排尿時痛、残尿感といった膀胱刺激症状が現れたり、尿が出にくくなったりすることもありますが、これらの症状が出た時点では進行している可能性が高いです。早期に発見・治療すれば治癒率が高い癌ですが、再発しやすい性質も持っています。
  • 腎癌: 腎臓の実質に発生する癌です。初期には自覚症状がほとんどなく、検診の超音波検査などで偶然発見されることも多いです。比較的進行してから、血尿腹部のしこりわき腹の痛みといった三徴候が現れることがありますが、これらの症状が出た時点では進行していることが多いです。喫煙、肥満、高血圧などがリスク要因とされています。
  • 腎盂癌・尿管癌: 腎臓で作られた尿が集まる腎盂や、腎臓と膀胱をつなぐ尿管の粘膜から発生する癌です。膀胱癌と同じく、喫煙や特定の化学物質への曝露がリスク要因となります。これらの癌も、多くの場合、無痛性の肉眼的血尿が初期症状として現れます。結石による痛みと間違えられやすいこともあります。

これらの尿路系悪性腫瘍は、早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。特に、無痛性血尿が見られた場合は、年齢に関わらず、すぐに泌尿器科を受診して検査を受けることが極めて重要です。

腎炎(糸球体腎炎など)

腎炎は、腎臓の糸球体と呼ばれる、血液をろ過して尿を作る部分に炎症が起こる病気の総称です。様々な種類があり、原因も免疫の異常、感染症など多岐にわたります。腎炎では、糸球体のフィルター機能が障害されることで、本来尿に漏れ出ないはずの赤血球や蛋白が漏れ出し、血尿や蛋白尿が見られます。

腎炎の症状は様々ですが、血尿や蛋白尿は比較的早期から見られることが多いです。肉眼では気づかない顕微鏡的血尿や蛋白尿として健康診断で指摘されることもあれば、肉眼的血尿として現れることもあります。その他に、むくみ(特に顔や足)、高血圧、倦怠感などの症状を伴うこともあります。慢性的に進行すると、腎機能が徐々に低下し、末期腎不全に至ることもあります。

診断は、尿検査での血尿・蛋白尿の程度、血液検査での腎機能評価(クレアチニン、eGFRなど)、そして必要に応じて腎生検(腎臓の組織を採取して顕微鏡で調べる検査)によって確定診断を行います。治療は、腎炎の種類や重症度によって異なりますが、免疫抑制剤やステロイド、血圧を下げる薬などを使用し、腎機能の保護を目指します。

前立腺肥大症・前立腺炎

前立腺は男性特有の臓器で、膀胱の出口の下に位置し、尿道を取り囲んでいます。前立腺に関する病気も血尿の原因となります。

  • 前立腺肥大症: 加齢とともに前立腺が大きくなる病気で、特に50歳以上の男性に多く見られます。肥大した前立腺が尿道を圧迫するため、尿が出にくい(排尿困難)、尿の勢いが弱い、排尿に時間がかかる、排尿後もすっきりしない(残尿感)、夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)、尿意を我慢できない(尿意切迫感)といった症状が現れます。肥大した前立腺の表面の血管がうっ血して破れたり、排尿時のいきみによって出血したりすることで血尿が見られることがあります。血尿の量は様々で、肉眼的血尿となることもあります。
  • 前立腺炎: 前立腺に炎症が起こる病気で、比較的若い男性にも見られます。細菌感染によるものと、非細菌性のものがあります。症状は、排尿時や排精時の痛み、会陰部(肛門と陰嚢の間)の痛み、頻尿、残尿感などです。炎症によって前立腺組織が傷つき、出血することで血尿が見られることがあります。

診断は、問診、直腸診(肛門から指を入れて前立腺の大きさを調べる)、尿検査、血液検査(PSAなど)、超音波検査などで行います。治療は、薬物療法(排尿を改善する薬、炎症を抑える薬など)、生活指導などが行われます。前立腺肥大症に伴う血尿は、多くの場合、前立腺肥大症の治療を進めることで改善が見られます。

その他の原因(薬剤、外傷など)

上記で述べた以外にも、血尿の原因となるものは様々です。

  • 薬剤の影響: 特定の薬剤の副作用として血尿が現れることがあります。例えば、血液を固まりにくくする抗凝固薬(ワーファリン、DOACなど)を服用している場合、出血しやすくなるため、尿路のわずかな傷からも出血しやすくなります。また、特定の抗がん剤(シクロホスファミドなど)は、膀胱の粘膜に炎症を起こし(出血性膀胱炎)、血尿を引き起こすことがあります。その他、一部のサプリメントや健康食品が血尿の原因となる可能性も指摘されています。
  • 外傷: 腎臓や膀胱、尿道に外部からの強い衝撃が加わった場合、損傷を受けて出血し、血尿が現れます。例えば、交通事故、転倒、スポーツ中の打撲などが原因となります。カテーテルの挿入や、内視鏡検査などの医療行為が原因で一時的に血尿が見られることもあります。
  • 運動後血尿: 激しい運動、特に長距離走やマラソン、コンタクトスポーツの後などに一時的に血尿が見られることがあります。これは、運動による腎臓や膀胱への物理的な刺激、あるいは運動に伴う筋肉の分解などが原因と考えられています。ほとんどの場合は一過性で自然に改善しますが、稀に他の病気が隠れていることもあるため、続く場合は医療機関を受診すべきです。
  • 生理的な変化: 女性の場合、生理中に尿に血液が混じることで血尿のように見えることがあります。これは病的な血尿ではありませんが、判断が難しい場合は医療機関で確認してもらうと良いでしょう。
  • 不明(特発性血尿): 様々な検査を行っても、血尿の原因が特定できない場合もあります。これを「特発性血尿」と呼びます。多くの場合は経過観察となりますが、定期的な検査で悪性腫瘍などの病気が後から見つかることもあるため、自己判断せずに医師の指示に従うことが重要です。

血尿の原因は非常に多岐にわたるため、自己判断は危険です。どんな種類の血尿であっても、必ず医療機関を受診し、適切な検査を受けて原因を特定することが大切です。

痛みのない無痛性血尿の原因と注意点

血尿の中でも、特に注意が必要なのが「痛みのない無痛性血尿」です。痛みを伴う血尿は、膀胱炎や尿路結石など、比較的急性の炎症や通過障害を示唆することが多く、痛みによって早期に病院を受診するきっかけになりやすいです。しかし、痛みのない血尿は、自覚症状が血尿だけであることが多いため、「そのうち治るだろう」「様子を見よう」と放置されてしまうリスクがあります。この「痛くない」という点が、かえって重大な病気を見逃すことにつながりかねません。

無痛性血尿で最も警戒すべきなのは、尿路系の悪性腫瘍(癌)です。膀胱癌、腎癌、腎盂癌、尿管癌といった病気は、初期の段階では痛みを伴わないことが多く、出血も間欠的(出たり止まったり)であることが珍しくありません。そのため、一度血尿が出てすぐに止まったとしても、「治った」と判断するのは非常に危険です。癌は早期発見・早期治療が極めて重要であり、無痛性血尿は、これらの癌の初期症状である可能性を強く示唆しているサインだからです。

無痛性血尿で特に注意が必要な疾患

無痛性血尿が見られた場合に、最も疑われる、あるいは見逃してはならない疾患について詳しく解説します。

膀胱癌

無痛性血尿の原因として、最も頻度が高く、かつ注意すべき疾患の一つが膀胱癌です。膀胱の粘膜から発生する悪性腫瘍で、喫煙との関連性が非常に強いことが知られています。

膀胱癌の初期症状の約8割が無痛性の肉眼的血尿と言われています。血尿の色は鮮やかな赤色であることが多く、尿全体が均一に赤くなることもあれば、排尿の最後だけ赤くなる(終末期血尿)、あるいは排尿の最初だけ赤くなる(初期血尿)場合もあります。血尿が出たり止まったりを繰り返すことが多いため、「血尿が止まったからもう大丈夫」と自己判断して医療機関を受診しない方が少なくありません。しかし、血尿が止まったからといって癌がなくなったわけではなく、むしろ進行している可能性もゼロではありません。

膀胱癌は、進行すると膀胱の壁に深く浸潤したり、他の臓器に転移したりする可能性があります。進行癌になると、頻尿、排尿時痛、残尿感といった膀胱刺激症状が現れたり、尿が出にくくなったり、わき腹や骨盤の痛みを伴うこともあります。しかし、これらの症状が出た時点では、病状が進行している可能性が高いです。

膀胱癌の診断には、尿検査(尿細胞診で癌細胞の有無を調べる)、超音波検査、CT検査、そして最も重要な膀胱鏡検査が行われます。膀胱鏡検査は、細いカメラを尿道から挿入し、膀胱の内部を直接観察する検査で、膀胱癌の有無や形態、位置などを確認し、必要に応じて組織を採取して病理検査を行います。無痛性血尿が見られた場合、特に高齢者や喫煙歴のある方では、膀胱癌の可能性を念頭に置き、積極的に膀胱鏡検査を検討する必要があります。

早期に発見され、膀胱の粘膜にとどまっている(非浸潤性膀胱癌)段階であれば、内視鏡手術で切除するだけで根治が期待できます。しかし、膀胱の壁に深く浸潤している(浸潤性膀胱癌)場合や、転移がある場合は、膀胱全摘術や化学療法、放射線療法など、より進行した治療が必要となり、予後も悪くなる傾向があります。無痛性血尿を見逃さず、早期に医療機関を受診することが、膀胱癌を早期発見し、適切な治療を受けるために非常に重要です。

腎癌・腎盂癌・尿管癌

腎臓や腎盂、尿管といった上部尿路に発生する癌も、無痛性血尿の原因となります。これらの癌も、膀胱癌と同様に初期には症状がほとんどなく、進行してから初めて血尿などの症状が現れることが多いです。

  • 腎癌: 腎臓の実質から発生する癌です。多くの場合、初期には無症状で、検診や他の目的で行われた画像検査(超音波やCTなど)で偶然発見されることが増えています。古典的な三徴候として「血尿」「腹部のしこり」「わき腹の痛み」が挙げられますが、これらがすべて揃うのは進行癌であることが多く、また三徴候すべてが現れることは稀です。血尿は、腫瘍が尿路に及んで出血することで生じます。血尿以外の症状としては、発熱、全身倦怠感、体重減少、貧血、高血圧などが現れることもあります。喫煙、肥満、高血圧などがリスク要因とされています。
  • 腎盂癌・尿管癌: 腎臓で作られた尿が集まる腎盂や、腎臓と膀胱をつなぐ尿管の粘膜から発生する癌です。これらの癌も、多くの場合、無痛性の肉眼的血尿が初期症状として現れます。腫瘍が大きくなったり、剥がれた腫瘍の一部が尿管に詰まったりすると、尿管結石のような激しい痛み(疝痛)を伴うこともありますが、血尿自体は痛みを伴わないことが多いです。喫煙や、特定の染料・化学物質への曝露がリスク要因となります。

腎癌や腎盂癌・尿管癌の診断には、尿検査(尿細胞診)、超音波検査、CT検査、MRI検査、そして尿路造影検査(点滴で造影剤を注入し、尿路全体をレントゲンやCTで撮影する検査)などが行われます。腎盂癌や尿管癌に対しては、細い内視鏡を用いて尿管の中を直接観察する尿管鏡検査が行われることもあります。

これらの上部尿路の癌も、早期に発見し、病巣を完全に切除することが治療の基本となります。多くの場合、手術が必要となりますが、進行度によっては化学療法や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬なども用いられます。無痛性血尿が見られた場合は、膀胱だけでなく、腎臓や尿管からの出血の可能性も考慮し、これらの上部尿路の精密検査も行うことが重要です。

痛みのない血尿は、放置するとこれらの悪性腫瘍の発見が遅れるリスクがあります。特に、40歳以上の方で無痛性の血尿が見られた場合は、悪性腫瘍の可能性がゼロではないため、症状が一時的であったとしても、必ず泌尿器科を受診して専門医の診察と検査を受けることを強く推奨します。早期受診が、ご自身の健康を守る上で非常に重要な一歩となります。

血尿が見られたら?検査と診断の流れ

血尿が見られた場合、その原因を正確に特定するためには、医療機関での詳しい検査が必要です。自己判断せずに医療機関を受診すると、通常、問診に続いていくつかの検査が行われます。ここでは、血尿の原因を調べるために行われる主な検査とその目的について解説します。

尿検査

尿検査は、血尿の原因を調べる上で最も基本的で重要な検査です。採取した尿を調べ、様々な情報を得ることができます。

  • 尿定性検査: 試験紙を使って、尿中の成分(pH、糖、蛋白、潜血、ウロビリノーゲン、ビリルビン、ケトン体、亜硝酸塩、白血球エステラーゼなど)を調べます。血尿がある場合は「潜血」が陽性となります。また、蛋白尿の有無は腎臓病の可能性を示唆し、亜硝酸塩や白血球エステラーゼは尿路感染症の可能性を示唆します。
  • 尿沈渣: 尿を遠心分離して、沈殿した成分を顕微鏡で観察します。赤血球の数や形態、白血球、細菌、上皮細胞、円柱、結晶などを詳しく調べます。赤血球の数を確認することで、顕微鏡的血尿かどうかの診断や、出血の程度の評価を行います。赤血球の形態が変形している(異型赤血球)場合は、腎臓(糸球体)からの出血の可能性が考えられます。白血球や細菌が見られれば尿路感染症、円柱が見られれば腎臓病の可能性が高まります。
  • 尿細胞診: 尿中に悪性細胞(癌細胞)が混じっていないかを顕微鏡で調べる検査です。特に膀胱癌などの尿路系悪性腫瘍のスクリーニングや診断に用いられます。痛みもなく簡便に行える検査ですが、感度は100%ではないため、細胞診が陰性でも癌を完全に否定できるわけではありません。
  • 尿培養検査: 尿中の細菌の種類とその数を調べる検査です。尿路感染症が疑われる場合に、原因菌を特定し、その菌に有効な抗生物質を選ぶために行われます。

尿検査は、採尿するだけで行える非侵襲的な検査でありながら、血尿の原因に関する多くの重要な手掛かりを与えてくれます。

血液検査

血液検査は、全身の状態や腎臓の機能、炎症の有無などを調べるために行われます。

  • 腎機能検査: 血液中のクレアチニンや尿素窒素の値を測定し、腎臓が老廃物をどの程度排出できているかを評価します。腎炎など腎臓自体の病気で腎機能が低下している場合に異常値を示します。eGFR(推算糸球体濾過量)も重要な指標です。
  • 炎症反応: CRP(C反応性蛋白)や白血球数などを測定し、体内で炎症が起きているかどうか、その程度を調べます。腎盂腎炎や前立腺炎などの感染症で異常値を示します。
  • 貧血の有無: 血尿による出血量が多い場合、貧血を起こしていることがあります。ヘモグロビン値などを調べます。
  • 腫瘍マーカー: 特定の癌で上昇する物質を血液中で測定することがあります。例えば、前立腺癌が疑われる場合にはPSA(前立腺特異抗原)を測定します。尿路系悪性腫瘍に特異的な腫瘍マーカーは少ないですが、補助的に用いられることがあります。

血液検査は、尿検査だけでは分からない全身の状態や腎機能に関する情報を提供し、原因疾患の特定に役立ちます。

画像検査(超音波検査、CT検査、MRI検査)

画像検査は、尿路系臓器(腎臓、尿管、膀胱、前立腺など)の形態や内部構造を詳しく調べるために行われます。結石や腫瘍の有無、腎臓の腫れ、膀胱の異常などを視覚的に確認できます。

検査の種類 特徴 得られる情報 メリット デメリット・注意点
超音波検査 超音波を使って体内の臓器を画像化 腎臓の大きさ・形、内部のエコー、腎盂の拡張、結石、腫瘍。膀胱の形態、膀胱内のポリープや腫瘍。前立腺の大きさ。尿路の通過障害の有無。 簡便、非侵襲的(放射線被曝なし)、費用が比較的安い。外来で手軽に行える。 体型や腸管ガスの影響を受けやすい。尿管の全体像や小さな病変の評価には限界がある。
CT検査 X線を使って体の断面像を画像化。造影剤を使用する場合としない場合がある。 尿路全体の形態、結石の有無と位置、腫瘍の有無と広がり、リンパ節転移の有無、腎臓の血流評価(造影剤使用時)。尿路造影CT(CTU)で詳細な評価が可能。 空間分解能が高く、小さな病変も捉えやすい。全身の臓器を一度に評価できる。 放射線被曝がある。造影剤アレルギーのリスクがある(造影剤使用時)。
MRI検査 強い磁場と電波を使って体内の臓器を画像化。造影剤を使用する場合としない場合がある。 腎臓や膀胱の腫瘍の性状評価、リンパ節転移、周囲組織への浸潤の評価。尿路造影MRI(MRU)で尿路全体の通過状態を評価。 放射線被曝がない。軟部組織のコントラスト分解能が高い。 検査時間が長い。閉所恐怖症の方には不向き。体内に金属(ペースメーカーなど)がある場合は検査できないことがある。費用が高い。
尿路造影(IVP) 造影剤を点滴し、尿中に排泄される造影剤で尿路全体をレントゲン撮影する検査。 腎盂、尿管、膀胱の形態や通過状態、結石や腫瘍による変形の有無。 尿路全体の構造を把握できる。 放射線被曝がある。造影剤アレルギーのリスクがある。現在ではCTUに置き換わることが多い。

内視鏡検査(膀胱鏡検査など)

内視鏡検査は、細いカメラを尿道から挿入し、尿路の内部を直接目で観察する検査です。特に膀胱や尿道からの出血が疑われる場合、原因を特定するために非常に有用です。

  • 膀胱鏡検査: 尿道から膀胱鏡(内視鏡)を挿入し、尿道、前立腺部尿道(男性)、膀胱の粘膜を直接観察します。膀胱内の腫瘍(膀胱癌)、ポリープ、炎症、結石などを詳細に確認できます。組織の一部を採取して病理検査を行うことも可能です。軟性鏡が普及したことで、以前より痛みや不快感が少なく検査できるようになりました。
  • 尿管鏡検査: 膀胱鏡よりもさらに細い内視鏡を尿道から挿入し、膀胱を経由して尿管、腎盂を直接観察する検査です。尿管結石や腎盂・尿管腫瘍の診断や治療に用いられます。

内視鏡検査は、特に膀胱癌の確定診断や、画像検査では捉えきれない小さな病変の発見に不可欠な検査です。

これらの様々な検査を組み合わせて行うことで、血尿の正確な原因を特定し、適切な診断を下すことができます。どの検査が必要かは、患者さんの症状、年齢、性別、既往歴、そして他の検査の結果などを総合的に判断して医師が決定します。

血尿に関するよくある疑問

血尿が見られたとき、多くの人が様々な疑問や不安を抱くものです。ここでは、血尿に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

血尿に血塊が混じる原因は?

血尿にドロッとした血の塊(血塊)が混じる場合、これは比較的大量の出血があることを示唆しています。出血した血液が膀胱の中で固まって血塊となり、排尿時に一緒に排出されるためです。

血塊を伴う血尿が見られる原因としては、以下のようなものが考えられます。

  • 膀胱からの大量出血: 膀胱内の腫瘍(特に進行した膀胱癌)、膀胱の強い炎症(出血性膀胱炎)、前立腺からの大量出血(特に前立腺肥大症や前立腺癌が進行している場合)などが原因で、膀胱内で血液が固まりやすくなります。
  • 腎臓や尿管からの出血: 上部尿路(腎臓や尿管)からの出血でも、出血量が多い場合や、尿の流れが滞るなどして血液が尿管や膀胱内に長く留まると、血塊となることがあります。尿管結石や腎盂・尿管腫瘍、腎臓の血管の病気(血管腫など)が原因となることがあります。

血塊が尿道に詰まると、排尿ができなくなる「尿閉」を引き起こし、強い痛みを伴うことがあります。血塊を伴う血尿は、出血量が多いサインであり、重大な病気が隠れている可能性が高いため、緊急性の高い状態と考えられます。血塊を認めた場合は、速やかに医療機関(救急対応可能な病院など)を受診してください。

小便に血絲が見られる原因は?

小便に細い糸のような、あるいは筋のような血が混じる「血絲」が見られる場合、これは出血が比較的少量であり、かつ、尿道や膀胱の出口付近など、尿路の比較的下の方からの出血である可能性を示唆しています。出血した血液が固まる前に尿と一緒に排出されることで、線状の血液として見えると考えられます。

血絲が見られる原因としては、以下のようなものが考えられます。

  • 尿道の軽い損傷: カテーテルの挿入、性行為、強い摩擦などによって尿道粘膜が傷ついた場合。
  • 尿道炎: 尿道に炎症が起きている場合。
  • 膀胱の出口付近の炎症や軽い損傷: 膀胱炎の初期や、前立腺肥大症による膀胱出口の刺激など。
  • 小さなポリープや血管腫: 尿道や膀胱の出口付近にできた小さな良性腫瘍や血管の異常からの出血。

血塊を伴う血尿ほど緊急性は高くないことが多いですが、放置せずに医療機関を受診し、原因を特定することが大切です。特に繰り返す場合や、他の症状(排尿痛など)を伴う場合は、感染症や他の病気の可能性も考慮して検査が必要です。

血尿は自然に治る?自己判断の危険性

血尿が一度出て、すぐに尿の色が元に戻った場合、「自然に治ったから大丈夫だろう」と考えてしまう方がいらっしゃるかもしれません。確かに、軽い炎症や一時的な原因(激しい運動など)による血尿は、自然に改善することもあります。しかし、血尿が一時的に止まったとしても、その原因が解決されたとは限りません

特に、悪性腫瘍(膀胱癌、腎癌など)による血尿は、出たり止まったりを繰り返すという特徴があります。血尿が止まっている期間は病気が治ったわけではなく、腫瘍からの出血が一時的に落ち着いているだけです。この期間に放置してしまうと、病気が進行してしまうリスクがあります。

また、尿路結石による血尿も、結石が移動して痛みが和らぐと血尿も一旦止まることがありますが、結石自体が体外に排出されたわけではないため、再び血尿や激痛が起こる可能性があります。

痛みを伴わない無痛性血尿の場合は、特に放置してしまう危険性が高いです。しかし、前述のように無痛性血尿は悪性腫瘍のサインである可能性が高いため、血尿が見られたら、たとえ一度きりであっても、必ず医療機関を受診して原因を調べることが極めて重要です。

血尿の原因を自己判断することは非常に危険です。重大な病気を見逃さないためにも、「たかが血尿」と思わずに、必ず専門医の診察を受けましょう。

鏡下血尿の原因は?

鏡下血尿(顕微鏡的血尿)は、肉眼では分からないものの、尿検査で顕微鏡的に赤血球が確認される状態です。健康診断などで偶然指摘されることが多く、自覚症状がないため、放置されやすい傾向があります。しかし、鏡下血尿も肉眼的血尿と同様に、様々な原因が考えられます。

鏡下血尿の主な原因は以下の通りです。

  • 腎臓の病気(腎炎など): 糸球体腎炎などの腎臓病では、糸球体のフィルター機能障害により、顕微鏡的なレベルで赤血球が尿中に漏れ出ます。蛋白尿を伴うことが多いです。
  • 尿路結石: 小さな結石や、結石が尿路を通過する際に粘膜をわずかに傷つけることで、顕微鏡的な出血が起こることがあります。
  • 尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など): 炎症によって尿路の粘膜が傷つき、顕微鏡的な出血が起こることがあります。
  • 尿路系悪性腫瘍: 膀胱癌などの早期段階では、肉眼的血尿が出るほど大量の出血はないものの、顕微鏡的に赤血球が検出されることがあります。
  • 前立腺肥大症・前立腺炎: 前立腺からのわずかな出血が顕微鏡的に確認されることがあります。
  • 生理的・一過性の原因: 激しい運動の後、脱水、ストレス、発熱など、病気ではない一時的な原因で顕微鏡的血尿が見られることがあります。

鏡下血尿が見つかった場合も、原因を特定するために精密検査が必要です。特に蛋白尿を伴う場合や、年齢や性別、既往歴などから悪性腫瘍や腎臓病のリスクが高いと判断される場合は、詳しい検査が推奨されます。原因が特定できない「特発性鏡下血尿」の場合も、定期的な経過観察が必要です。

血尿の原因が分からないと言われたら?

医療機関で血尿の検査を受けた結果、「原因が特定できませんでした」「特発性血尿です」と言われることもあります。これは、現時点での検査では、血尿を引き起こす明確な病変(結石や明らかな腫瘍、腎炎など)が見つからなかった状態を指します。

原因が特定できない血尿の場合、以下のような理由が考えられます。

  • 出血が非常に軽微・一時的だった: 検査時には既に出血が止まっており、痕跡も残っていなかった場合。
  • 病変が非常に小さい・発見が難しい位置にある: 画像検査や内視鏡検査でも捉えきれないほど小さな病変や、観察が難しい部位にある場合。
  • 生理的・一過性の原因: ストレスや疲労、軽微な外傷など、病気ではない原因による一時的な血尿だった場合。
  • 初期の病変: まだ病変が非常に初期の段階で、現在の検査では診断できない場合。

原因が特定できなかった場合でも、医師から今後の見通しや注意点、そして経過観察や定期的な再検査の必要性について説明があるはずです。特に、年齢やリスク要因(喫煙歴、家族歴など)によっては、将来的に悪性腫瘍などが見つかる可能性もゼロではないため、自己判断で通院を中止せず、必ず医師の指示に従って定期的な検査を受けることが重要です。

原因不明の血尿と診断された場合でも、「原因がない」ということではなく、「現時点では原因が特定できていない」という意味合いが強いです。不安な場合は、医師にしっかりと説明を聞き、今後の対応について確認しましょう。セカンドオピニオンを検討することも一つの選択肢です。

突然の血尿は何が原因?

それまで全く症状がなかったのに、突然血尿が見られた場合、急性の病気が原因である可能性が高いです。

突然の血尿の原因として考えられる主な疾患は以下の通りです。

  • 尿路結石: 結石が急に移動し始め、尿管を傷つけたり塞いだりすることで、突然激しい痛みと血尿が現れることがあります。これは最も多い原因の一つです。
  • 急性膀胱炎: 特に女性に多く、細菌感染によって膀胱に急性の炎症が起こり、突然排尿痛や頻尿、そして血尿が現れます。
  • 腎盂腎炎: 膀胱炎から進行したり、突然腎臓に感染が起こったりすることで、発熱や腰痛とともに突然血尿が現れることがあります。
  • 尿路の外傷: 外部からの強い衝撃(打撲など)が腎臓や膀胱、尿道に加わった場合、突然血尿が現れます。
  • 膀胱や腎臓の血管の病気: 腎臓や膀胱の血管にできた動静脈奇形などが破裂して、突然大量の血尿が出ることがあります。
  • 悪性腫瘍からの出血: 膀胱癌などでも、腫瘍の表面が突然出血して肉眼的血尿が現れることがあります。

突然の血尿は、急性期の病気や、時に緊急性の高い状態を示唆している可能性があります。特に、激しい痛みを伴う場合や、発熱、血塊を伴う場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。無痛性であっても、突然の血尿は悪性腫瘍のサインである可能性もあるため、自己判断で放置せず、必ず医療機関で原因を特定しましょう。

血尿が見られた場合の受診目安と病院選び

血尿が見られた場合、慌てずに落ち着いて対処することが大切ですが、放置せずに適切なタイミングで医療機関を受診することが極めて重要です。ここでは、血尿が見られた場合の受診目安と、何科を受診すべきかについて解説します。

すぐに受診すべきケース

以下のような症状を伴う血尿や、特定の状況での血尿は、緊急性が高い状態を伴う可能性があるため、迷わず速やかに医療機関を受診してください。可能であれば救急外来も視野に入れて検討しましょう。

  • 激しい痛みを伴う血尿: 特にわき腹から下腹部にかけての激痛(疝痛)がある場合は、尿路結石によるものが多く、痛みのコントロールや尿路閉塞の解除が必要となることがあります。
  • 発熱や寒気を伴う血尿: 腎盂腎炎などの重症な尿路感染症の可能性があり、迅速な抗生物質治療が必要です。
  • 血塊(血の塊)が混じる血尿: 大量出血を示唆しており、尿閉を引き起こす可能性や、重篤な病気が隠れている可能性があります。
  • 全く痛みのない、突然の、または繰り返す肉眼的血尿: 膀胱癌や腎癌などの悪性腫瘍の可能性を強く疑う必要があり、早期の精密検査が必要です。
  • 排尿困難や尿が出ない(尿閉)を伴う血尿: 血塊や腫瘍などが尿道を塞いでいる可能性があり、緊急処置が必要となることがあります。
  • 全身状態が悪い(顔色が悪い、意識がもうろうとするなど)血尿: 大量出血による貧血や、感染症による全身状態の悪化など、緊急性の高い状態が考えられます。
  • 抗凝固薬を服用中の方の血尿: 薬剤の影響による出血の可能性があり、服用量の調整などが必要となる場合があります。自己判断で中止せず、医師に相談してください。
  • 外傷を受けた後の血尿: 腎臓や膀胱などの損傷が疑われ、精密検査が必要です。

これらの症状が見られる場合は、夜間や休日であっても、救急外来が利用できる医療機関を受診することを強く推奨します。

上記に当てはまらない場合でも、肉眼的血尿が見られた場合は、症状が落ち着いたとしても、できるだけ早い時期に(数日以内を目安に)医療機関を受診して原因を調べることが大切です。顕微鏡的血尿を健康診断などで指摘された場合も、症状がないからと放置せず、一度は医療機関を受診して精密検査について相談することをおすすめします。

何科を受診すべきか

血尿の原因は尿路系に起因することがほとんどです。したがって、血尿が見られた場合に最初に受診すべき科は、泌尿器科です。

泌尿器科は、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)と男性生殖器の病気を専門とする科です。血尿の原因となる膀胱炎、尿路結石、腎盂腎炎、尿路系の悪性腫瘍、前立腺疾患など、ほとんどの疾患に対応しています。尿検査、血液検査、超音波検査、CT検査、膀胱鏡検査など、血尿の原因を調べるために必要な検査設備や専門知識が揃っています。

女性の場合、泌尿器科の受診に抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、近年では女性医師がいる泌尿器科や、女性の尿のトラブルに特化した「女性泌尿器科」を標榜しているクリニックも増えています。躊躇せずに泌尿器科を受診することが、正確な診断と適切な治療への近道です。

小児の血尿の場合は、まずはかかりつけの小児科医に相談するか、小児泌尿器科や腎臓内科のある病院を受診するのが良いでしょう。

血尿の原因が腎臓病(腎炎など)である可能性が高いと判断された場合は、泌尿器科から腎臓内科を紹介されることもあります。腎臓内科は、腎炎や慢性腎臓病など、腎臓自体の機能に関わる病気を専門とする科です。

まずは泌尿器科を受診し、そこで原因が特定されるか、あるいは適切な専門科に紹介してもらうのが一般的な流れとなります。

【まとめ】血尿は放置せず、専門医に相談を

血尿は、目で見て分かるもの(肉眼的血尿)と、検査で初めて分かるもの(顕微鏡的血尿)があり、また痛みを伴う場合と伴わない場合(無痛性血尿)があります。どのようなタイプの血尿であっても、その背景には必ず何らかの原因が存在します。

原因としては、膀胱炎や腎盂腎炎といった尿路感染症、尿路結石、前立腺肥大症などの良性疾患から、膀胱癌、腎癌、尿管癌といった悪性腫瘍、さらには腎炎など、非常に多岐にわたります。特に、痛みを伴わない無痛性血尿は、悪性腫瘍の初期サインである可能性があり、最も注意が必要です。血尿は一時的に止まることもありますが、止まったからといって病気が治ったわけではありません。

血尿の原因を特定するためには、尿検査、血液検査、超音波検査、CT検査、膀胱鏡検査など、様々な検査が行われます。これらの検査を適切に組み合わせることで、出血部位や原因疾患を詳しく調べることができます。

血尿が見られた場合は、自己判断せずに、速やかに医療機関を受診することが重要です。特に、激しい痛み、発熱、血塊を伴う場合や、全く痛みのない無痛性血尿の場合は、緊急性が高い可能性があるため、迷わずすぐに受診してください。

血尿に関する相談は、まず泌尿器科を受診するのが一般的です。女性で受診に抵抗がある場合も、女性泌尿器科などを検討し、専門医の診察を受けるようにしましょう。

血尿は、体が発する大切なサインです。そのサインを見逃さず、適切に対応することが、ご自身の健康を守る上で非常に重要です。不安な気持ちを抱え込まず、まずは専門医に相談してください。

免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。血尿が見られた場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。個々の症状については、必ず医師にご相談ください。

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