避妊インプラントは、女性が望まない妊娠を避けるための避妊法の一つです。小さな棒状のインプラントを上腕部の皮下に挿入することで、長期間にわたり高い避妊効果が期待できます。 daily での管理が不要であることや、他の避妊法と比べて非常に高い避妊率を持つことから、世界各国で利用が広がっています。一方で、挿入・除去が必要であること、特定の副作用が生じる可能性があること、そして日本国内での普及状況など、知っておくべき点も多くあります。この記事では、避妊インプラントの仕組みから、気になる効果や費用、そしてメリット・デメリットまで、ユーザーが抱える疑問を解消できるよう詳しく解説します。ご自身のライフスタイルや価値観に合った避妊法を選ぶために、ぜひ参考にしてください。
避妊インプラントとは?仕組みと効果
避妊インプラントは、皮下インプラントとも呼ばれる長期避妊法(LARC: Long-Acting Reversible Contraception)の一つです。一般的には、マッチ棒程度の細長いシリコンなどの素材でできたインプラントを、女性の上腕部の皮膚の下に挿入します。このインプラントから、妊娠を防ぐためのホルモンが少量ずつ、かつ持続的に放出されることで避妊効果を発揮します。一度挿入すれば、数年間(製品によって異なりますが、通常3年または5年)にわたり効果が持続するため、日々の管理や性行為の直前の準備などが一切不要となるのが大きな特徴です。
皮下インプラントの作用機序
避妊インプラントに含まれる主要なホルモンは、プロゲストーゲンと呼ばれる合成黄体ホルモンです。製品によっては、エトノゲストレルやレボノルゲストレルといった種類のプロゲストーゲンが使用されます。このプロゲストーゲンが体内に放出されることで、主に以下の二つの機序によって妊娠を防ぎます。
- 排卵の抑制: プロゲストーゲンは脳の視床下部や下垂体に作用し、卵巣からの卵子の放出(排卵)を抑制します。これにより、受精の機会をなくします。多くの製品では、排卵がほぼ完全に抑制されるため、非常に高い避妊効果が得られます。
- 子宮頸管粘液の変化: 子宮の入り口にある子宮頸管の粘液を、精子が通り抜けにくい粘り気のある状態に変化させます。これにより、精子が子宮内へ侵入しにくくなり、受精の確率をさらに低下させます。
これらの二重の作用により、避妊インプラントは非常に高い避妊効果を発揮します。子宮内膜への影響(着床の阻害)も示唆されていますが、排卵抑制と頸管粘液の変化が主な避妊機序と考えられています。
避妊効果の持続期間と妊娠率
避妊インプラントの避妊効果は、製品の種類によって異なりますが、一般的に挿入後すぐに発現し、3年から5年間持続します。この持続期間内であれば、特別な処置なしに避妊効果が得られます。
避妊インプラントは、現在利用可能な避妊法の中で最も避妊効果が高い部類に入ります。統計学的な避妊効果を示す指標であるPearl Index(パール指数、100人の女性が1年間その避妊法を用いた場合の妊娠数)で比較すると、避妊インプラントのPearl Indexは非常に低く、製品にもよりますが、0.05〜0.1程度と報告されています。これは、避妊インプラントを使用している女性が1年間に妊娠する確率は、1,000人に1人以下であることを意味します。
これは、低用量ピル(Pearl Index 0.3〜9)、コンドーム(Pearl Index 2〜15)、または女性不妊手術(Pearl Index 0.5)などと比較しても、極めて低い数値です。避妊インプラントの高い避妊効果は、その作用機序に加え、ユーザー自身の飲み忘れや使い方の間違いといった人的エラーが原理的に存在しないことに起因します。一度挿入すれば、取り外すまで常に効果が持続するため、最も確実な避妊法の一つと考えられています。ただし、インプラントの挿入時期や個人差によって、ごく稀に妊娠する可能性もゼロではありません。
避妊インプラントのメリット
避妊インプラントには、他の避妊法にはない独自のメリットがいくつかあります。これらのメリットが、多くの女性や医療従事者から注目される理由となっています。
- 非常に高い避妊効果: 前述の通り、避妊インプラントは現在利用可能な避妊法の中で最も高い避妊効果を持つ方法の一つです。適切に挿入されていれば、その避妊失敗率は極めて低いと言えます。これは、望まない妊娠のリスクを最小限に抑えたいと考える女性にとって、最も魅力的な点と言えるでしょう。
- 長期間の持続効果: 一度の挿入で3年から5年間という長期間にわたり避妊効果が持続します。 daily の内服や毎週・毎月の通院などが不要なため、避妊に関するストレスや手間が大幅に軽減されます。計画的に妊娠を避けたいと考えている期間が数年間続く場合に特に適しています。
- 自己管理の手間が不要: 低用量ピルやコンドームのように、 daily または性行為のたびに避妊処置を行う必要がありません。これにより、飲み忘れや使い忘れといった人的エラーによる避妊失敗のリスクが完全に排除されます。忙しい方や、 daily の薬の管理が難しいと感じる方にとって、非常に便利な避妊法です。
- 性行為に影響しない: 避妊インプラントは上腕の皮下に挿入されるため、性行為の感覚やパートナーとのコミュニケーションに影響を与えません。コンドームのように性行為の準備や中断が不要であり、性行為そのものを自然に楽しむことができます。
- 可逆性がある: 効果が持続する期間が終了したり、妊娠を希望するようになった場合には、インプラントを取り外すことで避妊効果がなくなります。インプラント除去後は、比較的短期間で通常の月経周期が回復し、妊娠が可能になるとされています。長期的な不妊の原因になることはありません。
- エストロゲンフリー: 避妊インプラントが放出するホルモンはプロゲストーゲンのみであり、エストロゲンを含んでいません。このため、エストロゲン含有の避妊薬(低用量ピルなど)が使用できない方や、エストロゲンに関連する副作用(血栓症リスクなど)を避けたい方にとって、選択肢の一つとなります。
これらのメリットから、避妊インプラントは特に長期的な避妊を確実に希望する女性にとって、非常に有効な選択肢となり得ます。
避妊インプラントのデメリットと副作用
避妊インプラントは多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットや副作用も存在します。これらを十分に理解し、受け入れられるかどうかを検討することが重要です。
主な副作用について
避妊インプラントの副作用は、体内に放出されるプロゲストーゲンの影響によるものです。個人差が大きく、全く副作用を感じない方もいれば、いくつかの症状に悩まされる方もいます。主な副作用としては以下のようなものが報告されています。
- 不正出血: 避妊インプラントを使用する女性に最も多く見られる副作用です。月経周期以外の時期に少量の出血が続いたり、月経のパターンが不規則になったりすることがあります。全く出血がない「無月経」になる方もいれば、頻繁に出血を繰り返す方もいます。不正出血は使用開始から数ヶ月で落ち着くことが多いですが、長期間続く場合もあります。病的な出血ではないことがほとんどですが、気になる場合は医師に相談が必要です。
- 頭痛: ホルモンの影響により、頭痛を感じることがあります。
- 体重変化: 体重が増加または減少するとの報告がありますが、インプラントとの明確な因果関係ははっきりしていない場合もあります。食生活や運動習慣の変化も考慮する必要があります。
- 気分の変化: 気分の落ち込みやイライラ感など、情緒不安定になる場合があります。
- ニキビ: 皮膚の脂っぽさが増し、ニキビができやすくなることがあります。
- 乳房の張りや痛み: 胸の張りや痛みを感じることがあります。
- 挿入部位の痛みや内出血: インプラントを挿入する際に、一時的な痛みや内出血、腫れが生じることがあります。通常は数日から数週間で改善します。
- 挿入部位の感染や傷跡: まれに挿入部位が感染したり、小さな傷跡が残ったりする可能性があります。
- インプラントの移動: ごくまれに、挿入部位からインプラントがわずかに移動することが報告されています。これにより、除去が難しくなる場合があります。
これらの副作用の多くは軽度で、使用を続けるうちに改善することが多いです。しかし、症状が重い場合や長く続く場合は、医師に相談し、必要であればインプラントの除去や他の避妊法への変更を検討する必要があります。
また、避妊インプラントに限らず、ホルモン剤を使用する避妊法には、血栓症(血管の中に血の塊ができること)のリスクがわずかに増加する可能性が指摘されています。特に、喫煙者や特定の基礎疾患(高血圧、糖尿病など)がある方、血栓症の既往歴がある方などはリスクが高まる可能性があります。ただし、避妊インプラントはエストロゲンを含まないため、エストロゲン含有の避妊薬(低用量ピルなど)と比較すると、血栓症のリスクは低いと考えられています。挿入前に、医師がリスクについて十分に評価を行います。
生理への影響(生理が止まる可能性など)
避妊インプラントの副作用の中でも、多くの女性にとって特に気になるのが生理(月経)への影響でしょう。避妊インプラントに含まれるプロゲストーゲンは、子宮内膜の増殖を抑制するため、生理のパターンに変化をもたらします。
最も一般的な変化は、不正出血(月経不順)です。使用開始後の数ヶ月間は特に不規則な出血が見られやすく、少量の出血が続いたり、予期せぬタイミングで出血したりすることがあります。これは体がホルモンバランスの変化に慣れるまでの期間と考えられます。
さらに、避妊インプラントを使用している女性の多くが、月経回数の減少や月経量の減少を経験します。そして、中には生理が全く来なくなる(無月経)方もいます。無月経になる割合は製品によって異なりますが、使用者の約20%〜30%程度が無月経になるとの報告もあります。
生理が止まることについて、これをメリットと感じる方もいれば、不安に感じる方もいます。
- メリットとして捉える場合: 生理痛がひどい方、月経量が多い方、PMS(月経前症候群)に悩まされている方にとっては、生理が軽くなったり、止まったりすることが症状の緩和につながり、生活の質が向上する大きなメリットとなります。生理用品の準備や交換の手間がなくなることも利点です。
- デメリットとして捉える場合: 生理がないと妊娠したのではないかと不安になる、体の自然なサイクルが乱れることに抵抗がある、といった方もいます。生理がないことが健康上の問題を示唆しているのではないかと心配になる場合もありますが、避妊インプラントによる無月経は、ホルモンによる正常な反応であり、健康に問題はありません。
不正出血や月経周期の変化は、避妊インプラントの効果がきちんと現れている証拠でもあります。しかし、出血パターンがあまりに不規則で煩わしい場合や、長期間続く場合は、対処法について医師と相談することが大切です。例えば、一時的に他のホルモン剤を併用して出血パターンを整える、といった方法が検討されることもあります。
日本における避妊インプラントの現状
避妊インプラントは世界約100カ国以上で承認され、広く利用されている避妊法ですが、日本国内においては、まだ一般的に普及していません。
国内での承認状況
2023年現在、日本国内で避妊目的で国(厚生労働省)の承認を得ている皮下インプラント型の避妊薬は、まだありません。 これが、避妊インプラントが日本の一般的な医療機関で手軽に選択できる避妊法となっていない最大の理由です。
過去には、日本国内での承認を目指した臨床試験が行われた製品もありますが、2024年5月現在、保険診療または一般的な自由診療として医療機関で提供されるまでには至っていません。
なぜ日本ではまだ承認されていないのか、その正確な理由は公開されていませんが、新しい医薬品の承認には、その有効性や安全性を日本人に対して確認するための大規模な臨床試験が必要であり、それに時間とコストがかかること、また、既存の避妊法(低用量ピル、IUD/IUSなど)が一定程度普及している現状も影響している可能性があります。
将来的に日本国内で避妊インプラントが承認される可能性はありますが、現時点では、医師の処方箋を得て薬局で購入したり、多くの産婦人科クリニックで挿入してもらったりできる状況ではありません。
避妊インプラントはどこでできる?
上述の通り、日本国内では避妊目的の皮下インプラントが国の承認を得ていないため、一般的な医療機関で「避妊インプラントをしてください」とお願いして施術を受けることは、原則としてできません。
もし避妊インプラントに関心がある場合、現時点での可能性としては以下のいずれかになります。
- 臨床試験に参加する: もし日本国内で避妊インプラントの承認に向けた臨床試験が行われている場合、参加条件を満たせば、試験の一環としてインプラントの挿入を受けることができる可能性があります。ただし、これはあくまで研究目的であり、誰もが参加できるわけではありません。
- 海外で施術を受ける: 避妊インプラントが承認されている国(例えば、アメリカ、ヨーロッパ諸国、アジアの多くの国など)に渡航し、現地の医療機関で施術を受けるという方法があります。しかし、この場合、医療費は全額自己負担となり高額になる可能性があります。また、言語の問題、海外の医療機関の情報収集、施術後のケアやインプラント除去のための再渡航など、多くのハードルとリスクが伴います。海外での医療行為は日本の法律や補償制度の対象外となるため、万が一トラブルが発生した場合の対応も複雑になります。個人的な海外での医療行為は推奨されません。
- 個人輸入: インターネットなどを通じて海外の避妊インプラントを個人輸入することは、法的には可能であるとされていますが、これは非常に危険な行為であり、絶対に避けるべきです。 個人輸入された医薬品は、品質や安全性が保証されていません。偽造品や有効成分が不十分・過剰な製品である可能性があり、健康被害を引き起こすリスクが極めて高いです。また、挿入や除去といった医療行為は、専門的な知識と技術を持つ医師が行う必要があり、個人で行うことは不可能です。
したがって、2023年現在、日本に住む女性が安全かつ適切に避妊インプラントを選択できる状況にはありません。避妊を検討する際は、日本国内で承認されており、安全性が確認されている他の避妊法(低用量ピル、IUS/IUD、避妊パッチ、避妊リングなど)について、必ず専門の医療機関で医師に相談するようにしてください。
避妊インプラントの費用(値段)
日本国内では避妊インプラントが一般的に利用できないため、ここでは主に海外での費用相場や、仮に日本で自由診療として提供された場合の想定費用について解説します。
挿入・除去にかかる費用相場
避妊インプラントの費用は、「インプラント本体の価格」と「挿入・除去にかかる医療行為の費用」に分けられます。海外では、これらの費用は国や医療機関、保険の種類によって大きく異なります。
例えばアメリカでは、保険の種類にもよりますが、避妊インプラントの費用はインプラント本体と挿入費用を合わせて500ドル(約7.5万円)から1,000ドル(約15万円)以上かかることが一般的です。除去費用も別途かかり、100ドル(約1.5万円)から300ドル(約4.5万円)程度が相場とされています。合計すると、インプラントの持続期間全体で数十万円の費用がかかる可能性があります。
もし将来的に日本国内で承認され、自由診療として提供される場合、同様に高額になることが予想されます。日本の自由診療の費用は医療機関によって自由に設定できるため、一概には言えませんが、挿入・除去それぞれに数万円から十数万円程度の費用がかかる可能性が考えられます。インプラント本体の価格も加わるため、一度の挿入にかかる初期費用は高額になるでしょう。
ただし、これは一度費用を支払えば数年間避妊効果が持続するというメリットの裏返しでもあります。 daily のピルやコンドームを長期間購入し続ける費用と比べると、総額でどちらがお得になるかは、使用期間や購入する製品の価格によって変わってきます。しかし、初期費用が高額になる点はデメリットと言えます。
保険適用について
前述の通り、日本国内では避妊目的の皮下インプラントは国の承認を得ていないため、公的医療保険の適用対象にはなりません。 もし将来的に承認されたとしても、避妊目的の医療行為は基本的に保険適用外(自由診療)となる可能性が高いです。
ただし、例外として、避妊インプラントに含まれるプロゲストーゲンが、月経困難症や子宮内膜症などの疾患治療にも効果が期待できることから、これらの特定の疾患の治療目的として承認され、保険適用となる可能性はゼロではありません。しかし、現時点ではあくまで避妊目的での使用が主であり、疾患治療目的での承認や保険適用については明確な情報はありません。
海外においても、避妊インプラントの費用が保険適用になるかどうかは、その国の医療制度や個人の加入している保険プランによります。多くの国では、避妊は医療的な必要性が高いものとして認識されつつあり、保険適用となるケースも増えていますが、日本とは状況が異なります。
現時点で日本国内で避妊インプラントを検討する場合、費用は全額自己負担となる可能性が高く、その額も高額になることを想定しておく必要があります。費用面も含めて、他の日本国内で利用可能な避妊法と比較検討することが賢明です。
避妊インプラントと他の避妊法との比較(ミレーナなど)
避妊法には様々な種類があり、それぞれに特徴があります。避妊インプラントを理解するためには、他の避妊法と比較することが有効です。ここでは、特に長期避妊法として比較されることが多いミレーナ(IUS)や、一般的な避妊法である低用量ピルなどと比較してみましょう。
避妊インプラントとミレーナの違い
ミレーナは、子宮内に挿入する小さなT字型の器具で、黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を放出することで避妊効果を発揮します。IUS(Intrauterine System:子宮内システム)の一種です。避妊インプラントと同様に長期間(日本では最長5年)有効な避妊法であり、高い避妊効果を持ちます。
避妊インプラントとミレーナの主な違いは以下の通りです。
比較項目 | 避妊インプラント(皮下インプラント) | ミレーナ(IUS) |
---|---|---|
挿入部位 | 上腕の皮下 | 子宮内 |
ホルモンの種類 | プロゲストーゲン(製品による:エトノゲストレル等) | プロゲストーゲン(レボノルゲストレル) |
避妊効果の持続期間 | 製品による(通常3年または5年) | 日本では最長5年 |
主な作用機序 | 排卵抑制、頸管粘液変化 | 子宮内膜の変化、頸管粘液変化、排卵抑制(補助的) |
避妊効果 (Pearl Index) | 非常に低い (0.05〜0.1程度) | 非常に低い (0.2程度) |
月経への影響 | 不正出血、月経量減少、無月経になりやすい | 不正出血、月経量減少、月経痛軽減(無月経になることも) |
挿入・除去 | 上腕の皮膚を小さく切開する小手術が必要 | 子宮内に器具を挿入・除去、処置時間は短い |
痛み | 挿入・除去時に局所麻酔、術後に痛みや内出血の可能性 | 挿入時に痛みを伴うことがある |
回復性 | 除去後、比較的早く妊娠可能 | 除去後、比較的早く妊娠可能 |
日本での現状 | 避妊目的で一般的には利用できない(未承認) | 避妊目的で承認、保険適用あり(条件による) |
費用 | 海外では高額(自由診療)、日本では一般的に利用不可 | 日本では保険適用の場合あり、負担額は比較的低い(避妊目的の自由診療もあり) |
ミレーナは子宮内に挿入するため、子宮の形や大きさ、過去の分娩経験などが適応に影響する場合があります。一方、避妊インプラントは上腕に挿入するため、これらの影響は受けません。ただし、挿入・除去には皮膚の切開が必要となる点が異なります。
避妊法 | ホルモン有無 | 使用方法 | 効果持続期間/頻度 | 避妊効果 | 性行為への影響 | 日本での現状 | 費用(日本) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
避妊インプラント | 有(プロゲストーゲン) | 上腕皮下挿入 | 3-5年 | 非常に高い | 影響なし | 一般的に利用不可 | 高額(海外相場) |
ミレーナ(IUS) | 有(プロゲストーゲン) | 子宮内挿入 | 5年 | 非常に高い | 影響なし | 広く普及 | 保険適用あり(条件) |
低用量ピル(OC) | 有(エストロゲン+プロゲストーゲン) | daily 内服 | 毎日 | 高い | 影響なし | 広く普及 | 自由診療、月数千円 |
IUD (銅付加) | 無 | 子宮内挿入 | 数年(製品による) | 高い | 影響なし | 普及している | 自由診療、数万円 |
避妊リング | 有(プロゲストーゲン) | 腟内挿入 | 3週間ごとに交換 | 高い | 影響なし(除去可) | 普及している | 自由診療 |
避妊パッチ | 有(エストロゲン+プロゲストーゲン) | 皮膚に貼付 | 週に1回交換 | 高い | 影響なし | 普及している | 自由診療 |
コンドーム | 無 | 性行為ごとに使用 | その都度 | 中程度 | 準備必要 | 広く普及 | 安価 |
この表からもわかるように、避妊インプラントは長期性と高い避妊効果、そして自己管理不要という点でミレーナと似ていますが、挿入部位やホルモン種類、日本での利用可能性が大きく異なります。他の避妊法と比較する際は、これらの特徴に加え、費用、副作用のプロファイル、ご自身の健康状態、ライフスタイル、そして将来の妊娠希望なども含めて総合的に検討することが大切です。特に、日本国内で避妊を検討する場合は、現時点で利用可能な避妊法の中から選択することになります。
避妊インプラントに関するよくある質問
避妊インプラントについて、ユーザーが疑問に思うであろう点をQ&A形式でまとめました。
避妊インプラントの費用はいくらですか?
日本国内では避妊目的で一般的に利用できないため、正確な費用を示すことは困難です。海外での相場は、インプラント本体と挿入費用を合わせて5万円~15万円以上、除去費用が1.5万円~4.5万円程度と高額になることが多いです。日本では公的医療保険の適用外となる可能性が高く、自由診療の場合も同様に高額が想定されます。
避妊インプラントとミレーナ、どっちがいいの?
どちらも長期で高い避妊効果が期待できる方法ですが、どちらが良いかは個人の状況によります。避妊インプラントは上腕に挿入するため子宮の状態に左右されず、ミレーナは子宮内に挿入するため子宮の形などが適応に関わります。副作用プロファイルも異なり、特に月経への影響が異なる場合があります。日本ではミレーナは承認されており保険適用となるケースがあるため、現実的な選択肢となります。最終的には、ご自身の希望、健康状態、ライフスタイルなどを考慮し、医師と相談して決定することが重要です。
避妊インプラントは日本でできますか?
2023年現在、日本国内では避妊目的で国の承認を得ている皮下インプラントは無く、一般的な医療機関で施術を受けることはできません。将来的に承認される可能性はありますが、現時点では海外での施術や臨床試験への参加などに限られます(ただし、海外での施術は推奨されません)。
避妊インプラントの妊娠率は?
避妊インプラントの避妊失敗率を示すPearl Indexは非常に低く、製品によりますが0.05〜0.1程度と報告されています。これは、100人の女性が1年間使用した場合に妊娠する人数が0.05〜0.1人、つまり1,000人に1人以下であることを意味します。現在利用可能な避妊法の中で最も高い避妊効果を持つ方法の一つです。
避妊インプラントで生理は止まりますか?
はい、生理が止まる(無月経になる)可能性はあります。避妊インプラントに含まれるプロゲストーゲンの影響で、子宮内膜の増殖が抑制されるため、月経回数や月経量が減少したり、全く生理が来なくなったりする方がいます。これは副作用の一つですが、健康に問題はありません。生理が止まることをメリットと感じる方もいます。
避妊インプラントのデメリットや副作用には何がありますか?
主なデメリットは、不正出血、頭痛、体重変化、気分の変化、ニキビなどの副作用が生じる可能性があること、挿入・除去に小手術が必要なこと、そして日本では一般的に利用できない(高額になる可能性)ことです。副作用の多くは軽度ですが、個人差があります。
避妊インプラントを除去したら、いつから妊娠できますか?
インプラント除去後は、比較的短期間で通常の月経周期が回復し、妊娠が可能になるとされています。個人差はありますが、多くの場合、除去後数ヶ月以内に排卵が再開します。インプラントの使用がその後の不妊の原因になることはありません。
避妊インプラントの挿入や除去は痛いですか?
挿入・除去時には局所麻酔を使用するため、通常は強い痛みを感じることはありません。麻酔薬の注射時にチクっとした痛みを感じる程度です。施術後、麻酔が切れると挿入部位に軽い痛みや違和感、内出血が生じることがありますが、数日で改善することがほとんどです。
避妊インプラントは体に異物を入れるのが怖いのですが?
体に異物を挿入することに抵抗を感じる方もいらっしゃるでしょう。インプラントは医療用の安全な素材でできており、体内に留置されても問題がないように設計されています。しかし、心理的な抵抗感は重要な要素です。インプラントの素材や安全性について十分に説明を受け、納得した上で検討することが大切です。日本国内で不安がある場合は、医師と相談の上、他の避妊法を検討するのも良いでしょう。
避妊インプラントは血栓症のリスクを増やしますか?
プロゲストーゲン単剤の避妊法は、エストロゲン含有の避妊薬(低用量ピルなど)と比較すると血栓症のリスク増加は小さいとされていますが、リスクが全くないわけではありません。特に血栓症の既往歴やリスク因子(喫煙、肥満、特定の疾患など)がある場合は、事前に医師に相談し、リスクを評価してもらうことが重要です。
避妊インプラントを検討中の方へ
避妊インプラントは、長期にわたり非常に高い避妊効果が得られ、日々の管理が不要という大きなメリットを持つ魅力的な避妊法です。世界各国で多くの女性に利用されており、その利便性と確実性は特筆すべき点と言えます。
一方で、不正出血などの副作用が生じる可能性があること、そして現状では日本国内で一般的に利用できないという重要な制約があります。もし避妊インプラントに関心を持たれたとしても、現時点では日本国内で安全かつ適切に施術を受けられる医療機関は限定的です。海外での施術はリスクが伴うため推奨できません。
したがって、日本にお住まいの女性が避妊法を選択する際は、まず日本国内で承認されており、安全性が確立されている他の避妊法(ミレーナやIUS、低用量ピル、避妊リング、避妊パッチ、IUDなど)について、情報を集めることをおすすめします。
ご自身の体質、ライフスタイル、将来の妊娠希望、パートナーとの話し合いなど、様々な要素を考慮して、最適な避妊法を選ぶためには、専門家である医師との相談が不可欠です。婦人科や産婦人科を受診し、避妊に関する悩みや希望を伝え、それぞれの避妊法のメリット・デメリット、費用、副作用などについて詳しく説明を受けましょう。複数の選択肢の中から、ご自身にとって最も納得できる方法を見つけるプロセスが大切です。
この記事が、避妊インプラントについての正確な情報を提供し、他の避妊法も含めて検討するきっかけとなれば幸いです。安全で確実な避妊によって、女性が主体的にライフプランを立てられることを願っています。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスや診断、治療を推奨するものではありません。個々の健康状態や状況に関する判断、および避妊方法の選択については、必ず医療機関を受診し、専門の医師にご相談ください。情報の内容は執筆時点のものであり、医療情報は常に更新される可能性があります。本記事の情報に基づくいかなる行動についても、当方は責任を負いかねます。