急性胃腸炎の症状をチェック!原因と受診の目安は?

急性胃腸炎は、胃や腸の粘膜に急性の炎症が起きる病気で、突然の吐き気や下痢、腹痛などが特徴です。子どもから大人まで誰でもかかる可能性があり、非常に身近な感染症の一つです。つらい症状に悩まされている方、これからかかるのではないかと不安な方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、急性胃腸炎の主な症状、その原因、そして気になる治し方や回復までの期間、人へのうつりやすさなどについて詳しく解説します。正しい知識を持つことで、適切に対処し、一日も早い回復を目指しましょう。

目次

急性胃腸炎とは?

急性胃腸炎とは、胃や腸に急性の炎症が生じる病態の総称です。主にウイルスや細菌などの病原体が原因となって起こることが多く、突然の発症が特徴です。これらの病原体が口から体内に入り、胃や腸の粘膜に感染して炎症を引き起こすことで、様々な症状が現れます。

急性胃腸炎は、感染性胃腸炎とも呼ばれ、原因となる病原体の種類によって、症状の程度や経過が異なります。多くの場合、数日から1週間程度で自然に回復しますが、脱水症状を起こしたり、重症化したりすることもあるため注意が必要です。

急性胃腸炎の主な症状

急性胃腸炎で最も一般的にみられるのは、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛といった消化器系の症状です。これらの症状は、原因となる病原体や個人の体調によって、現れる順番や程度が異なります。典型的な症状について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

嘔吐・吐き気

吐き気や嘔吐は、急性胃腸炎の初期に最も多く現れる症状の一つです。特にウイルス性胃腸炎の場合、突然強い吐き気を感じたり、何度も嘔吐を繰り返したりすることがあります。

  • 特徴:
  • 食後だけでなく、空腹時にも起こることがあります。
  • 吐き気のみで、実際に吐かないこともあります。
  • 激しい嘔吐は体内の水分や電解質を大量に失うため、脱水を起こしやすく、特に注意が必要です。
  • 通常、症状のピークは比較的早く、多くは半日から1日程度で落ち着いてくる傾向があります。

吐き気や嘔吐がある時は、無理に食事を摂らず、胃腸を休ませることが大切です。水分補給も、一度にたくさん飲むと再び吐いてしまう可能性があるため、少量ずつ、頻回に(例えばスプーンで少しずつ)摂るのがおすすめです。

下痢

下痢も急性胃腸炎の代表的な症状です。便が通常よりも柔らかくなったり、水っぽくなったりします。回数も増え、一日に何度もトイレに行くことになります。

  • 特徴:
  • 便の形状は、泥状から水様性まで様々です。
  • 腹痛を伴うことが多いです。
  • 細菌性胃腸炎の場合、粘液や血が混じることもあります。
  • 嘔吐が落ち着いた後も続くことがあり、回復まで時間がかかる場合があります。
  • 下痢が続くと、体に必要な水分やミネラルが失われ、脱水や電解質異常を招く可能性があります。

下痢がある間は、消化に負担のかかる食事を避け、水分・電解質を補給することが重要です。自己判断で市販の下痢止めを使用すると、病原体を体内に留めてしまい、かえって回復が遅れたり症状が悪化したりする可能性もあるため、使用する際は医師や薬剤師に相談しましょう。

腹痛

お腹の痛みも多くの急性胃腸炎の患者さんが経験する症状です。痛みの程度や感じ方は個人差がありますが、一般的に差し込むような痛みや、波がある痛みが特徴です。

  • 特徴:
  • お腹全体が痛むこともあれば、特定の場所が痛むこともあります。
  • お腹が張ったように感じたり、ゴロゴロと音が鳴ったりすることもあります。
  • 特に下痢をする前に痛みが強くなる傾向があります。

腹痛がつらい時は、体を締め付ける服装を避け、楽な姿勢で安静にすることが大切です。お腹を冷やさないようにするのも良いでしょう。痛みが強い場合や、痛みの場所が変わったり、特定の場所に集中したりする場合は、他の病気の可能性も考えられるため、医療機関を受診しましょう。

発熱

急性胃腸炎では、発熱を伴うことも少なくありません。熱の高さは、微熱から38℃台後半程度まで様々で、原因によっても傾向が異なります。

  • 特徴:
  • ウイルス性の場合、比較的軽度な発熱が多い傾向がありますが、ロタウイルスなどでは高熱になることもあります。
  • 細菌性の場合、発熱を伴うことが多いです。
  • 熱とともに、寒気や体の震え(悪寒)を伴うこともあります。
  • 発熱によって体力を消耗しやすく、脱水を悪化させる要因にもなります。

発熱時は、十分な休息をとり、こまめな水分補給を心がけましょう。つらい場合は、医師の指示に基づいて解熱剤を使用することも可能です。ただし、解熱剤は一時的に熱を下げるだけで、病気の原因を治すものではないことを理解しておきましょう。

その他の症状

上記以外にも、急性胃腸炎では様々な全身症状が現れることがあります。

  • 全身の倦怠感(だるさ): 熱や下痢、嘔吐などによって体力が奪われ、体がだるく感じることが多いです。
  • 食欲不振: 胃腸の炎症により、食べ物を受け付けなくなることがあります。
  • 頭痛: 発熱や脱水、体の疲労などによって頭痛が起こることがあります。
  • 筋肉痛: 体の炎症反応や脱水によって、筋肉に痛みを感じることがあります。

これらの症状は、病気が回復するにつれて徐々に改善していきます。つらい時は無理せず安静にし、体の回復を最優先に考えましょう。

急性胃腸炎の原因

急性胃腸炎の主な原因は、ウイルスや細菌による感染です。これらの病原体は、主に口から体内に入ることで感染を引き起こします。原因となる病原体の種類によって、流行時期や症状の特徴、感染経路などに違いが見られます。

ウイルスによるもの(ノロウイルス、ロタウイルスなど)

ウイルス性胃腸炎は、急性胃腸炎の最も一般的な原因です。特に冬場に流行しやすい傾向があります。

  • 代表的なウイルス:
  • ノロウイルス: 年間を通じて発生しますが、特に秋から冬にかけて流行します。感染力が非常に強く、少量のウイルスでも感染します。主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱(軽度の場合が多い)です。集団発生の原因となることが多いウイルスです。
  • ロタウイルス: 乳幼児に多く見られ、冬から春にかけて流行します。激しい嘔吐と米のとぎ汁のような白色の下痢が特徴で、発熱を伴うこともあります。脱水症状を起こしやすく、重症化しやすい傾向があります。予防接種があります。
  • アデノウイルス: 年間を通じて発生し、子どもに多い傾向があります。胃腸炎以外にも、風邪や結膜炎など様々な症状を引き起こすことがあります。
  • サポウイルス、アストロウイルスなども原因となります。

ウイルス性胃腸炎は、感染者の吐物や便に含まれるウイルスが乾燥して空気中に舞い上がり、それを吸い込むこと(飛沫感染)や、汚染された手で口に触れること(経口感染)、ウイルスが付着した食品(特に生牡蠣などの二枚貝)を食べることなどで感染が広がります。

細菌によるもの(カンピロバクター、サルモネラ菌など)

細菌性胃腸炎は、主に夏場に多く発生する傾向があります。不適切な食品の取り扱いが原因となることが多いです。

  • 代表的な細菌:
  • カンピロバクター: 加熱が不十分な鶏肉や、生水、井戸水などが主な感染源です。日本で最も発生件数の多い細菌性食中毒の原因菌です。下痢(血便を伴うことも)、腹痛、発熱、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。
  • サルモネラ菌: 卵や鶏肉などが主な感染源です。激しい腹痛、下痢、発熱、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。
  • 病原性大腸菌(O157など): 牛の糞便などに含まれることがあり、生肉や加熱不十分な肉、汚染された水などが感染源となります。特にO157は溶血性尿毒症症候群(HUS)といった重篤な合併症を引き起こす可能性があり、非常に危険です。激しい腹痛や血便が特徴です。
  • 腸炎ビブリオ: 主に夏場に生または加熱不十分な魚介類を食べることで感染します。激しい腹痛や水様性下痢が特徴で、発熱は軽度か伴わないことが多いです。

細菌性胃腸炎は、主に食品を介して経口感染します。細菌に汚染された食品を食べることで、細菌が腸内で増殖し、炎症や毒素によって症状を引き起こします。人から人へ感染することもありますが、ウイルス性ほど感染力は強くないことが多いです。

その他の原因

ウイルスや細菌以外にも、急性胃腸炎の原因となるものはいくつかあります。

  • 寄生虫: クリプトスポリジウムやジアルジアなどの寄生虫が、汚染された水などを介して感染し、胃腸炎症状を引き起こすことがあります。
  • 薬剤: 抗生物質や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの薬剤の副作用として、胃腸症状が現れることがあります。
  • アレルギー: 食品アレルギーによって、嘔吐や下痢などの消化器症状が出ることがあります。
  • 毒素: キノコや植物の毒、細菌が食品中で産生した毒素によって、食中毒として急性胃腸炎症状が現れることがあります。

これらの原因による胃腸炎は、ウイルス性や細菌性胃腸炎に比べて頻度は低いですが、原因に応じた適切な診断と治療が必要となります。

急性胃腸炎とわかる方法は?(診断・検査)

急性胃腸炎の診断は、主に問診(症状の経過、飲食物、周囲の流行状況など)と身体診察によって行われます。典型的な症状が見られる場合、原因を特定するための特別な検査を行わないことも多いです。

主な検査方法

診断を確定したり、原因を特定したりするために検査が必要となるのは、以下のようなケースです。

  • 集団発生: 学校や施設などで複数の人が同じような症状を訴えている場合、原因究明と感染拡大防止のために検査が行われます。
  • 症状が重い・長引く場合: 激しい脱水や血便を伴う場合、症状が数日経っても改善しない場合などに、重症度や原因を評価するために検査が行われます。
  • 特定の病原菌が疑われる場合: 食中毒の原因が疑われる食品があったり、特定の細菌感染の特徴的な症状(例: 血便)が見られたりする場合に検査が行われます。

主な検査方法としては、以下のものがあります。

検査方法 目的 特徴
便培養検査 細菌性胃腸炎の原因菌(サルモネラ、カンピロバクターなど)を特定 便を採取し、培地で細菌を増殖させて種類を特定します。結果が出るまでに数日かかります。
ウイルス迅速診断キット 特定のウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど)の有無を調べる 便を採取し、キットを使って短時間(数分~数十分)で結果が出ます。一部のウイルスにのみ対応しており、感度も100%ではありません。
顕微鏡検査(便) 細菌や寄生虫の卵・シストなどを調べる 便を顕微鏡で観察します。
血液検査 脱水の程度、炎症の程度などを評価する 全身の状態を把握するために行われることがあります。

これらの検査は、すべての急性胃腸炎の患者さんに行われるわけではありません。多くの場合は、問診と診察に基づいて急性胃腸炎と診断され、対症療法が開始されます。検査が必要かどうかは、医師が総合的に判断します。

急性胃腸炎の治療法・治し方

急性胃腸炎に特効薬があるわけではありません(ウイルス性の場合)。治療の中心は、安静にして胃腸を休ませることと、失われた水分や電解質を補給すること(脱水対策)、そしてつらい症状を和らげるための対症療法です。細菌性の一部に対しては抗菌薬が使用されることもありますが、ウイルス性には無効です。

安静と水分補給(脱水対策)

急性胃腸炎の治療で最も重要なのは、脱水を防ぐことです。嘔吐や下痢によって体内の水分と電解質(ナトリウム、カリウムなど)が大量に失われるため、これらを適切に補う必要があります。

  • 安静: 症状がある間は、無理に活動せず、体を休ませることが回復を早める上で大切です。
  • 水分補給:
  • 吐き気や嘔吐がひどい場合: 落ち着くまで無理に水分を摂らせず、胃腸を休ませます。
  • 落ち着いてきたら: 経口補水液やスポーツドリンクなどを利用します。これらの飲み物は、水分だけでなく失われがちな電解質もバランス良く含んでいるため、効率的に脱水を改善できます。
  • 与え方: 一度にゴクゴク飲むと再び吐いてしまう可能性があるため、少量(スプーン1杯やペットボトルのキャップ1杯など)を5分〜15分おきに、ゆっくりと頻回に与えるのがポイントです。
  • 水分だけでなく、糖分も少量含む飲み物の方が腸からの水分吸収を助けます。お茶や水だけだと電解質が補えないため、脱水時には推奨されません。
  • 脱水症状のサイン: 尿量が減った、口や舌が渇いている、皮膚の弾力がない、目がくぼんでいる、ぐったりしている、泣いても涙が出ない(子ども)、呼びかけへの反応が鈍い、といったサインが見られたら、脱水が進んでいる可能性があります。特に高齢者や乳幼児は脱水になりやすいため、注意深く観察し、これらのサインが見られたら速やかに医療機関を受診してください。

対症療法

つらい症状を和らげるために、症状に応じた薬を使用することがあります。これらの薬は症状を一時的に抑えるもので、病気の原因を治すものではありません。使用する際は、必ず医師の指示に従ってください。

  • 吐き気止め(制吐剤): 吐き気や嘔吐がひどく、水分も摂れないような場合に使用されることがあります。内服薬だけでなく、座薬や注射剤もあります。
  • 下痢止め(止瀉薬): 原則として、感染性の胃腸炎では推奨されません。 下痢は体から病原体を排出しようとする体の防御反応であるため、無理に止めてしまうと、病原体が体内に留まり回復が遅れたり、症状が悪化したりする可能性があります。ただし、水様性下痢がひどく脱水が懸念される場合など、医師の判断で使用されることもあります。
  • 整腸剤: 乱れた腸内環境を整えるために使用されることがあります。病原体の排出を助けたり、下痢の期間を短縮したりする効果が期待できます。
  • 解熱鎮痛剤: 発熱や腹痛がつらい場合に使用されることがあります。

抗菌薬の使用(細菌性の場合)

抗菌薬は、ウイルスには効果がありません。 細菌性胃腸炎の場合でも、原因となる細菌の種類によっては抗菌薬が効果的でない場合や、かえって症状を悪化させる場合もあります。

抗菌薬が有効な細菌性胃腸炎(例えば特定の病原性大腸菌やサルモネラ菌感染の一部など)に対しては、医師の判断で使用されることがあります。自己判断で抗菌薬を服用することは絶対に避けてください。

治療の基本は、やはり安静と水分補給です。症状が軽快するまでは無理せず、回復に専念することが重要です。

急性胃腸炎はどのくらいで治る?(回復期間)

急性胃腸炎の回復期間は、原因となった病原体、症状の重さ、個人の年齢や体調などによって大きく異なります。多くの場合、数日から1週間程度で自然に回復する傾向があります。

症状ごとの回復目安

急性胃腸炎の症状は、必ずしも同時に始まり、同時に治まるわけではありません。一般的に、症状の現れ方や回復の順序には以下のような傾向があります。

症状 回復までの目安 特徴
嘔吐・吐き気 発症から半日~1日程度で落ち着くことが多い 初期に強く現れ、比較的早く改善します。
発熱 発症から1~2日程度で解熱することが多い 症状のピーク時に伴うことが多いです。
腹痛 発症から数日程度で軽快する傾向がある 下痢と並行して続くことが多いです。
下痢 発症から数日~1週間程度かかることが多い 嘔吐や発熱が落ち着いた後も続くことがあります。
全身倦怠感 症状の軽快とともに改善しますが、体力が戻るまでにはもう少し時間がかかることもあります。 症状がある間は強く感じやすいです。

ただし、これらはあくまで一般的な目安であり、個人差が大きいことを理解しておきましょう。特に下痢は、症状が最も長引きやすい傾向があります。

回復期間の個人差

回復期間には、以下のような要因が影響します。

  • 原因ウイルス・細菌の種類: ロタウイルスや特定の細菌(O157など)による胃腸炎は、他の原因に比べて症状が重くなったり、長引いたりする傾向があります。ノロウイルスも下痢が長引くことがあります。
  • 症状の重さ: 嘔吐や下痢が激しく脱水を起こした場合は、回復に時間がかかることがあります。
  • 年齢: 乳幼児や高齢者は、免疫力が低かったり、脱水になりやすかったりするため、症状が重症化したり、回復に時間がかかったりする傾向があります。
  • 基礎疾患の有無: 免疫抑制状態にある方や、慢性疾患(糖尿病、腎臓病など)がある方は、重症化したり、回復が遅れたりするリスクがあります。

多くの場合、1週間以内には症状が軽快し、日常生活に戻れるようになります。しかし、症状が1週間以上続く場合や、回復途中で再び症状が悪化するような場合は、別の原因や合併症の可能性も考えられるため、再度医療機関を受診しましょう。

急性胃腸炎はうつる?感染力と潜伏期間

感染性の急性胃腸炎は、原因となる病原体によって、非常に高い感染力を持つものがあります。 人から人へ、または汚染された食品や水を介して感染が広がります。

主な感染経路

感染性胃腸炎の主な感染経路は以下の通りです。

  • 経口感染: 病原体が付着した食品や水、あるいはウイルスが付着した手で口に触れることで感染します。最も一般的な感染経路です。特にノロウイルスは、わずかな量でも感染が成立するため注意が必要です。
  • 接触感染: 感染者が触ったもの(ドアノブ、手すり、おもちゃなど)を他の人が触り、その手で口に触れることで感染します。集団感染の原因となりやすい経路です。
  • 飛沫感染: 感染者が嘔吐した際などに、ウイルスや細菌が小さな水滴となって空気中に飛び散り、それを吸い込むことで感染します。ノロウイルスによる集団発生で特に注意すべき経路です。

潜伏期間の目安

潜伏期間とは、病原体が体内に侵入してから症状が現れるまでの期間です。原因となる病原体によって異なります。

原因ウイルス・細菌 潜伏期間の目安
ノロウイルス 24時間~48時間(数時間の場合も)
ロタウイルス 1日~3日
アデノウイルス 3日~10日
カンピロバクター 2日~5日(1日~10日)
サルモネラ菌 半日~2日
病原性大腸菌 3日~5日(O157の場合)
腸炎ビブリオ 数時間~1日

潜伏期間中は症状がなくても、すでに病原体を排出している可能性があり、知らず知らずのうちに周囲に感染を広げていることもあります。

いつまで感染力がある?

症状が落ち着いた後も、しばらくの間は便の中に病原体が排出され、感染力を持つことがあります。

  • ウイルス性胃腸炎(特にノロウイルス): 症状が改善した後も、1週間から数週間にわたって便中にウイルスが排出され続ける可能性があります。特に高齢者や免疫力が低下している人では、ウイルスの排出が長期間続くことがあります。
  • 細菌性胃腸炎: 原因菌によって異なりますが、症状が改善した後も数日から数週間、便中に菌が排出されることがあります。

症状がなくなっても、手洗いの徹底など感染対策を続けることが、周囲への感染を防ぐ上で非常に重要です。

急性胃腸炎になったときの食事

急性胃腸炎で食欲がない時や、嘔吐・下痢が続いている時は、無理に食事を摂る必要はありません。まず大切なのは**水分・電解質の補給**です。症状が落ち着いてきたら、消化の良いものから少量ずつ食事を再開しましょう。

症状がある時期の食事

  • 吐き気・嘔吐がひどい時:
  • 無理に食べたり飲んだりせず、胃腸を休ませます。絶食も選択肢の一つです。
  • 嘔吐が落ち着いたら、前述の通り、経口補水液などを少量ずつ、頻回に補給します。
  • 下痢が続いている時:
  • 固形物を無理に摂る必要はありません。
  • お腹を刺激しない、消化の良い水分(経口補水液、薄い麦茶、番茶など)を中心に摂ります。
  • 少し食べられそうな時:
  • まず、重湯具のない薄いお粥から始めます。少量から試して、食べられるようであれば少しずつ量を増やしたり、柔らかく煮たうどんなどを試したりします。
  • すりおろしリンゴは、腸の働きを整えるペクチンが含まれており、水分と糖分も補給できるため推奨されることがあります。
  • 水分補給も兼ねて、野菜スープ(脂肪分を取り除いたもの)なども良いでしょう。

回復期に推奨される食事

症状が軽快してきたら、徐々に通常の食事に戻していきます。ただし、まだ胃腸の機能が完全に回復しているわけではないので、引き続き消化の良いものを選びましょう。

  • 主食: お粥、軟飯、うどん(柔らかく煮る)、食パン(トーストする)など。
  • タンパク質: 脂肪の少ない白身魚(煮魚)、鶏ささみやむね肉(茹でたり蒸したりしたもの)、豆腐、卵(半熟やスクランブルエッグ)など。
  • 野菜: 繊維の少ない葉物野菜(ほうれん草など)や根菜類(大根、人参など)を柔らかく煮たもの。
  • 果物: バナナ、リンゴ(加熱したりすりおろしたりしたもの)など。
  • その他: 具なし味噌汁、コンソメスープ、ゼリーなど。

食事の量も、最初は少量から始め、体調を見ながら徐々に増やしていきましょう。よく噛んでゆっくり食べることも大切です。

避けるべき食事

胃腸に負担をかけたり、下痢を悪化させたりする可能性のある食品は、症状がある間や回復期は避けるようにしましょう。

  • 脂っこいもの: 天ぷら、揚げ物、炒め物、脂身の多い肉、バターなど。消化に時間がかかり、胃腸に負担をかけます。
  • 食物繊維が多いもの: ゴボウ、レンコン、きのこ類、海藻類、こんにゃく、生の野菜(特に葉物)、果物の皮や種など。消化が悪く、腸を刺激します。
  • 刺激物: 香辛料(唐辛子、カレー粉など)、炭酸飲料、コーヒーや紅茶(カフェイン)、アルコール飲料。胃腸の粘膜を刺激します。
  • 冷たいもの: 冷たい飲み物や食べ物。胃腸を冷やし、働きを悪くすることがあります。常温か温かいものがおすすめです。
  • 乳製品: 牛乳、ヨーグルト、チーズなど。一時的に乳糖を分解する酵素の働きが低下することがあり、下痢を悪化させる可能性があります。回復して腸の機能が戻ってから再開しましょう。
  • 砂糖を多く含むもの: 菓子類、ジュースなど。大量に摂取すると、腸に水分を引き込み下痢を悪化させることがあります。

脱水を防ぎつつ、消化の良いものを適切に選んで、ゆっくりと回復させていきましょう。

急性胃腸炎になったら仕事・学校は休むべき?

感染性の急性胃腸炎にかかった場合、周囲への感染拡大を防ぐためにも、症状がある間は仕事や学校を休むことが推奨されます。 特に、嘔吐や下痢といった症状が続いている時期は、病原体を排出しやすく、感染力が高い状態です。

出勤・登校の目安

仕事や学校への出勤・登校を再開する目安は、**嘔吐や下痢などのつらい症状が改善し、普段通りの食事が摂れるようになるまで**です。

  • 学校: 学校保健安全法では、感染症の種類によって出席停止期間が定められています。ノロウイルスやロタウイルスによる胃腸炎は、「学校において予防すべき感染症」に含まれており、「医師において感染のおそれがないと認めるまで」または「主要症状が消退した後2日を経過するまで」が出席停止期間の目安とされています。具体的な対応については、学校や幼稚園、保育園の規定に従ってください。
  • 仕事: 職場に明確な規定がない場合でも、嘔吐や下痢の症状がなくなってから出勤するのが望ましいです。特に、食品を取り扱う仕事や、高齢者・子どもと接する仕事の場合は、周囲への感染リスクが高いため、症状が完全に落ち着くまで慎重に判断する必要があります。体調が完全に回復していないまま無理に出勤しても、仕事のパフォーマンスが落ちるだけでなく、再発したり長引いたりすることもあります。

症状が改善しても、便中に病原体が排出されている期間は続く可能性があるため、手洗いなどの基本的な感染対策は継続する必要があります。

感染拡大を防ぐために

自分が感染源とならないために、以下の点に注意しましょう。

  • 頻繁な手洗い: 石鹸を使って流水で十分に手洗いをします。特に、トイレの後や食事の前、調理の前には必ず行いましょう。
  • タオルの共用を避ける: 家族間でも、タオルは一人ずつ使うようにします。
  • 吐物・排泄物の処理: 感染者の吐物や排泄物を処理する際は、手袋やマスクを着用し、換気を十分に行います。汚れた場所は、次亜塩素酸ナトリウムなど効果のある消毒剤でしっかり消毒します。処理後は石鹸で念入りに手洗いをします。
  • 入浴: 感染者と他の家族の入浴時間を分ける(感染者を最後に入浴させるなど)ことも検討します。

自分の体調が悪いときは無理をせず休み、回復に努めることが、自分自身のためだけでなく、周囲の人々を守るためにも重要です。

急性胃腸炎の予防法

急性胃腸炎は感染力が強い病気ですが、日頃から適切な予防策を講じることで、感染リスクを下げることができます。特に、流行時期には以下の点を徹底しましょう。

手洗い・うがいの徹底

感染経路の多くが経口感染や接触感染であることから、手洗いは最も重要で効果的な予防法です。

  • 石鹸を使った正しい手洗い:
  • 流水で手を濡らし、石鹸をつけます。
  • 手のひらをよくこすり合わせます。
  • 手の甲を伸ばすようにこすります。
  • 指先、爪の間を念入りに洗います。
  • 指の間を洗います。
  • 親指を反対の手でねじるように洗います。
  • 手首を洗います。
  • 石鹸を十分に洗い流します。
  • 清潔なタオルやペーパータオルで水分をしっかり拭き取ります。
  • 特に念入りに洗うタイミング:
  • 調理前
  • 食事の前
  • トイレの後
  • 外出から帰宅した時
  • 下痢や嘔吐をしている人の世話をした後
  • うがい: 口の中のウイルスや細菌を洗い流す効果があります。外出からの帰宅時や、人混みに行った後に行いましょう。

アルコール消毒は、細菌には有効ですが、ノロウイルスなど一部のウイルスには効果が限定的です。手洗いをしっかり行うことが基本です。

食品の適切な取り扱い

細菌性胃腸炎や一部のウイルス性胃腸炎は、食品を介して感染することが多いため、食品の取り扱いに十分注意が必要です。

  • 加熱: 食材(特に肉類、魚介類、卵)は、中心部までしっかりと加熱しましょう。特に、カンピロバクターやサルモネラ菌、腸炎ビブリオなどは加熱によって死滅します。
  • 生ものの取り扱い: 生で食べる食材(野菜、果物、魚介類など)は、調理前によく洗いましょう。特に二枚貝(牡蠣など)はノロウイルスを含む可能性があるため、加熱調理が推奨されます。
  • 調理器具の清潔保持: 包丁、まな板、布巾などは、使用後によく洗い、乾燥させたり、定期的に熱湯や塩素系漂白剤で消毒したりして清潔に保ちましょう。生肉などを扱った後は、他の食材を扱う前に必ず洗浄・消毒を行います。
  • 食品の保管: 食品は適切な温度で保管し、特に夏場は常温で長時間放置しないようにしましょう。

周囲への感染対策

身近に急性胃腸炎の患者がいる場合は、感染を広げないための対策が重要です。

  • 患者の排泄物・吐物の適切な処理: 前述の通り、手袋やマスクを使用し、換気を十分に行いながら処理し、消毒します。
  • 患者の衣類・リネン: 汚れた衣類やリネンは、他のものと一緒に洗わず、可能であれば分けて洗い、乾燥機にかけるか天日干しします。
  • 患者の食事: 患者の食事は他の人と分けて準備し、食器なども分けて洗うなどの配慮をします。
  • 部屋の換気: 患者がいる部屋は、定期的に換気を行いましょう。

家族が急性胃腸炎にかかった場合は、看病する人も含め、家族全員で手洗いを徹底し、感染対策に努めることが大切です。

【まとめ】急性胃腸炎の症状に気づいたら医療機関へ相談を

急性胃腸炎は、突然の吐き気、嘔吐、下痢、腹痛といったつらい症状が現れる病気です。その多くはウイルスや細菌による感染が原因であり、感染力が強いものもあります。

症状がある時は、無理せず安静にし、最も重要な脱水対策として、少量ずつこまめな水分・電解質補給を心がけましょう。食事は消化の良いものから始め、症状が落ち着いてから徐々に普段の食事に戻していくことが大切です。

症状の多くは数日から1週間程度で軽快しますが、乳幼児や高齢者、基礎疾患がある方は重症化しやすい傾向があるため注意が必要です。また、血便がある場合や、脱水症状が疑われる場合、症状が長引く場合などは、必ず医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けてください。

日頃からの手洗いの徹底や食品の適切な取り扱い、そして身近な人が発症した際の適切な対応が、急性胃腸炎の予防と感染拡大防止につながります。

この記事が、急性胃腸炎について理解を深め、つらい時期を乗り越える一助となれば幸いです。


免責事項:
この記事は、一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、医学的な診断や治療を保証するものではありません。特定の症状やご自身の状況についてご心配がある場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。本記事の情報に基づいて行った行為によって生じたいかなる損害についても、当社は一切の責任を負いかねます。

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