ALPが低い原因は?考えられる病気と意外な理由

血液検査の結果で「ALP(アルカリフォスファターゼ)が低い」と指摘され、ご不安を感じていらっしゃるかもしれません。
ALPは体のさまざまな組織で作られる酵素ですが、その値が基準より低い場合、いくつかの原因が考えられます。
必ずしも深刻な病気を意味するわけではありませんが、中には医療的な対応が必要なケースも存在します。
この記事では、ALPが低い場合に考えられる原因について、病気や栄養状態、薬剤など、多角的な視点から詳しく解説します。
ご自身のALP値について理解を深め、今後の対応に役立てていただければ幸いです。

目次

ALP(アルカリフォスファターゼ)とは

ALP(アルカリフォスファターゼ)は、体内のさまざまな組織に存在する酵素の一種です。
主に骨、肝臓、小腸、腎臓、胎盤などで活発に作られており、特に骨の細胞(骨芽細胞)や肝臓の細胞(肝細胞)、胆管の上皮細胞に多く存在しています。

このALPという酵素は、アルカリ性の環境下で、リン酸化合物を分解して「リン酸」と「有機化合物」に分ける働きを持っています。
この働きは、体内の多くの代謝プロセスに関与しており、中でも骨の形成や代謝において重要な役割を果たしています。
骨の石灰化(カルシウムなどが骨に沈着して硬くなる過程)には、リン酸の供給が不可欠であり、ALPがリン酸化合物を分解することで、骨形成に必要なリン酸が供給されるのです。
また、肝臓や胆道系では、胆汁の流れに関係していると考えられています。

血液検査で測定されるALP値は、これらの臓器から血液中に放出されたALPの総量を反映しています。
そのため、骨の病気や肝臓・胆道の病気があると、ALP値が高くなることがよくあります。
一方で、今回のようにALP値が低い場合も、体のどこかでALPの産生や活性に異常が起きている可能性が考えられます。
ALPのアイソザイム(同じ酵素でも、作られる場所によって構造や性質が少し異なるもの)を調べることで、どの臓器由来のALPに異常があるのか、さらに詳しく調べることが可能です。

ALPが低いとはどういう状態?基準値について

血液検査でALP値が「低い」と判断されるのは、測定された値が基準範囲を下回っている場合です。
一般的に、ALP値が高い場合は肝臓病や骨疾患などが疑われることが多いですが、低い場合の原因も存在します。

ALPは主に成長期の子供や妊婦さんでは高めの値を示す傾向があります。
これは、子供では骨が活発に成長しているため、妊婦さんでは胎盤でALPが多く作られるためです。
一方、高齢者ではやや低くなる傾向が見られますが、これは生理的な変化の一部と考えられます。
このように、年齢や生理的な状態によってALP値は変動するのが普通です。
しかし、基準値を明らかに下回る場合は、何らかの原因が隠れている可能性があります。

ALPの基準値はどのくらい?

ALPの基準値は、検査を行う施設や測定方法によって異なります。
これは、使用する試薬や機器、測定の条件などが統一されていないためです。
一般的に、成人における血清ALPの基準値は、おおよそ 100~300 U/L(単位/リットル) の範囲とされることが多いです。
ただし、これはあくまで一般的な目安であり、検査結果を受け取った際には、検査施設が提示している基準値を確認することが最も重要です。

例えば、ある検査施設では100 U/Lからが基準値の範囲内とされているのに、別の施設では80 U/Lからが基準値ということもありえます。
そのため、ご自身の検査結果用紙に記載されている基準範囲と照らし合わせて、ご自身のALP値が高いのか低いのかを判断してください。
多くの場合、検査結果の紙には、測定値とともにその施設の基準範囲が明記されています。

基準値が施設によって異なる理由

ALPの基準値が検査施設によって異なる主な理由は、以下の点が挙げられます。

  • 測定方法や試薬の違い: ALP活性を測定する方法にはいくつか種類があり、使用する試薬の組成や反応条件(温度、pHなど)が異なると、得られる値も変わってきます。
  • 測定機器の違い: 自動分析装置など、測定に使用する機器の種類やメーカーによっても、わずかに測定値にばらつきが生じることがあります。
  • 対象とする健常者の違い: 各検査施設が基準値を設定する際に参考にする「健常者」の集団が、年齢構成や性別比、生活習慣などで微妙に異なる場合があります。その施設を利用する患者さんの特徴を考慮して基準値を設定していることもあります。
  • 品質管理の方法: 各施設で行われる検査の精度管理や校正の方法が異なることも、基準値の差につながります。

このように、検査施設の基準値は、その施設が採用している測定システムや対象集団に基づいて定められています。
したがって、異なる施設で測定したALP値を単純に比較することは難しい場合があります。
もし過去に別の施設で検査を受けている場合は、今回の結果と比較する際に、施設ごとの基準値が異なることを考慮に入れる必要があります。
同じ施設で継続的に検査を受けることで、値の変動をより正確に把握することができます。

ALPが低い場合に考えられる主な原因

ALPが基準値よりも低い場合、いくつかの原因が考えられます。
その原因は多岐にわたり、特定の病気、栄養状態、薬剤の服用などによって引き起こされる可能性があります。
以下に、ALPが低い場合に考えられる主な原因について詳しく見ていきましょう。

特定の病気によるもの

ALP低値は、特定の病気によって引き起こされることがあります。
これらの病気は、骨の代謝異常や特定の臓器の機能低下など、ALPの産生や働きに影響を与えるものです。

低ホスファターゼ症

低ホスファターゼ症(Hypophosphatasia; HPP)は、ALPをコードする遺伝子に変異があることで、ALPの活性が著しく低下するまれな遺伝性疾患です。
ALP活性が非常に低いため、ALPによって分解されるはずのリン酸化合物が体内に蓄積し、特に骨や歯の石灰化がうまくいかなくなります。

症状は、発症時期や重症度によって大きく異なります。

  • 周産期致死型(最も重症): 生まれる前から、または生まれてすぐから骨の石灰化不全が著しく、呼吸障害や骨変形により生後まもなく死亡することが多い型です。
    ALP値は検出限界以下となることもあります。
  • 乳児期型: 生後6ヶ月頃までに発症し、くる病のような骨の変形(手足の骨が曲がるなど)、呼吸障害、成長障害などがみられます。
  • 小児期型: 歩き始めてから思春期頃までに発症します。
    身長が伸び悩む、歩き方がおかしい(アヒル歩行)、骨折しやすい、歯の早期脱落(乳歯が根っこを残して抜ける)、足の変形などがみられます。
  • 成人型: 成人期に発症し、足の骨や中足骨(足の甲の骨)などの疲労骨折、関節痛、歯の早期脱落などが主な症状です。
    乳児期や小児期に軽度の症状があった方が、成人になってから症状が顕著になることもあります。
  • セメント質欠損型: ALP活性は比較的保たれていますが、歯根のセメント質形成不全により歯の早期脱落のみを呈する型です。

低ホスファターゼ症は、ALP値の著しい低下に加えて、血中および尿中のリン酸化合物の増加が特徴です。
確定診断には、遺伝子検査が行われます。
最近では、酵素補充療法などの治療法も開発されてきており、予後を改善させることが期待されています。
しかし、診断されていない潜在的な患者さんもいると考えられています。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気です。
甲状腺ホルモンは全身の代謝を促進する働きがあり、骨の代謝にも影響を与えています。
甲状腺機能が低下すると、骨のターンオーバー(古い骨が壊され、新しい骨が作られる代謝サイクル)が遅くなり、これに伴って骨芽細胞の活性が低下することがあります。
骨芽細胞はALPを産生する細胞であるため、その活性低下がALP値の低下につながると考えられています。

甲状腺機能低下症の主な症状は、全身の代謝が遅くなることによるものです。

  • 全身の倦怠感、疲労感
  • 寒がりになる、体温が低い
  • 皮膚の乾燥、むくみ(特に顔や手足)
  • 声のかすれ、舌が腫れぼったい感じ
  • 便秘
  • 体重増加
  • 気力や集中力の低下、抑うつ気分
  • 生理不順、月経量の増加(女性)
  • 脈が遅くなる

これらの症状はゆっくりと進行することが多く、気づきにくい場合もあります。
血液検査で甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値、甲状腺ホルモン(FT3, FT4)が低値であることから診断されます。
甲状腺ホルモンを補充する治療によって、ALP値も正常に戻ることが多いです。

悪性貧血・重度貧血

悪性貧血は、ビタミンB12の吸収障害によって起こる貧血の一種です。
ビタミンB12は赤血球を作るために不可欠な栄養素ですが、細胞分裂が活発な骨髄の細胞や消化管の上皮細胞、神経細胞の機能にも重要です。
悪性貧血では、胃からの内因子という物質の分泌が不足するため、食事から摂取したビタミンB12が十分に吸収されず、ビタミンB12欠乏が起こります。

ビタミンB12はALPの働きを助ける補酵素として機能している可能性や、ビタミンB12欠乏が骨芽細胞の機能に影響を与える可能性が指摘されています。
重度のビタミンB12欠乏による悪性貧血では、ALP値が低下することが報告されています。

悪性貧血の症状としては、貧血による症状(息切れ、動悸、立ちくらみ、顔色が悪いなど)に加え、ビタミンB12欠乏に特有の症状がみられることがあります。

  • 舌の痛みや炎症(ハンター舌炎)
  • 味覚異常
  • 手足のしびれや感覚異常(神経症状)
  • 筋力低下
  • 記憶力低下や抑うつなどの精神症状

悪性貧血は、血液検査で大きな赤血球(巨赤芽球)が増加していることや、血清ビタミンB12値の低下によって診断されます。
ビタミンB12を注射や内服で補充することで、貧血や神経症状は改善し、ALP値も正常化することが期待できます。

悪性貧血以外の重度な貧血、特に骨髄の機能が低下しているようなタイプの貧血(再生不良性貧血など)でも、ALPを産生する骨芽細胞の活性が低下し、ALP値が低くなる可能性が考えられます。

壊血病

壊血病は、ビタミンCの重度な欠乏によって起こる病気です。
ビタミンCはコラーゲンというタンパク質を合成する上で重要な役割を果たしています。
コラーゲンは皮膚、血管、骨、軟骨、歯茎など、体の様々な組織の構成成分であり、これらの組織の維持や修復に不可欠です。
骨においても、コラーゲンは骨基質(骨を構成する線維成分)の重要な構成要素です。

ビタミンCが不足すると、コラーゲンの合成がうまくいかなくなり、骨基質の形成が障害されます。
骨基質の形成不全は、骨芽細胞の機能低下や骨の石灰化不全につながる可能性があります。
これにより、ALPの産生や活性が低下し、ALP値が低くなることが報告されています。

壊血病の主な症状は以下の通りです。

  • 歯茎からの出血、腫れ、歯のぐらつきや脱落
  • 皮膚の点状出血やあざができやすい
  • 傷が治りにくい
  • 関節の痛みや腫れ
  • 全身の倦怠感、疲労感
  • 貧血

壊血病は、極端な偏食や栄養不足、特定の病気(吸収不良症候群など)によってビタミンCの摂取や吸収が著しく不足した場合に発症します。
ビタミンCを補充することで、症状は劇的に改善し、ALP値も正常に戻ります。
現代の日本では、通常の食生活を送っていれば壊血病になることは稀ですが、特殊な状況下では起こりうる病気です。

ウィルソン病

ウィルソン病は、体内に銅が過剰に蓄積する遺伝性の病気です。
通常、食事から摂取された銅は、余分な分が胆汁中に排泄されます。
しかし、ウィルソン病では、銅の排泄に関わる遺伝子に変異があるため、銅がうまく排泄されずに肝臓、脳、腎臓、眼などに蓄積して様々な症状を引き起こします。

ウィルソン病では、肝臓や腎臓の機能障害が起こることが知られており、これらの臓器由来のALPの産生や活性に影響を与える可能性があります。
具体的には、ウィルソン病における銅の蓄積が、肝細胞の機能障害を引き起こし、ALPの産生能力を低下させることでALP値が低くなることがあると考えられています。

ウィルソン病の症状は、銅が蓄積する臓器によって異なりますが、主な症状は以下の通りです。

  • 肝臓の症状: 肝機能障害(軽度なものから肝硬変、劇症肝炎まで様々)
  • 神経・精神症状: 手足の震え、体のこわばり、話しにくさ、嚥下困難、歩行障害、人格変化、抑うつ、精神病様症状
  • 眼の症状: 角膜の周辺にできる茶色い輪(カイザー・フライシャー輪)
  • 腎臓の症状: 腎機能障害、尿細管障害
  • 血液の症状: 溶血性貧血

ウィルソン病の診断は、血液検査でのセルロプラスミン値の低下、尿中銅排泄量の増加、肝生検での肝臓内銅濃度測定などによって行われます。
眼科医によるカイザー・フライシャー輪の確認も重要な診断基準です。
治療は、体内に蓄積した銅を排泄させる薬(キレート剤)や、銅の吸収を抑える薬などを用いて行われます。
適切な治療を行えば、ALP値も改善する可能性があります。

栄養状態や欠乏によるもの

ALPの産生や活性には、特定の栄養素が関与しています。
これらの栄養素が不足すると、ALP値が低くなることがあります。

亜鉛欠乏症

亜鉛は、体内の多くの酵素の構成成分や活性化因子として機能する必須ミネラルです。
200種類以上の酵素の働きに関与しており、タンパク質合成、細胞分裂、免疫機能、味覚、創傷治癒など、非常に多くの生理機能に関わっています。

ALPも亜鉛を必要とする酵素の一つです。
ALPの分子構造には亜鉛原子が含まれており、この亜鉛がALPがリン酸化合物を分解する反応において重要な役割を果たしています。
したがって、亜鉛が不足すると、ALPの合成がうまくいかなくなったり、ALPの活性が低下したりして、結果として血中ALP値が低くなります。

亜鉛欠乏症の主な症状は以下の通りです。

  • 味覚障害
  • 皮膚炎(口の周りや手足など)
  • 脱毛
  • 免疫機能の低下(感染症にかかりやすい)
  • 創傷治癒の遅延
  • 成長障害(子供)
  • 食欲不振
  • 性機能の低下

亜鉛欠乏は、食事からの摂取不足(偏食、菜食主義)、亜鉛の吸収不良(炎症性腸疾患、短腸症候群)、亜鉛の排泄増加(腎臓病、肝硬変、糖尿病)、特定の薬剤(利尿薬、ある種の抗生物質など)の使用など、様々な原因で起こりえます。
診断は、血清亜鉛濃度の測定によって行われます。
亜鉛を補充することで、ALP値は正常に戻ることが多いです。

マグネシウム欠乏症

マグネシウムも、亜鉛と同様に体内の多くの酵素の働きを助ける必須ミネラルです。
300種類以上の酵素反応に関与しており、エネルギー産生、タンパク質合成、神経伝達、筋肉収縮、骨の健康維持など、幅広い生理機能に関わっています。

ALPの活性には、マグネシウムも不可欠です。
ALPはマグネシウムイオンを必要とする酵素であり、マグネシウムがALPの構造を安定させたり、反応に必要な形で関与したりしています。
マグネシウムが不足すると、ALPの活性が十分に発揮できず、血中ALP値が低くなる可能性があります。

マグネシウム欠乏症の主な症状は以下の通りです。

  • 筋肉のけいれんや震え
  • 疲労感、脱力感
  • 不整脈
  • 食欲不振、吐き気
  • 精神症状(抑うつ、イライラ)

マグネシウム欠乏は、食事からの摂取不足、吸収不良(炎症性腸疾患、セリアック病)、排泄増加(糖尿病、腎臓病、アルコール多飲、特定の薬剤:利尿薬、プロトンポンプ阻害薬など)、嘔吐や下痢による喪失など、様々な原因で起こりえます。
血清マグネシウム濃度の測定で診断されますが、細胞内のマグネシウムを正確に評価するのは難しい場合があります。
マグネシウムを補充することで、ALP値も改善する可能性があります。

重度の栄養障害

亜鉛やマグネシウムの欠乏だけでなく、全体的なエネルギーやタンパク質の摂取が著しく不足する重度の栄養障害(低栄養、るいそうなど)も、ALP値を低下させる原因となりえます。
ALPはタンパク質でできた酵素であり、その産生には十分なエネルギーとアミノ酸(タンパク質の材料)が必要です。
また、全身の代謝が低下すると、ALPを産生する骨芽細胞などの活性も低下する可能性があります。

重度の栄養障害は、食事が十分に摂れない、消化吸収能力が著しく低下している、慢性的な病気によってエネルギー消費が増加している、などの状況で起こります。
高齢者、慢性疾患を抱える患者さん、摂食障害のある方などでみられることがあります。

重度の栄養障害の主な症状は以下の通りです。

  • 著しい体重減少
  • 筋肉量の減少、筋力低下
  • 皮下脂肪の減少
  • 全身の倦怠感、易疲労性
  • 免疫機能の低下
  • 浮腫(むくみ)
  • 傷の治りが遅い

重度の栄養障害は、身体測定(体重、BMI)、血液検査(血清アルブミン値、トランスフェリン値、リンパ球数など)、食事摂取量の評価などによって診断されます。
適切な栄養補給(経口栄養、経腸栄養、経静脈栄養)によって栄養状態が改善すれば、低下していたALP値も上昇することが期待できます。

薬剤によるもの

特定の薬剤の服用も、ALP値を低下させる原因となることがあります。
薬剤がALPの産生を抑制したり、ALPの活性を阻害したり、ALPのクリアランス(体内からの排泄)を促進したりするメカニズムが考えられます。

ALP低値を引き起こす可能性のある薬剤としては、いくつかの種類が報告されています。

  • 甲状腺機能抑制薬: 甲状腺機能亢進症の治療に用いられる薬剤(例: チアマゾール、プロピルチオウラシル)は、甲状腺ホルモンの合成を抑えることで甲状腺機能を低下させます。
    薬剤性の甲状腺機能低下症となり、前述の通りALP値が低下することがあります。
  • ある種のステロイド(糖質コルチコイド): 長期間または高用量のステロイド治療は、骨代謝に影響を与え、骨芽細胞の活性を抑制する可能性があります。
    これにより、ALPの産生が低下し、ALP値が低くなることが報告されています。
  • 特定の種類の抗生物質: ごく一部の種類の抗生物質(例: クロラムフェニコールなど)が、骨髄の機能を抑制したり、他のメカニズムでALP値を低下させたりする可能性が指摘されています。
    ただし、これは比較的稀な原因と考えられます。
  • 経口避妊薬: 女性ホルモンを含む経口避妊薬の服用が、ALP値をわずかに低下させる可能性が示唆されています。
  • その他: 他にも、特定の免疫抑制剤や化学療法薬など、ALP値に影響を与える可能性のある薬剤が存在します。

薬剤によるALP低値は、薬剤の服用を開始した後にALP値が低下し、薬剤を中止するとALP値が正常に戻る傾向があります。
もし現在服用中の薬剤がある場合は、ALP低値の原因となっている可能性について、医師に相談することが重要です。
自己判断で薬剤の服用を中止したり、量を変更したりすることは危険ですので絶対に行わないでください。

ALPが低いと指摘されたら

健康診断や他の目的で行った血液検査でALPが低いと指摘された場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。

すぐに受診すべきか

ALP低値単独で、かつその低下の程度が軽度である場合、多くの場合、すぐに緊急で医療機関を受診する必要はありません。
ALP低値の原因は多岐にわたり、中には経過観察で問題ないケースや、栄養状態の改善などで自然に正常に戻るケースも少なくありません。

しかし、以下のような場合は、医療機関を受診して相談することをお勧めします。

  • ALPの低下の程度が大きい場合: 基準値から大きく外れて著しく低い値である場合、前述のような病気が隠れている可能性が高まります。
  • ALP低値に加えて、他の検査値に異常がある場合: 例えば、貧血がある、甲状腺ホルモン値に異常がある、亜鉛やマグネシウムの値が低い、肝機能に関連する他の酵素(AST, ALTなど)にも異常がある、などの場合は、原因となる病気を特定するために詳しい検査が必要です。
  • ALP低値に加えて、自覚症状がある場合: ALP低値の原因となりうる病気に伴う症状(疲労感、むくみ、寒がり、体の痛み、手足のしびれ、味覚障害、皮膚症状、精神症状など)がある場合は、放置せずに医療機関を受診することが重要です。
  • 妊娠中や授乳中の場合: これらの時期はALP値が高くなるのが通常であるため、低い場合は注意が必要な場合があります。
  • 子供の場合: 子供のALP値は成長に伴って変動します。
    低い場合は、成長に関連する病気(低ホスファターゼ症など)の可能性も考慮し、小児科で相談することが推奨されます。

受診の目安としては、まずはかかりつけ医や健康診断を受けた医療機関に相談するのが良いでしょう。 そこで、ALP低値以外に異常がないか、他の症状があるかなどを総合的に判断してもらい、専門医(内科、内分泌内科、血液内科、小児科など)への紹介が必要か判断してもらうのが一般的な流れです。

医師に伝えるべきこと

ALP低値の原因を特定するためには、医師に正確な情報を提供することが非常に重要です。
診察の際には、以下の点について具体的に伝えられるように準備しておきましょう。

1. 現在の自覚症状:
– どのような症状がありますか?(例: 疲れやすい、むくみ、寒がり、体重の変化、手足のしびれ、筋肉のけいれん、味覚の変化、皮膚のかゆみや発疹、体の痛み、歯のぐらつきなど)
– その症状はいつ頃から始まりましたか?
– 症状はどのように変化していますか?

2. 既往歴:
– これまでにどのような病気にかかったことがありますか?
– 慢性疾患(糖尿病、腎臓病、肝臓病、甲状腺の病気、炎症性腸疾患など)はありますか?
– 過去に手術や大きな怪我をしたことはありますか?

3. 服用中の薬剤やサプリメント:
– 現在、処方されている薬、市販薬、健康食品、サプリメントなど、何か服用していますか?
– 薬剤の名前、量、服用期間などを正確に伝えましょう。(お薬手帳を持参すると良いでしょう)
– 特に、甲状腺の薬、ステロイド、利尿薬、胃薬(プロトンポンプ阻害薬など)、特定の抗生物質などを服用している場合は必ず伝えましょう。

4. 食事内容や栄養状態:
– 食事の量は十分に摂れていますか?
– 食事内容に偏りはありませんか?(例: 極端な偏食、特定の食品を避けているなど)
– 最近、体重が急に減ったり増えたりしましたか?
– 過去に栄養状態が悪かった時期はありますか?

5. 飲酒や喫煙の習慣:
– お酒を飲む頻度や量はどのくらいですか?
– タバコは吸いますか? 吸っている場合は本数や期間は?

6. 家族歴:
– ご家族やご親戚に、ALPが低い方や、遺伝性の病気(低ホスファターゼ症、ウィルソン病など)、甲状腺の病気、貧血の方がいますか?

7. 最近の体調やライフスタイルの変化:
– 最近、ストレスが多い、睡眠不足が続いているなど、体調や生活習慣に変化がありましたか?
– 無理なダイエットをしていませんか?

これらの情報を具体的に伝えることで、医師はALP低値の原因を探るための手がかりを得やすくなります。
必要に応じて、追加の血液検査(亜鉛、マグネシウム、ビタミンB12、甲状腺ホルモンなど)、尿検査、画像検査などが行われ、原因の特定につながります。
ALP低値はあくまで検査値の一つであり、他の情報と合わせて総合的に判断されることを理解しておきましょう。

ALP低値について よくある質問

ALP低値について、よくあるご質問とその回答をまとめました。

ALP低値は放置しても大丈夫?

ALP低値の程度や、他に異常がないか、自覚症状があるかどうかによります。
軽度なALP低値で他に異常や症状がなければ、多くの場合、すぐに問題になることはありません。
しかし、特定の病気が原因でALPが著しく低い場合は、早期診断・治療が重要です。
ALP低値を指摘されたら、まずは健康診断を受けた医療機関やかかりつけ医に相談し、今後の対応について指示を仰ぐことが大切です。
自己判断で放置せず、医師の意見を聞くようにしましょう。

ALP低値を改善するために食事でできることは?

もしALP低値の原因が亜鉛やマグネシウムなどの栄養素の欠乏である場合、これらの栄養素を食事から十分に摂取することは改善につながる可能性があります。

  • 亜鉛を多く含む食品: 肉類(特に牛肉、豚肉)、魚介類(牡蠣、うなぎ)、大豆製品、種実類(ごま、アーモンド)など。
  • マグネシウムを多く含む食品: 海藻類(ひじき、わかめ)、大豆製品、種実類(アーモンド、カシューナッツ)、野菜類(ほうれん草、ブロッコリー)、きのこ類など。

ただし、食事だけでALP値を劇的に改善させるのは難しい場合もありますし、ALP低値の原因が栄養欠乏以外の病気である可能性もあります。
安易な自己判断で特定のサプリメントを大量に摂取することは避け、医師や管理栄養士に相談しながら、バランスの取れた食事を心がけることが基本です。

ALP低値の場合、骨が弱くなるの?

ALPは骨の石灰化に重要な役割を果たしているため、ALP活性が著しく低い遺伝性疾患である低ホスファターゼ症では、骨の石灰化不全が起こり、骨が弱くなったり変形したりします。
しかし、軽度なALP低値が、直ちに骨粗鬆症などの原因となるわけではありません。
ALP低値が他の原因(甲状腺機能低下症や栄養欠乏など)によるものであれば、その原因疾患の治療によってALP値が正常に戻り、骨の健康も維持されることが期待できます。
骨の健康については、ALP値だけでなく、カルシウムやリンの値、骨密度の検査なども合わせて評価する必要があります。

ALP低値の原因がわからないことはありますか?

ALP低値の中には、検査値は低いものの、特に原因となる病気や栄養欠乏、薬剤などが特定できない「特発性(原因不明)」とされるケースも存在します。
このような場合でも、他に自覚症状がなく、他の検査値にも異常がなければ、経過観察となることが多いです。
ただし、定期的に検査を受けてALP値の変動を monitoring していくことは重要です。

【まとめ】ALP 低いと指摘されたら、まずは原因の特定を

ALPが基準値よりも低い場合、その原因は、まれな遺伝性疾患である低ホスファターゼ症から、甲状腺機能低下症、特定の貧血、壊血病、ウィルソン病といった病気、さらには亜鉛やマグネシウムなどの栄養素の欠乏、そして薬剤の服用など、多岐にわたります。

ALP低値単独で軽度な場合は、すぐに深刻な状態を示すわけではありませんが、原因によっては医療的な対応が必要なケースもあります。
ALP低値を指摘されたら、ご自身のALP値がどの程度低いのか、他にどのような検査異常があるのか、そしてどのような自覚症状があるのかを整理し、まずは健康診断を受けた医療機関やかかりつけ医に相談することをお勧めします。

医師に相談する際には、現在服用中の薬剤、サプリメント、既往歴、食事内容、自覚症状などを具体的に伝えることが、原因の特定に非常に役立ちます。
自己判断で不安になったり、安易な民間療法に頼ったりせず、医療の専門家の意見を聞き、必要に応じて詳しい検査や適切な治療を受けることが、ご自身の健康を守る上で最も重要です。
この記事が、ALP低値について理解を深め、適切な行動をとるための一助となれば幸いです。


免責事項:
この記事は、一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、医学的な判断や診断、治療を推奨するものではありません。
ご自身の健康状態や検査結果についてご不安がある場合は、必ず医師や医療専門家の診断を受け、適切な指示に従ってください。
記事の情報に基づいてご自身で判断したり、医療機関への受診を遅らせたりすることはお控えください。

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