「気持ち悪い」という感覚は、誰もが一度は経験したことがある不快な症状です。
その原因は、単なる食べ過ぎや寝不足といった一時的なものから、早急な医療処置が必要な重篤な病気に至るまで、非常に多岐にわたります。
そのため、単に「気持ち悪い」というだけでなく、どのような状況で、どのような症状を伴うのかを知ることが、その原因を探り、適切に対処する上で非常に重要となります。
この記事では、「気持ち悪い」と感じる様々な原因を体の部位や疾患別に詳しく解説し、伴う症状から原因を判断するヒント、自宅でできる応急処置、そして最も重要な医療機関を受診すべき目安についてご紹介します。
ご自身の症状と照らし合わせながら、ぜひ最後までご覧ください。
気持ち悪さの主な原因|体の部位・疾患別
「気持ち悪い」という症状は、体の様々な場所の不調によって引き起こされる可能性があります。
ここでは、考えられる主な原因を、体の部位や疾患別に詳しく見ていきましょう。
胃・消化器系の原因
吐き気や気持ち悪さの最も一般的な原因は、胃や腸といった消化器系の問題です。
食べ物や飲み物の影響を直接受けるため、不調が起こりやすい部位と言えます。
胃腸炎(感染性、ウイルス性、食中毒など)
胃腸炎は、ウイルスや細菌、寄生虫などが胃や腸に感染することで起こる炎症です。
ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど)は冬場に流行しやすく、細菌性胃腸炎は主に食品を通じて感染します(食中毒)。
食中毒の原因菌としては、サルモネラ菌、カンピロバクター、病原性大腸菌などが挙げられます。
主な症状は、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱です。
特に吐き気や嘔吐は症状の初期に強く現れることが多く、胃の内容物を排出することで症状が一時的に和らぐこともあります。
これらの感染性胃腸炎では、原因となる病原体を体外に排出しようとする防御反応として吐き気や下痢が起こります。
多くの場合、安静と水分補給で数日から1週間程度で改善しますが、脱水症状がひどい場合や、乳幼児、高齢者では注意が必要です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜が深く傷つき、えぐれた状態になる病気です。
主な原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染や、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの薬の副作用、過度のストレスなどが挙げられます。
典型的な症状は、みぞおちの痛みです。
胃潰瘍では食後に痛むことが多い一方、十二指腸潰瘍では空腹時に痛むことが多いとされています。
しかし、痛みだけでなく、吐き気や胃もたれ、食欲不振、げっぷなどの症状を伴うことも少なくありません。
潰瘍から出血すると、吐血(コーヒーのような色をしたものを吐く)やタール便(黒い便)が見られることもあり、この場合は緊急の治療が必要です。
吐き気は、潰瘍による炎症や、胃の運動機能が低下することによって引き起こされると考えられています。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで食道粘膜に炎症が起こる病気です。
食道と胃の境目にある下部食道括約筋の機能低下や、胃を圧迫する要因(肥満、妊娠、前かがみの姿勢など)、胃酸分泌の増加などが原因となります。
典型的な症状は、胸やけや呑酸(酸っぱい液体や苦い液体が上がってくる感覚)ですが、吐き気やげっぷ、のどの違和感、咳などの非典型的な症状で受診される方も多くいます。
特に食後や、お腹を圧迫したとき、横になったときに症状が悪化しやすい傾向があります。
吐き気は、胃酸の逆流による食道への刺激や、食道の動きが悪くなることによって誘発されると考えられています。
胃もたれ・消化不良
日常的によく経験する「胃もたれ」や「消化不良」も、気持ち悪さの原因となります。
これは、食事の内容(脂っこいもの、消化しにくいものなど)や量、食べる速さ、ストレス、睡眠不足などによって、胃の動きが一時的に悪くなったり、胃酸の分泌が過剰になったりすることで起こります。
症状としては、胃が重い、膨満感がある、げっぷが多い、そして吐き気を感じるといったものがあります。
特に食べ過ぎた後や、普段食べ慣れないものを食べた後に起こりやすい傾向があります。
多くの場合、時間の経過とともに自然に改善しますが、症状が続く場合は他の病気が隠れている可能性も考えられます。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、胃の痛みや胃もたれなどの不快な症状が慢性的に続いているにも関わらず、胃カメラなどの検査で異常が見つからない病気です。
胃の機能(動きや食べ物をためる能力など)の異常、知覚過敏(胃が伸びたり傷ついたりする刺激に敏感になる)、ストレス、胃酸の影響、胃の感染症(ピロリ菌など)などが複雑に関与していると考えられています。
主な症状は、食後の胃もたれ、早期満腹感(少量食べただけですぐお腹がいっぱいになる)、みぞおちの痛み、みぞおちの灼熱感などですが、吐き気やげっぷを伴うこともよくあります。
これらの症状が生活の質を大きく低下させることがあります。
検査で異常がないため、診断がつくまでに時間がかかることもありますが、適切な治療(薬物療法、生活習慣の改善、心理療法など)によって症状の改善が期待できます。
胃がん、腸閉塞(イレウス)、虫垂炎など
胃がんや腸閉塞(イレウス)、虫垂炎といった、より重篤な消化器系の病気でも、気持ち悪さや吐き気が症状として現れることがあります。
- 胃がん:早期には自覚症状がほとんどないことが多いですが、進行すると胃の痛み、胃もたれ、食欲不振、体重減少、吐き気、吐血、黒い便などの症状が現れることがあります。
吐き気は、がんによって胃の動きが悪くなったり、食べ物の通り道が狭くなったりすることで起こり得ます。 - 腸閉塞(イレウス):何らかの原因で腸管の内容物が詰まってしまい、先に進まなくなる状態です。
吐き気、嘔吐、腹痛(特に間欠的な激しい痛み)、お腹の張り、排便・排ガスの停止が主な症状です。
放置すると腸管が壊死したり、穴が開いたりする危険な状態です。 - 虫垂炎:一般的に「盲腸」と呼ばれる病気で、虫垂に炎症が起こります。
初期にはみぞおちやおへその周りが漠然と痛み、吐き気や食欲不振を伴うことがあります。
その後、痛みが右下腹部に移動し、時間とともに強くなるのが特徴です。
これらの疾患による吐き気や気持ち悪さは、他の病気とは異なる特徴的な症状(激しい腹痛、発熱、出血など)を伴うことが多いため、見逃さずに医療機関を受診することが重要です。
脳・神経系の原因
脳や神経の異常が、直接的あるいは間接的に気持ち悪さを引き起こすことがあります。
片頭痛
片頭痛は、脳の血管や神経の機能異常によって起こる慢性の頭痛です。
頭の片側(あるいは両側)にズキンズキンと脈打つような強い痛みが特徴ですが、吐き気や嘔吐を伴うことが多いのも片頭痛の特徴の一つです。
光や音、においに過敏になったり、体を動かすと頭痛が悪化したりすることもよく見られます。
吐き気は、頭痛発作に伴って脳の特定の領域が刺激されることで起こると考えられています。
脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)
脳梗塞や脳出血といった脳血管障害は、脳の細胞への血流が途絶えたり、脳内で出血が起こったりする重篤な病気です。
突然発症することが多く、手足の麻痺、呂律が回らない、言葉が出ない、視界がおかしくなるなどの症状が現れます。
特に脳幹や小脳の障害では、激しい頭痛とともに吐き気や嘔吐、めまいが強く現れることがあります。
これらの症状が突然現れた場合は、一刻も早く救急車を呼ぶ必要があります。
吐き気は、脳の特定の部位の障害や、脳圧の上昇によって引き起こされます。
メニエール病など(めまいを伴う場合)
内耳の異常によって平衡感覚に障害が起こると、めまいとともに吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
代表的なものにメニエール病があります。
メニエール病は、めまい、難聴、耳鳴り、耳が詰まった感じ、という4つの症状が同時に起こる発作を繰り返す病気です。
内耳の内リンパ液が過剰に溜まる(内リンパ水腫)ことが原因と考えられています。
めまいが激しい発作の間は、強い吐き気や嘔吐を伴い、日常生活に大きな支障をきたします。
心臓・循環器系の原因
意外に思われるかもしれませんが、心臓や血管の病気でも吐き気や気持ち悪さが現れることがあります。
特に高齢者や女性では、典型的な胸痛がなく、非典型的な症状として現れることも少なくありません。
心筋梗塞、狭心症など
心筋梗塞や狭心症は、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が狭くなったり詰まったりして、心臓への血流が悪くなる病気です。
典型的な症状は、胸の締め付けられるような痛みや圧迫感ですが、中には胸痛よりも、吐き気、冷や汗、息切れ、肩や顎への放散痛などを強く感じる方もいます。
特に心筋梗塞の場合は、心臓のポンプ機能が低下したり、自律神経が刺激されたりすることで強い吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
これらの症状は時間とともに悪化することが多く、緊急性の高い状態です。
その他の内臓・全身性の原因
消化器系や脳、心臓以外にも、体の様々な臓器や全身の状態が気持ち悪さを引き起こすことがあります。
肝炎、胆石症、膵炎
肝臓、胆のう、膵臓といった消化に関連する臓器の病気でも、吐き気はよく見られる症状です。
- 肝炎:肝臓の炎症。倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などが主な症状。
- 胆石症:胆のうや胆管に石ができる病気。食後に右季肋部(みぞおちのやや右下)の激しい痛み(胆石疝痛)とともに吐き気を伴うことが多い。
- 膵炎:膵臓の炎症。主にみぞおちから左上腹部、背中にかけての激しい痛みとともに、吐き気、嘔吐、発熱などが現れる。
これらの臓器の炎症や機能障害が、消化吸収のプロセスに影響を与えたり、周辺臓器を刺激したりすることで吐き気を引き起こすと考えられます。
糖尿病
糖尿病自体が直接的な原因となるよりは、糖尿病の合併症や血糖コントロールの異常が吐き気につながることがあります。
- 糖尿病性胃不全麻痺:長年の高血糖によって胃の神経が障害され、胃の動きが悪くなる合併症。食べ物がなかなか胃から排出されず、吐き気、胃もたれ、早期満腹感などを引き起こします。
- 高血糖・低血糖:血糖値が極端に高い状態(高血糖クリーゼ)や、低すぎる状態(重症低血糖)でも、吐き気や意識障害などの症状が現れることがあります。
尿路結石
尿管などに石が詰まることで、脇腹や腰に非常に強い痛み(疝痛発作)が生じます。
この激しい痛みに伴って、反射的に吐き気や嘔吐を伴うことが非常に多いのが特徴です。
緑内障
眼球の中の圧力(眼圧)が高くなり、視神経が障害される病気です。
通常はゆっくり進行しますが、急激に眼圧が上昇する「急性緑内障発作」では、眼の強い痛み、頭痛、視力低下、そして反射的に吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
ストレス・心因性の原因
現代社会において、ストレスや心理的な要因が原因で体に不調が現れることは珍しくありません。「ストレス性の胃炎」や「神経性胃炎」などと呼ばれることもあります。
精神的なストレス
強い不安、緊張、悩みなどの精神的なストレスは、自律神経のバランスを大きく乱します。
自律神経は、胃や腸の動き、胃酸の分泌などをコントロールしているため、バランスが崩れると胃腸の働きが正常に行われなくなり、吐き気や胃もたれ、食欲不振、下痢や便秘といった症状を引き起こすことがあります。
特にプレッシャーがかかる場面や、精神的に不安定な状態のときに症状が出やすい傾向があります。
自律神経の乱れ
ストレスだけでなく、不規則な生活リズム、睡眠不足、疲労なども自律神経のバランスを崩す原因となります。
自律神経の乱れは、消化器系だけでなく、心臓や血管、呼吸器など全身の様々な機能に影響を及ぼすため、吐き気以外にも、動悸、息苦しさ、めまい、頭痛、発汗異常、倦怠感など、多様な症状を伴うことがあります。
これを「自律神経失調症」と呼ぶこともあります。
女性特有の原因
女性の体はホルモンバランスの変化に大きく影響されるため、特定の時期や状態において気持ち悪さを感じやすくなることがあります。
妊娠(つわり)
妊娠初期(妊娠5週頃から16週頃まで)に多くの女性が経験する「つわり」は、気持ち悪さや吐き気を主な症状とします。
早い人では妊娠に気づく前から始まることもあります。
朝方に強く感じることが多いですが、一日中続く人、特定のにおいや食べ物で誘発される人など、症状の現れ方には個人差が大きいです。
原因は正確には解明されていませんが、妊娠によるホルモンの急激な変化が関与していると考えられています。
多くの場合、妊娠中期に入ると自然に軽快します。
月経前症候群(PMS)、月経困難症
月経前症候群(PMS)は、月経が始まる1週間~数日前に現れる様々な身体的・精神的な不調で、月経開始とともに軽快または消失します。
症状の一つとして、吐き気や食欲不振、胃のむかつきを感じる人もいます。
月経困難症は、月経中の下腹部痛や腰痛などが強い状態ですが、これに伴って吐き気や頭痛、倦怠感などを伴うこともあります。
これらの症状も、月経周期に伴う女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の変動が大きく関与しています。
更年期障害
更年期は、閉経を挟んだ前後約10年間を指し、女性ホルモン(特にエストロゲン)が急激に減少する時期です。
ホルモンバランスの大きな変化は、自律神経の乱れを引き起こしやすくなります。
そのため、吐き気や胃の不快感、食欲不振といった消化器症状に加え、ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)、動悸、息切れ、めまい、肩こり、不眠、イライラ、気分の落ち込みなど、様々な身体的・精神的な不調が現れることがあります。
女性ホルモンのバランスの乱れ
妊娠、月経、更年期といった特定の時期だけでなく、過度なダイエット、不規則な生活、ストレスなどによっても女性ホルモンのバランスが乱れることがあります。
ホルモンバランスの乱れは、自律神経の働きや消化器系の機能に影響を与え、周期的な、あるいは慢性的な気持ち悪さを引き起こす可能性があります。
思春期のホルモン変動が大きい時期や、産後なども同様に影響を受けることがあります。
その他の原因
上記以外にも、気持ち悪さを引き起こす可能性のある様々な原因が存在します。
薬の副作用
多くの薬剤には、吐き気や胃部不快感といった副作用が報告されています。
特に抗生物質、痛み止め(NSAIDs)、化学療法薬、特定の血圧を下げる薬などが吐き気を起こしやすいことが知られています。
新しい薬を飲み始めた後や、薬の種類や量が変わった後に気持ち悪さを感じるようになった場合は、薬の副作用である可能性を疑い、処方医や薬剤師に相談することが大切です。
加齢
年齢を重ねるとともに、消化管の機能が低下したり、消化液の分泌が減少したりすることがあります。
また、基礎疾患(糖尿病、腎臓病など)を持っている方も増えるため、様々な要因が複合的に関与して気持ち悪さを感じやすくなることがあります。
乗り物酔い
乗り物酔いは、視覚情報と体の平衡感覚(三半規管からの情報)にずれが生じることで起こります。
脳が混乱し、自律神経が乱れることで、吐き気、嘔吐、冷や汗、顔面蒼白といった症状が現れます。
特に乗り物の揺れが大きい場合や、体調が優れないときに起こりやすい傾向があります。
アルコール摂取
アルコールを飲みすぎると、胃の粘膜が刺激されて炎症を起こしたり、アルコールが代謝される過程でできるアセトアルデヒドが吐き気を誘発したりします。
また、アルコールには利尿作用があり、脱水症状を引き起こすことも吐き気の一因となります。
二日酔いの際の吐き気は、これらの複合的な要因によるものです。
脱水症状
水分だけでなく、電解質も失われた状態である脱水症状でも、吐き気や食欲不振、倦怠感、頭痛、めまいなどが現れることがあります。
特に暑い環境下での活動や、発熱、下痢、嘔吐などがあった場合に起こりやすいです。
脱水が進行すると、意識障害や痙攣などの危険な状態に至ることもあるため注意が必要です。
気持ち悪さに伴う症状で原因を判断するヒント
「気持ち悪い」という症状は、単独で現れることもありますが、多くの場合、他の症状を伴います。
どのような症状が同時に現れているかを知ることは、原因疾患を絞り込む上で重要なヒントとなります。
以下に、気持ち悪さに伴う代表的な症状の組み合わせと、考えられる原因、そして受診の際のポイントをまとめました。
症状の組み合わせ | 考えられる主な原因 | 受診のポイント |
---|---|---|
吐き気 + 腹痛 + 発熱 + 下痢 | 胃腸炎(ウイルス性、細菌性、食中毒)、虫垂炎(初期)、憩室炎など | 症状が激しい、水分が摂れない、脱水症状(口の渇き、尿量の減少、ふらつき)、血便、激しい腹痛、高齢者や乳幼児。 |
吐き気 + 頭痛 + めまい | 片頭痛、メニエール病、脳血管障害、急性緑内障発作など | 突然発症、これまで経験したことのない激しい頭痛、手足の麻痺やしびれ、呂律障害、意識障害、高熱、首の硬直、眼の激しい痛み。救急車を検討。 |
吐き気 + 胸痛 + 息切れ | 心筋梗塞、狭心症、大動脈解離など | 締め付けられるような胸の痛み、圧迫感、冷や汗、肩や顎への放散痛。特に運動時や安静時。呼吸が苦しい。緊急性が高い。救急車を検討。 |
みぞおちの痛み + 吐き気 | 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、膵炎など | 食事との関連性(空腹時、食後)、症状の慢性化、黒い便や吐血、背中への放散痛、黄疸。 |
お腹は空くのに食べると気持ち悪い | 機能性ディスペプシア、慢性胃炎、胃がん、うつ病など | 食欲はあるが食べようとすると気持ち悪い、早期満腹感、胃もたれが続く、体重減少、食欲不振が慢性化している、気分が落ち込んでいるなどの精神症状を伴う。 |
吐き気、腹痛、発熱、下痢などを伴う場合
これらの症状が同時に現れる場合、最も可能性が高いのは感染性胃腸炎(ウイルス性、細菌性、食中毒)です。
特に、同じような症状の人が周囲にいる場合や、特定の飲食物を摂取した後に発症した場合は、感染性胃腸炎や食中毒を強く疑います。
嘔吐や下痢によって体から水分や電解質が大量に失われるため、脱水症状に注意が必要です。
症状が激しい、水分をまったく摂れない、尿量が著しく減少したなどの場合は、早めに医療機関を受診し、点滴などで水分・電解質を補給する必要があります。
また、初期の虫垂炎や大腸憩室炎などでも、吐き気や腹痛、発熱といった症状が現れることがあります。
腹痛の部位や経過を観察することが重要です。
頭痛、めまいを伴う場合
頭痛やめまいを伴う吐き気の場合、片頭痛やメニエール病といった脳や耳の病気が考えられます。
片頭痛であれば、光や音に過敏になる、体を動かすと頭痛が悪化するといった特徴が見られます。
メニエール病であれば、めまいの発作と同時に難聴や耳鳴り、耳が詰まった感じを伴います。
これらの病気は慢性的なものが多いですが、症状が日常生活に支障をきたす場合は医療機関での相談が必要です。
ただし、突然の激しい頭痛、手足の麻痺やしびれ、呂律が回らない、意識がおかしい、高熱、首の硬直、視力や視野の異常を伴う場合は、脳出血や脳梗塞、くも膜下出血、髄膜炎などの命に関わる病気の可能性があり、非常に危険です。
すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
また、急性緑内障発作では、眼の激しい痛みとともに頭痛、吐き気、視力低下が現れ、これも緊急性の高い状態です。
胸痛、息切れを伴う場合
吐き気とともに胸の痛みや息切れがある場合は、心筋梗塞や狭心症といった心臓の病気を強く疑う必要があります。
特に、締め付けられるような胸の痛み、圧迫感、冷や汗、左腕や肩、顎への放散痛を伴う場合は、心筋梗塞の可能性が高く、時間との勝負となります。
これらの症状は労作時(体を動かしたとき)に現れることが多いですが、安静時にも起こることもあります。
緊急性の高い症状ですので、迷わず救急車を要請してください。
その他、大動脈解離などの血管の病気でも胸や背中の激痛とともに吐き気や息切れを伴うことがあります。
みぞおちの痛み、お腹のもやもや感がある場合
みぞおちの痛みや胃のあたりがもやもやする感じとともに吐き気がある場合は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシアといった胃や食道の病気の可能性が高いです。
痛みが食事との関連性があるか(空腹時、食後)、症状が慢性的に続いているか、胸やけや呑酸を伴うかなどを観察することで、原因を絞り込むヒントになります。
特に黒い便が出たり、吐血したりする場合は、潰瘍からの出血が考えられるため、速やかに医療機関を受診する必要があります。
また、みぞおちの痛みが背中に響くような場合は、膵炎の可能性も考えられます。
膵炎では激しい痛みとともに強い吐き気や嘔吐、発熱を伴うことが多いです。
お腹は空くのに食べると気持ち悪い場合
食欲はあるのに、実際に食事を始めたり、少量食べただけで胃がもたれたり、気持ち悪くなったりする場合は、機能性ディスペプシアでよく見られる症状です。「早期満腹感」や「食後膨満感」といった症状の一つとして現れます。
胃の機能的な問題や知覚過敏が原因と考えられます。
しかし、慢性的な胃炎や、進行した胃がんでも同様の症状が現れることがあります。
特に、食欲不振が続いたり、体重が減少したり、他の消化器症状(胃痛、胃もたれなど)が改善しない場合は、一度胃カメラなどの詳しい検査を受けることをお勧めします。
また、精神的なストレスやうつ病などが原因で、食べ物を受け付けなくなることもあります。
気持ち悪い時の応急処置・対処法
原因がはっきりしない一時的な気持ち悪さの場合や、病院に行くほどではないと感じる軽度の症状の場合、自宅でできる応急処置や対処法があります。
ただし、これから挙げる方法はあくまで一般的なものであり、原因によっては適さない場合もあります。
症状が改善しない場合や悪化する場合は、必ず医療機関を受診してください。
自宅でできる対策
安静にする体勢
無理に体を動かすと、吐き気や気持ち悪さが増すことがあります。
楽な姿勢で安静にしましょう。
横になる場合は、体を少し起こすか、左側を下にして横になると、胃の内容物が逆流しにくくなり、吐き気を軽減できることがあります。
衣服は締め付けない、ゆったりしたものを選びましょう。
水分補給の重要性
特に吐き気や嘔吐がある場合は、脱水症状を起こしやすいので、こまめな水分補給が非常に重要です。
一度にたくさん飲むと胃に負担がかかり、吐き気を誘発することがあるため、少量ずつ、頻繁に水分を摂るようにしましょう。
飲む水分としては、水や麦茶、ほうじ茶などが適しています。
発汗や下痢、嘔吐などで電解質も失われている場合は、経口補水液やスポーツドリンク(糖分が多いものは薄めるなど工夫が必要な場合も)が効果的です。
冷たすぎるものや熱すぎるものは胃を刺激することがあるため、常温に近いものが良いでしょう。
避けるべき飲み物としては、炭酸飲料、柑橘系のジュース(胃酸を増やす可能性)、牛乳(消化しにくい)、アルコール、カフェインを多く含む飲み物(コーヒー、紅茶など)が挙げられます。
食事の注意点
気持ち悪いときは、無理に食事を摂る必要はありません。
食事ができそうであれば、胃腸に負担のかからない、消化の良いものを選びましょう。
- 消化の良い食品の例:おかゆ、うどん(具材は消化しやすいもの)、よく煮込んだ野菜、豆腐、白身魚、ゼリー、プリンなど。
- 避けたい食品の例:揚げ物、脂っこいもの、香辛料を多く使ったもの、生もの、冷たいもの、食物繊維の多いもの(きのこ、こんにゃくなど)。
食事は少量ずつ、ゆっくりとよく噛んで食べることが大切です。
また、吐き気が強いときは、食事を完全に中止して、水分補給に専念することも必要です。
気持ちをまぎらわせる方法(換気、リラックスなど)
気持ち悪さは精神的な影響も受けやすい症状です。
部屋の換気をして新鮮な空気を取り入れたり、締め付けの少ない服装でゆったり過ごしたりすることで、気分転換になり、症状が和らぐことがあります。
音楽を聴く、軽い読書をするなど、気が紛れることをするのも有効です。
アロマオイル(ミントやジンジャーなど、吐き気に良いとされるもの)の香りを楽しむのも良いかもしれません。
ストレスや緊張が原因の場合は、深呼吸やリラクゼーション法を試みるのも効果的です。
避けるべきこと(刺激物、アルコールなど)
気持ち悪いと感じるときは、胃腸に負担をかけることや、症状を悪化させる可能性のある行動は避けましょう。
- 刺激物:辛いもの、酸っぱいもの、熱すぎるもの、冷たすぎるものなど、胃を刺激する飲食物は避けましょう。
- アルコール:アルコールは胃粘膜を刺激し、脱水も招くため、気持ち悪いときは絶対に避けてください。
- カフェイン:カフェインも胃酸分泌を促進したり、胃の動きを乱したりする可能性があるため、控えめにしましょう。
- 喫煙:タバコは胃の血管を収縮させ、胃酸分泌を促進するため、吐き気があるときは吸わないようにしましょう。
- 無理な運動:症状があるときに無理に体を動かすと、吐き気が増したり、他の症状が悪化したりすることがあります。安静が第一です。
- 自己判断での市販薬の服用:原因がわからないのに市販の胃薬などを自己判断で服用すると、かえって症状が悪化したり、正確な診断を遅らせたりする可能性があります。使用する場合は薬剤師に相談するか、症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。
病院を受診すべき目安
一時的な軽い気持ち悪さであれば、自宅での対処で改善することも多いですが、中には緊急性の高い病気が隠れている場合や、放っておくと慢性化したり悪化したりする病気もあります。
どのような場合に医療機関を受診すべきか、具体的な目安を知っておくことは非常に重要です。
緊急性の高い危険な兆候
以下の症状や状況が一つでも当てはまる場合は、迷わず救急車を呼ぶか、すぐに医療機関を受診してください。
これらは命に関わる重篤な病気のサインである可能性があります。
激しい痛みや吐き気、嘔吐が続く
経験したことのないような激しい腹痛や胸痛、または吐き気や嘔吐が止まらず、水分も摂れないような場合は、重篤な感染症(重症胃腸炎、腹膜炎)、腸閉塞、急性膵炎、急性胆のう炎、心筋梗塞、大動脈解離などの可能性があります。
脱水症状も急速に進行する危険があります。
血便、吐血がある
血液を吐いた場合(吐血)や、便に血が混ざる、あるいは真っ黒でタール状の便が出る(下血)場合は、消化管からの出血を強く疑います。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍からの出血、食道静脈瘤破裂、大腸炎、大腸がんなど、様々な原因が考えられますが、大量に出血している場合は命に関わります。
意識障害がある
呼びかけに反応しない、意識が朦朧としている、言動がおかしいなど、意識の状態に異常が見られる場合は非常に危険です。
脳血管障害(脳卒中)、重症の感染症、重度の脱水、低血糖、薬物の影響など、様々な重篤な原因が考えられます。
高熱を伴う
高熱(例えば38℃以上)とともに吐き気がある場合、感染症(細菌性胃腸炎、肺炎、髄膜炎、腎盂腎炎など)や炎症性の病気(虫垂炎、胆のう炎、膵炎など)が考えられます。
特に発熱が続く場合や、他の全身症状を伴う場合は注意が必要です。
手足の麻痺やしびれがある
突然、手足の力が入らなくなったり、しびれが出たり、顔が歪んだり、呂律が回らなくなったりといった症状が吐き気とともに現れた場合は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を強く疑います。
発症から治療までの時間が非常に重要となるため、すぐに救急車を要請してください。
胸の痛みが強い
胸の強い痛みや圧迫感、締め付けられるような痛みが吐き気とともに現れた場合は、心筋梗塞や狭心症などの心臓の病気の可能性が高く、こちらも緊急性が高いです。
特に、痛みが左腕や肩、顎などに広がったり(放散痛)、冷や汗を伴ったりする場合は危険なサインです。
症状が改善しない、または続く場合
緊急性の高い兆候がなくても、以下のような場合は医療機関を受診することをお勧めします。
- 気持ち悪さが数日経っても改善しない、または徐々に悪化している場合。
- 自宅での応急処置を試しても効果がない場合。
- 気持ち悪さのために食事がまともに摂れない状態が続いている場合。
- 体重が意図せず減少している場合。
- これまで経験したことのない症状である場合、あるいはいつもと症状が違う場合。
- 症状が繰り返して起こる場合(慢性的な病気の可能性)。
- 症状によって日常生活に支障が出ている場合。
- その他、ご自身で「何かおかしい」「心配だ」と感じる場合。
これらの場合は、一時的な不調ではなく、何らかの病気が原因である可能性が考えられます。
早期に医療機関を受診し、原因を特定して適切な治療を受けることが大切です。
何科を受診すべきか
気持ち悪さの原因は多岐にわたるため、何科を受診すべきか迷うことがあるかもしれません。
- 内科:まずはかかりつけ医や一般的な内科を受診するのが良いでしょう。
問診や診察で症状を総合的に判断し、適切な専門科へ紹介してもらうことができます。 - 消化器内科:吐き気や腹痛、胃もたれなど、胃腸の症状が中心の場合は、消化器内科が専門となります。
胃カメラや大腸カメラなどの検査を受ける必要がある場合に適しています。 - 脳神経内科・脳神経外科:激しい頭痛やめまい、手足の麻痺など、脳や神経系の症状を伴う場合は、これらの科を受診します。
- 循環器内科:胸痛や息切れなど、心臓の症状を伴う場合は、循環器内科を受診します。
- 耳鼻咽喉科:めまいが主な症状で、耳鳴りや難聴を伴う場合は、耳鼻咽喉科が専門となります。
- 心療内科・精神科:ストレスや不安、うつ病など、精神的な要因が強く疑われる場合は、これらの科に相談することも有効です。
- 婦人科:妊娠の可能性や、月経周期、更年期など、女性特有の要因が疑われる場合は、婦人科を受診します。
- 救急科:前述の緊急性の高い危険な兆候がある場合は、時間や曜日に関わらず救急医療機関を受診する必要があります。
まずは一般的な内科で相談し、必要に応じて専門医に繋いでもらうのがスムーズなことが多いです。
まとめ|気持ち悪さが続く、心配な場合は医療機関へ
「気持ち悪い」という症状は非常に身近で、軽いものから重いものまで、その原因は多岐にわたります。
一過性の胃腸の不調やストレス、乗り物酔いなど、原因が明らかな場合や軽度であれば、自宅での安静や水分補給、食事の工夫などで対応できることもあります。
しかし、激しい痛みや高熱、出血、麻痺、意識障害などを伴う場合や、症状が長期間続く、あるいは悪化する場合は、放置せずに必ず医療機関を受診することが大切です。
これらの症状は、時に命に関わる重篤な病気のサインである可能性があるからです。
ご自身の症状に不安を感じる場合や、この記事を読んで当てはまる可能性のある病気が見つかった場合は、自己判断せず、早めに医師に相談してください。
適切な診断を受け、原因に応じた治療を行うことで、症状の改善が期待できます。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代替するものではありません。
個々の症状については、必ず医師の診察を受けるようにしてください。