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ノンレム睡眠とは?レム睡眠との違い・役割と深い眠りのカギ

私たちは日々の生活の中で、眠ることの重要性を漠然と理解しています。しかし、「良い睡眠」とは具体的にどのような睡眠でしょうか?睡眠は一様ではなく、周期的に異なる状態を繰り返しています。その中でも特に、脳と体の休息に深く関わるのが「ノンレム睡眠」です。

ノンレム睡眠は、単に体を休めるだけでなく、記憶の定着や成長ホルモンの分泌など、生きていく上で非常に重要な役割を担っています。この記事では、ノンレム睡眠とは何か、レム睡眠との違い、その周期や段階、私たちの心身にとってなぜ不可欠なのかを掘り下げて解説します。ノンレム睡眠の質を高める方法や、もしも異常を感じた場合の対処法についても触れていきますので、日々の睡眠の質を見直し、より健康的な生活を送るためのヒントとしてぜひお役立てください。

目次

ノンレム睡眠とは?定義と特徴

ノンレム睡眠は、睡眠を構成する主要な状態の一つです。「Non-Rapid Eye Movement(非急速眼球運動)」の略称で、その名の通り、睡眠中に眼球の急速な動きが見られないのが特徴です。一般的に、眠りに入って最初に訪れるのがこのノンレム睡眠です。

ノンレム睡眠中、私たちの脳の活動は休息モードに入り、心拍数や呼吸も安定して穏やかになります。筋肉もリラックスしていますが、レム睡眠ほど完全に弛緩しているわけではありません。この状態は「脳の眠り」とも呼ばれ、日中に活動して疲れた脳を休息させ、修復する重要な時間と考えられています。

ノンレム睡眠は、その深さによってさらにいくつかの段階に分けられます。眠り始めの浅い段階から、目覚めさせることが困難なほどの深い段階まであり、それぞれの段階が脳と体の回復に異なる役割を果たしています。特に深いノンレム睡眠は、心身の疲労回復や日中の活動で生じたダメージの修復に不可欠です。

レム睡眠とノンレム睡眠の違いを比較

睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠という、大きく異なる二つの状態が周期的に繰り返されることで成り立っています。それぞれの特徴を知ることで、睡眠全体のメカニズムや重要性をより深く理解できます。

特徴 ノンレム睡眠(NREM睡眠) レム睡眠(REM睡眠)
定義 非急速眼球運動睡眠 急速眼球運動睡眠
脳の活動状態 活動が低下し、休息モード(徐波が特徴的) 覚醒時に近く、活発(速い脳波が特徴的)
体の筋肉の動き 適度に保たれる(寝返りなど) ほとんど弛緩している(金縛りのような状態)
心拍・呼吸 安定して穏やか 不規則になりやすい
血圧 低下する 変動しやすい
体温調節 機能する(環境温度に応じて調整) 機能が低下する(環境温度に影響されやすい)
夢を見る可能性 比較的少なく、見ても断片的・現実的でない 非常に高く、物語性のある鮮明な夢を見やすい
目覚めやすさ 深い段階ほど目覚めにくい 比較的目覚めやすい
役割 脳と体の休息、疲労回復、記憶の定着(主に事実・知識) 脳の情報整理、感情・精神の調整、記憶の定着(主に感情・手続き)

脳の活動状態

ノンレム睡眠中、脳の活動は全体的に低下し、消費エネルギーも少なくなります。脳波はゆっくりとした大きな波(徐波)が特徴的で、「脳の眠り」と呼ばれる所以です。日中にフル稼働した脳をクールダウンさせ、次に備えるためのメンテナンスが行われます。

一方、レム睡眠中は、脳波は覚醒時に近い速い波を示し、脳は活発に活動しています。まるで起きているかのような状態ですが、体は眠っています。これは「体の眠り」とも呼ばれ、脳が情報を整理したり、感情の処理を行ったりしていると考えられています。

体の筋肉の動き

ノンレム睡眠中は、体の筋肉は適度に緊張を保っています。これにより、寝返りを打ったり、姿勢を変えたりすることが可能です。深いノンレム睡眠になると、筋肉の緊張はさらに緩みますが、完全に弛緩するわけではありません。

対照的に、レム睡眠中は、眼球が急速に動く一方で、体の主要な筋肉はほとんど完全に弛緩しています。これは、夢の内容に合わせて体が動いてしまうのを防ぐための生体防御機能と考えられており、この筋肉の弛緩が不十分な場合に「金縛り」として経験されることがあります。

夢を見る可能性

ノンレム睡眠中にも夢を見ることはありますが、レム睡眠中に見る夢に比べて、少なく、内容も断片的であったり、あまり物語性がなかったりすることが多いとされています。

夢を最もよく見るとされているのがレム睡眠中です。レム睡眠中の夢は、より鮮明で、感情を伴い、複雑なストーリーを持つ傾向があります。レム睡眠中の脳の活発な活動が、こうした夢の生成に関わっていると考えられています。

ノンレム睡眠の周期と時間

睡眠は一晩を通して一定の状態が続くのではなく、ノンレム睡眠とレム睡眠が約90分周期で繰り返されています。このサイクルは、健康な成人の場合、一晩に4〜5回程度繰り返されるのが一般的です。

一晩の睡眠サイクル

眠りにつくと、まずノンレム睡眠の浅い段階(N1、N2)に入り、その後深い段階(N3、徐波睡眠)へと移行します。深いノンレム睡眠の時間は、主に睡眠サイクルの最初の頃に長く出現します。約60〜80分ノンレム睡眠が続いた後、最初のレム睡眠が出現します。最初のレム睡眠は比較的短く、5〜10分程度で終わることが多いです。

その後、再びノンレム睡眠の浅い段階に戻り、深い段階を経るか、あるいは浅い段階のまま次のレム睡眠へと移行します。このように、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現れるサイクルが一晩中繰り返されます。

睡眠サイクルの後半になるにつれて、深いノンレム睡眠の時間は短くなり、浅いノンレム睡眠とレム睡眠の時間が長くなる傾向があります。特に、朝方に近づくにつれてレム睡眠の時間が長くなり、目覚めやすい状態になります。

各睡眠段階の所要時間

一晩の総睡眠時間のうち、ノンレム睡眠は約75〜80%、レム睡眠は約20〜25%を占めると言われています。ノンレム睡眠の中でも、それぞれの段階が占める割合は異なります。

  • N1(睡眠移行期)
    総睡眠時間の約2〜5%程度を占める、最も浅い段階です。
    覚醒状態から睡眠への移行期にあたる、最も浅い段階です。まどろみのような状態で、筋肉は緩み始め、心拍や呼吸も穏やかになります。脳波は覚醒時とは異なる遅い波が現れ始めます。外部からの刺激で簡単に目覚めやすい状態です。総睡眠時間に占める割合は少ないですが、入眠時には必ず経る段階です。
  • N2(浅い睡眠)
    総睡眠時間の約45〜55%を占める、ノンレム睡眠の中で最も長い段階です。
    この段階に入ると、心拍や呼吸はさらに遅く、体温もわずかに低下します。脳波には「睡眠紡錘波」や「K複合波」といった特徴的な波形が現れます。これらは、外部からの刺激を遮断し、睡眠を維持するために重要な役割を果たしていると考えられています。N1よりも目覚めにくい状態ですが、深い睡眠ほどではありません。
  • N3(深い睡眠、徐波睡眠)
    総睡眠時間の約15〜20%を占める重要な段階です。特に睡眠サイクルの前半に多く出現し、年齢とともに減少する傾向があります。

これらの割合はあくまで平均的なものであり、個人の年齢、体調、その日の活動量などによって変動します。例えば、日中に激しい運動をした日や、睡眠不足の状態が続いている日などは、深いノンレム睡眠の割合が増えることがあります。

ノンレム睡眠の深さ(睡眠段階)

ノンレム睡眠は、脳波や眼球運動、筋活動などの特徴に基づいて、さらに浅い段階から深い段階へと分けられます。一般的には、N1、N2、N3の3つの段階に分類されます。(以前は段階3と段階4に分けられていましたが、現在はまとめて段階3と呼ぶのが一般的です。ここではN3として説明します。)

浅いノンレム睡眠(N1, N2)

N1(睡眠移行期): 覚醒状態から睡眠への移行期にあたる、最も浅い段階です。まどろみのような状態で、筋肉は緩み始め、心拍や呼吸も穏やかになります。脳波は覚醒時とは異なる遅い波が現れ始めます。外部からの刺激で簡単に目覚めやすい状態です。総睡眠時間に占める割合は少ないですが、入眠時には必ず経る段階です。

N2(浅い睡眠): ノンレム睡眠の中で最も長い時間を占める段階です。この段階に入ると、心拍や呼吸はさらに遅く、体温もわずかに低下します。脳波には「睡眠紡錘波」や「K複合波」といった特徴的な波形が現れます。これらは、外部からの刺激を遮断し、睡眠を維持するために重要な役割を果たしていると考えられています。N1よりも目覚めにくい状態ですが、深い睡眠ほどではありません。

深いノンレム睡眠(N3)

N3は「徐波睡眠(Slow-Wave Sleep: SWS)」とも呼ばれる、最も深いノンレム睡眠の段階です。脳波には、遅く振幅の大きな「δ(デルタ)波」が非常に多く出現するのが特徴です。

この段階では、心拍、呼吸、血圧が最も安定して低くなり、体温調節機能も活発になります。筋肉は非常にリラックスしており、外部からの刺激に対する反応性が著しく低下するため、目覚めさせることが最も困難な状態です。

深いノンレム睡眠は、主に睡眠サイクルの最初の1〜2回に集中して出現します。特に日中の活動で脳や体が疲労しているほど、この深いノンレム睡眠の時間が長くなる傾向があります。これは、深いノンレム睡眠が心身の休息と回復に最も重要な役割を果たしていることを示唆しています。

ノンレム睡眠の役割と重要性

なぜ私たちは眠り、特にノンレム睡眠が必要なのでしょうか? ノンレム睡眠は、単に「寝ている時間」ではなく、私たちの心身の健康を維持するために不可欠な、様々な重要な生理的機能が働く時間です。

脳や体の休息と疲労回復

深いノンレム睡眠(N3)は、脳や体の疲労回復に最も重要な役割を果たします。日中の活動で消耗したエネルギーを回復させ、脳細胞や体組織の修復を促進します。特に脳は、ノンレム睡眠中に活動を大幅に低下させることで、休息とメンテナンスを行います。これにより、次に迎える覚醒状態での効率的な活動が可能になります。

筋肉や臓器もノンレム睡眠中に休息し、疲労を回復させます。日中に溜まった代謝産物(例:アデノシン)を脳から排出し、疲労感を取り除く効果も期待できます。深いノンレム睡眠が不足すると、体の疲労感が取れず、日中のパフォーマンス低下や倦怠感につながることがあります。

記憶の整理・定着

ノンレム睡眠は、特にエピソード記憶(個人的な出来事や経験に関する記憶)や宣言的記憶(事実や知識に関する記憶)の整理と定着に重要な役割を担っています。ノンレム睡眠中、特に徐波睡眠の間に、日中に獲得した情報が海馬から大脳皮質へと効率的に転送され、長期記憶として定着されると考えられています。

脳波の徐波と同期して情報のやり取りが行われ、不要な情報は削除され、必要な情報が整理されて記憶のネットワークに組み込まれます。十分なノンレム睡眠が得られないと、新しい情報を効率的に学習したり、既存の知識をスムーズに思い出したりすることが困難になる可能性があります。

成長ホルモンの分泌

成長ホルモンは、子供の成長だけでなく、成人の代謝調節、組織修復、筋肉量維持、脂肪分解など、様々な生理機能に関わる重要なホルモンです。この成長ホルモンは、睡眠中に最も多く分泌され、特に深いノンレム睡眠(N3)の間にピークを迎えます。

子供にとっては、成長ホルモンの分泌は身長を伸ばすために不可欠ですが、成人にとっても、体のメンテナンスや健康維持に重要な役割を果たします。十分なノンレム睡眠が得られないと、成長ホルモンの分泌が低下し、体の修復機能が鈍ったり、筋肉量が減少しやすくなったりするなどの影響が出る可能性があります。

ノンレム睡眠の段階 主な役割 特徴的な脳波
N1(睡眠移行期) 覚醒から睡眠への導入 θ(シータ)波が増加
N2(浅い睡眠) 睡眠の維持、外部刺激の遮断 睡眠紡錘波、K複合波
N3(深い睡眠) 脳と体の休息・疲労回復、記憶の定着(エピソード・宣言的記憶)、成長ホルモン分泌 δ(デルタ)波(徐波)が多く出現

ノンレム睡眠は、このように脳と体の両面において、日中の活動で生じた負荷をリセットし、翌日への準備を整えるための重要な時間です。このノンレム睡眠が不足すると、様々な心身の不調につながる可能性があります。

質の高いノンレム睡眠を増やすには?

ノンレム睡眠、特に深いノンレム睡眠の質を高めることは、心身の健康にとって非常に重要です。ここでは、質の高いノンレム睡眠を得るための具体的な方法をいくつかご紹介します。

睡眠環境の整備

睡眠の質は、寝室の環境に大きく左右されます。快適な睡眠環境を整えることから始めましょう。

  • 温度と湿度
    快適な睡眠に適した室温は18〜22℃程度、湿度は50〜60%程度と言われています。季節に応じてエアコンや加湿器・除湿機を使い、寝室の環境を適切に保ちましょう。

  • 寝室はできるだけ暗くすることが重要です。光は脳を覚醒させてしまうため、遮光カーテンを使ったり、寝る前に明るい照明を消したりすることを心がけましょう。特にスマートフォンのブルーライトは脳を刺激するので、寝る前の使用は避けるのが理想です。

  • 静かで落ち着ける環境が望ましいです。外部の騒音が気になる場合は、耳栓を使ったり、ホワイトノイズマシンを利用したりするのも有効です。
  • 寝具
    自分に合った寝具(マットレス、枕、掛け布団)を選ぶことも大切です。体圧分散性の良いマットレスや、首のカーブに合った枕など、快適に眠れるものを見つけましょう。

就寝前の習慣

寝る前の過ごし方は、入眠のスムーズさやノンレム睡眠の質に影響を与えます。リラックスできる習慣を取り入れましょう。

  • ぬるめのお風呂
    就寝1〜2時間前に、38〜40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、体の深部体温が一度上がり、その後下がる過程で眠気を誘います。熱すぎるお湯はかえって体を興奮させてしまうので避けましょう。
  • リラクゼーション
    軽いストレッチ、瞑想、アロマセラピー、穏やかな音楽を聴くなど、自分がリラックスできる方法を見つけましょう。
  • カフェインやアルコールの摂取を控える
    午後以降のカフェイン摂取は、覚醒作用により入眠を妨げたり、睡眠を浅くしたりする可能性があります。アルコールは入眠を早める効果があるように感じられますが、睡眠後半のノンレム睡眠やレム睡眠を妨げ、睡眠の質を低下させることが分かっています。
  • 寝る前の激しい運動を避ける
    就寝直前の激しい運動は体を興奮させ、寝付きを悪くすることがあります。運動するなら就寝の数時間前に済ませるのが良いでしょう。
  • 夕食は寝る3時間前までに
    就寝直前の食事は消化活動で体が休まらず、睡眠の質を低下させる可能性があります。

生活リズムの調整

規則正しい生活リズムは、体内時計を整え、自然な眠りを誘います。

  • 毎日同じ時間に寝て起きる
    週末も含めて、できるだけ毎日同じ時間に寝床に入り、同じ時間に起きるように心がけましょう。これにより体内時計が安定し、自然な眠気と目覚めが得られやすくなります。
  • 朝起きたら太陽の光を浴びる
    朝、起きてすぐに太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットされ、活動モードへの切り替えがスムーズになります。また、夜に眠気を誘うメラトニンの分泌を調整する効果もあります。
  • 日中の適度な運動
    日中に体を動かすことは、夜の睡眠の質を高めるのに有効です。ただし、就寝直前の激しい運動は避けましょう。
  • 仮眠は短時間にする
    どうしても日中に眠い場合は、午後早い時間に20〜30分程度の短い仮眠にとどめましょう。長い仮眠や夕方以降の仮眠は、夜の睡眠に影響を与える可能性があります。

これらの方法を全て一度に取り入れるのは難しいかもしれません。まずは一つか二つ、自分が取り組みやすいものから試してみて、少しずつ睡眠習慣を改善していくことをお勧めします。

ノンレム睡眠しかない場合は?

健康な睡眠では、ノンレム睡眠とレム睡眠が周期的に繰り返されます。もし「ノンレム睡眠しかない」あるいは「レム睡眠が全くない」という状態が続くのであれば、それは深刻な睡眠障害の可能性を示唆しています。

考えられる原因

レム睡眠が欠如したり、極端に減少したりする原因としては、以下のようなものが考えられます。

  • 特定の睡眠障害
    ナルコレプシーのような一部の睡眠障害では、睡眠構造が異常をきたすことがあります。ただし、これは「ノンレム睡眠しかない」というよりも、レム睡眠が覚醒中に突然出現したり、入眠直後にレム睡眠が現れたりするなど、睡眠段階の出現タイミングやパターンが異常になるケースが多いです。
  • 脳疾患
    脳腫瘍や脳血管障害など、脳の特定の部位(特に脳幹など、睡眠と覚醒を制御する領域)に損傷がある場合、睡眠サイクルが乱れ、レム睡眠が出現しなくなることがあります。
  • 薬剤の影響
    特定の向精神薬や睡眠薬の種類によっては、レム睡眠を抑制する作用を持つものがあります。
  • 極度の睡眠不足やストレス
    長期間にわたる極度の睡眠不足や強いストレスは、睡眠構造を乱す可能性があります。

ただし、一般的に健康な人であれば、レム睡眠が全く出現しないということは非常に稀です。睡眠ポリグラフ検査などを行わない限り、自分がノンレム睡眠しか取れていないと正確に判断することは難しいでしょう。「ノンレム睡眠しか取れていない気がする」と感じる場合は、レム睡眠中の夢を覚えていない、目覚めがスッキリしない、日中の強い眠気などの症状があるかもしれません。

専門家への相談

もし、慢性的に睡眠に問題を抱えている、日中の強い眠気で日常生活に支障が出ている、睡眠中に異常な行動が見られるなど、睡眠に関する不安や気になる症状がある場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診することをお勧めします。

特に、「レム睡眠が全くないのでは」と心配になるような症状がある場合は、睡眠専門医の診察を受けるのが最も重要です。睡眠専門医は、詳細な問診や、必要に応じて終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)などの精密検査を行い、睡眠構造を正確に評価し、原因を特定することができます。

原因が特定されれば、適切な治療法(薬物療法、認知行動療法など)が選択されます。睡眠障害の中には、放置すると日中のパフォーマンス低下だけでなく、様々な身体的・精神的な健康問題につながるものもあります。早期に専門家の診断と治療を受けることが、健康な睡眠を取り戻すための鍵となります。

コア睡眠とはノンレム睡眠のこと?

「コア睡眠」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、睡眠研究の分野で正式に定義されている医学用語というよりは、主に一般向けの文脈で使われることがある言葉です。

「コア睡眠」という言葉が指す意味合いは、使う人や文脈によって異なる場合があります。しかし、多くの場合は、睡眠の中でも特に脳や体の回復にとって最も重要とされる部分を指していると考えられます。そして、この最も重要な部分に、深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が含まれると考えられます。

前述の通り、深いノンレム睡眠は脳の休息、疲労回復、成長ホルモン分泌、記憶定着など、生きていく上で不可欠な機能が働く時間です。睡眠サイクルの前半に集中して出現し、この時間が不足すると心身の健康に大きな影響が出やすいことから、この深いノンレム睡眠を「コア(核となる)睡眠」と捉える考え方があるのかもしれません。

ただし、「コア睡眠」という言葉が、ノンレム睡眠全てを指すのか、あるいはノンレム睡眠の中でも特に深い段階だけを指すのかは、文脈によります。また、レム睡眠も、脳の情報整理や感情処理といった重要な役割を担っているため、健康な睡眠サイクル全体が重要であり、ノンレム睡眠だけ、あるいはその一部だけを特別視しすぎるのは適切ではないかもしれません。

正確な医学的な情報としては、睡眠はノンレム睡眠(N1、N2、N3の段階に分けられる)とレム睡眠から成り立ち、これらが周期的に繰り返されることでそれぞれの役割を果たしている、と理解するのが基本です。もし「コア睡眠」という言葉を見聞きした場合は、それがどの睡眠段階や機能に焦点を当てているのかを文脈から判断する必要があります。

重要なのは、ノンレム睡眠とレム睡眠の両方がバランスよく取れている、質の高い睡眠サイクルを確保することです。

まとめ

ノンレム睡眠は、私たちが日々の疲れを癒し、心身の健康を維持するために不可欠な睡眠状態です。「脳の眠り」とも呼ばれ、脳活動の低下、心拍や呼吸の安定、体温調節機能の働き、そして眼球運動が少ないことが特徴です。

ノンレム睡眠は、深い段階に進むにつれて脳と体の休息、疲労回復、記憶の整理・定着、成長ホルモンの分泌といった重要な役割を強く担います。特に、睡眠サイクルの前半に多く出現する深いノンレム睡眠(N3)は、これらの機能にとって極めて重要です。

健康な睡眠は、このノンレム睡眠とレム睡眠が約90分周期で繰り返されることで成り立っています。レム睡眠は「体の眠り」と呼ばれ、脳が活発に活動し、情報整理や感情処理、記憶定着(特に感情や手続きに関するもの)に関わると考えられています。

質の高いノンレム睡眠を増やすためには、快適な睡眠環境の整備(適切な温度・湿度、遮光、防音)、リラックスできる就寝前の習慣(ぬるめのお風呂、カフェイン・アルコールの制限)、そして規則正しい生活リズムの維持(毎日同じ時間に寝起き、朝の光浴)が有効です。

もし「ノンレム睡眠しかない気がする」「睡眠の質が悪く、日中の不調が続いている」といった懸念がある場合は、自己判断せずに睡眠専門医に相談することが重要です。睡眠専門医は、精密な検査によって睡眠の状態を正確に評価し、適切な診断と治療を提供してくれます。

「コア睡眠」という言葉は、一般的に睡眠の重要な部分、特に深いノンレム睡眠を指すことが多いようですが、正式な医学用語ではないため、文脈によって意味合いが異なる可能性があります。重要なのは、ノンレム睡眠とレム睡眠を含む健康的な睡眠サイクル全体を理解し、その質を高める努力をすることです。

この記事でご紹介した情報を参考に、ご自身の睡眠習慣を見直し、質の高いノンレム睡眠を含む十分な睡眠を確保して、より健やかで活力ある毎日を目指しましょう。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスや診断を代替するものではありません。個人の睡眠に関する悩みや健康上の問題については、必ず医師や専門家にご相談ください。

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