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寝ても寝ても一日中眠い…それ、うつ病かも?過眠の原因と対策

一日中眠い状態が続くことは、日常生活に大きな支障をきたし、つらいものです。その原因は多岐にわたりますが、もしかしたら「うつ病」が関係しているのではないかと不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。うつ病というと「眠れない(不眠)」というイメージが強いかもしれませんが、実は「一日中眠い」「寝ても寝ても眠い」といった「過眠(かみん)」も、うつ病の症状の一つとして現れることがあります。

この記事では、うつ病と一日中眠い状態の関連性、うつ病による過眠の原因や具体的な症状、ご自宅で試せるセルフケアの方法、そして専門家への相談が必要なケースについて詳しく解説します。もしかして、と感じている方は、ご自身の状態を理解し、適切な行動をとるための参考にしてください。
ただし、この記事は情報提供を目的としたものであり、自己診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関で専門医の診察を受けるようにしてください。

目次

なぜうつ病だと一日中眠いのか?考えられる原因

うつ病は、単に気分が落ち込む病気ではなく、脳の機能障害であると考えられています。この脳の機能異常が、気分の変動だけでなく、様々な身体症状や思考の変化を引き起こします。睡眠に関しても例外ではなく、うつ病によって睡眠のパターンが大きく乱れることがあります。不眠に悩まされる方が多い一方で、「過眠」、つまり寝過ぎてしまう、一日中眠い状態が続くという形で症状が現れることも少なくありません。では、具体的にどのようなメカニズムが関わっているのでしょうか。

脳機能と神経伝達物質のアンバランス

うつ病は、脳内の神経伝達物質、特にセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンといった物質の働きに異常が生じることが原因の一つと考えられています。これらの神経伝達物質は、気分の調節だけでなく、意欲、関心、そして睡眠や覚醒といった生体リズムの調整にも深く関わっています。

健常な状態では、これらの神経伝達物質がバランス良く働くことで、日中は覚醒して活動し、夜間には自然な眠りにつくというサイクルが保たれています。しかし、うつ病によってこれらの物質のバランスが崩れると、覚醒状態を維持するための機能が低下したり、逆に睡眠を促すメカニズムが必要以上に働いたりすることがあります。

例えば、セロトニンは気分の安定に関わるだけでなく、体内時計の調整や睡眠の深さにも影響を与えます。ノルアドレナリンは意欲や覚醒に関わります。これらの物質の機能が低下すると、脳は十分な覚醒状態を保つことが難しくなり、一日中眠気を感じやすくなる可能性があります。また、脳の視床下部にある睡眠・覚醒を司る中枢の機能自体が、うつ病によって影響を受けることも指摘されています。結果として、本来休息が必要な時間帯だけでなく、活動すべき日中においても強い眠気や倦怠感を感じ、寝て過ごす時間が増えてしまうのです。

心身の過労に対する防衛反応

うつ病は、私たちの心と体に極度のストレスがかかり続けた結果として発症することがあります。慢性的なストレスや心身の過労は、エネルギーを著しく消耗させます。脳や体がこの過剰な負荷から身を守ろうとする防衛反応として、休息を強く求めるようになることがあります。

一日中眠い、ずっと寝てしまうというのは、体が「これ以上活動すると危険だ」と判断し、休息をとることで回復を図ろうとしているサインとも解釈できます。極度の疲労感や倦怠感はうつ病の主要な症状の一つであり、この疲労感が強い眠気として現れると考えられます。エネルギーが枯渇した状態では、脳も体も十分なパフォーマンスを発揮できず、覚醒状態を維持するだけでも多大なエネルギーを必要とします。そのため、効率的にエネルギーを温存するために、睡眠時間が長くなったり、日中に強い眠気を感じたりするようになるのです。これは、体が悲鳴を上げている状態であり、無理に活動しようとすると、さらに心身の状態を悪化させてしまう可能性もあります。

精神的なストレスとの関連

うつ病の発症には、精神的なストレスが深く関わっています。人間関係の悩み、仕事上のプレッシャー、喪失体験、環境の変化など、様々なストレス要因が積み重なることで、心の健康が損なわれ、うつ病へと繋がることがあります。

精神的なストレスは、自律神経のバランスを乱し、心身に様々な不調を引き起こします。特に、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が慢性的に高まることは、脳の機能に影響を与え、睡眠パターンを乱すことが知られています。ストレスによる心理的な負担は、脳を常に緊張状態に置くことになり、これが疲弊を招き、結果として強い眠気や倦怠感につながる可能性があります。

また、うつ病に伴う精神的な苦痛(抑うつ気分、不安、絶望感など)から逃れるために、無意識のうちに睡眠に逃避しようとする心理が働くこともあります。起きている間はつらい感情や思考に囚われてしまうため、眠っている間だけが唯一苦痛から解放される時間だと感じ、長時間寝て過ごすようになるのです。このように、精神的なストレスは直接的に脳機能に影響を与えるだけでなく、心理的な側面からも過眠を引き起こす要因となり得ます。

「寝ても寝ても眠い」「ずっと寝てしまう」はうつ病の過眠症状かも

「しっかり寝たはずなのに、なぜか一日中眠い」「週末はほとんど寝て過ごしてしまう」「アラームを何度も止めて、結局お昼過ぎまで寝ている」といった経験はありませんか?このような状態は、単なる寝不足や気の緩みではなく、うつ病の「過眠(かみん)」という症状である可能性があります。

うつ病における過眠の定義と状態

うつ病における過眠は、一般的な定義として、必要な睡眠時間(個人差はありますが通常7~9時間程度)を十分に取っているにも関わらず、日中に強い眠気を感じたり、実際に長時間眠ってしまったりする状態を指します。特に、うつ病の診断基準の一つであるDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では、主要な症状の一つとして睡眠の異常(不眠または過眠)が挙げられており、そのサブタイプとして過眠を伴ううつ病(非定型うつ病などで見られることが多い)が区別されることもあります。

過眠とうつ病の関連性は、不眠ほど広く認識されていませんが、非定型うつ病の患者さんでは、抑うつ気分、体重増加または食欲増加、手足が鉛のように重く感じる感覚(鉛様麻痺)、そして過眠といった特徴的な症状が現れることがあります。これらの症状は、一般的なうつ病のイメージとは異なるため、うつ病であることに気づきにくい場合もあります。

過眠の状態は、人によって様々ですが、具体的には以下のような形で現れることがあります。

  • 夜間に十分な睡眠時間を確保しても、朝起きるのが非常に困難で、何度も二度寝してしまう。
  • 日中に強い眠気に襲われ、仕事中や授業中、会議中など、本来覚醒しているべき時間帯にうとうとしてしまう、居眠りをしてしまう。
  • 一度眠り始めると、なかなか目が覚めず、10時間、12時間、あるいはそれ以上の長時間眠ってしまう。
  • 週末や休日になると、平日の寝不足を取り戻すかのように、ほとんど一日中寝て過ごしてしまう。
  • 仮眠を取っても、眠気が解消されず、かえって体がだるく感じられることがある。
  • 起床後も頭がぼーっとして、覚醒するのに時間がかかる。

このような過眠の状態が、単なる一時的なものではなく、かなりの期間(例えば2週間以上)にわたってほぼ毎日続いている場合、うつ病の過眠症状である可能性を考慮する必要があります。

長時間睡眠が続くことのサイン

長時間睡眠が続くことが、うつ病による過眠のサインであるかどうかを見分けるには、いくつかのポイントがあります。単に睡眠時間が長いだけでなく、その背景にある心身の状態や、睡眠の質、日中の活動への影響などを総合的に考慮することが重要です。

例えば、以下のような兆候が見られる場合、うつ病による過眠の可能性が考えられます。

  • 睡眠時間の増加: 普段より明らかに睡眠時間が長くなり、10時間以上寝ることが日常的になっている。
  • 起床困難: 目覚まし時計をセットしても起きられず、家族に起こしてもらわないと起きられない、起きられても強い倦怠感と眠気で動けない。
  • 日中の眠気: 朝、昼、午後といった時間帯に関わらず、一日を通して強い眠気を感じる。活動中にも眠気に襲われ、集中できない。
  • 睡眠への逃避: つらい気持ちから逃れるために、意識的に睡眠時間を長くしようとしている。眠っている間だけが安心できる時間だと感じている。
  • 睡眠の質の低下: 長時間眠っても、目覚めがスッキリせず、休息感がない。疲労感が取れない。
  • 他のうつ病症状の併発: 強い気分の落ち込み、興味・関心の喪失、食欲の変化(増加または減少)、体重の変化、疲労感、集中力・思考力の低下、自分を責める気持ち、将来への絶望感など、他のうつ病の症状も同時に現れている。

特に重要なのは、これらの睡眠の異常が、気分の落ち込みや興味・関心の喪失といったうつ病の中核症状と同時に現れているかどうかです。長時間睡眠が続くだけでなく、それに伴って他の精神的な症状や身体的な症状も現れている場合は、うつ病の可能性が高まります。

ただし、長時間睡眠の原因はうつ病だけではありません。睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、概日リズム睡眠障害といった睡眠障害、甲状腺機能低下症などの身体疾患、薬剤の副作用、生活習慣の乱れなども過眠の原因となり得ます。そのため、自己判断せずに専門医の診断を受けることが重要です。

過眠が日常生活に与える影響

うつ病による過眠は、本人の意思とは関係なく現れる深刻な症状であり、日常生活のあらゆる側面に大きな影響を与えます。単に「寝すぎている」と片付けられる問題ではなく、放置すると社会生活や人間関係に深刻なダメージを与える可能性があります。

具体的に、過眠は以下のような影響をもたらします。

  • 学業や仕事への影響: 朝起きられない、日中の強い眠気によって、学校や会社に遅刻したり、欠席したりすることが増えます。授業中や勤務中に集中できず、ミスが増えたり、パフォーマンスが低下したりします。重要な会議中に居眠りをしてしまい、評価が下がることもあります。結果として、休職や退学に追い込まれるケースも少なくありません。
  • 家事や育児への影響: 日中の眠気や倦怠感によって、家事をこなすことが難しくなります。食事の準備、掃除、洗濯といった日常的な活動ができなくなり、生活環境が悪化します。育児中の場合は、子供の世話がおろそかになってしまうこともあり、自分を責める気持ちが強まる可能性があります。
  • 人間関係への影響: 約束の時間に遅刻したり、ドタキャンしたりすることが増え、友人や家族からの信頼を失うことがあります。日中に眠気や倦怠感が強いために、外出する気力がなくなり、社会的な交流が減退します。家に引きこもりがちになり、孤立感が深まることもあります。
  • 安全面でのリスク: 日中の強い眠気は、注意力や判断力を著しく低下させます。自動車の運転中や、危険を伴う作業中に眠気に襲われると、重大な事故につながる危険性があります。

このように、うつ病による過眠は、単に「たくさん寝ている」という状態ではなく、本人の意思ではコントロールできない強い眠気によって、社会生活、家庭生活、そして自身の安全にまで深刻な影響を与える症状なのです。これらの影響が続いている場合は、単なる生活習慣の乱れと決めつけず、専門家への相談を検討することが非常に重要です。

うつ病による眠気や過眠への具体的な対処法

うつ病による眠気や過眠はつらい症状ですが、適切な対処を行うことで改善が期待できます。ここでは、ご自宅で試せるセルフケアの方法と、専門家による診断・治療について詳しく解説します。

自宅で試せるセルフケア

うつ病による過眠の症状がある場合、ご自身の力だけで完全に改善させることは難しいかもしれませんが、日々の生活の中でできる工夫もあります。ただし、これらのセルフケアはあくまで補助的なものであり、症状が重い場合や改善が見られない場合は、必ず専門医の指示に従うことが重要です。

短時間の仮眠を取り入れる工夫

日中の強い眠気に耐えられない場合、無理に我慢せず、短時間の仮眠を取り入れることが有効な場合があります。長時間の昼寝は夜間の睡眠を妨げたり、かえってだるさを増したりすることがあるため、短く質の良い仮眠を心がけましょう。

  • 時間: 20分程度の仮眠が理想的です。これにより、深い睡眠に入りすぎるのを防ぎ、目覚めをスムーズにすることができます。アラームをセットして、寝過ごさないように注意しましょう。
  • 時間帯: 午後の早い時間帯(例えば午後1時~3時頃)に取るのが良いでしょう。夕方以降の仮眠は、夜の睡眠に影響を与えやすいため避けるのが無難です。
  • 場所: 静かで落ち着ける場所を選びましょう。可能であれば、横になれる場所でリラックスした姿勢で仮眠をとります。
  • コツ: 仮眠前に少量のカフェインを摂取しておくと、20分後に効果が現れ始めてスッキリと目覚めやすくなるという方法もありますが、カフェインの影響を受けやすい方は注意が必要です。

ただし、仮眠を取り入れても眠気が改善されない場合や、仮眠時間が長時間になってしまう場合は、うつ病の症状が重い可能性も考えられます。その場合は、無理にセルフケアだけで乗り切ろうとせず、専門家への相談を検討しましょう。

カフェインやアルコールの影響を考慮する

カフェインは一時的に眠気を軽減する効果がありますが、過剰な摂取はかえって睡眠の質を低下させたり、不安を増強させたりすることがあります。また、夕方以降のカフェイン摂取は夜間の睡眠を妨げる可能性があります。うつ病による過眠がある場合でも、夜はぐっすり眠るための環境を整えることが重要です。カフェインを摂取する場合は、その量と時間帯に注意し、自身の体への影響を見ながら調整しましょう。

アルコールは、一時的に眠気を誘うように感じることがありますが、睡眠の質を著しく低下させます。アルコールを摂取して眠ると、途中で目が覚めやすくなったり、浅い睡眠が増えたりします。また、うつ病の症状を悪化させる可能性も指摘されています。うつ病の治療中は、可能な限りアルコールの摂取を控えることが推奨されます。過眠対策としてアルコールに頼ることは絶対に避けましょう。

規則正しい生活リズムの重要性

うつ病による過眠がある場合でも、できる限り規則正しい生活リズムを保つことが、体内時計を整え、睡眠パターンを改善するために非常に重要です。

  • 就寝・起床時間の固定: 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように心がけましょう。特に、休日も平日と同じ時間に起きることが理想的です。最初はつらいかもしれませんが、少しずつでも習慣化することで、体内時計が整いやすくなります。
  • 朝の日光浴: 起きたらすぐにカーテンを開けて、太陽の光を浴びましょう。太陽光は体内時計をリセットし、覚醒を促す効果があります。可能であれば、軽く散歩するなどして、体を動かすことも効果的です。
  • 日中の適度な活動: 日中に体を動かすことは、夜の睡眠の質を高める上で有効です。ただし、うつ病の症状が重い場合は無理は禁物です。体調に合わせて、散歩や軽いストレッチなど、できる範囲で体を動かしましょう。
  • 寝る前のリラックス: 就寝前には、心身をリラックスさせる時間を持ちましょう。ぬるめのお風呂に入る、軽い読書をする、ストレッチや軽い瞑想を行うなどが効果的です。スマートフォンやパソコンなどのブルーライトは脳を覚醒させてしまうため、寝る1時間前からは使用を控えるのが望ましいです。

これらのセルフケアは、うつ病の基本的な治療(休養、薬物療法、精神療法など)と並行して行うことで、より効果が期待できます。ただし、無理なく、できることから少しずつ取り入れていくことが大切です。

専門家への相談を検討すべきケース

一日中眠い状態が続く原因がうつ病である可能性を考える場合、どのような状況になったら専門家に相談すべきでしょうか。自己判断せずに、早めに医療機関を受診することが、適切な診断と治療を受けるために非常に重要です。

以下のようなサインが見られる場合は、専門家(精神科医や心療内科医など)への相談を強く検討しましょう。

  • 眠気や過眠が2週間以上続いている: 一時的な寝不足や体調不良による眠気ではなく、継続的に一日中眠い状態が続いている。
  • 日常生活に支障が出ている: 眠気や過眠によって、仕事や学業に遅刻・欠席が増えたり、パフォーマンスが著しく低下したりしている。家事や育児が困難になっている。友人や家族との交流が減っている。
  • 他のうつ病症状がある: 眠気や過眠に加えて、気分の落ち込み、興味・関心の喪失、食欲や体重の変化、強い疲労感、集中力や思考力の低下、自分を責める気持ち、死にたい気持ちなどが同時に現れている。
  • セルフケアを試しても改善が見られない: 規則正しい生活を心がけたり、短時間の仮眠を取り入れたりしても、眠気や過眠が改善しない。
  • 過去に精神疾患の既往がある: うつ病や他の精神疾患の治療を受けた経験がある。
  • 自己診断に不安を感じる: 自分の状態がうつ病なのか、それとも他の原因によるものなのか判断がつかず、不安を感じている。

これらのサインは、うつ病だけでなく、他の睡眠障害や身体疾患の可能性も示唆しています。専門医に相談することで、正確な診断を受け、その原因に応じた適切な治療を受けることができます。早期に相談することで、症状の悪化を防ぎ、回復への道のりをスムーズに進めることが期待できます。

精神科や心療内科での診断と治療

うつ病による眠気や過眠が疑われる場合、精神科や心療内科を受診することになります。専門医は、患者さんの状態を詳しく診察し、適切な診断を行います。

診断プロセス

精神科や心療内科での診断は、主に以下のようなステップで行われます。

  • 問診: 患者さん本人から、現在の症状(気分の状態、睡眠、食欲、意欲、集中力、体の不調など)、症状が現れ始めた時期、症状の経過、過去の病歴(身体疾患、精神疾患)、服用中の薬、生活環境、ストレスの状況などについて詳しく話を聞きます。家族からの情報が診断の助けになることもあります。
  • 心理検査: 必要に応じて、うつ病の重症度を測るための心理検査(例えば、ハミルトンうつ病評価尺度、ベックうつ病尺度など)や、性格傾向を把握するための検査などが行われることがあります。
  • 身体検査・血液検査: 身体疾患が原因で眠気や過眠が現れている可能性を除外するために、身体診察や血液検査が行われることがあります。例えば、甲状腺機能の異常や貧血などが眠気の原因となることがあります。睡眠障害専門医と連携して、睡眠ポリグラフ検査などの専門的な検査を行うこともあります。
  • 診断基準に基づいた評価: 問診や検査の結果をもとに、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)などの診断基準に照らし合わせて、うつ病であるかどうかが診断されます。過眠が主要な症状である場合は、「過眠を伴ううつ病」として診断されることもあります。

うつ病の診断は、問診が最も重要であり、患者さんの訴えや状態を総合的に判断して行われます。正直に、ご自身の状態を詳しく医師に伝えることが、正確な診断につながります。

薬物療法や精神療法の役割

うつ病と診断された場合、症状の重症度や患者さんの状態に合わせて、薬物療法、精神療法、そして適切な休養を組み合わせた治療が行われます。

薬物療法:
うつ病の治療薬として最も一般的に用いられるのは、抗うつ薬です。抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)のバランスを調整し、気分の落ち込みや意欲の低下といったうつ病の症状を改善する効果が期待できます。過眠に対しても、原因となっているうつ病そのものが改善することで、自然な睡眠パターンを取り戻す効果が期待できます。

抗うつ薬には様々な種類があり、効果が現れるまでには通常2週間~数週間かかります。また、効果や副作用には個人差があるため、医師は患者さんの症状や体質に合わせて適切な薬を選択し、用量を調整していきます。眠気や過眠に対しては、日中の眠気を軽減する作用のある抗うつ薬や、逆に夜間の睡眠の質を改善することで結果的に日中の眠気を減らす薬などが検討されることもあります。

必要に応じて、睡眠薬が補助的に処方されることもありますが、これは主に不眠がひどい場合や、一時的に症状を抑えるために用いられることが多く、過眠そのものに対しては慎重な使用が求められます。医師の指示なしに自己判断で薬の種類や量を変更したり、服用を中止したりすることは、症状の悪化や離脱症状を招く可能性があるため、絶対に避けてください。

精神療法:
精神療法は、薬物療法と並行して行われることの多い重要な治療法です。特に、認知行動療法(CBT)や対人関係療法などが、うつ病の治療に有効であることが知られています。

  • 認知行動療法(CBT): 自分の考え方(認知)や行動のパターンに焦点を当て、うつ病を維持している悪循環を断ち切ることを目指します。例えば、「どうせ自分は何をやってもダメだ」といった否定的な考え方が、行動の制限(引きこもりなど)につながり、それがさらに気分を落ち込ませる、といった悪循環を改善していきます。睡眠問題に対しても、CBT-I(不眠に対する認知行動療法)の考え方を応用し、睡眠に関する誤った信念や行動パターンを修正することで、睡眠の質を改善し、結果として日中の眠気を軽減するアプローチが取られることもあります。
  • 対人関係療法: 患者さんの対人関係の問題に焦点を当て、人間関係のストレスを軽減し、関係性を改善することで、うつ病の症状を和らげることを目指します。

精神療法は、カウンセラーや臨床心理士などの専門家によって行われます。症状が改善した後も、再発予防のために継続されることがあります。

適切な休養の確保

うつ病は、心身のエネルギーが著しく枯渇した状態です。回復のためには、何よりも「休養」が不可欠です。特に、過眠という症状は、体が休息を強く求めているサインでもあります。

  • 物理的な休養: 仕事や学校、家事、育児といった日常的な活動から一時的に離れ、心身を休ませることが重要です。休職や休学、家族や周囲のサポートを得ることで、負担を軽減できる場合があります。
  • 精神的な休養: ストレスの原因から距離を置き、心穏やかに過ごせる環境を整えましょう。義務感にとらわれず、自分が心地よいと感じる時間を大切にします。

休養期間中であっても、過眠がひどい場合は、一日中寝て過ごすのではなく、日中にある程度の活動(散歩や軽いストレッチなど)を取り入れ、夜間にまとまった睡眠を取れるように、医師や専門家と相談しながら生活リズムを調整していくことが大切です。適切な休養は、脳の回復を促し、治療の効果を高める上で不可欠な要素です。

治療の期間は、症状の重症度や個人差によって異なりますが、一般的には数ヶ月から1年以上かかることもあります。焦らず、医師と相談しながら、一つずつ治療ステップを進めていくことが大切です。

一日中眠い状態が続くなら自己判断せず専門家に相談を

一日中眠い状態が続くことは、つらく、日常生活にも様々な影響を及ぼします。その原因がうつ病である可能性も十分に考えられますが、自己判断でうつ病だと決めつけたり、逆に気のせだと放置したりすることは、どちらも危険です。

なぜ自己判断が危険なのか?

  • 原因の特定ができない: 眠気の原因は、うつ病以外にも、睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシーなど)、身体疾患(甲状腺機能低下症、貧血、糖尿病など)、薬剤の副作用、生活習慣の乱れなど、多岐にわたります。原因が異なれば、必要な対処法や治療法も全く変わってきます。自己判断では、正確な原因を特定することはできません。
  • 適切な治療の遅れ: もし原因がうつ病である場合、早期に適切な治療を開始することが、症状の改善や回復のスピードに大きく影響します。放置したり、誤った自己流の対処を続けたりすると、症状が悪化し、回復に時間がかかる可能性があります。
  • 他の深刻な疾患の見落とし: 眠気の背景に、うつ病だけでなく、治療が必要な他の睡眠障害や身体疾患が隠れていることもあります。専門医の診察を受けなければ、これらの疾患を見落としてしまう危険性があります。

したがって、「一日中眠い状態が続くくな」「もしかしてうつ病かもしれない」と感じたら、まずは専門家である精神科医や心療内科医に相談することが、最も安全で確実な第一歩です。

専門医は、あなたの症状や状態を詳しく評価し、正確な診断を下し、その診断に基づいた最も効果的な治療法を提案してくれます。過眠の背景にうつ病がある場合は、抗うつ薬による治療や精神療法、適切な休養指導などが行われるでしょう。もし、過眠の原因がうつ病以外の睡眠障害や身体疾患である場合は、その疾患に応じた専門的な治療へと繋げてもらえます。

「受診するのは敷居が高い」「誰かに知られたくない」といった気持ちもあるかもしれませんが、症状が長引けば長引くほど、心身の負担は大きくなり、回復にも時間がかかる傾向があります。勇気を出して一歩を踏み出すことが、つらい状態から抜け出すための重要な鍵となります。

この記事で解説したセルフケアは、専門的な治療と並行して行うことで効果が期待できますが、あくまで補助的なものです。過眠の症状に悩んでいる場合は、まずは医療機関に相談し、専門医の指示のもとで適切な対処を進めていくようにしてください。あなたの心と体の健康を取り戻すために、必要なサポートを受けることをためらわないでください。


免責事項

この記事は、うつ病と過眠に関する一般的な情報提供を目的としています。医学的なアドバイスや診断、治療の推奨を行うものではありません。個々の症状や健康状態については、必ず医療機関で専門医の診察を受け、適切なアドバイスや治療を受けてください。記事に掲載されている情報に基づいて行った行動によって生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

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