「もしかして、私(またはあの人)は発達障害かもしれない」と感じる大人が増えています。
子どもの頃には気づかれにくかった特性が、社会に出てからの人間関係や仕事で壁にぶつかることで顕在化することがあります。
この記事では、「発達障害 大人 特徴」に焦点を当て、代表的な種類であるASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)を中心に、その特徴や大人になってからの困りごと、セルフチェックのポイント、診断方法、そして特性との付き合い方や相談先について詳しく解説します。
ご自身や周囲の方の特性への理解を深め、より自分らしく生きるためのヒントを見つけてください。
発達障害は、生まれつきの脳機能の発達の偏りによって生じる様々な特性の総称です。
特性の現れ方や程度は人それぞれ異なり、その方が置かれている環境やライフステージによっても目立ち方が変わります。
かつては主に子どもの問題と捉えられがちでしたが、近年は大人になってから自身の特性に気づき、診断を受ける方が増えています。
これは、社会生活や複雑な人間関係の中で、子ども時代には家庭や学校のサポートによってある程度乗り越えられていた困難さが、大人になってから顕著になるためと考えられます。
発達障害にはいくつかの種類がありますが、大人の発達障害としてよく知られている主な種類は以下の通りです。
- ASD(自閉スペクトラム症): コミュニケーションや対人関係の困難、限定された興味やこだわり行動などを特徴とします。
- ADHD(注意欠如・多動症): 不注意、多動性、衝動性といった特性を特徴とします。
これらの特性は単独で現れることもあれば、重複して見られることもあります。
また、診断名がつかない場合でも、特性によって日常生活や社会生活で困難を抱えている状態を「グレーゾーン」と呼ぶこともあります。
発達障害の特性は病気のように治るものではありませんが、自身の特性を理解し、適切な対策や支援を受けることで、生活上の困難を軽減し、より生きやすくなることが期待できます。
発達障害の種類別の特徴【ASD・ADHD】
発達障害の特性は、一人ひとり異なる「スペクトラム(連続体)」として捉えられます。
ここでは、代表的なASDとADHDについて、大人の特性に焦点を当てて詳しく見ていきましょう。
ASD(自閉スペクトラム症)の主な特徴
ASD(自閉スペクトラム症)は、以前は自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害などと呼ばれていましたが、現在はこれらをまとめてASDという診断名で捉えることが一般的です。
ASDの主な特徴は、「コミュニケーションおよび対人関係の困難さ」と「限定された興味やこだわり行動」です。
感覚の特性や話し方の特徴が見られることもあります。
コミュニケーション・対人関係の特性
ASDのある方は、言葉の裏にある意図や、相手の気持ち、場の空気を察するのが苦手な傾向があります。
これは、言葉を文字通りに受け取ったり、非言語的な情報(表情、声のトーン、身振り手振りなど)を読み取ることが難しいためです。
具体的な例としては、以下のような困りごとが挙げられます。
- 言葉を額面通りに受け取る: 冗談や皮肉、比喩表現を理解できず、真に受けてしまうことがあります。「冗談だよ」と言われても、なぜそれが冗談なのか理解に苦しむことも。
- 行間を読むのが苦手: 曖昧な指示や遠回しな言い方が理解できず、どうすればいいのか分からなくなることがあります。「適当にやっておいて」と言われても、「適当」の基準が分からずフリーズしてしまうなど。
- 相手の気持ちや場の空気を察しにくい: 相手が怒っている、悲しんでいるといった感情を読み取ることが難しく、TPOにそぐわない言動をしてしまうことがあります。会議中に場違いな発言をしてしまったり、相手が忙しいのに長話をしてしまったりなど。
- 適切な距離感が掴みにくい: 初対面の人にも馴れ馴れしく話しかけてしまったり、逆に親しい間柄でもよそよそしく接してしまったりと、人との距離感を調整するのが難しい場合があります。
- 自分の興味のあることばかり話す: 自分が関心を持っている話題になると一方的に話し続けてしまい、相手が退屈していることに気づかないことがあります。
- アイコンタクトが苦手: 相手の目を見て話すのが苦手で、不自然な視線になってしまうことがあります。
これらの特性は、職場や友人関係、恋愛など、様々な対人関係において誤解やトラブルに繋がることがあります。
限定的な興味やこだわり行動
ASDのある方は、特定の対象や活動に強い興味を持ち、それに没頭する傾向があります。
また、特定のルーティンや手順にこだわり、変化を嫌う傾向も見られます。
具体的な例としては、以下のような特性が挙げられます。
- 特定の分野への強い興味: 鉄道、特定の歴史、ある特定のキャラクターなど、狭く限定された分野に異常なほど詳しいことがあります。その知識を人に披露することを楽しむ一方、相手がその話題に興味がないことには気づきにくいことも。
- ルーティンや手順へのこだわり: 毎日同じ時間に同じ電車に乗る、物事を常に決まった手順で行うなど、自分の決めたルールやルーティンを崩されると強い不安を感じたり、混乱したりします。
- 変化への抵抗: 予定の変更や環境の変化に弱く、適応するのに時間がかかります。急な出張や部署移動などでパニックになってしまうことも。
- 白黒思考: 物事を「良いか悪いか」「正しいか間違いか」といった二極端で捉えやすく、曖昧な状況や多様な意見を受け入れるのが難しいことがあります。
- 収集癖: 特定の物を集めることに強いこだわりを持ち、それを整理したり眺めたりすることに時間を費やします。
これらのこだわりは、ときに専門的な知識や技術の習得に繋がり、仕事などで強みになることもありますが、度が過ぎると日常生活に支障をきたしたり、周囲から理解されにくかったりすることもあります。
感覚の過敏さ・鈍感さ
ASDのある方の中には、特定の感覚刺激に対して過敏であったり、逆に鈍感であったりする特性を持つ方がいます。
これは「感覚処理の問題」と呼ばれ、ASDの二次的な特徴として見られることがあります。
- 過敏さ:
- 特定の音(時計の秒針の音、工事の音など)が耐えられないほど大きく聞こえる。
- fluorescent lampの光や特定の色彩が眩しく、視覚的に疲れる。
- 特定の匂い(柔軟剤、香水、食べ物など)が強く不快に感じる。
- 服のタグや特定の素材の肌触りが気になって落ち着かない。
- 食べ物の食感(ドロドロ、パリパリなど)に強いこだわりがあり、食べられるものが限られる。
- 鈍感さ:
- 痛みや温度に気づきにくい(怪我をしているのに気づかない、暑さ・寒さに鈍感)。
- 空腹や満腹に気づきにくい。
- 特定の刺激を求める(大きな音で音楽を聞く、体を強く締め付ける服を着るなど)。
これらの感覚特性は、特定の場所(人混み、騒がしい場所など)や状況(新しい服を着る、初めての場所で食事をするなど)を避ける原因となり、生活範囲を狭めてしまうことがあります。
喋り方の特徴
ASDのある方の中には、話し方に独特の特徴が見られることがあります。
これは、コミュニケーションの特性とも関連しています。
- 単調な話し方: 抑揚がなく、感情がこもっていないように聞こえることがあります。
- 一方的に話し続ける: 相手の反応を見ずに、自分のペースで話し続けてしまうことがあります。
- オウム返し: 相手の言った言葉やフレーズを繰り返すことがあります。
- 独特の言葉遣い: 専門用語を多用したり、普段あまり使われないような難しい言葉を選んだりすることがあります。
これらの話し方の特徴は、悪気があるわけではありませんが、コミュニケーションがぎこちなく感じられたり、相手に不快感を与えてしまったりする原因となることがあります。
ADHD(注意欠如・多動症)の主な特徴
ADHD(注意欠如・多動症)は、「不注意」「多動性」「衝動性」といった特性を主な特徴とします。
これらの特性の現れ方によって、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型、混合型に分類されることがあります。
大人のADHDの場合、子どもの頃に目立った多動性が落ち着き、不注意や衝動性が中心となることが多い傾向があります。
不注意の特性(仕事のミス、忘れ物など)
不注意の特性は、集中力の維持や注意の切り替え、物事の段取りや管理といった面で困難を引き起こします。
これは、脳内で情報を整理したり、注意をコントロールしたりする機能に関連があると考えられています。
具体的な例としては、以下のような困りごとが挙げられます。
- 集中力が続かない: 興味のない話や作業になると、すぐに気が散ってしまい、集中を維持するのが難しいです。会議中や授業中に上の空になってしまったり、簡単な書類作成でも時間がかかったりします。
- 気が散りやすい: 周囲の音や動き、自分の頭の中で次々に浮かぶ考えなど、様々な刺激に注意が奪われやすく、目の前のことに集中できません。
- 忘れ物が多い、約束を忘れる: 必要な持ち物を忘れたり、重要な約束や期日を忘れたりすることが頻繁にあります。家の鍵や財布、携帯電話など、日常的に使うものを紛失しやすい傾向も。
- 期日管理が苦手: 締め切りがある作業や複数のタスクを抱えた際に、計画的に進めるのが難しく、期限ギリギリになったり間に合わなかったりします。
- 片付けや整理整頓が苦手: 自分の周りの物を整理したり、必要な書類を探したりするのが苦手で、デスク周りや部屋が散らかっていることが多いです。必要なものがすぐに見つからず困ることも。
- 細かいミスが多い: 書類作成での誤字脱字、計算ミスなど、不注意によるうっかりミスを繰り返しやすいです。
- 作業を最後までやり遂げられない: 一つの作業に取り掛かっても、途中で飽きて別のことに手を出したり、気が散ったりして、なかなか完了できません。
- 指示を最後まで聞けない: 人からの指示や説明を最後まで集中して聞くことが難しく、途中で分かったつもりになったり、次の行動に移ってしまったりして、指示通りにできなかったり誤解したりします。
これらの不注意の特性は、仕事での評価に繋がりにくかったり、日常生活で多くの手間やトラブルを生じさせたりするため、自己肯定感が低下する原因となることがあります。
多動性・衝動性の特性
多動性は、じっとしていられない、落ち着きがないといった身体的な動きとして現れることもあれば、大人では「内的多動感」として、頭の中が常に思考でいっぱいだったり、落ち着かない感じがあったりする形で現れることもあります。
衝動性は、深く考えずに行動してしまう、感情や欲求を抑えきれないといった特性です。
具体的な例としては、以下のような困りごとが挙げられます。
- じっとしていられない、そわそわする: 会議中や長時間座っている必要がある場面で、貧乏ゆすりをしたり、席を立ったり、目的もなく動き回ったりすることがあります。
- 話に割り込む、待てない: 人が話している途中で口を挟んでしまったり、会話の順番を待てなかったりします。行列に並ぶのが苦痛に感じたり、信号待ちが耐えられなかったりすることも。
- 衝動的な行動: 計画性なく衝動買いをしてしまったり、感情的にカッとなって暴言を吐いたり、衝動的に退職を決めてしまったりと、後先考えずに行動してしまいがちです。
- 危険を顧みない行動: スリルを求めたり、リスクを軽視したりして、危険な行動に走りやすい傾向があります。
- 依存症のリスク: 衝動性をコントロールできないことから、アルコール、ギャンブル、買い物、ゲームなど、特定の行為や物質に依存しやすいリスクがあります。
- 感情のコントロールが苦手: 些細なことで怒りを感じたり、イライラしたりと、感情の起伏が激しいことがあります。
これらの特性は、人間関係のトラブル、金銭的な問題、法的な問題などに繋がりやすく、社会生活において大きな困難となることがあります。
ただし、多動性や衝動性は、活発さや行動力、新しいことに挑戦する意欲といったポジティブな側面として現れることもあります。
大人になってから発達障害に気づく背景
発達障害は生まれつきのものですが、なぜ大人になってから自身の特性に気づく人が多いのでしょうか。
そこには、子ども時代とは異なる大人の困りごとや、社会生活での要求の変化が大きく関係しています。
子ども時代と異なる大人の困りごと
子ども時代は、親や教師といった周囲のサポートや、比較的構造化された環境(時間割、クラス、保護者の見守りなど)の中で過ごすことが多いため、特性による困難が目立ちにくいことがあります。
宿題の管理を親が手伝ってくれたり、クラスメイトとの関係で多少ぎこちなさがあっても大きな問題にならない、といった場合です。
しかし、大人になると、自己管理の必要性が増し、人間関係や社会の仕組みが複雑になります。
自分でスケジュールを立て、複数のタスクを同時に管理し、複雑な人間関係の中で適切なコミュニケーションを取ることが求められます。
このような状況で、発達障害の特性が顕著になり、様々な困りごととして現れることがあります。
例えば、子ども時代には「忘れん坊」「落ち着きがない子」で済まされていた特性が、大人になると「仕事でミスが多い」「納期を守れない」「人間関係でトラブルばかり起こす」といった、社会生活に支障をきたす問題となるのです。
仕事や社会生活での困難
大人になってから発達障害に気づく最も大きなきっかけの一つが、仕事や社会生活での困難です。
以下のような経験を繰り返す中で、「自分は何か他の人と違うのではないか」「どうしてこんなにうまくいかないのだろう」と悩み、専門機関への相談に繋がることがあります。
- 仕事で指示通りにできない、ミスが多い: 指示を理解できなかったり、集中力が続かなかったりして、期待通りの成果を出せない。
- 納期を守れない、締め切りに間に合わない: 計画性や時間管理が苦手で、タスクを期日までに完了できない。
- 報連相がうまくできない: 状況報告を忘れたり、適切なタイミングで相談できなかったりして、チームワークを乱してしまう。
- 職場の人間関係がうまくいかない: 同僚とのコミュニケーションで誤解が生じたり、場の空気を読めずに孤立したりする。
- 転職を繰り返す: 一つの職場で長く続けることが難しく、短期間で転職を繰り返してしまう。
- 金銭管理が苦手で借金を抱える: 衝動買いや計画性のなさから、お金の管理に困窮する。
- 日常生活全般がうまく回らない: 家事や手続きなどが苦手で、生活が荒れてしまう。
これらの困難は、本人の努力不足や怠慢だと見なされがちですが、実は発達障害の特性によるものである可能性があります。
しかし、本人も周囲もそのことに気づかず、「自分はダメな人間だ」と自己否定感を抱き、うつ病などの二次障害に繋がることも少なくありません。
いわゆる「グレーゾーン」の特徴
「グレーゾーン」とは、発達障害の診断基準を完全に満たすほどではないが、発達障害の特性が一部見られ、日常生活や社会生活で困難を抱えている状態を指す俗称です。
医学的な正式名称ではありません。
グレーゾーンの方々は、診断名がつかないために、行政の支援や障害者雇用などの対象となりにくい場合があります。
しかし、特性による困難は存在するため、生きづらさを感じている方が多くいます。
グレーゾーンの特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- 診断基準を全て満たすわけではないが、ASDやADHDの一部特性が見られる。
- 特定の状況や特定の相手との関係でのみ、特性による困難が顕著になる。
- 高い知能や他の得意なことで、特性による困難を補っている(カモフラージュできている)場合がある。
- 子ども時代は目立たなかったが、大人の社会に出てから困難が増した。
- 医療機関を受診しても「診断基準は満たさないが、傾向はある」と言われることがある。
グレーゾーンの方でも、自身の特性を理解し、適切な工夫やサポートを得ることで、生活の質を向上させることが可能です。
診断の有無に関わらず、困りごとを抱えている場合は専門機関に相談することが大切です。
発達障害の男性と女性での特徴の違い
発達障害の特性は、男性と女性で現れ方や気づかれやすさが異なる傾向があります。
一般的に、女性は男性に比べて診断されにくい傾向があると言われています。
- 男性の特徴:
- ADHDの場合、多動性や衝動性が目立ちやすく、子ども時代から「落ち着きがない」「乱暴」などと気づかれやすい傾向があります。
- ASDの場合、こだわりや一方的なコミュニケーションが比較的目立ちやすいことがあります。
- 特性が外に向かって現れることが多く、周囲からも指摘されやすいため、比較的早期に問題として認識されやすい可能性があります。
- 女性の特徴:
- 女性は、ASD、ADHDいずれの場合も、特性を隠したり、周囲に合わせて振る舞ったりする「カモフラージュ(擬態)」が得意な人が多いと言われています。
- ASDの場合、対人関係の困難を補うために、マニュアル化されたコミュニケーションを学んだり、特定の相手に依存したりする傾向が見られることがあります。
- ADHDの場合、多動性よりも不注意が目立つタイプが多い、あるいは多動性が内的なそわそわ感として現れることが多いと言われています。
- 困りごとを内に抱え込みやすく、自己肯定感の低下やうつ病、摂食障害、依存症などの二次障害に繋がりやすいリスクがあります。
- ホルモンバランスの変化(思春期、妊娠・出産、更年期)によって、特性による困りごとが顕著になることがあります。
このように、女性は特性が目立ちにくく、本人も周囲も気づきにくいため、大人になってから様々な困難に直面した際に初めて「もしかして」と気づくケースが多いと考えられます。
性別による特性の違いを知ることは、自分自身の特性理解や周囲への理解を深める上で役立ちます。
発達障害の診断とセルフチェック
自身の特性について「もしかして発達障害かも?」と感じた場合、まずは情報を集め、セルフチェックをしてみることも一つの方法です。
しかし、正確な診断は専門家が行うものであることを理解しておくことが重要です。
大人の発達障害 簡易チェックリスト
発達障害のセルフチェックツールとしては、いくつかの質問紙が知られています。
ここでは、代表的な質問紙(AQ、ASRSなど)を参考に、ご自身の傾向を確認するための簡易的なチェックリストを提示します。
これはあくまで目安であり、医学的な診断に代わるものではありません。
気になる項目が多い場合は、専門機関への相談を検討しましょう。
簡易チェックリスト(ASDとADHDの特性を合わせたもの)
以下の項目について、過去や現在のご自身に当てはまる度合いを考えてみてください。(全く当てはまらない → 0点、少し当てはまる → 1点、かなり当てはまる → 2点、非常に当てはまる → 3点 など、ご自身の感覚で点数をつけてみましょう)
項目 | 当てはまる度合い |
---|---|
人の気持ちや考えを推測するのが難しい | |
会話で、言葉の裏にある意味や皮肉が理解できない | |
冗談や比喩表現が理解できない | |
話している相手の目を見て話すのが苦手だ | |
場の空気を読むのが苦手で、不適切な言動をしてしまうことがある | |
特定の分野に強い興味を持ち、それ以外の話にはあまり関心を持てない | |
自分の決めた手順やルーティンに強くこだわる | |
急な予定の変更や環境の変化に強い不安を感じる | |
音、光、匂い、肌触りなどの感覚刺激に過敏または鈍感だ | |
物事を順序立てて行うのが苦手で、計画通りに進められない | |
集中力が続かず、すぐに気が散ってしまう | |
忘れ物が多い、約束を忘れる、期日を忘れることがよくある | |
片付けや整理整頓が苦手で、必要なものがすぐ見つからない | |
細かい不注意によるミスが多い | |
一つの作業を最後までやり遂げることが難しい | |
じっとしているのが苦手で、そわそわしたり動き回ったりする(内的含む) | |
考える前に行動してしまい、後悔することが多い | |
人の話を遮って話してしまうことがある | |
衝動買いをしたり、無計画にお金を使ってしまったりする | |
感情的になりやすく、カッとなったりイライラしたりすることが多い |
(注:上記のリストは、ASDやADHDの特性に関連する項目の一部を抜粋した簡易的なものです。合計点が高いからといって必ず発達障害であるとは限りません。専門家の診断が必要です。)
このリストは、あくまでご自身の傾向を知るための手がかりとして活用してください。
ご自身だけで判断せず、可能であれば信頼できるご家族や親しい友人に、ご自身について尋ねてみるのも良いでしょう。
正式な診断を受けるには(医療機関選び)
セルフチェックの結果や、日常生活での困りごとから、専門的な診断を受けたいと考えた場合は、医療機関を受診する必要があります。
発達障害の診断は、主に精神科や心療内科、または発達障害専門外来で行われます。
診断は、一度の簡単な問診だけでつくものではありません。
医師との面談、生育歴や現在の困りごとに関する詳細な聞き取り、必要に応じて心理検査(知能検査、特性に関する質問紙など)、家族からの情報提供などを総合して行われます。
診断プロセスには時間がかかる場合もあります。
医療機関を選ぶ際には、以下の点を考慮すると良いでしょう。
- 専門性: 大人の発達障害の診断経験が豊富な医師がいるか、発達障害専門外来があるかなどを確認しましょう。
事前にウェブサイトで情報を得るか、電話で問い合わせてみましょう。 - 医師との相性: 診断や今後の付き合い方について相談できる、信頼できる医師を見つけることが重要です。
- 通いやすさ: 診断後も継続的に相談したり、必要に応じて治療や支援を受けたりすることを考えると、自宅や職場からアクセスしやすい場所にあると便利です。
- 予約の取りやすさ: 専門外来は予約が取りにくい場合があります。
初診までの期間を確認しましょう。
初診時には、これまでの困りごとを具体的にまとめたメモや、可能であれば子ども時代の通知表や母子手帳などがあると、生育歴を確認する上で役立つことがあります。
診断を受けることは、ご自身の特性を客観的に理解し、適切な支援や対策に繋げるための第一歩となります。
診断がつくことで、利用できる福祉サービスや職場の合理的配慮などが明確になる場合もあります。
診断を受けるかどうかは個人の選択ですが、困りごとを抱えている場合は、まずは専門機関に相談してみることをお勧めします。
発達障害との付き合い方と対策
発達障害の特性は生まれつきのものであり、「治す」というよりは、その特性と上手く付き合い、生活上の困難を軽減していくことが重要になります。
自身の特性を理解し、環境を調整したり、工夫を取り入れたりすることで、より快適に、自分らしく生きることが可能になります。
仕事で抱えがちな困りごとへの対策
発達障害のある方が仕事で抱えやすい困りごとに対しては、特性に応じた様々な対策があります。
困りごとの例 | 特性の種類(傾向) | 具体的な対策・工夫 |
---|---|---|
指示を理解できない、ミスが多い | ASD/ADHD(不注意) | 指示は口頭だけでなくメモを取る、指示書を作成してもらう。疑問点はその場で確認する。重要なタスクはチェックリストを作成する。 |
納期を守れない、締め切りに間に合わない | ADHD(不注意) | タスク管理ツールやアプリを活用する。期日を細分化して小さな目標を設定する。リマインダー機能を活用する。集中できる時間帯に重要な作業を行う。 |
報連相が苦手、コミュニケーションがうまくいかない | ASD/ADHD(不注意) | 報告・連絡・相談のテンプレートを作る。メールやチャットなど、文字ベースのコミュニケーションを優先する。用件を簡潔にまとめる練習をする。信頼できる同僚や上司に相談し、協力を得る。 |
集中力が続かない、気が散りやすい | ADHD(不注意) | 静かな環境で作業する(可能であれば個室やパーテーション)。耳栓やノイズキャンセリングヘッドホンを使用する。休憩時間を細かく取る。タイマーを使って集中する時間と休憩時間を区切る(ポモドーロテクニックなど)。 |
片付け・整理整頓が苦手、物をなくす | ADHD(不注意) | 物の定位置を決める(見える化する)。ラベリングを活用する。定期的に片付けの時間を設ける。書類はすぐにファイリングする習慣をつける。貴重品は専用の場所に保管する。 |
マルチタスクが苦手 | ADHD(不注意) | 一度に複数の作業をせず、一つずつ順番に取り組む(シングルタスク)。優先順位をつけてもらう。 |
変化への対応が苦手 | ASD | 予定変更がある場合は事前に知らせてもらう。変更内容や理由を具体的に説明してもらう。変更による影響や新しい手順を確認する。 |
対人関係でのトラブルが多い | ASD/ADHD | コミュニケーションのマナーやルールを学ぶ。自分の気持ちや考えを伝える練習をする。無理に多くの人と関わろうとしない。気の合う少数の友人を持つ。趣味や興味が同じ人が集まる場所に参加する。オンラインでの交流も活用する。相談できる相手を見つける。 |
職場によっては、障害者雇用枠で働くことや、「合理的配慮」として特性に応じた働き方の工夫をお願いできる場合があります。
上司や人事担当者、産業医、会社の相談窓口などに相談してみることも検討しましょう。
また、就労移行支援事業所やハローワークの専門窓口も利用できます。
日常生活での工夫と対処法
仕事だけでなく、日常生活でも発達障害の特性による様々な困りごとが生じます。
ここでも、特性を理解した上で工夫を取り入れることが大切です。
困りごとの例 | 特性の種類(傾向) | 具体的な対策・工夫 |
---|---|---|
家事が苦手、生活が荒れる | ADHD(不注意) | 家事のタスクを細分化し、一つずつ行う。リスト化してチェックしていく。タイマーを使って時間を区切る。苦手な家事は家族に協力してもらったり、家電に頼ったり、家事代行サービスを利用したりする。物を減らす(ミニマリストになる)。 |
金銭管理が苦手、衝動買いが多い | ADHD(衝動性) | 収支を記録する(家計簿アプリなど)。予算を決める。キャッシュレス決済やデビットカードを活用する(使いすぎ防止)。クレジットカードを持ち歩かない。衝動的に買わないように、一度家に帰って考える時間を作る。自動引き落としを活用する。専門機関に相談する(消費生活センターなど)。 |
健康管理が苦手(睡眠、食事、服薬など) | ADHD(不注意) | 規則正しい生活リズムを心がける(アラーム活用)。バランスの取れた食事を意識する。軽い運動を取り入れる。服薬はタイマーやピルケースを活用する。通院日をカレンダーに記録し、リマインダーを設定する。 |
人間関係の構築・維持が難しい | ASD/ADHD | コミュニケーションのスキルを学ぶ。自分の気持ちや考えを伝える練習をする。無理に多くの人と関わろうとしない。気の合う少数の友人を持つ。趣味や興味が同じ人が集まる場所に参加する。オンラインでの交流も活用する。相談できる相手を見つける。 |
感覚過敏がつらい | ASD | 苦手な刺激を避ける(人混みを避ける、騒がしい場所に行かない)。対策グッズを活用する(耳栓、ノイズキャンセリングヘッドホン、サングラス、触り心地の良い服など)。休憩できる場所や一人になれる空間を確保する。感覚統合に関する専門家や支援者に相談する。 |
変化への対応が苦手 | ASD | 事前に情報収集をして見通しを立てる。具体的な手順や流れを確認する。シミュレーションを行う。信頼できる人に同行してもらう。休憩を取りながら進める。 |
興味のあること以外に手がつかない | ADHD(不注意) | ご褒美を設定する。好きなことと苦手なことを組み合わせる工夫をする。他人との共同作業にする(一緒に片付けをするなど)。作業興奮を利用する(とにかく始めてみる)。 |
感情のコントロールが難しい、イライラしやすい | ADHD(衝動性) | アンガーマネジメントを学ぶ。リラックスできる方法を見つける(深呼吸、軽い運動、瞑想など)。感情を紙に書き出す。一時的にその場を離れる。信頼できる人に話を聞いてもらう。専門家によるカウンセリングを受ける。 |
これらの対策は、ご自身の特性や困りごとの内容に合わせて組み合わせていくことが大切です。
全ての困りごとを一気に解決しようとせず、まずは最も困っていることから一つずつ取り組んでみましょう。
二次障害(うつ病など)について
発達障害の特性による困難や生きづらさを抱えたまま適切な支援が得られないと、ストレスが蓄積し、うつ病、不安障害、適応障害、依存症などの精神的な疾患や問題が生じることがあります。
これを「二次障害」と呼びます。
二次障害は、発達障害そのものではありませんが、特性が引き起こす困難に起因するため、発達障害と深く関連しています。
二次障害の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- うつ病: 失敗体験の積み重ねや自己肯定感の低下から、気分が落ち込み、意欲や興味を失う。
- 不安障害: 人間関係や仕事などで強い不安を感じ、社会的な場面を避けるようになる。
- 適応障害: 特定の環境(職場など)にうまく適応できず、心身の不調が生じる。
- 依存症: 衝動性やストレス対処の困難さから、アルコール、ギャンブル、ゲームなどに依存する。
- 強迫性障害: 特定の行動や思考を繰り返さずにはいられない。
- 摂食障害: 特に女性に多く見られる二次障害。
二次障害を予防するためには、早期に自身の特性に気づき、適切な診断と支援を受けることが非常に重要です。
また、特性による困難を抱え込まず、周囲に相談したり、休息を取ったりすることも大切です。
もし、うつ状態や強い不安、依存などの兆候が見られた場合は、速やかに専門の医療機関を受診しましょう。
発達障害の治療と並行して、二次障害の治療も行う必要があります。
発達障害に関する相談先
発達障害の特性や困りごとについて相談できる機関はいくつかあります。
ご自身の状況や目的に合わせて、適切な相談先を選びましょう。
相談先の種類 | 概要と相談内容 |
---|---|
発達障害者支援センター | 発達障害のある方(子どもから大人まで)やその家族に対し、専門的な相談支援を行う地域の中核機関。診断の相談、生活や就労に関する助言、関係機関との連携など。 |
精神保健福祉センター | こころの健康に関する相談全般を受け付けている機関。発達障害に関する相談も可能。医療機関の案内、福祉サービスの情報提供など。 |
市町村の障害福祉窓口 | 居住地の市町村の窓口。障害者手帳の申請、福祉サービスの利用に関する相談など。 |
医療機関(精神科、心療内科、専門外来) | 医師による診断、治療、薬物療法(ADHDなど)、カウンセリング、専門的な助言。 |
障害者就業・生活支援センター | 障害のある方の仕事と生活の一体的な支援を行う機関。就職活動、職場での悩み、金銭管理、日常生活に関する相談など。ハローワークと連携していることが多い。 |
ハローワークの専門援助部門 | 障害のある方を対象とした就職支援を行う。求職登録、求人紹介、就職活動に関する相談、適職相談など。 |
就労移行支援事業所 | 障害のある方が一般企業への就職を目指すための訓練を行う事業所。ビジネススキル、コミュニケーションスキル、自己理解などを深めるプログラムを提供。 |
地域の相談支援事業所 | 障害福祉サービスの利用計画作成などを行う。生活全般に関する相談にも対応。 |
民間のカウンセリング機関・NPO法人 | 発達障害に特化したプログラムやピアサポート(当事者同士の交流)の機会を提供している場合がある。料金は自己負担となることが多い。 |
まずは、お住まいの地域の発達障害者支援センターや精神保健福祉センターに問い合わせてみるのが良いでしょう。
診断を希望する場合は、医療機関の受診が必要です。
就労に関する相談は、ハローワークや障害者就業・生活支援センターが専門的です。
相談する際には、ご自身の困りごとを具体的に整理しておくと、よりスムーズに話を進めることができます。
誰かに相談することは、一人で抱え込まず、問題解決への糸口を見つけるための重要なステップです。
発達障害は大人からでも遅くない?可能性と支援
大人になってから発達障害の診断を受けることや、自身の特性に気づくことは、決して「遅い」ということはありません。
むしろ、長年抱えてきた生きづらさの原因が明確になり、自分自身の取扱説明書を手に入れたような感覚になる方も多くいます。
診断や特性への気づきは、新たなスタートラインに立つことです。
これまで自分を責めてきたこと、どうしてもうまくいかなかったことに対して、「特性によるものだったのかもしれない」と理解することで、必要以上に自分を責めることが減り、自己肯定感を取り戻すきっかけになります。
大人になってからでも、自身の特性を深く理解し、環境を調整したり、具体的な対策や工夫を取り入れたりすることで、生活の質を大きく向上させることが可能です。
例えば、
- 仕事でミスが減り、キャリアアップに繋がる
- 人間関係のトラブルが減り、安心して人と関われるようになる
- 家事や金銭管理が苦手でも、仕組みを作って生活が安定する
- 衝動的な行動を減らし、後悔することが少なくなる
- 自分の得意なことや興味のあることを活かせる場を見つける
といった変化が期待できます。
また、大人向けの支援サービスも充実してきています。
医療機関での診断や治療、カウンセリングだけでなく、発達障害者支援センター、就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センターなど、様々な機関が一人ひとりのニーズに合わせたサポートを提供しています。
オンラインでの情報発信や、当事者会などのピアサポートグループも、同じ特性を持つ人々との繋がりを通じて、孤立を防ぎ、自己理解を深める上で役立ちます。
発達障害の特性は個性の一部です。
その特性を否定するのではなく、理解し、受け入れ、どうすればより生きやすくなるかを考えることが大切です。
大人になってからでも、適切な支援や工夫を取り入れることで、自分らしい生き方を見つけ、充実した人生を送る可能性は十分にあります。
もしあなたが今、生きづらさを感じているなら、ぜひ一歩踏み出して、相談機関に連絡してみてください。
免責事項:この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。
発達障害に関する診断や治療が必要な場合は、必ず専門の医療機関を受診してください。
記事の内容は、個人の状況によって当てはまらない場合や効果が異なる場合があります。