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うつ病なのにスマホばかり…その原因は?依存から抜け出す方法

うつ病と診断され、あるいは「もしかしてうつ病かも…」と感じているとき、気づくと長時間スマホを見ている、という方は少なくありません。やるべきことがあるのに手につかず、時間だけが過ぎていく。そんなご自身の状態に、自己嫌悪を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

うつ病のつらい症状は、私たちの行動や心理に様々な影響を与えます。スマホばかり見てしまう行動も、実はうつ病の症状や、それによって引き起こされる心理状態と深く関連していることがあります。

このページでは、うつ病の方がスマホばかり見てしまう背景にある心理や原因、そしてその行動がうつ病の症状をさらに悪化させてしまうメカニズムについて詳しく解説します。また、スマホに依存してしまう状態から抜け出し、つらい症状を改善するための具体的な対処法や、専門機関への相談についても紹介します。

ご自身や大切な方がうつ病とスマホの問題で悩んでいる場合、この記事がその状況を理解し、改善へ向かうための一助となれば幸いです。

うつ病の症状は、心のエネルギーの低下や意欲の減退、思考力の低下など、多岐にわたります。これらの症状は、私たちが普段当たり前に行っている活動を困難にさせ、結果としてスマホへの依存に繋がりやすくなることがあります。

  • 現実からの逃避: うつ病のつらい感情(不安、悲しみ、絶望感など)や、現実の課題(仕事、家事、人間関係など)から一時的に逃れたいという気持ちが強くなります。スマホの中の情報やエンターテイメントは、手軽に現実を忘れさせてくれる手段となり得ます。
  • 手軽な快楽と刺激: うつ病により、以前楽しめていた活動への興味や喜びを感じにくくなることがあります。スマホのアプリ、ゲーム、SNSなどは、短時間で脳に刺激を与え、一時的な「楽しさ」や「達成感」を感じさせてくれるため、代替手段として利用されやすくなります。スクロールするたびに新しい情報が得られること自体が、ドーパミンという脳内物質を放出し、中毒性を生むこともあります。
  • 孤独感の穴埋め: うつ病では、人との交流を避けたり、孤立感を感じたりすることが増えます。SNSやオンラインコミュニティでの交流は、物理的な距離に関係なく「繋がっている」感覚を得られるため、孤独感を紛らわすためにスマホに没頭することがあります。しかし、オンライン上の浅い繋がりでは、本質的な孤独感は解消されにくい場合が多いです。
  • 情報収集への依存: 不安感が強い場合、過度に情報を集めることで安心感を得ようとすることがあります。病気について調べ続けたり、漠然とした不安を解消するためにニュースやSNSを漁ったりする行動が止まらなくなることがあります。しかし、情報の海に溺れることで、かえって混乱や不安が増幅することもあります。
  • 思考力・判断力の低下: うつ病により、物事を判断したり、行動を選択したりするエネルギーが枯渇します。スマホを見ているだけの状態は、特に何かを考えたり決断したりする必要がないため、エネルギーが低下している状態でも続けやすい活動となります。「何も考えたくない」「何もする気になれない」という時に、無為に時間を過ごす手段として選ばれやすいのです。

これらの心理的背景が複雑に絡み合い、うつ病の症状があるときにスマホばかり見てしまうという行動に繋がっていくと考えられます。これは決して意志が弱いからではなく、うつ病という病気の影響である可能性が高いのです。

うつ病とスマホ依存は、互いに影響し合い、悪循環を生み出す可能性があります。うつ病の症状がスマホへの過剰な利用を促し、そのスマホ利用がさらにうつ病の症状を悪化させる、というスパイラルに陥ることが懸念されます。

スマホ依存症とは?チェックリスト

「スマホ依存症」は、正式な疾患名としてはまだ確立されていませんが、スマートフォンの使用を自分でコントロールできなくなり、日常生活や心身の健康に問題が生じている状態を指す俗称として広く使われています。特に、精神疾患を抱えている方は、スマホ依存を含む何らかの依存症を併発しやすいことが指摘されています。

以下は、スマホへの依存傾向をチェックするための簡単なリストです。専門的な診断に代わるものではありませんが、ご自身の利用状況を振り返る参考にしてください。

  • スマホの利用時間をコントロールできないと感じる
  • スマホを使えないと落ち着かない、イライラする
  • スマホの使用時間を減らそうとしてもできない
  • 睡眠時間や食事時間を削ってスマホを使うことがある
  • 現実の人間関係よりも、スマホ上の繋がりを優先する
  • スマホを使うことで、学業や仕事、家事などに支障が出ている
  • スマホの使用について、家族や友人から指摘されたことがある
  • スマホの利用で、目や肩の疲れ、頭痛などの体の不調を感じる
  • 特に理由もなく、頻繁にスマホをチェックしてしまう
  • スマホがないと強い不安を感じる

上記の項目に多く当てはまる場合、スマホへの依存度が高い可能性があります。

なぜうつ病だとスマホをやめられないのか

うつ病の状態にある人がスマホ利用を止められないのには、病気特有の理由があります。

  • 意欲・気力の低下: 「スマホをやめる」という行動には、少なからず意志の力やエネルギーが必要です。うつ病によってこれらのエネルギーが著しく低下しているため、「やめよう」と思っても実行に移すのが非常に困難になります。
  • 自己肯定感の低下: うつ病の方は、自分には価値がない、何をしても無駄だ、といった否定的な考え(認知の歪み)を抱きやすい傾向があります。スマホばかり見てしまう自分を責め、「どうせ自分にはできない」と諦めてしまい、改善へのモチベーションが湧きにくいのです。
  • 判断力・集中力の低下: 長時間スマホを見るという行為は、他の複雑な活動に比べて判断や集中をあまり必要としません。うつ病でこれらの能力が低下している状況では、スマホを見るという受動的な行動が楽に感じられ、抜け出しにくくなります。
  • 代替行動の不足: うつ病により、以前楽しんでいた趣味や人付き合いから遠ざかっていることがよくあります。スマホ以外の活動に関心を持てなかったり、関わるエネルギーがなかったりするため、他にすることが見つけられず、結果的にスマホに時間が奪われてしまいます。

このように、うつ病の様々な症状が、スマホを「手放せない」状況を強化してしまうのです。これは個人の弱さではなく、病気の影響であることを理解することが重要です。

スマホばかり見ているという行動は、うつ病の症状を一時的に紛らわす効果がある一方で、長期的には症状を悪化させる様々な要因を生み出します。

睡眠不足や生活リズムの乱れ

夜遅くまでスマホを使用することは、睡眠の質と量に深刻な影響を与えます。

  • ブルーライトの影響: スマホの画面から発せられるブルーライトは、脳を覚醒させ、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制します。これにより、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりします。
  • 情報過多による脳の興奮: 就寝前にSNSやニュースなど様々な情報に触れることで脳が興奮し、リラックスして眠りにつくことが難しくなります。
  • 夜更かし: ついスマホに夢中になり、気づけば深夜になっている、ということが頻繁に起こります。これにより、必要な睡眠時間を確保できず、慢性的な睡眠不足に陥ります。

睡眠不足や不規則な生活リズムは、うつ病の症状(特に気分の落ち込み、倦怠感、集中力低下、イライラなど)を悪化させる強力な要因です。体内時計の乱れは、心身のバランスを崩し、回復を妨げます。

現実世界の人間関係の希薄化

スマホを通じたオンラインでの交流は、手軽ですが、現実世界での深い人間関係や社会的な繋がりを代替することは困難です。

  • 対面での交流の減少: スマホに没頭する時間が長くなると、家族や友人との対面での会話、外出、趣味の活動など、現実世界での交流の機会が減少します。
  • 孤立感の増大: オンライン上での「いいね」やコメントは一時的な承認欲求を満たすかもしれませんが、真の共感や支えとは異なります。かえって、他者の「充実した日常」をSNSで見て、自分との差を感じ、孤独感や劣等感を深めてしまうこともあります。
  • コミュニケーションスキルの低下: 画面越しの交流に慣れると、表情や声のトーンから相手の感情を読み取る、といった非言語コミュニケーションの機会が減り、現実世界での対人スキルが衰える可能性もあります。

うつ病からの回復には、安全で質の高い人間関係からのサポートが非常に重要です。スマホばかりの生活は、この重要なサポートシステムを弱体化させてしまう可能性があります。

孤独感やネガティブ思考の増幅

スマホは情報収集ツールであると同時に、孤独感やネガティブな感情を増幅させるリスクもはらんでいます。

  • SNSでの比較: 他人の投稿(特に良い面だけを見せがち)を見て、自分はダメだと感じたり、劣等感を抱いたりすることがあります。
  • ネガティブな情報への過剰接触: ニュースやSNSで悲惨な出来事や批判的な意見に触れる機会が増え、気分が落ち込んだり、世の中に対して悲観的な見方を強めたりすることがあります。
  • 自己責め: スマホばかり見てしまい、やるべきことができない自分を責め続け、自己肯定感がさらに低下します。

うつ病では、ネガティブな考えにとらわれやすい傾向があります。スマホの利用の仕方によっては、この傾向がさらに強まり、症状の回復を妨げてしまう可能性があります。

他の活動への興味喪失

スマホは非常に強力な刺激を提供するため、脳がそれに慣れてしまうと、他の活動(読書、散歩、趣味、仕事など)がつまらなく感じられるようになることがあります。

  • 脳の報酬系の変化: スマホからの手軽な快楽に慣れると、努力が必要な活動や、すぐには結果が出ない活動に対して、脳が報酬を感じにくくなる可能性があります。
  • 時間とエネルギーの消費: スマホに多くの時間を費やすことで、他の活動に使うべき時間や精神的なエネルギーが失われます。

うつ病の症状の一つに「興味や関心の喪失」があります。スマホへの過剰な没頭は、この症状をさらに強固にしてしまい、回復のために必要な「活動量を少しずつ増やす」というステップをより困難にしてしまう可能性があります。

うつ病の症状がある中でスマホの利用習慣を変えるのは容易ではありません。しかし、小さなステップから始めることで、徐々に改善していくことは可能です。ご自身の体調や気分と相談しながら、試せることから始めてみましょう。

スマホの使用時間を把握する・制限する

まずは現状を把握することが第一歩です。

  • 使用時間の記録: 多くのスマートフォンには、アプリごとの使用時間を記録する機能があります。これを利用して、自分が何にどれくらいの時間を費やしているのかを客観的に見てみましょう。記録アプリなどを活用するのも良いでしょう。
  • 目標設定: いきなりゼロにするのは難しいので、まずは「1日〇時間まで」や「特定のアプリは〇分まで」など、達成可能な小さな目標を設定します。
  • タイマーやアプリの活用: 設定した時間を超えないように、タイマーを設定したり、特定のアプリの使用時間を制限する機能(スクリーンタイム、ファミリーリンクなど)を活用したりするのも効果的です。制限時間を超えると警告が出たり、アプリが使えなくなったりします。

通知をオフにする・使わない時間を決める

スマホからの絶え間ない通知は、注意を奪い、スマホを見る習慣を強化します。

  • 不要な通知のオフ: 緊急性のないアプリや、ついつい見てしまうSNSなどの通知をオフに設定します。
  • 特定の時間帯の通知オフ: 睡眠時間中や、集中したい時間帯は、すべての通知をオフにする「おやすみモード」や「集中モード」などを活用しましょう。
  • 「スマホを見ない時間」の設定: 「朝起きてからの30分」「食事中」「寝る前の1時間」など、スマホを一切触らない時間を決め、それを習慣化します。

物理的にスマホから離れる工夫

目に見えるところにスマホがあると、無意識のうちに手に取ってしまいがちです。

  • 寝室に持ち込まない: 睡眠の質を高めるためにも、寝室をスマホから解放された空間にしましょう。目覚まし時計は別のものを用意します。
  • 別の部屋に置く: 自宅にいる間、よく使う部屋(リビングなど)から離れた場所にスマホを置いておきます。
  • 充電場所を変える: 寝る前にスマホを充電する場所を、ベッドサイドではなく、リビングや廊下などに変えるだけでも効果があります。
  • 使わない時はカバンや引き出しにしまう: ただテーブルの上に置いておくのではなく、使わないときは見えない場所に片付ける習慣をつけます。

代替となる活動を見つける

スマホを使わない時間を、他の活動で埋めることが重要です。うつ病の症状が重い場合は、まずは「何もしない時間」も大切ですが、少しエネルギーが出てきたら、無理のない範囲で代替活動を取り入れましょう。

  • 体を動かす: 軽い散歩、ストレッチ、近所の公園まで歩くなど、外に出て体を動かすことは気分転換になり、睡眠の質を高める効果も期待できます。
  • 五感を意識する: 好きな音楽を聴く、温かい飲み物をゆっくり飲む、アロマを焚く、日当たりの良い場所で日向ぼっこをするなど、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった五感を意識した活動は、今ここに集中する練習にもなります。
  • 簡単なクリエイティブな活動: 絵を描く、文字を書く、折り紙をする、簡単な手芸など、何かを「生み出す」活動は、達成感に繋がりやすいです。
  • 現実世界での交流: 調子が良ければ、家族や友人bと短い時間でもいいので話をする時間を作りましょう。ハードルが高ければ、挨拶をする、近所の人と立ち話をするなど、簡単な交流から始めます。
  • 軽い家事や身の回りの整理: 部屋を片付ける、洗い物をする、洗濯をするなど、身の回りを整えることは、気分転換になるだけでなく、「できた」という小さな成功体験にも繋がります。

代替活動を選ぶ際は、「完璧にやらなければならない」という気持ちを手放し、まずは「やってみる」こと、「楽しさや心地よさを少しでも感じられるか」を大切にしましょう。うつ病の波があるため、できない日があっても自分を責めないことが大切です。

小さな成功体験を積む

スマホの使用時間を減らす、他の活動をしてみる、といった取り組みの中で、小さな目標を設定し、それが達成できたら自分を褒める、ということを繰り返しましょう。

  • 目標を細分化: 「1時間スマホを見なかった」「通知をオフにできた」「5分散歩に行けた」など、どんなに小さなことでも構いません。
  • 記録をつける: 目標達成を記録する(手帳に〇をつける、アプリに入力するなど)ことで、頑張りを見える化できます。
  • 自分を褒める: 目標が達成できたら、「よくできたね」「頑張ったね」と心の中で自分を褒めたり、ご褒美(好きな飲み物を飲む、少し休憩するなど)を用意したりするのも良いでしょう。

うつ病では、自己肯定感が低下しやすいため、このような小さな成功体験を積み重ねることが、自信を取り戻し、回復へのモチベーションを維持する上で非常に重要です。

ご自身の努力だけではスマホの利用習慣を改善できない場合や、うつ病の症状自体が重く、上記のような対処法を試すエネルギーがない場合は、専門家のサポートを求めることが非常に重要です。

精神科や心療内科への受診

うつ病の診断や治療は、精神科や心療内科の専門医が行います。スマホへの過剰な利用は、うつ病の症状の一つとして現れている可能性が高いため、まずはうつ病の治療を優先することが、結果的にスマホ問題の改善にも繋がります。

  • 医師に相談すること: スマホばかり見てしまうことや、それがやめられずに困っていることを正直に医師に伝えましょう。これは、うつ病の症状や日常生活への影響を理解してもらう上で重要な情報となります。
  • 適切な診断と治療: 医師は、うつ病の診断を行い、その症状の程度や他の合併症の有無などを考慮して、適切な治療計画(薬物療法、精神療法など)を提案してくれます。
  • 生活指導や助言: 医師や専門スタッフから、睡眠衛生や生活リズムの整え方、ストレス対処法など、うつ病の回復とスマホ問題の両方に関わる実践的なアドバイスを得られることがあります。

認知行動療法などのカウンセリング

カウンセリング(精神療法)は、うつ病の治療において薬物療法と並んで重要な位置を占めます。特に、認知行動療法(CBT)は、うつ病や不安障害、依存症など、様々な精神疾患に効果が認められている治療法です。

  • 認知行動療法(CBT): 自分の考え方(認知)や行動パターンに焦点を当て、それらが感情や問題にどのように影響しているかを理解し、より現実的で適応的な考え方や行動を身につけることを目指します。スマホばかり見てしまう行動の背景にある否定的な思考パターンや、スマホ利用を止められない行動の原因を特定し、改善策を一緒に考えていきます。
  • 対人関係療法(IPT): うつ病と対人関係の問題との関連に焦点を当て、対人関係のパターンを改善することで気分の落ち込みを和らげます。スマホばかり見てしまうことによる現実世界の人間関係の希薄化に悩んでいる場合に有効なアプローチとなり得ます。
  • カウンセラーとの協働: カウンセラーは、一方的に指示をするのではなく、クライエント(相談者)との対話を通じて、問題解決のための目標を一緒に設定し、具体的な方法を考えていきます。スマホの使用時間を減らすための具体的な計画を立てたり、困難な状況への対処法を練習したりすることができます。

カウンセリングは、精神科や心療内科に併設されている場合や、独立したカウンセリングルーム、あるいはオンラインで受けることができる場合もあります。

薬物療法

うつ病の薬物療法は、脳内の神経伝達物質のバランスを調整し、気分の落ち込み、意欲の低下、不安、不眠といったうつ病の中核症状を改善することを目的としています。

  • 抗うつ薬: セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の働きを調整し、気分の安定や意欲の向上を図ります。うつ病の症状が軽減されることで、スマホばかり見てしまう行動の背景にあった心理的な要因(現実逃避、気力のなさなど)が弱まり、他の活動に取り組むエネルギーが湧いてくる可能性があります。
  • その他の薬剤: 不眠がひどい場合には睡眠薬、強い不安や焦燥感がある場合には抗不安薬などが、症状に合わせて処方されることもあります。これらの症状が緩和されることも、スマホへの過剰な依存から抜け出す助けとなります。

薬物療法は、うつ病の根本治療の一つであり、スマホへの過剰な利用そのものを直接治療する薬ではありません。しかし、うつ病の症状が改善することで、結果としてスマホとの付き合い方が健康的になることは十分に期待できます。薬の効果が現れるまでには時間がかかることが多いため、医師の指示に従って根気強く服用を続けることが大切です。薬の種類や副作用については、必ず医師や薬剤師に確認しましょう。

うつ病の症状が非常に重く、スマホを見ることも、この記事を読むことすらも困難な状態、あるいは「スマホをやめる」どころか、何かを考えたり行動したりするエネルギーが全く湧かないという場合もあるかもしれません。そのような「何もできない」と感じるほどつらい状況では、まずご自身を責めないことが最も重要です。

このような状態の時は、無理に何かをしようとせず、まずは「休息を最優先」にしてください。

  • ひたすら休む: 横になる、ぼーっとして過ごすなど、心身が回復するための時間を確保します。
  • 最低限の生活を維持する: 可能であれば、食事、水分補給、トイレ、清潔を保つといった最低限の生活行動だけを意識します。それが難しければ、家族や周囲の人に助けを求めましょう。
  • 周囲へのSOS: 家族や信頼できる友人など、身近な人に今のつらい状況を伝えましょう。「スマホばかり見てしまうこと」も含めて、自分がどんな状態にあるかを伝えるだけでも、気持ちが少し楽になることがあります。具体的な助け(食事の準備、受診への付き添いなど)をお願いすることも必要かもしれません。
  • 専門機関への連絡: ご自身で受診の準備が難しい場合は、家族などに協力してもらい、精神科や心療内科に連絡を取ってもらいましょう。電話で症状を伝え、受診の予約や、必要であれば訪問診療や往診の相談ができる場合もあります。
  • 緊急時の相談窓口: 死にたい気持ちが強いなど、緊急性の高い場合は、精神保健福祉センターやいのちの電話などの相談窓口に連絡したり、救急外来を受診したりすることも考えてください。

「何もできない」という状態は、うつ病が重症化しているサインである可能性があります。この段階では、ご自身の力だけで状況を好転させるのは非常に困難です。勇気を出して周囲に助けを求めること、そして専門家の手を借りることが、回復への唯一の道であることを忘れないでください。スマホの問題は、まず心身全体のエネルギーを取り戻すこと、うつ病の症状を和らげることができれば、自然と改善に向かう可能性があります。

うつ病とスマホ利用について、よくある疑問にお答えします。

うつ病にスマホは影響しますか?

はい、うつ病にスマホは良い影響と悪い影響の両方を与える可能性があります。

影響の側面 具体的な内容 うつ病への影響
良い影響 情報収集(病気について、相談先など)
友人・家族との連絡
気分転換・息抜き(軽いゲーム、好きな動画など)
オンラインサポートコミュニティへの参加
必要な情報へのアクセス
孤立感の軽減
一時的な気分の向上
共感や励ましの獲得
悪い影響 過剰な使用による睡眠不足
現実逃避・活動性低下
SNSでの比較・劣等感
ネガティブな情報への過剰接触
自己責め・孤立感の増大
症状(気分の落ち込み、倦怠感、不安など)の悪化
回復の遅延
自信喪失
悲観的な思考の強化
人間関係の希薄化

このように、スマホ自体が悪いわけではなく、どのような目的で、どれくらいの時間、どのように利用するかが、うつ病の症状に大きく影響します。特にうつ病の症状があるときは、ネガティブな影響を受けやすくなる傾向があるため、意識的なコントロールが必要になります。

うつ病の時にやってはいけないことは?

うつ病のときに「絶対やってはいけないこと」はありませんが、症状を悪化させたり、回復を妨げたりする可能性のある行動は避けるのが賢明です。

  • 無理をすること: 体力的にも精神的にもエネルギーが低下しているため、普段通りに活動しようとしたり、頑張りすぎたりすると、症状が悪化します。休息を優先し、無理はしないことが大切です。
  • 重要な決定をすること: うつ病中は、思考力や判断力が低下し、ネガティブな考えにとらわれやすいため、人生の大きな決定(退職、引っ越し、結婚・離婚など)は、症状が回復してからに延期するのが望ましいとされています。
  • 一人で抱え込むこと: 孤独はうつ病を悪化させます。つらい気持ちや状況を、信頼できる家族や友人、専門家などに話すことが重要です。
  • 自分を責めること: 「なぜこんなこともできないんだ」「自分が悪いんだ」と自分を責めることは、自己肯定感をさらに低下させ、回復を妨げます。うつ病は脳の病気であり、意志の力でどうにかなるものではないことを理解し、自分を責めないように努めましょう。
  • 不規則な生活: 特に睡眠不足はうつ病の大敵です。できる範囲で良いので、毎日同じ時間に寝起きするなど、生活リズムを整えることを意識しましょう。これに関連して、夜更かしをしてスマホを長時間使うことも避けるべき行動と言えます。
  • 過度な情報収集やSNSでの比較: 前述の通り、スマホからのネガティブな情報や他者との比較は、孤独感やネガティブ思考を増幅させる可能性があります。

何時間スマホを見ていたら依存症?

「1日〇時間以上スマホを見ているから依存症」といった明確な時間の基準はありません。スマホ依存症は、使用時間だけでなく、その利用状況や、日常生活(睡眠、食事、仕事、学業、人間関係、健康など)にどのような悪影響が出ているか、そして自分で利用をコントロールできるか、といった点が重要になります。

例えば、仕事でスマホを長時間利用している場合と、個人的な趣味やSNSに長時間没頭している場合では意味合いが異なります。また、短時間しか使っていなくても、スマホが手元にないと強い不安を感じたり、常に気になって集中できなかったりする場合も、依存の傾向があると言えます。

ご自身のスマホ利用が問題かどうかを判断するには、前述のチェックリストを参考にしたり、ご家族や友人から指摘を受けていないか振り返ったりすることが有効です。そして、もし不安を感じる場合は、自己判断せずに専門家(精神科医や臨床心理士など)に相談することをおすすめします。

うつ病の症状がある中で、スマホばかり見てしまうという行動は、病気の影響によるものであり、決してあなたが怠けているわけではありません。つらい気持ちを一時的に紛らわせたり、エネルギーの低下した心身で手軽にできる活動として、無意識のうちにスマホに手が伸びてしまう状況です。

しかし、この状態が続くと、うつ病の症状をさらに悪化させる悪循環に陥るリスクがあります。睡眠不足、孤立感、自己肯定感の低下など、様々な側面から回復を妨げてしまいます。

この記事で紹介したように、スマホの使用時間を記録して現状を把握する、通知をオフにする、物理的にスマホから離れる工夫をする、代替となる活動を見つける、といった具体的な対処法を、ご自身の体調やエネルギーレベルに合わせて、小さなステップから試していくことができます。

そして最も大切なのは、一人で抱え込まず、専門家のサポートを求めることです。精神科や心療内科でうつ病の適切な診断と治療を受けること、カウンセリングでスマホとの付き合い方を含めた行動パターンを見直すこと、これらは回復のために非常に力強い支えとなります。

うつ病も、そしてスマホとの不健全な付き合い方も、適切な対応によって改善することが可能です。希望を失わず、まずは現状を理解し、できることから一歩踏み出してみてください。必要であれば、迷わず専門家の扉を叩きましょう。きっと、より良い状態へと繋がる道が見つかるはずです。

免責事項: この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスや個別の診断・治療を代替するものではありません。うつ病やスマホ依存に関する問題でお悩みの場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。

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