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【無料】不安障害セルフチェック診断テスト|気になる症状、傾向がわかる

不安や心配は誰にでも起こりうる感情です。しかし、その不安が日常生活に支障をきたすほど過剰になったり、特定の状況で強く現れたりする場合は、「不安障害」という心の病気である可能性があります。自分自身の不安の程度を知りたい、もしかして不安障害かもと気になっている方のために、簡易的な診断テスト(セルフチェック)があります。このテストは、あくまでご自身の状態を客観的に見るための一つの目安です。この記事では、不安障害のセルフチェックリストに加え、不安障害の主な症状、種類、原因、そして正確な診断の重要性や治療法について解説します。

このセルフチェックリストは、ご自身の不安の傾向や程度を把握するための簡易的なものです。医療機関での正式な診断に代わるものではありませんので、結果だけにとらわれすぎず、あくまで自己理解の補助としてご利用ください。最近数週間から数ヶ月の間で、以下の項目にどの程度当てはまるか考えてみましょう。

チェックリスト項目

以下の項目について、「全く当てはまらない」「あまり当てはまらない」「少し当てはまる」「かなり当てはまる」の4段階で評価し、点数を付けてみましょう。

  • 過剰な心配事が多く、コントロールが難しいと感じる(例:仕事、家族、お金、将来など)
  • 些細なことでも必要以上に心配してしまう
  • 常に緊張している、あるいは落ち着かない感じがする
  • イライラしやすい、または短気になることがある
  • 物事に集中するのが難しい、または心が上の空になってしまうことが多い
  • すぐに疲れてしまう、またはエネルギーが不足していると感じる
  • 眠りにつくのが難しい、または夜中に何度も目が覚める
  • 筋肉がこわばる、または肩や首の痛みがよくある
  • 頭痛やめまいを感じやすい
  • 心臓がドキドキする、または息苦しさを感じることがある
  • 胃の不調(下痢、吐き気など)や消化器系の問題がある
  • 大量に汗をかく、または手足が冷たくなったり震えたりすることがある
  • 人前で話すことや注目される状況に強い恐怖や不安を感じる
  • 特定の場所(狭い空間、高い場所など)や状況(飛行機、電車など)に強い恐怖や不安を感じる
  • 突然、激しい動悸、息切れ、めまい、吐き気などの強い身体症状とともに、「このまま死んでしまうのでは」「気が変になってしまうのでは」といった強い恐怖に襲われることがある(パニック発作)
  • 特定の考えやイメージ(不潔、事故、病気など)が繰り返し頭に浮かび、強い不快感や不安を感じる
  • その不安を打ち消すために、特定の行動や儀式(手洗いを繰り返す、物の配置を何度も確認するなど)を繰り返してしまう
  • 日常生活(仕事、学業、友人関係、家族との関わりなど)において、不安や心配のために本来の力を発揮できない、または回避してしまうことがある
  • 以前は楽しめていた活動に関心が持てなくなった、または億劫になった
  • 特定の対象(クモ、ヘビ、閉所など)に対して、極端な恐怖を感じ、避けてしまう

点数の付け方(例):

  • 全く当てはまらない:0点
  • あまり当てはまらない:1点
  • 少し当てはまる:2点
  • かなり当てはまる:3点

すべての項目の点数を合計してみましょう。

チェック結果の見方

合計点が高いほど、不安障害の傾向が強いと考えられます。

  • 合計点 数点程度: 一般的な範囲の不安と考えられます。日々のストレス管理などを心がけましょう。
  • 合計点 中程度: 不安や心配がやや強く、日常生活に影響が出始めている可能性があります。ストレス要因を見直したり、リラクゼーション法を試したりするセルフケアを検討してみましょう。
  • 合計点 高い: 不安や身体症状が強く、日常生活に大きな支障が出ている可能性があります。不安障害の可能性が考えられるため、専門の医療機関(精神科や心療内科)に相談することを強くお勧めします。

【重要な注意点】
このチェックリストはあくまで目安です。
点数が高いからといって必ずしも不安障害であるとは限りません。
正確な診断には、医師による問診や検査が必要です。
ご自身の状態について心配がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

目次

不安障害の主な症状

不安障害の症状は、精神的なものと身体的なものに分けられます。また、不安障害の種類によって、中心となる症状や現れ方が異なります。ここでは、一般的な不安障害に共通して見られる主な症状を解説します。

不安障害の精神症状

不安障害の核となるのは精神的な症状です。以下のようなものが挙げられます。

  • 過剰な心配と懸念: 必要以上に、または現実的でないことに対して、常に心配や懸念を抱えています。仕事、家族、健康、お金など、さまざまなことについて際限なく心配し、その心配を止められないと感じます。
  • 落ち着きのなさ: 常にそわそわして落ち着かず、リラックスすることが難しい状態です。座っていても手足を動かしたり、歩き回ったりすることが増えることがあります。
  • 集中困難: 不安や心配事が頭の中を占領し、目の前のことに集中するのが難しくなります。気が散りやすく、物忘れが増えることもあります。
  • イライラ感: 不安が高まると、些細なことでイライラしたり、短気になったりしやすくなります。周囲の人との関係に影響が出ることもあります。
  • 予期不安: 将来起こるかもしれない悪い出来事(特にパニック障害ではパニック発作の再発)を恐れ、常に不安を感じることです。この不安が、その出来事や場所を避ける行動(回避行動)につながることがあります。
  • 恐怖: 特定の対象や状況に対して、理不尽なほど強い恐怖を感じます。この恐怖は、その対象や状況に直面するとパニックに近い状態を引き起こすことがあります。
  • 強迫観念: 不安や不快感を引き起こす特定の考えやイメージ(例:手が汚れている、戸締まりを忘れた、誰かに危害を加えてしまうかもしれない)が、自分の意思に反して繰り返し頭に浮かんでくる状態です。

不安障害の身体症状

不安は心だけでなく、身体にも様々な症状として現れます。自律神経の乱れなどが関与していると考えられます。

  • 動悸、息苦しさ: 心臓がドキドキする、脈が速くなる、胸が苦しい、息が吸えない、息が詰まる感じがするといった症状です。パニック発作で特に顕著に現れます。
  • めまい、ふらつき: 立ちくらみのようなめまいや、地に足がついていないようなふらつきを感じることがあります。失神してしまうのではないかという不安を伴うこともあります。
  • 発汗、震え: 理由もなく大量に汗をかいたり、手足や声が震えたりすることがあります。
  • 筋肉の緊張: 肩や首のこり、頭痛、全身のだるさといった症状として現れやすいです。常に力が入っているような感覚になることもあります。
  • 消化器系の不調: 吐き気、下痢、便秘、胃のむかつき、腹痛などが頻繁に起こります。ストレス性の胃腸炎と診断されることもあります。
  • 睡眠障害: 寝つきが悪い(入眠困難)、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)といった睡眠の質の低下が見られます。
  • その他: 手足のしびれや冷え、口の渇き、頻尿、喉の違和感(ヒステリー球)など、様々な身体症状が現れることがあります。

大人の不安障害の特徴

大人の不安障害は、仕事や子育て、人間関係、将来のことなど、社会生活における様々な出来事と関連して発症しやすい傾向があります。責任が増えたり、ストレスが増大したりする年代で症状が表面化することがあります。

  • 仕事への影響: プレゼンテーションや会議での過度な緊張(社交不安障害)、締め切りに対する終わりのない心配(全般性不安障害)、特定の作業への強迫的なこだわり(強迫性障害)などが、業務効率の低下や休職につながることがあります。
  • 人間関係への影響: 人との交流を避けたり(社交不安障害)、家族や友人に対して過剰な心配をしたり(全般性不安障害)、特定の人物に対する強迫的な考えに囚われたり(強迫性障害)することで、孤立したり関係が悪化したりすることがあります。
  • 将来への不安: 老後の生活、健康、親の介護、子供の将来など、先の見えないことに対する過剰な心配が日常生活を圧迫することがあります。
  • 身体症状へのとらわれ: 動悸や息苦しさなどの身体症状を過度に心配し、「重い病気ではないか」と病院を転々とする「ドクターショッピング」に陥ることがあります。

これらの症状が長期間続き、日常生活に支障をきたしている場合は、専門家への相談を検討することが大切です。

不安障害の種類

不安障害は、特定の状況や対象に対する不安や恐怖の現れ方によっていくつかの種類に分類されます。代表的なものを紹介します。

全般性不安障害(GAD)

全般性不安障害は、特定の状況や対象に限らず、様々なことに対して慢性的かつ過剰な心配を抱える病気です。仕事、学業、家族、健康、お金など、日常の些細なことから重大なことまで、心配の対象は広範囲に及びます。

主な特徴:

  • 持続的な過剰な心配(通常6ヶ月以上)
  • 心配をコントロールするのが難しい
  • 落ち着きのなさ、緊張感、イライラ感
  • 疲労感、集中困難、睡眠障害
  • 筋肉の緊張、身体症状(動悸、消化不良など)

「常に何か心配していないと落ち着かない」といった状態になることもあります。

社交不安障害(社会不安障害、SAD)

社交不安障害は、人前での行動や他者との交流に対して、強い恐怖や不安を感じる病気です。自分が他者から否定的に評価されるのではないか、恥ずかしい思いをするのではないか、といった強い恐れが中心となります。

主な特徴:

  • 人前で話す、食事をする、文字を書く、電話をかけるなどの社会的状況に対する強い恐怖や不安
  • 他者から監視されている、または批判されているという感覚
  • 身体症状(赤面、発汗、震え、吐き気など)が強く現れる
  • 恐怖を感じる状況を避ける回避行動
  • 社交的な状況に臨む前に、過剰な心配や予期不安を感じる

これらの不安や回避行動により、学業や仕事、人間関係に支障をきたします。

パニック障害

パニック障害は、突然、予期しないパニック発作を繰り返す病気です。パニック発作とは、激しい動悸、息苦しさ、めまい、吐き気などの身体症状とともに、「死んでしまう」「気が変になる」といった強い恐怖に襲われる発作です。

主な特徴:

  • 予期しないパニック発作の繰り返し
  • 発作が再び起こるのではないかという強い予期不安
  • 発作が起きた場所や状況を避ける回避行動(広場恐怖症を伴うこともある)
  • 身体症状への過剰なとらわれ(「心臓病ではないか」など)

発作自体は通常数分から長くても30分以内に収まりますが、その間の苦痛と恐怖は非常に強く、患者さんは外出や人との関わりを避けるようになることがあります。

強迫性障害(OCD)

強迫性障害は、不快な考え(強迫観念)が繰り返し頭に浮かび、その不安を打ち消すために特定の行動(強迫行為)を繰り返さずにはいられない病気です。不安障害の分類から独立した疾患とされることもありますが、強い不安を伴うため関連が深いです。

主な特徴:

  • 強迫観念: 汚染、疑念、対称性、攻撃性、性的なことなど、自分の意思に反して繰り返し浮かぶ不快で受け入れがたい考えやイメージ。
  • 強迫行為: 強迫観念による不安を打ち消すために行う、繰り返しの行動や儀式(手洗いを何度もする、鍵や火の元を何度も確認する、特定の順序で物事を進めるなど)。この行為をしないと強い不安に耐えられません。
  • 強迫観念や強迫行為に多くの時間を費やし、日常生活に大きな支障が出る。

強迫行為は一時的に不安を和らげますが、根本的な解決にはならず、むしろ強迫行為をしないとさらに不安になるという悪循環に陥りやすいです。

特定の恐怖症

特定の恐怖症は、特定の対象(動物、虫、高さ、閉所など)や状況に対して、極端かつ非現実的な恐怖を感じる病気です。その対象や状況に直面すると、強い不安やパニック発作に似た症状が現れることがあります。

主な特徴:

  • 特定の対象や状況に対する著しい恐怖や不安
  • 恐怖の対象や状況を積極的に避ける回避行動
  • 恐怖の対象や状況に直面すると、その場の危険性に見合わない過剰な反応(パニックなど)を示す
  • その恐怖や回避行動により、日常生活に支障が出る

高所恐怖症、閉所恐怖症、動物恐怖症などがよく知られています。

不安障害の原因

不安障害の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。生物学的な要因、心理的な要因、環境的な要因などが影響していると言われています。

不安障害の生物学的要因(セロトニン不足など)

脳の機能や神経伝達物質のバランスが不安障害の発症に関与していると考えられています。

  • 神経伝達物質の異常: 不安や気分に関わる神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、GABAなど)の働きやバランスの乱れが指摘されています。例えば、セロトニンの不足や機能低下は、気分の落ち込みだけでなく、不安感の増大にも関わると考えられています。GABAは抑制性の神経伝達物質であり、その機能低下は脳の過活動を招き、不安を引き起こす可能性があります。
  • 脳の特定部位の活動: 扁桃体(恐怖や不安を感じる脳の部位)や前頭前野(思考や感情をコントロールする部位)などの脳の特定部位の活動異常が関連しているという研究があります。
  • 遺伝的要因: 不安障害になりやすい体質が遺伝によって受け継がれることがあると言われています。家族に不安障害の方がいる場合、発症リスクがやや高まる可能性があります。ただし、遺伝だけが原因で発症するわけではありません。

不安障害の心理的・環境的要因

個人の性格傾向や、これまでの人生経験、現在の環境なども不安障害の発症に大きく影響します。

  • ストレス: 大きなライフイベント(近親者の死、離婚、失業、病気など)や、慢性的なストレス(人間関係の悩み、仕事のプレッシャー、経済的な問題など)は、不安障害を発症する引き金となることがあります。
  • 性格傾向: 心配性、内向的、神経質、完璧主義といった性格傾向を持つ人は、不安を感じやすく、不安障害になりやすいと言われることがあります。
  • 過去のトラウマ: 子供の頃の虐待やいじめ、事故や災害などの強いトラウマ体験は、その後の人生で不安障害(特にPTSDやパニック障害)を発症するリスクを高める可能性があります。
  • 学習: 不安を感じる状況や対象を避ける行動を繰り返すことで、その不安が強化されてしまうことがあります(回避学習)。また、親や身近な人の不安に対する反応を見て、不安を感じやすいパターンを学習することもあります。
  • 生育環境: 不安定な家庭環境や、過保護・過干渉な子育てなども、不安を感じやすい傾向を育む可能性があります。

これらの要因が単独で作用するだけでなく、複数組み合わさることで不安障害が発症すると考えられます。例えば、遺伝的に不安になりやすい人が、強いストレスにさらされた場合に発症リスクが高まる、といったケースです。

不安障害と間違いやすい疾患

不安障害の症状は、他の精神疾患や身体疾患の症状と似ていることがあります。正確な診断のためには、これらの疾患との鑑別が重要です。

うつ病と不安障害の違い

うつ病と不安障害はしばしば合併して見られますが、異なる病気です。

項目 不安障害 うつ病
中心的な感情 不安、恐怖、心配 気分の落ち込み、意欲・興味の喪失
焦点 未来の危険や脅威、特定の状況や対象 過去や現在の失敗、自己否定、絶望感
活動性 不安から活動を回避することはあるが、活発な場合も 全体的に活動性が低下、億劫になることが多い
身体症状 動悸、息切れ、めまい、発汗、震えなど(急性のものも) 疲労感、食欲不振/過食、睡眠障害、身体の痛みなど
思考 最悪の事態を想定する、心配事が頭から離れない 自分を責める、ネガティブな思考、死について考える

うつ病でも不安症状が見られたり、不安障害の患者さんが二次的にうつ病を発症したりすることがあります。そのため、どちらが主たる疾患か、あるいは両方を発症しているかなど、専門医による丁寧な診断が必要です。

適応障害との違い

適応障害は、特定のストレス原因(例:職場の人間関係、失恋、転居など)がはっきりしており、そのストレスから離れると症状が軽減するのが特徴です。

項目 不安障害 適応障害
原因 生物学的、心理的、環境的要因の複合(特定困難なことも) 特定のストレス原因が明確
発症時期 特定の出来事によらず発症することも ストレス原因に曝されてから3ヶ月以内に発症
症状の持続 原因がなくても持続する、慢性化しやすい ストレス原因から離れると通常6ヶ月以内に改善
症状の内容 不安、恐怖、身体症状など(疾患による) 不安、抑うつ、行動面の問題など、症状は多様

適応障害の症状として不安が現れることはありますが、不安障害のように慢性的に続くわけではありません。ストレス原因を特定し、それに対処することが回復への鍵となります。

双極性障害との違い

双極性障害は、気分の波(躁状態や軽躁状態とうつ状態)が特徴の病気です。うつ状態の時に不安症状を伴うことがあり、不安障害と間違われることがあります。

項目 不安障害 双極性障害
中心的な症状 不安、恐怖、心配 気分の大幅な変動(躁状態とうつ状態)
気分の波 気分の落ち込みはあっても、極端な高揚はない 躁状態(活動的、多弁、睡眠時間短縮など)と、うつ状態を繰り返す
治療薬 抗不安薬、SSRIなどが中心 気分安定薬が治療の核となる

双極性障害を見逃して不安障害やうつ病として治療した場合、躁状態が誘発されたり、症状が安定しにくくなったりすることがあります。正確な診断は非常に重要です。

その他にも、甲状腺機能亢進症や低血糖などの身体疾患が不安発作のような症状を引き起こすこともあります。そのため、精神的な問題だけでなく、身体的な検査も重要になる場合があります。

診断テスト結果だけでの自己判断は危険

ここまで、不安障害のセルフチェックや主な症状について解説してきましたが、重ねてお伝えしたいのは、診断テストの結果だけで自己判断をすることは危険だということです。

なぜ自己診断が危険なのか

  • 誤診のリスク: セルフチェックはあくまで簡易的な目安であり、他の精神疾患(うつ病、双極性障害、統合失調症など)や身体疾患(甲状腺機能異常、心疾患、呼吸器疾患、薬物の影響など)の症状と混同してしまう可能性があります。素人判断では、複雑な症状の鑑別はできません。
  • 適切な治療の遅れ: 不安障害であったとしても、その種類や重症度によって適切な治療法は異なります。自己判断で誤った対処をしたり、受診をためらったりすることで、症状が悪化し、回復が遅れてしまう可能性があります。
  • 不必要な心配の増大: セルフチェックの結果に過度に不安を感じてしまい、かえって精神的な負担が増大することがあります。「自分は重い病気なんだ」と悲観的になりすぎることもあります。
  • 安心の機会を逃す: 不安障害ではないのに、自己判断でそうだと思い込んでしまい、専門家の診察を受けて安心する機会を逃してしまうこともあります。

不安障害は、早期に適切な診断と治療を受けることで、多くの場合は症状の改善やコントロールが可能です。自己判断で時間や機会を失うことは避けたいものです。

正確な診断は専門医へ

不安障害の診断は、精神科医や心療内科医といった精神医療の専門家が行います。診断は、単にチェックリストの点数を見るだけでなく、以下のような様々な情報を総合的に判断して行われます。

  • 問診: 患者さん本人から、症状がいつ頃から、どのような状況で現れるか、症状の強さ、持続期間、日常生活への影響、既往歴、家族歴、ストレス状況、性格、生育歴などについて詳しく話を聞きます。
  • 情報収集: 必要に応じて、家族からの情報提供や、これまでの医療機関での受診歴などを参考にします。
  • 診察: 患者さんの表情、言動、思考内容、精神状態などを観察します。
  • 心理検査: 不安の程度を測る尺度を用いたり、性格傾向や認知の偏りを調べる心理検査を行うこともあります。
  • 身体的な検査: 甲状腺機能検査、血液検査、心電図など、身体疾患の可能性を除外するための検査が必要になる場合もあります。

これらの専門的な評価を経て、診断基準(DSM-5など)に基づいて不安障害の種類や重症度が診断されます。正確な診断があって初めて、その人に合った適切な治療計画が立てられるのです。

ご自身の不安や身体症状について少しでも気になる点があれば、「このくらいで病院に行くのは大げさかな」などと躊躇せず、まずは精神科や心療内科に相談してみることを強くお勧めします。相談すること自体が、回復への第一歩となります。

不安障害の治療法

不安障害の治療法にはいくつかの種類があり、症状の種類や重症度、患者さんの希望などに応じて、単独で用いられたり、組み合わせて用いられたりします。主な治療法は以下の通りです。

認知行動療法(CBT)

認知行動療法は、不安障害に対して科学的な根拠が豊富にある精神療法の一つです。不安を引き起こす「考え方(認知)」と、不安に対する「行動」のパターンを見直すことで、症状の改善を目指します。

主な考え方:

  • 私たちは出来事そのものに直接反応するのではなく、出来事に対する「考え方(認知)」を通して感情や行動が決まる、と考えます。
  • 不安障害の人は、物事をネガティブに捉えすぎたり、危険を過大評価したりする認知の偏りがあると考えられます。
  • 不安を感じる状況を避けたり、特定の行動(強迫行為など)を繰り返したりする回避行動が、かえって不安を維持・悪化させていると考えられます。

具体的な手法:

  • 認知の修正: 不安を引き起こす非合理的な考え方や信念(例:「失敗したら終わりだ」「みんな自分を批判している」)に気づき、より現実的でバランスの取れた考え方(例:「失敗から学べることもある」「他人はそれほど自分を気にしていない」)に変えていく練習をします。思考記録表などを用います。
  • 行動のアプローチ:
    • 曝露反応妨害法(ERP、強迫性障害に有効): 不安を引き起こす対象や状況に少しずつ段階的に直面(曝露)しながら、不安を打ち消すための強迫行為をしないように練習(反応妨害)します。
    • 系統的脱感作法(特定の恐怖症、社交不安障害などに有効): 不安のレベルを段階分けし、リラクゼーション法を用いながら、不安の低い状況から徐々に高い状況に慣れていく練習をします。
    • 行動実験: 不安に関する自分の予測(例:「人前で話すと必ず赤面して笑われる」)が本当に起こるか、実際にその状況で試してみることで、誤った信念に気づくことを目指します。
  • リラクゼーション技法: 筋弛緩法、呼吸法、瞑想など、身体の緊張を和らげ、リラックスする方法を学び、不安が高まったときに自分でコントロールできるようになることを目指します。

認知行動療法は、医師、公認心理師、臨床心理士など、専門の訓練を受けた人が行います。週に1回程度のセッションを数ヶ月から1年程度続けることが一般的です。薬物療法と組み合わせて行うと、より効果が高いとされる場合もあります。

薬物療法

薬物療法は、脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで、不安症状を和らげる治療法です。特に症状が重い場合や、認知行動療法だけでは効果が不十分な場合に用いられます。医師の処方が必要であり、必ず医師の指示に従って服用することが重要です。

主な薬剤:

  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬): 不安障害の治療薬として第一選択薬とされることが多い薬です。脳内のセロトニンの働きを高めることで、不安や抑うつ気分を改善します。効果が出るまでに数週間かかることがあります。副作用(吐き気、下痢、性機能障害など)が出ることがありますが、多くは一時的です。
  • SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬): セロトニンとノルアドレナリンの両方の働きを高めます。SSRIと同様に不安障害に有効です。
  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬: 不安症状を比較的速やかに抑える効果があります。パニック発作の頓服薬として用いられることもあります。しかし、長期的に使用すると依存性や耐性(薬が効きにくくなること)が生じるリスクがあるため、最小限の量で短期間の使用が推奨されることが多いです。
  • その他: 不安の種類や症状に応じて、βブロッカー(身体症状、特に動悸や震えに有効)、三環系抗うつ薬、非定型抗精神病薬などが用いられることもあります。

薬物療法を開始する際は、効果だけでなく副作用についても医師から十分な説明を受けることが大切です。また、自己判断で服用を中止したり、量を調整したりすることは危険です。必ず医師の指示に従いましょう。

不安障害のセルフケア

専門的な治療と並行して、日常生活でできるセルフケアも不安障害の症状を和らげる上で非常に重要です。

  • 規則正しい生活: 毎日決まった時間に寝て起きて、十分な睡眠時間を確保しましょう。バランスの取れた食事を心がけ、カフェインやアルコールの過剰摂取は避けましょう。
  • 適度な運動: ウォーキング、ジョギング、ヨガなど、心地よいと感じる運動を継続的に行うことは、ストレス軽減や気分転換に効果的です。
  • リラクゼーション: 深呼吸、瞑想、マインドフルネス、ストレッチなど、自分に合ったリラックスできる時間を取り入れましょう。
  • ストレス管理: ストレスの原因を特定し、可能であれば解消したり、対処法を考えたりしましょう。一人で抱え込まず、信頼できる家族や友人に話を聞いてもらうことも有効です。
  • 趣味や気分転換: 好きなことや楽しいと感じる活動に時間を使うことは、気分転換になり、不安から一時的に離れることができます。
  • 不安との付き合い方を学ぶ: 不安を完全にゼロにすることは難しいかもしれません。不安を感じたときに、どうすればその不安と建設的に向き合えるか、専門家から学んだスキル(認知行動療法の技法など)を実践してみましょう。
  • 日記をつける: どのような状況で不安を感じやすいか、その時どんな考えや身体症状が現れるかなどを記録することは、自分の不安のパターンを理解するのに役立ちます。

セルフケアは治療をサポートするものであり、専門的な治療の代わりにはなりません。しかし、日々の実践を続けることで、症状のコントロール力を高め、再発予防にもつながります。

医療機関の選び方

不安や症状について専門家に相談しようと思ったとき、「どこに行けばいいの?」「どうやって選べばいいの?」と迷う方もいるかもしれません。適切な医療機関を選ぶことは、治療をスムーズに進める上で大切です。

精神科と心療内科の違いは?

一般的に、精神科は心の病気全般(不安障害、うつ病、統合失調症など)を専門に診る科です。心療内科は、ストレスなどが原因で起こる身体症状(胃痛、動悸、頭痛など)を伴う心の病気(心身症)を主に診る科です。

不安障害は精神科、心療内科のどちらでも診察・治療を受けることができます。ご自身の主な症状が精神的なものか、それとも身体症状が強いか、で選ぶ目安になることもありますが、どちらの科でも不安障害の診療経験がある医師であれば問題ありません。

医療機関選びのポイント

  • アクセス: 自宅や職場から通いやすい場所にあるか確認しましょう。定期的な通院が必要になる場合があるため、アクセスが良い方が負担が少なくなります。
  • 予約の取りやすさ: 事前に電話やウェブサイトで、初診の予約がどのくらい先になるか確認しておきましょう。すぐに受診できないと、その間の不安が大きくなる可能性があります。
  • 医師との相性: 信頼できる医師に出会えるかは非常に重要です。話をしっかり聞いてくれるか、分かりやすい言葉で説明してくれるか、不安な点や疑問点に丁寧に答えてくれるかなどを重視しましょう。初診で合わないと感じたら、セカンドオピニオンを検討しても良いでしょう。
  • 専門性: 不安障害の治療経験が豊富な医師やクリニックを選ぶと安心です。クリニックのウェブサイトなどで、診療内容や医師の専門分野を確認してみましょう。認知行動療法を受けたい場合は、それが可能な医療機関を選ぶ必要があります。
  • 治療方針の説明: どのような治療法があるのか、それぞれのメリット・デメリット、予想される治療期間、費用などについて、医師から丁寧に説明を受けられるかどうかも重要なポイントです。治療は医師と患者さんが協力して進めるものです。
  • クリニックの雰囲気: クリニックの内装や待合室の雰囲気、スタッフの対応なども、リラックスして通院できるかに関わります。可能であれば、事前にウェブサイトの写真を見たり、口コミを参考にしたりしてみましょう。
  • 費用: 保険診療が中心ですが、自由診療のカウンセリングなどを提供している場合もあります。費用についても事前に確認しておくと安心です。

初めて精神科や心療内科を受診するのは、勇気がいることかもしれません。しかし、一歩踏み出すことで、適切なサポートを受けられ、症状が改善し、より自分らしい生活を取り戻すことができる可能性が大きく広がります。一人で悩まず、専門家の力を借りることを検討してください。

不安障害についてよくある質問

不安障害は治る病気ですか?

不安障害は、適切な治療(薬物療法や精神療法、セルフケアなど)を受けることで、症状をコントロールし、回復が期待できる病気です。多くの場合、症状が大きく改善し、以前と同じように日常生活を送れるようになります。ただし、回復までの期間や、再発のリスクは個人差があります。根気強く治療に取り組むことが大切です。

子供も不安障害になりますか?

はい、子供も不安障害になることがあります。分離不安症、社交不安障害、特定の恐怖症、全般性不安障害などが子供にも見られます。大人とは異なった形で症状が現れることもあるため、子供の行動や様子に変化が見られたら、小児精神科医や児童精神科医に相談することが重要です。

不安障害の人が避けるべきことはありますか?

不安障害の症状を悪化させる可能性のあるものとして、カフェインやアルコールの過剰摂取が挙げられます。これらは不安や動悸、睡眠障害を悪化させることがあります。また、ストレスを溜め込みすぎることや、無理な生活習慣も症状に悪影響を与えることがあります。不安を感じる状況を過度に回避しすぎると、かえって不安が強化されてしまうことがあるため、専門家の指導のもと、少しずつ不安に慣れていく練習(曝露療法など)も有効です。

家族や友人が不安障害になったら、どう接すれば良いですか?

まず、不安障害が本人の「気の持ちよう」や「甘え」ではなく、脳の機能も関連する病気であることを理解することが大切です。責めたり、安易な励ましをしたりするのではなく、本人の辛い気持ちに寄り添い、話を聞いてあげましょう。専門医への受診を勧めたり、通院に付き添ったりするなど、治療をサポートすることも有効です。ただし、支える側も無理をせず、疲れてしまったら専門機関(家族相談窓口など)に相談することも考えてください。

職場に不安障害であることを伝えるべきですか?

プライバシーに関わることなので、伝えるかどうかはご自身の判断になります。しかし、症状によって業務に支障が出ている場合や、休職・復職にあたっては、病状を伝えることで、仕事内容や勤務時間の調整、配慮を受けられる可能性があります。産業医や人事に相談する、診断書を提出するなど、専門家を介して伝える方がスムーズな場合もあります。主治医にも相談してみましょう。

【まとめ】不安や症状に悩んだら、専門家に相談を

不安障害は、過剰な不安や恐怖によって日常生活に支障をきたす心の病気です。様々な種類があり、症状の現れ方も人によって異なります。この記事で紹介したセルフチェックリストは、ご自身の不安の傾向を把握するための一つのきっかけにはなりますが、その結果だけで自己判断をすることは危険です。

動悸、息苦しさ、めまいといった身体症状を伴うことも多く、「体の病気では?」と心配される方もいらっしゃいますが、専門医による正確な診断を受けることが、適切な治療への第一歩となります。

不安障害の治療法には、認知行動療法のような精神療法、脳の働きを調整する薬物療法、そして日々のセルフケアなどがあり、これらを組み合わせて行うことで、多くの場合は症状の改善が期待できます。

もし、あなたが記事を読んで、ご自身の不安や身体症状について気になる点がある、もしかして不安障害かもしれない、と感じたなら、一人で抱え込まず、精神科や心療内科といった専門の医療機関に相談することを強くお勧めします。専門家のサポートを受けることで、辛い症状から解放され、より健やかな生活を取り戻すことができるでしょう。


免責事項:
この記事は、不安障害に関する一般的な情報提供を目的としており、医療行為や医学的アドバイスを意図したものではありません。記事内のセルフチェックは簡易的なものであり、医療機関での診断に代わるものではありません。ご自身の健康状態や症状について不安がある場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。記事の情報を利用して生じた結果について、筆者および公開者は一切の責任を負いません。治療の選択や薬の使用に関しては、必ず医師の指導に従ってください。

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