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腹痛と吐き気が同時に起こる原因は?考えられる病気と受診目安を解説

こちらの記事の監修医師

吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長

佐々木 洋

突然の腹痛と吐き気に、「ただの食べ過ぎだろうか」「何か重い病気では?」と不安になっていませんか。多くは数日で回復する胃腸炎ですが、中には急性虫垂炎や腸閉塞のように緊急の処置を要する病気が隠れていることもあり、安易な自己判断は危険です。

この記事では、腹痛と吐き気の原因として考えられる病気を、緊急性の高いものから順に解説します。さらに、痛む場所から原因を探るセルフチェックの方法や、すぐに病院へ行くべきかどうかの受診目安も詳しく紹介します。

ご自身の症状と照らし合わせることで、危険度を正しく判断し、適切な診療科を選ぶ手助けとなります。つらい症状の原因を理解し、落ち着いて行動するための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。

まずは確認!腹痛と吐き気に伴う危険なサイン

腹痛と吐き気が同時に起きたとき、まず確認すべきは「緊急性があるかどうか」という危険なサインです。

多くは食べ過ぎやウイルス感染による胃腸炎など、数日で自然に回復に向かいます。しかし、中には急性虫垂炎や腸閉塞のように、緊急の処置や手術を必要とする病気が隠れていることも少なくありません。

特に、以下のような「いつもと違う」症状がある場合は、自己判断で様子を見るのは危険です。

  • これまでに経験したことのない激しい痛み
  • 痛みが1日以上続いている
  • 何度も吐いてしまい、吐き気がおさまらない
  • 腹痛や吐き気以外に、発熱や冷や汗、血便などの症状がある

これらのサインに気づいたら、安易に市販薬で痛みを抑えようとせず、速やかに医療機関に相談してください。

これがあったら救急車を!緊急性の高い症状チェックリスト

救急車の要請を検討すべき緊急性の高い症状は、命に関わるサインである可能性があります。

以下のチェックリストに一つでも当てはまる場合は、ためらわずに救急車を呼ぶか、ご自身で判断に迷う場合は救急安心センター事業(#7119)にご相談ください。

  • 突然、バットで殴られたような激しい腹痛が始まった
  • 冷や汗が止まらない、顔が真っ青になる、意識が遠のく
  • 呼びかけに反応が鈍い、意識がはっきりしない
  • 血を吐いた(吐血)、便に大量の血が混じる(下血)、真っ黒な便(タール便)が出た
  • お腹を触ると板のように硬い
  • 胸や背中、肩に突き抜けるような激しい痛みを伴う
  • 何度も激しく嘔吐し、水分をまったく摂れない
  • (妊娠中の方)強い腹痛や出血がある

これらの症状は、腹部大動脈瘤の破裂や消化管穿孔(胃や腸に穴が開くこと)など、一刻を争う事態を示唆していることがあります。

夜間・休日でも受診を検討すべき症状とは

夜間や休日であっても、翌日まで待たずに受診を検討すべき症状があります。

「救急車を呼ぶほどではないかもしれない」と感じても、以下のような状態であれば、お近くの夜間休日診療所や救急外来を受診してください。

  • 痛みが時間とともに悪化している、または痛くて眠れない
  • 嘔吐や下痢が止まらず、ぐったりして水分を受け付けない
  • 38℃以上の高熱が出て、寒気や震えがある
  • 少量の血便や黒っぽい便が出た
  • 小さなお子様、ご高齢の方、妊娠中の方に症状が出ている
  • 糖尿病、心臓病、肝臓病などの持病がある方や、免疫を抑える薬(ステロイドや免疫抑制剤など)を服用中の方

特に、持病をお持ちの方や免疫力が低下している方は、感染症などが重症化しやすいため、早めの対応が重要です。

我慢できないほどの激しい腹痛

我慢できないほどの激しい腹痛は、市販の痛み止めで対応せず、すぐに原因を調べるべき重要なサインです。

痛み止めを飲むと一時的に症状が和らぐことがありますが、これは根本的な解決にはなりません。むしろ、病気の発見を遅らせ、その間に病状が悪化してしまうリスクを高めます。

例えば、以下のような病気は、激しい腹痛を引き起こし、緊急の処置や手術が必要になることがあります。

  • 急性虫垂炎(盲腸)
  • 腸閉塞
  • 急性膵炎
  • 胆石発作
  • 尿管結石
  • (女性の場合)卵巣茎捻転などの婦人科疾患

「じっとしていられない」「脂汗が出る」「どんな姿勢をとっても楽にならない」ほどの痛みを感じる場合は、我慢せずに速やかに救急外来を受診してください。

腹痛と吐き気の原因として考えられる主な病気

腹痛と吐き気が同時に起こる原因は、緊急手術を要する病気から、ウイルス感染、日常の不調までさまざまです。消化管は口から肛門まで一本の管でつながっているため、どこか一部に起きたトラブルが、吐き気(上部消化管の異常)や腹痛(消化管全体の異常)として同時に現れることは少なくありません。

症状だけで原因を正確に見分けるのは難しく、自己判断は重篤な病気の見逃しにつながる危険があります。

ここでは、考えられる原因を「緊急性の高い病気」「感染による病気」「その他の病気」の3つに分けて解説します。

【年代・状況別】特に注意が必要なケース - 画像 1

【緊急性が高い】急性虫垂炎、腸閉塞、急性膵炎など

腹痛と吐き気を伴う病気の中には、放置すると命に関わるため、一刻も早い診断と治療が求められるものがあります。

以下に、緊急性の高い代表的な病気とその特徴をまとめました。

病名主な症状の特徴
急性虫垂炎(盲腸)・はじめはみぞおちの痛みや吐き気
・数時間かけて痛みが右下腹部へ移動
・歩くと響くような痛み、発熱
腸閉塞(イレウス)・便やガスが全く出なくなる
・お腹がパンパンに張る(腹部膨満)
・激しい腹痛と、便のような臭いのする嘔吐
急性膵炎・みぞおちから背中にかけて体を丸めてしまうほどの激痛
・吐き気や嘔吐、発熱を伴う
・アルコールの多飲や胆石がきっかけになることも

これらの病気は、腸に穴が開いたり(穿孔)、腹膜炎を起こしたりと、重篤な状態に進行する可能性があります。
少しでも疑わしい症状があれば、様子を見ずに、ただちに救急外来を受診するか、救急車を呼んでください。

【感染が原因】ウイルス性胃腸炎(ノロウイルスなど)、食中毒

ウイルスや細菌が体内に入ることで起こる胃腸炎は、腹痛と吐き気の原因として最も多いものの一つです。嘔吐や下痢は、体内に侵入した病原体を外に排出しようとする体の防御反応といえます。

  • ウイルス性胃腸炎

    ノロウイルスやロタウイルスなどが原因で、特に空気が乾燥する冬場に流行します。感染力が非常に強く、ご家族や職場などでの集団発生も珍しくありません。
  • 細菌性食中毒

    サルモネラ菌、カンピロバクター、O-157(腸管出血性大腸菌)などの細菌に汚染された食品を食べることで発症します。夏場に多く見られますが、一年を通して注意が必要です。

多くは安静と水分補給で数日以内に回復に向かいますが、脱水や重症化を防ぐため、以下のような場合は医療機関を受診してください。

  • 水分を全く受け付けず、ぐったりしている
  • 38℃以上の高熱が続く
  • 血が混じった便(血便)が出る
  • 我慢できないほどの激しい腹痛がある

また、ご家庭では手洗いやアルコール消毒を徹底し、タオルの共有を避けるなど、二次感染を防ぐ対策が重要です。

【その他】胃潰瘍、胆石症、過敏性腸症候群(IBS)

すぐ命に関わるわけではないものの、日常生活の質を大きく下げ、放置すると悪化する可能性のある病気も腹痛と吐き気の原因となります。

病名特徴的な症状と原因
胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃酸によって粘膜が深く傷つく病気
・空腹時や食後のみぞおちの痛み、吐き気
・出血すると黒い便(タール便)が出ることも
胆石症・胆嚢炎・胆汁の成分が固まってできた石(胆石)が原因
・脂っこい食事の後の右上腹部の激しい痛み
・発熱を伴う場合は胆嚢の炎症(胆嚢炎)の可能性も
過敏性腸症候群(IBS)・検査では異常が見つからないのに、腹痛や不快感が続く
・ストレスなどが関連し、下痢や便秘を慢性的に繰り返す

これらの病気は、症状だけでは正確な診断が難しいため、専門的な検査が重要になります。

例えば、繰り返すみぞおちの痛みや吐き気があれば、胃カメラで胃や十二指腸の状態を直接確認します。右上腹部の痛みでは、腹部エコー(超音波検査)で胆石の有無を調べることが可能です。

つらい症状が続く場合は、自己判断で我慢せず、消化器内科で一度ご相談ください。

症状でセルフチェック!痛む場所から原因を探る

腹痛と吐き気は、お腹の中にある臓器からの重要なサインです。どこが痛むかによって、原因となっている病気をある程度推測できます。

ただし、これはあくまで目安です。痛みの感じ方には個人差があり、原因の場所とは離れたところが痛む「関連痛」という現象も起こるため、痛みの場所だけで病気を自己判断するのは危険です。

ご自身の症状と照らし合わせ、少しでも不安があれば専門の医療機関に相談しましょう。

みぞおちの痛み(胃・十二指腸潰瘍、急性膵炎など)

お腹の上の真ん中あたり、一般的に「みぞおち」と呼ばれる部分の痛みと吐き気は、胃や十二指腸、膵臓の不調が考えられます。

特に、以下のようなサインに注意してください。

  • 食後や空腹時にキリキリと痛む
  • 胸やけや、酸っぱいものがこみ上げてくる(呑酸)
  • 背中に突き抜けるような、かがみ込んでしまうほどの激しい痛み
  • イカ墨のように真っ黒な便(タール便)が出る

タール便は、胃や十二指腸から出血した血液が胃酸によって黒く変化したもので、消化管出血のサインです。

考えられる病気には胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、急性膵炎などがあります。また、見逃されがちですが、急性虫垂炎(盲腸)も最初はみぞおちの痛みから始まることが少なくありません。

症状が続く場合は、原因を特定するために消化器内科を受診しましょう。当院では、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)や腹部エコー(超音波検査)で詳しく調べられます。胃カメラのつらさが心配な方には、鎮静剤を用いてうとうとと眠っている間に受けられる苦痛に配慮した検査もご提案できますので、お気軽にご相談ください。

右上腹部の痛み(胆石症、胆嚢炎など)

右の肋骨の下あたり(右上腹部)が痛む場合は、肝臓や胆嚢(たんのう)の病気が疑われます。胆嚢は、肝臓で作られた脂肪の消化を助ける「胆汁」という液体を一時的に溜めておく袋状の臓器です。

胆嚢の病気では、次のような特徴的なサインが現れることがあります。

  • 天ぷらや焼肉など、脂っこい食事の後に急な激痛が起こる
  • 吐き気や嘔吐を伴う
  • 寒気を伴う高熱が出る
  • 皮膚や白目が黄色っぽく見える(黄疸)

これらの症状は、胆汁の成分が石のように固まった「胆石」が原因で起こる胆石発作や、胆嚢に細菌が感染して炎症を起こす胆嚢炎(たんのうえん)の可能性があります。

我慢できないほどの激しい痛みや高熱、黄疸がある場合は、緊急の処置や手術が必要になることもあるため、ただちに救急外来を受診してください。「時々痛む」「重苦しい感じがする」といった症状の場合は、当院の腹部エコー検査で胆石の有無や胆嚢の状態を確認できます。この検査は身体への負担が少ないのが特徴です。

右下腹部の痛み(急性虫垂炎など)

右下腹部の痛みと吐き気で、まず警戒すべき病気が急性虫垂炎(いわゆる「盲腸」)です。放置すると虫垂が破裂し、お腹全体に炎症が広がる「腹膜炎」という命に関わる状態に進行することがあるため、早期診断が何よりも大切です。

急性虫垂炎には、下記のような特徴的なサインがあります。

  • 痛みの移動:最初はみぞおちやへその周りの不快感から始まり、数時間〜半日かけて痛みが右下腹部に移ってくる。
  • 響く痛み:歩いたり、軽くジャンプしたりすると右下腹部に痛みが響く。
  • その他の症状:吐き気や食欲不振、37〜38℃程度の発熱を伴うことが多い。
  • 押したときの痛み:右下腹部を指で軽く押して、パッと離したときに痛みが強くなる(反跳痛)。

これらの症状に一つでも当てはまる場合は、自己判断で様子を見るのは非常に危険です。市販の痛み止めは病気のサインを隠し、診断を遅らせる原因になるため使わず、夜間や休日でもためらわずに救急外来を受診してください。

お腹全体や下腹部の痛み(感染性胃腸炎、腸閉塞など)

痛む場所がはっきりとせず、お腹全体や下腹部に広がる痛みと吐き気がある場合は、腸のさまざまな病気が考えられます。伴う症状によって、原因はある程度絞り込めます。

下表に主な原因と対応を整理しました。

伴う症状考えられる主な原因対応
激しい下痢や発熱・感染性胃腸炎(ウイルス・細菌)・安静と水分補給が基本
・脱水がひどい場合は受診

便やガスが全く出ない

お腹がパンパンに張る

嘔吐を繰り返す
・腸閉塞(イレウス)・緊急性が非常に高い
・ただちに救急外来を受診

便秘と下痢を繰り返す

ストレスで悪化する
・過敏性腸症候群(IBS)・消化器内科でご相談ください

上記のほかにも、大腸の壁にできた小さなくぼみに炎症が起きる「大腸憩室炎」や、女性の場合は卵巣・子宮の病気が原因のこともあります。

特に注意したいのは、血便、原因不明の腹痛が続く、急な体重減少といった症状です。これらは大腸がんのサインである可能性も否定できません。「いつものお腹の不調」と自己判断せず、症状が続く場合は消化器内科にご相談ください。当院では、必要に応じて大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)による精密検査も行っています。

今すぐ病院?自宅で様子見?受診の目安と診療科

腹痛と吐き気で受診すべきか迷ったときは、「症状の強さ」と「他にどんな症状があるか」が判断の分かれ目です。一時的な胃の不調であれば自宅で回復することもありますが、中には緊急治療を要する病気が隠れていることもあります。

ここでは、ご自身で受診の必要性を判断するための具体的な基準と、適切な診療科の選び方、診察時に役立つ準備について解説します。

受診を迷ったときの判断基準

受診を迷った際は、痛みの強さや変化、水分が摂れるか、発熱や血便などのサインがないかを確認しましょう。

以下のチェックリストに一つでも当てはまる場合は、自己判断で様子を見ずに、速やかに医療機関を受診してください。

【すぐに受診すべき危険なサイン】

  • 立っていられない、我慢できないほどの激しい腹痛
  • 痛みが時間とともに悪化している
  • 何度も吐いてしまい、水分を全く受け付けない
  • 吐いたものに血が混じっている(吐血)
  • コーヒーのカスのような黒いものを吐いた
  • 便に血が混じる(血便)、真っ黒な便(タール便)が出た
  • 38℃以上の高熱と悪寒(寒気・震え)がある
  • 冷や汗が止まらない、めまいがする、意識が遠のく

一方で、痛みが比較的軽く、吐き気もおさまり、少量ずつでも水分が摂れるのであれば、少し様子を見ることもできます。

ただし、症状が半日以上続く、一度良くなっても繰り返す、あるいは少しでも不安を感じる場合は、無理せず医療機関へ相談することをおすすめします。

何科を受診すればいい?(消化器内科・内科・救急)

腹痛と吐き気でかかる診療科は、症状の緊急性によって変わります。症状に応じて適切な科を選びましょう。

診療科こんなときにおすすめ
救急科(救急外来)・意識がはっきりしない、冷や汗が止まらない
・我慢できないほどの激しい痛み
・吐血や多量の血便がある
※緊急性が非常に高い場合は救急車(#7119)を検討
消化器内科・腹痛や吐き気が続いている、または繰り返す
・胃もたれ、胸やけ、下痢、便秘なども伴う
・血便や黒い便が出た
・原因をはっきりさせるため、専門的な検査を受けたい
内科・どの診療科を受診すればよいか迷う
・まずはかかりつけ医に相談したい

胃や腸、肝臓、胆嚢、膵臓といった「消化器」が原因と考えられる症状の場合、消化器を専門とする消化器内科が最も適しています。

当院のような消化器内科では、専門医が診察し、必要に応じて腹部エコー(超音波検査)や胃・大腸カメラ(内視鏡検査)を用いて、症状の根本原因を突き止め、正確な診断につなげられます。

医師に症状を的確に伝えるための準備リスト

診察の際、症状を正確に伝えることは、迅速で的確な診断の第一歩です。受診前に以下の項目についてメモをしておくと、診察がスムーズに進みます。

【医師に伝えること準備リスト】

  • いつから?:症状が始まった正確な日時(例:昨日の夕食後から)
  • どこが?:痛む場所(例:みぞおち、右下腹部)。痛む場所は移動しましたか?
  • どんな痛み?:痛みの性質(例:キリキリ、ズキズキ、差し込むような激痛)
  • 痛みの強さ:10段階でどのくらいか。時間とともに強くなっていますか?
  • 吐き気・嘔吐:吐いた回数、吐いたものの色や内容(例:食べたもの、胃液、血、コーヒーかすのようなもの)
  • 便の状態:下痢か便秘か、便の色(例:普通の色、黒、赤黒い)
  • 他の症状:発熱、悪寒(寒気)、冷や汗、めまい、胸やけ、お腹の張り
  • きっかけ:思い当たる原因(例:脂っこい食事、飲酒、ストレス、生ものの摂取)
  • 基本情報:持病、服用中の薬、アレルギー、過去の手術歴、妊娠の可能性

当院では、来院前にご自宅から症状などを入力できるWEB問診システムをご利用いただけます。事前にご入力いただくことで受付や診察がよりスムーズになりますので、ぜひご活用ください。

自宅でできる応急処置と注意点

腹痛や吐き気が比較的軽い場合、ご自宅での応急処置が症状の緩和に役立つことがあります。ただし、これらの対処はあくまで一時的なものであり、重篤な病気のサインを見逃さないことが何よりも大切です。「危険なサイン」がある場合は、応急処置に頼らず速やかに医療機関を受診してください。

安静にする際の楽な姿勢

腹痛や吐き気があるときは、まず身体を休め、お腹への圧迫を避ける姿勢をとることが基本です。ベルトやきつい衣服は緩め、心身ともにリラックスできる環境を整えましょう。

横になる際は、胃の構造上、体の左側を下にすると食べ物や胃酸の逆流が起こりにくくなると考えられています。

  • 横向きで寝る: 体の左側を下にし、膝を軽く曲げるとお腹の筋肉が緩み、痛みが和らぐことがあります。
  • 上半身を少し起こす: 吐き気が強い場合は、枕やクッションを背中にあてて上体を少し高くすると楽になる場合があります。

ご自身が最も楽だと感じる姿勢で安静にすることが第一ですが、どのような姿勢でも痛みが楽にならない、むしろ悪化するといった場合は、我慢せずに医療機関を受診しましょう。

食事や水分補給の正しい方法

吐き気や腹痛があるときの飲食は、脱水を防ぎつつ、弱った胃腸に負担をかけないことが鉄則です。特に嘔吐や下痢を伴う場合は、水分とミネラルが失われやすいため注意が必要です。

【水分補給のポイント】

吐き気が強いときは無理に飲まず、少し落ち着いてからスプーン1杯程度の量を5〜10分おきに試しましょう。

  • おすすめの飲み物: 体への吸収が速い経口補水液が最適です。なければ常温の水や麦茶でも構いません。
  • 避けるべき飲み物: 冷たすぎる・熱すぎるもの、炭酸飲料、カフェイン、アルコールは胃腸を刺激するため控えましょう。

【食事のポイント】

吐き気があるうちは無理に食べる必要はありません。食欲が少し回復してきたら、消化の良いものを少量から試してください。

  • おすすめの食事: おかゆ、よく煮込んだうどん、野菜スープ、すりおろしたリンゴ、バナナ、豆腐など。
  • 避けるべき食事: 脂っこいもの(揚げ物など)、香辛料の多いもの、食物繊維の多いもの(きのこ、海藻など)は、消化に時間がかかり胃腸の負担となるため回復するまで避けましょう。

何度も嘔吐して水分を全く受け付けない、尿の量が極端に少ないといった場合は、脱水が進行しているサインです。速やかに医療機関を受診してください。

市販の痛み止めや胃薬は飲んでもいい?

つらい腹痛や吐き気に対し、自己判断で市販薬を使用することは原則としておすすめできません。薬によって症状が一時的に隠れ、根本的な原因となっている病気の発見を遅らせてしまう危険があるためです。

特に注意が必要な薬は以下のとおりです。

薬の種類注意すべき理由

痛み止め

(NSAIDsなど)
・胃の粘膜を保護する物質の働きを弱め、胃潰瘍などを悪化させる可能性がある
・急性虫垂炎などの痛みを一時的にごまかしてしまい、診断の遅れにつながる危険がある
下痢止め・感染性胃腸炎の場合、原因となるウイルスや細菌を体外へ排出しようとする体の防御反応を妨げ、かえって回復を遅らせることがある

胃薬

(胃酸抑制薬など)
・一時的に症状が和らぐことがあるが、胆石症や急性膵炎など、胃酸が原因ではない病気には効果がない
・「薬が効いた」と誤解し、受診のタイミングを逃すことにつながりかねない

「とりあえず薬で様子を見よう」という判断が、重篤な病気の進行を許してしまうことにもなりかねません。

我慢できないほどの強い痛みがある場合や、市販薬を使っても症状が改善しない・繰り返す場合は、必ず医療機関を受診し、専門家による正確な診断を受けることが大切です。原因を特定することが、適切な治療への第一歩といえます。

【年代・状況別】特に注意が必要なケース

腹痛と吐き気は、同じ症状でも年代や身体状況によって危険度が変わることがあります。子どもは脱水症状に、高齢者は重篤な病気でも症状がはっきり現れないことに、そして妊娠中は母体と胎児の両方への影響を考える必要があります。これらのケースでは、大人のように自己判断で様子を見ず、早めの対応が求められます。

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子どもの場合(脱水症状に注意)

子どもの腹痛と吐き気で最も警戒すべきなのは「脱水症状」です。子どもは体に占める水分の割合が大人よりも多く、嘔吐や下痢によって水分と電解質が失われると、驚くほど速く脱水状態に陥ることがあります。

以下のようなサインが見られたら、脱水が始まっている可能性があります。ただちに小児科を受診してください。

【子どもの脱水サイン】

  • ぐったりしていて、あやしても笑わない
  • おしっこの回数や量が極端に少ない(半日以上出ていない)
  • 泣いているのに涙が出ていない
  • 口や舌が乾いて、粘ついている
  • 皮膚をつまんでも、すぐに元に戻らない

また、子どもの腹痛には、ウイルス性胃腸炎だけでなく、緊急手術が必要となる「急性虫垂炎」や「腸重積」といった病気も隠れています。特に腸重積は、腸の一部が内側に入り込んでしまう病気で、激しく泣くことと不機嫌な状態を周期的に繰り返し、特徴的ないちごジャムのような血便が出ることがあります。

「いつもと泣き方が違う」「嘔吐が止まらない」「血便が出た」といった場合は、夜間や休日であっても、ためらわずに救急外来を受診しましょう。

高齢者の場合(症状が出にくいことも)

ご高齢の方の場合、命に関わるような重篤な病気であっても、腹痛や発熱といった典型的な症状がはっきりと現れないため特に注意が必要です。加齢によって痛みの感覚が鈍くなったり、身体の炎症反応が弱くなったりするため、「なんとなく調子が悪い」「食欲がない」程度の訴えに留まることが少なくありません。

腹痛や吐き気に加えて、以下のような「いつもと違う様子」が見られたら、たとえ本人の訴えが弱くても、病気のサインである可能性があります。早めにかかりつけ医に相談してください。

【高齢者の危険なサイン】

  • 食欲がなく、ぐったりしている
  • 意識がぼんやりして、会話が噛み合わない
  • 理由なく不機嫌になったり、混乱しているように見えたりする
  • 繰り返し吐いてしまう
  • 急に歩けなくなる、立ち上がれない

腸閉塞や胆嚢炎、さらには心筋梗塞や大動脈解離といった病気が、腹痛として現れることもあります。普段の様子をよく知るご家族や周りの方が、ささいな変化に気づいてあげることが、重症化を防ぐ鍵となります。

妊娠中の場合(産婦人科か内科か)

妊娠中に腹痛や吐き気が起きた場合は、自己判断せず、まず「かかりつけの産婦人科に電話で相談する」のが大原則です。

その理由は、つわりのような妊娠に伴う生理的な症状なのか、胃腸炎や虫垂炎といった消化器の病気なのか、あるいは切迫流産・早産といった産科的な緊急事態なのか、ご自身で見分けることが極めて難しいためです。

特に、以下の症状がある場合は、ただちに産婦人科へ連絡してください。

【妊娠中の危険なサイン】

  • 性器からの出血を伴う
  • 我慢できないほどの強い腹痛がある
  • お腹がカチカチに張る、または規則的な張りを感じる
  • 38℃以上の高熱が出ている
  • 何度も嘔吐して、水分がまったく摂れない

妊娠中は使用できる薬が限られており、市販薬の安易な服用は胎児に影響を及ぼすリスクがあります。必ず医師の指示に従ってください。
かかりつけの産婦人科で診察を受けた結果、消化器の病気が疑われる場合には、産婦人科医と連携して当院のような消化器内科で詳しい検査や治療を行うこともあります。不安な症状があれば、まずはかかりつけの産婦人科医に相談しましょう。

まとめ

腹痛と吐き気が同時に起こる原因は、数日で回復に向かう胃腸炎から、緊急手術を要する病気までさまざまです。
症状だけで原因を正確に判断するのは難しく、自己判断で様子を見ることが重篤な病気の見逃しにつながる可能性もあります。我慢できないほどの激しい痛みや高熱、血便などの「いつもと違う」サインを見逃さず、市販薬でごまかさないことが何より重要です。
つらい症状が続く場合や少しでも不安があれば、我慢せずに消化器内科などを受診し、専門家による適切な診断を受けましょう。

吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長

佐々木 洋

  • 日本内科学会認定 総合内科専門医
  • 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
  • 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
  • 日本肝臓学会認定 肝臓専門医
  • 日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 厚生労働省認定難病指定医

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