胃が痛いときの対処法|原因別のセルフケアと受診の目安を解説


こちらの記事の監修医師
吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長
佐々木 洋
胃が痛いときの対処法|原因別のセルフケアと受診の目安を解説
この記事では、消化器病学会のガイドラインに基づき、胃痛の主な原因となる病気の特徴を解説します。身近な痛み止めやアルコールが胃に与える影響、専門的な検査についても詳しく紹介します。
ご自身の症状と照らし合わせることで、痛みの原因を推測し、適切なセルフケアや医療機関を受診する目安がわかります。つらい胃の不調を解消するための、次の一歩が見えてくるはずです。
胃痛の3大原因疾患|消化器病学会ガイドラインに基づく解説
胃痛といっても、その背景には「消化性潰瘍」「胃食道逆流症(GERD)」「機能性ディスペプシア(FD)」という、主に3つの代表的な病気が隠れていることがあります。
これらは痛むタイミングや伴う症状がそれぞれ異なり、ご自身の症状と照らし合わせることが原因を探る第一歩になります。どの症状に近いか、セルフチェックの参考にしてください。
ピロリ菌感染が主な原因「消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)」
消化性潰瘍は、胃酸の強力な消化作用によって、胃や十二指腸の粘膜が深くえぐられてしまう病気です。
日本消化器病学会のガイドラインでは、原因の多くはピロリ菌の感染であり、次に痛み止め(NSAIDs)の使用が挙げられています。※
痛みの出方には次のような特徴があります。
- 胃潰瘍:食事中から食後にかけて、みぞおちが痛む傾向がある
- 十二指腸潰瘍:空腹時や夜間など、胃が空っぽのときに痛む傾向がある
そのほか、吐き気や胃もたれ、ひどい場合には潰瘍からの出血による黒い便(タール便)や吐血がみられることもあります。※ 放置すると出血が続いたり、まれに胃に穴が開いたり(穿孔)する危険性もあるため、気になる症状があれば早めに消化器内科を受診することが大切です。
胸やけを伴う「胃食道逆流症(GERD)」
胃食道逆流症(GERD)は、胃酸を含んだ胃の中身が食道へとこみ上げてくることで、さまざまな不快な症状を引き起こす病気です。
胃痛のほかに、「胸が焼けるような感じ(胸やけ)」や、酸っぱい液体がのどまで上がってくる「呑酸(どんさん)」が代表的な症状として知られています。
命に直接関わる病気ではありませんが、つらい症状が続くことで生活の質(QOL)を大きく損なう可能性があります。※
- 脂肪の多い食事
- 食べ過ぎ
- 食後すぐに横になる
上記のような生活習慣のほか、肥満や加齢なども原因と考えられています。生活習慣を見直すことで症状が和らぐこともありますが、多くの場合、お薬による治療で症状の改善が期待できます。食後に胸やけを繰り返す場合は、一度ご相談ください。
検査で異常が見つからない「機能性ディスペプシア(FD)」
機能性ディスペプシア(FD)は、胃カメラなどで調べても潰瘍やがんのような目に見える異常がないのに、胃痛や胃もたれといった症状が慢性的に続く病気です。
「気のせい」「考えすぎ」などと思われがちですが、日本人のおよそ10人に1人がこの病気で悩んでいるとも言われています。※
みぞおちの痛みに加え、以下のような症状が特徴です。
- 早期飽満感:食事を始めてすぐに満腹になってしまう
- 食後の胃もたれ:食後にいつまでも胃が重く、張った感じがする
ストレスなどの心理的な要因や生活習慣の乱れ、胃の運動機能の低下、胃が刺激に敏感になることなどが複雑に絡み合って発症すると考えられています。※ 生活習慣の改善や適切な薬物療法で症状を和らげることが期待できますので、お一人で悩まずにご相談ください。
その痛み、薬の副作用かも?薬剤性消化性潰瘍
その胃痛は、いつも飲んでいるお薬が原因かもしれません。
痛み止めや持病の治療薬が、胃や十二指腸の粘膜を傷つけて潰瘍(かいよう)をつくる「薬剤性消化性潰瘍」は、厚生労働省も注意を呼びかけている副作用の一つです。
胃痛の原因はさまざまですが、特に薬を長期間服用している方は、副作用の可能性も考える必要があります。※

胃を荒らす原因となる痛み止め(NSAIDs)やステロイド剤
痛み止めとして市販もされている「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」や、アレルギー疾患などに使われるステロイド剤は、薬剤性消化性潰瘍の主な原因となります。
これらの薬は、痛みを抑える一方で、胃の粘膜を守るバリア機能(プロスタグランジンという物質)まで弱めてしまう性質があるためです。バリアが弱った胃は、自身の強力な胃酸によって粘膜が傷つけられ、潰瘍ができやすくなります。
消化性潰瘍の原因として、ピロリ菌の次に多いのがこのNSAIDsによるものとされています。※
【原因となりうる薬剤の例】
- 痛み止め・解熱鎮痛薬(NSAIDs):ロキソプロフェン、イブプロフェンなど
- ステロイド剤:アレルギー疾患や膠原病の治療薬
- 骨粗鬆症の治療薬:一部のビスホスホネート製剤など
- 血液をサラサラにする薬:抗血小板薬、抗凝固薬など
これらの薬を服用中に胃の不調を感じたら、副作用を疑ってみましょう。※
服用中に注意すべき初期症状(胃もたれ・みぞおちの痛み)
薬の服用中に「胃がもたれる」「みぞおちが痛む」といった症状を感じたら、それは薬剤性消化性潰瘍の初期サインかもしれません。
初めは軽い症状のため「いつものこと」と見過ごしがちですが、放置すると潰瘍が深くなり、突然の出血や、胃に穴があく「穿孔(せんこう)」という危険な状態に進むことがあります。
以下のような症状が薬を飲み始めてから現れたり、以前より強くなったりした場合は、早めに専門家へ相談してください。※
- 胃が重く、もたれる感じがする
- 食後にみぞおちのあたりが痛む
- 夜間や空腹時にみぞおちがシクシク痛む
- 胸やけや吐き気がある
- 食欲がない
黒い便や吐血は緊急のサイン
イカスミや海苔の佃煮のように「黒くドロッとした便(タール便)」や吐血は、潰瘍から出血していることを示す緊急のサインです。
胃や十二指腸で出血した血液は、胃酸によって黒く変色するため、便が黒くなります。出血量が多いと貧血を起こし、立ちくらみや動悸、冷や汗を伴うこともあります。
コーヒーかすのような黒褐色のものを吐いた場合や、鮮血そのものを吐いた場合も、命に関わる危険な状態です。※
これらの症状に気づいたら、絶対に放置せず、すぐに医療機関を受診するか、ためらわずに救急車を呼んでください。
アルコールは胃にどう影響する?知っておきたい飲酒と胃痛の関係
アルコールは、胃の粘膜を直接攻撃して胃酸の分泌を促すため、胃痛の直接的な原因となったり、症状を悪化させたりします。
胃の不調があるときは、まずお酒との付き合い方を見直すことが回復への近道です。
アルコールは胃だけにとどまらず、食道や腸といった消化管全体に影響を及ぼすことがわかっています。※
飲酒が胃食道逆流症を悪化させるメカニズム
アルコールは、胃酸の逆流を防ぐ”フタ”の役割を担う筋肉を緩めてしまうため、胃食道逆流症(GERD)を悪化させます。
私たちの食道と胃の境目には、「下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)」という筋肉が存在します。この筋肉は、普段は胃の中身が食道へこみ上げてこないように、つなぎ目をキュッと締めています。
しかし、アルコールにはこの下部食道括約筋を緩める作用があるため、胃酸が食道へ逆流しやすくなります。※
その結果、胸やけや、酸っぱいものが上がってくる呑酸(どんさん)、みぞおちの痛みといった症状が現れたり、悪化したりするのです。すでに胸やけなどの症状がある方は、飲酒習慣を見直すことが特に重要といえます。
嘔吐による吐血(マロリー・ワイス症候群)のリスク
お酒の飲み過ぎで激しく嘔吐した後に血を吐いた場合、「マロリー・ワイス症候群」の可能性があります。
これは、急激な腹圧の上昇によって食道と胃のつなぎ目付近の粘膜が耐えきれずに裂け、出血する病気です。
嘔吐を何度も繰り返した後に、鮮やかな赤い血を吐くのが特徴で、出血量が多い場合は命の危険も伴います。
厚生労働省も、多量の飲酒がきっかけとなり、強い嘔吐を繰り返すことで吐血につながる裂創(れっそう:裂けてできた傷)を起こすことがあると指摘しています。※ 吐血が見られた際は、出血量が少なくても自己判断で様子を見ず、直ちに医療機関を受診してください。
胃痛があるときにアルコールを控えるべき理由
胃痛があるときの飲酒は、弱った胃にさらにダメージを与え、回復を妨げるため控えるべきです。
アルコールが胃に及ぼす悪影響は、主に次の2つです。
- 胃粘膜への直接攻撃:アルコールそのものが、胃を守る粘膜バリアを直接破壊し、びらんや潰瘍を悪化させます。
- 胃酸分泌の促進:アルコールは胃酸の分泌を増やします。ただでさえ荒れている胃に、強力な酸がさらに追い打ちをかける形になります。
胃痛があるのに飲み続けるのは、いわば傷口に塩を塗るような行為です。
また、不適切な飲酒は胃痛の悪化だけでなく、胃食道逆流症や、長期的には胃がんのリスクを高めることも指摘されています。※ 胃の不調が続く場合は、原因をはっきりさせるためにも、一度お酒を休んで消化器内科にご相談ください。
専門医が行う精密検査でわかること|胃カメラ(内視鏡)への不安を解消
長引く胃痛の原因を正確に突き止め、適切な治療へつなげるためには、専門医による精密検査が欠かせません。なかでも胃カメラ(内視鏡)は、胃や食道の内部を医師が直接目で見て確認できるため、診断において非常に重要な役割を果たします。
「つらそう」「苦しそう」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、現在は鎮静剤の使用などにより、以前よりも格段に楽に検査を受けられるようになっています。

胃カメラで診断できる病気の一覧
胃カメラ検査では、モニターを通して胃や食道の粘膜をすみずみまで直接観察し、胃痛の原因となりうる病気をその場で診断できます。粘膜のわずかな色の変化や凹凸も見逃さず、より正確な診断につなげることが可能です。
【胃カメラで発見できる主な病気】
- 逆流性食道炎:胃酸の逆流によって食道の粘膜がただれている状態
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍:胃や十二指腸の粘膜が深くえぐられてしまった状態
- 慢性胃炎:ピロリ菌感染などにより胃の粘膜に慢性的な炎症が続いている状態
- 胃がん・食道がん:自覚症状が出にくい早期の段階で発見することが治療の鍵
- 胃ポリープ・十二指腸ポリープ:多くは良性ですが、種類によっては注意が必要
- 機能性ディスペプシア(FD):上記の病気がないことを確認した上で診断される
消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)の場合、胃潰瘍では食後の痛み、十二指腸潰瘍では空腹時の痛みといった特徴が見られます。※
検査の痛みや苦痛を和らげる方法
胃カメラの「つらい」というイメージを払拭するため、当院では患者さんのご希望や不安に合わせて、検査の負担を和らげる工夫を複数ご用意しています。消化器内視鏡専門医が、お一人おひとりに合った方法で丁寧に検査を進めます。
鎮静剤(静脈内鎮静法)の使用
点滴から鎮静剤を投与し、ウトウトと眠っているようなリラックスした状態で検査を受ける方法です。鎮静剤を使用することで、うとうととリラックスした状態で検査を受けていただくことが可能です。検査に伴う苦痛の軽減が期待できます。
経鼻内視鏡(鼻からのカメラ)
鼻から細いカメラを挿入する方法です。舌の付け根に触れないため、「おえっ」となる嘔吐反射が起きにくく、比較的楽に受けられます。検査中に医師と会話することも可能です。
女性医師による検査
当院には女性の消化器内視鏡専門医も在籍しています。「男性医師には話しにくい」と感じる方も、デリケートなお悩みを気兼ねなくお話しいただけます。
検査後の生活で注意すべき点
検査後は、使用した麻酔や検査内容によっていくつか注意していただきたい点があります。安全に検査を終えるためにも、医師や看護師からの説明を必ず守るようにしてください。
鎮静剤を使用した場合
検査後も眠気やふらつきが残ることがあります。安全のため、検査当日はご自身での車・バイク・自転車の運転は絶対におやめください。重要な判断や危険を伴う作業も避けていただきます。
飲食について
誤嚥(ごえん:飲食物が気管に入ること)を防ぐため、喉の麻酔が切れるまで検査後1時間程度は飲食を控えてください。その後、まずは少量の水を飲んで、むせないことを確認してから食事を摂りましょう。
組織検査(生検)を行った場合
粘膜の一部を採取した場合は、出血のリスクを避けるため、当日はアルコール摂取や香辛料などの刺激物が強い食事、激しい運動は控えていただきます。
ピロリ菌の検査方法と除菌治療の流れ
ピロリ菌は胃の粘膜にすみつき、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こす最大の原因とされています。胃がんのリスクを高めることもわかっているため、感染が確認された場合は除菌治療が重要です。※
ピロリ菌の検査方法
胃カメラの際に粘膜の一部を採取して調べる方法が最も確実です。そのほか、息を袋に吹き込んで調べる「尿素呼気試験」や、血液・尿・便で調べる方法もあります。
除菌治療の流れ
除菌治療は、お薬を1週間飲み続けることで行います。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1次除菌 | ・胃酸を抑える薬と2種類の抗生物質を服用 ・1日2回、7日間 |
| 除菌判定 | ・服薬終了から1〜2カ月後に、除菌が成功したかを確認 ・主に「尿素呼気試験」で判定 |
| 2次除菌 | ・1次除菌で成功しなかった場合に行う ・抗生物質の種類を変えて、再度7日間服用 |
2次除菌まで行うと、9割以上の方で除菌が成功するといわれています。除菌により、つらい潰瘍の再発を防ぎ、将来の胃がんリスクを下げることが期待できます。
まとめ
胃が痛いときの対処法は、その原因によって異なるため、自己判断で済ませずに原因を特定し、適切に対処することが回復への近道です。
胃痛は、消化性潰瘍や胃食道逆流症といった病気のほか、普段服用している薬の副作用や飲酒習慣が関係していることも少なくありません。
黒い便や吐血といった危険なサインを見過ごすと、重篤な状態につながる可能性もあります。
長引く胃痛や気になる症状があれば、一人で抱え込まずに消化器内科へご相談ください。
胃カメラなどの精密検査で原因を特定し、適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。
追加情報

吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長
佐々木 洋
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
- 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
- 日本肝臓学会認定 肝臓専門医
- 日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定難病指定医


