熱中症はどこからが重症?軽症・中等症・重症の見分け方と受診の目安


こちらの記事の監修医師
吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長
佐々木 洋
熱中症はどこからが重症?軽症・中等症・重症の見分け方と受診の目安
暑い日のめまいやだるさ、「ただの夏バテだろう」と軽く考えていませんか。熱中症は急速に悪化し、命に関わることもあるため、初期症状を正しく見極めることが重要です。
この記事では、熱中症の重症度を判断する3つのステージ(I度・II度・III度)の具体的な症状を解説します。さらに、自分でできる脱水チェック法や、間違いやすい応急処置の正しい対処法も詳しく紹介します。
読み終えれば、ご自身の症状や周りの人の状態を客観的に判断し、医療機関を受診すべきかの目安がわかります。いざという時に慌てず、安全を最優先した行動を取るための知識が身につくはずです。
まずはセルフチェック あなたの症状は熱中症?
暑い場所で過ごした後や、運動・作業中に体の不調を感じたら、それは熱中症のサインかもしれません。熱中症は、軽いめまいから始まり、気づかないうちに命に関わる状態へ悪化することもあるため、初期症状を見逃さないことが何よりも大切です。
これから紹介する症状は、ご自身の状態を把握するための目安です。ただし、これらの症状は感染症や脳・心臓の病気など、他の深刻な病気が原因で起こることもあります。症状が強い、いつもと明らかに様子が違う、判断に迷うといった場合は、自己判断せず速やかに医療機関へご相談ください。

頭痛やめまい、吐き気がある
頭痛、めまい、吐き気は、脱水や体温調節の乱れによって生じる熱中症の代表的なサインです。体内の水分や塩分が失われると、脳への血流が不安定になり、さまざまな不調を引き起こします。特に、急に立ち上がった時にクラっとする「立ちくらみ」は、熱中症の初期症状としてよく見られます。※
もし、暑い環境で以下のような症状が現れたら、迷わず涼しい場所へ移動し、体を休めてください。
- ズキズキと脈打つような頭痛
- 吐き気や、実際に吐いてしまう
- フワフワするめまい、立ちくらみ
休んでも症状が良くならない、または吐き気が強くて水分が摂れない場合は、我慢せずに医療機関を受診しましょう。
体がだるく、力が入らない
体が鉛のように重く、ぐったりして力が入らない。そんな強い倦怠感や虚脱感は、熱中症が悪化し始めているサインかもしれません。
「少し夏バテ気味なだけ」「疲れているだけ」と軽く考えがちですが、これは大量の汗で水分・塩分が失われ、体の機能が正常に働かなくなっている危険な状態です。※
特に、だるさと一緒に集中力や判断力が落ちてきたと感じる場合は注意が必要です。本人は「まだ大丈夫」と思っていても、周りから見ると「顔色が悪い」「ぐったりしている」ように見えることもあります。歩けない、食事が喉を通らないほどのだるさがあれば、早めに医療機関へ相談してください。
汗のかきかたがいつもと違う
汗のかき方の異常は熱中症のサインの一つですが、汗だけで重症度を判断するのは危険です。
熱中症の初期段階では、体は必死に体温を下げようとして、滝のような大量の汗をかくことがあります。しかし、脱水がさらに進むと、汗を作るための水分すら体からなくなり、逆に汗がピタッと止まってしまうことがあります。肌に触れると火照るように熱いのに、まったく汗をかいていない状態は、極めて危険なサインです。
つまり、「汗をたくさんかいているから大丈夫」でもなければ、「汗をかいていないから熱中症ではない」とも言えないのです。汗の量だけで判断せず、意識の状態や頭痛、吐き気の有無など、体全体の調子を総合的に見て判断することが重要です。
呼びかけへの反応が鈍い、意識がはっきりしない
呼びかけへの反応が鈍い、会話が噛み合わない、ぼーっとしているなど、意識の状態に変化が見られる場合は、命に関わる重症な熱中症(III度)の可能性があります。これは、異常な体温上昇によって脳の機能に障害が起きているサインであり、一刻を争う緊急事態です。※
このような状態の人に、無理に水分を飲ませようとすると、気管に入ってしまい窒息する危険があります。
- 名前を呼んでも返事がない、または的はずれな答えが返ってくる
- 視線が合わず、一点を見つめている
- まっすぐ歩けず、千鳥足になる
これらのサインが見られたら、ためらわずに救急車を呼び、到着を待つ間に体を冷やす処置を始めてください。
けいれんやひきつけを起こしている
筋肉がピクピクとけいれんしたり、体がガクガクと震えたりするのは、重症な熱中症の非常に危険なサインです。ただちに救急車を呼ぶ必要があります。
これは、汗で大量の塩分(ナトリウム)が失われた結果、筋肉が異常に興奮し、自分の意志とは関係なく収縮を繰り返している状態です。足がつる「こむら返り」も熱中症の症状(I度)として見られますが、全身におよぶけいれんは脳機能の障害が疑われる重篤な状態と考えられます。※
けいれんを起こしている人に無理に水分を飲ませたり、口の中に指や物を入れたりするのは絶対にやめてください。安全な場所に横向きに寝かせ、衣服をゆるめて体を冷やしながら、救急隊の到着を待ちましょう。
重症度を分ける3つのステージとその症状
熱中症は、症状の重さによって大きく3つのステージ(I度・II度・III度)に分けられます。これは、現場の応急処置で対応できるか、医療機関での治療が必要か、あるいは命の危険が迫る緊急事態かを判断するための大切な目安です。※
軽症(I度)だと思っていても、適切な対応が遅れると短時間で中等症(II度)や重症(III度)へと悪化することがあります。ご自身の症状がどの段階にあるかを知っておくことは重要ですが、判断に迷った場合は決して軽視せず、安全を第一に考えて医療機関や救急相談窓口(#7119)に相談してください。
I度(現場での応急処置で対応可能)
I度は、熱中症の中で最も軽い「軽症」の段階で、現場での迅速な応急処置が基本となります。
主な症状は、立ちくらみ、めまい、生あくび、顔のほてり、筋肉の痛みやけいれん(こむら返り)などです。※ この段階であれば、以下の応急処置で改善が期待できます。
- 移動する:風通しの良い日陰や、クーラーが効いた涼しい室内へ移動します。
- 体を冷やす:衣服をゆるめ、濡らしたタオルで体を拭いたり、うちわや扇風機で風を送ったりします。首筋や脇の下、足の付け根などを冷やすとより効果的です。
- 水分・塩分を補給する:経口補水液やスポーツドリンクなど、水分と塩分を同時に補給できる飲み物が望ましいです。
ただし、これらの処置を行っても症状が改善しない、あるいは頭痛や吐き気など新たな症状が出てきた場合は、II度以上に進行している可能性があります。速やかに医療機関の受診を検討してください。
II度(医療機関への搬送が必要)
II度は「中等症」に分類され、頭痛、吐き気、嘔吐、そして体がだるくて力が入らないといった強い倦怠感が特徴です。
この段階では、体内の水分と電解質のバランスが大きく崩れており、現場の応急処置だけでは回復が難しくなります。医療機関での診察が必要であり、点滴による水分・電解質の補給が必要になることも少なくありません。※
吐き気が強くて自分で水分を摂れない、ぐったりして動けないといった場合は、ためらわずに医療機関へ連れて行くか、ご自身で移動が難しい場合は救急車の要請を検討してください。
III度(生命の危機があり、入院・集中治療が必要)
III度は、熱中症の中で最も重い「重症」の段階です。意識がない、けいれんを起こす、呼びかけへの反応がおかしいといった意識障害が最大の特徴で、命に関わる極めて危険な状態です。
体温が40度以上にまで上昇し、脳だけでなく肝臓や腎臓といった重要な臓器に障害が及ぶこともあります。※ この段階では、一刻も早い救急搬送と、入院による専門的な集中治療が不可欠です。
周りの人が「なんだか様子がおかしい」と感じたら、それは命を救う重要なサインかもしれません。ためらうことなく直ちに119番通報し、救急隊の到着を待つ間、体を冷やす応急処置(衣服をゆるめる、首・わきの下・足の付け根を冷やすなど)を続けてください。
職場や屋外で役立つ脱水セルフチェック法
脱水は熱中症の大きな引き金になります。自分の体が水分不足に陥っていないかをこまめにチェックすることは、予防や早期発見に役立ちます。特に、汗を大量にかく職場や屋外での活動中は、知らず知らずのうちに脱水が進んでいることがあります。
ただし、これから紹介する方法はあくまで簡易的な目安です。体調が優れない場合は、これらのチェック結果だけで「大丈夫」と過信せず、休養や水分補給を最優先し、総合的に判断することが大切です。
爪を押して確認する「爪押し」テスト
爪押しテスト(専門的には毛細血管再充満時間テスト)は、指先の血の巡りを確認することで、脱水状態の目安を知るための簡単な方法です。
【テストの方法】
- 親指の爪を、もう片方の手の指で白くなるまで5秒ほど強く押します。
- 指を離し、爪の赤みが元のピンク色に戻るまでの時間を確認します。
健康な状態であれば、指を離してから2秒以内に元の色に戻ります。もし、色が戻るまでに3秒以上かかるようであれば、脱水によって体の末端の血の巡りが悪くなっている可能性があります。
ただし、気温が低い場所にいる時や、ご高齢の方、もともと血行が悪い方などでは、脱水状態でなくても戻りが遅くなることがあります。あくまで一つの目安としてご活用ください。
尿の色で脱水状態を把握する
尿の色は、体内の水分が足りているかを知るための、とても分かりやすいバロメーターです。体は、水分が足りている時は不要な水分を薄い尿として排出し、水分が不足している時は尿を濃くして水分を体内に保持しようとします。
トイレに行った際に、ご自身の尿の色を確認する習慣をつけてみましょう。
- 薄い黄色〜透明に近い色:水分が足りている良いサインです。
- 濃い黄色:水分が不足し始めているサイン。意識して水分を摂りましょう。
- 茶色に近い色:脱水が進んでいる危険なサイン。すぐに水分補給が必要です。
もし尿の色が濃くなっていたら、意識して水分補給を心がけてください。ただし、ビタミン剤の服用後や、特定の薬、病気によっても尿の色は変わることがあります。体のだるさや頭痛など他の症状とあわせて判断することが重要です。
応急処置のよくある間違いと正しい対処法
熱中症が疑われる人を見つけた時、良かれと思ってした応急処置が、かえって状態を悪化させてしまうことがあります。正しい知識を持つことが、ご自身と周りの人の安全を守ります。「涼しい場所へ移動」「体を冷やす」「水分・塩分補給」という3つの基本を守りつつ、特に「意識がない」「自力で水分が摂れない」といった危険なサインを見逃さないようにしましょう。
間違い 冷たい水やお茶を大量に飲ませる
意識がはっきりしている場合、冷たい飲み物で体を冷やし水分を補給すること自体は間違いではありません。しかし、大量の汗をかいた後に、塩分を含まない水やお茶だけを一度にがぶ飲みさせるのは、かえって危険な場合があります。
汗とともに失われた塩分が補給されないまま水分だけが増えると、体内のナトリウム濃度が急激に薄まる「低ナトリウム血症」という状態になり、頭痛や吐き気、けいれんを引き起こすことがあるからです。また、一気に大量に飲むと胃が驚いてしまい、吐き気を誘発することもあります。
正しい対処 経口補水液や食塩水で「塩分」も補給する
正しい対処は、汗で失われた「水分」と「塩分(電解質)」を同時に補給することです。
最も適しているのは、体液に近い成分バランスで体に素早く吸収される「経口補水液」です。もし手元になければ、スポーツドリンクや、水1リットルに対して食塩1〜2g(小さじ1/4杯程度)を溶かした食塩水でも代用できます。※
飲む際は、一気にではなく、本人が飲めるペースで少量ずつこまめに飲んでもらうのがポイントです。ただし、心臓や腎臓の病気で水分や塩分の摂取を制限されている方は、自己判断で大量に摂取せず、かかりつけ医に相談してください。
間違い 意識のない人の口に無理やり水分を入れる
意識がない、または呼びかけへの反応が鈍い人に、無理やり水分を飲ませようとすることは絶対にやめてください。
意識がはっきりしない状態では、うまく飲み込むことができず、水分が食道ではなく気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」を起こす危険が非常に高くなります。水分が肺に入ると、窒息や重い肺炎の原因となり、命に関わります。「水分を摂らせれば良くなるはず」という善意の行動が、最悪の結果を招きかねないことを覚えておいてください。
正しい対処 すぐに救急車を呼び、体を冷やしながら待つ
意識障害がみられる場合は、ためらわずに救急車を呼ぶことが最優先の正しい対処です。※ そして、救急隊が到着するまでのわずかな時間が、その後の経過を大きく左右します。
- すぐに119番通報する。
- 風通しの良い日陰やクーラーの効いた室内へ運び、安全な場所に寝かせる。
- 衣服をゆるめ、ベルトやネクタイを外して体を楽にする。
- 首の付け根、わきの下、足の付け根など、太い血管が通る場所を氷のうや濡れタオルで集中的に冷やす。
- 意識がない場合は、吐いたもので喉を詰まらせないよう、体を横向きにする。
これらの体を冷やす処置は、救急隊が到着するまで、そして到着してからも継続してください。
回復後の注意点 いつから運動や飲酒を再開できる?
熱中症の症状が治まった後も、あなたの体はまだ本調子ではありません。体温を調節する機能や内臓はダメージを受けており、すぐに元の生活に戻ると、熱中症を再発させたり、体調を崩したりするリスクが残っています。
特に、中等症以上で医療機関を受診した場合は、回復に時間がかかることがあります。焦らず、ご自身の体の声に耳を傾けながら、運動、仕事、飲酒などを段階的に再開していくことが大切です。
体の熱放散機能が回復するまでの期間
熱中症になると、体の熱を外に逃がすための発汗機能や血流の調節機能が一時的に低下します。そのため、症状がなくなったように感じても、再び暑い環境に身を置くと、うまく体温を下げられずに症状がぶり返すことがあります。
軽症であっても、回復した当日と翌日は無理をせず、涼しい場所でゆっくりと過ごしましょう。頭痛やだるさなどの症状が完全に消え、食欲や睡眠がいつも通りに戻ってから、少しずつ活動を再開するのが目安です。
飲酒は脱水を促し、体温調節機能をさらに乱すため、症状が残っている間は絶対に避けるべきです。回復後も、最初は控えめにするようにしましょう。
再発を防ぐための「暑熱順化」の重要性
熱中症の再発を防ぐためには、体を暑さに慣れさせていく「暑熱順化(しょねつじゅんか)」が非常に重要です。
暑熱順化が進むと、体はより効率よく汗をかけるようになり、さらに汗に含まれる塩分も少なくなるため、体温調節が上手になります。この順化には個人差がありますが、数日から2週間ほどかかるといわれています。※
梅雨明けの急に暑くなった時期に熱中症が多発するのは、多くの人の体がまだ暑さに慣れていない(暑熱順化できていない)ためです。再発予防のためには、日常生活の中で無理のない範囲で汗をかく習慣をつけることが効果的です。例えば、少し早歩きでウォーキングする、短い時間で軽い運動を行うなどして、徐々に体を暑さに慣らしていきましょう。
まとめ
熱中症は、意識障害やけいれんが見られたら命に関わる重症(III度)のサインであり、ためらわずに救急車を呼ぶことが何よりも大切です。
軽症(I度)の段階でも涼しい場所での休息と適切な水分・塩分補給は欠かせません。頭痛や吐き気が続く場合は中等症(II度)を疑い、速やかに医療機関を受診しましょう。
日頃から爪や尿の色で体調をチェックする習慣も、早期発見に役立ちます。ご自身や周りの人の「いつもと違う」というサインを見逃さず、迷ったときは早めに行動することが、安全を守る鍵となります。

吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長
佐々木 洋
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
- 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
- 日本肝臓学会認定 肝臓専門医
- 日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定難病指定医