
こちらの記事の監修医師
吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長
佐々木 洋
健康診断で「便潜血陽性」の結果を受け、「もしかして大腸がんでは」と不安を感じていませんか。国が40歳以上の方に推奨する検査ですが、陽性の通知にどう対応すべきか戸惑う方も多いでしょう。
この記事では、便潜血陽性が「要精密検査」を意味する理由や、自己判断の危険性を詳しく解説します。「1回だけの陽性」「痔があるから」といったケースで、なぜ大腸カメラによる精密検査が必要なのかがわかります。
便潜血陽性は「要精密検査」|1回でも陽性なら大腸カメラを検討
便潜血検査で「陽性」という結果は、「要精密検査」を意味するサインです。これは「大腸がんが確定した」という意味では決してありませんが、便に混じった目に見えない微量の血液を検知したという事実を示しています。
つまり、「大腸の中に出血源がないか、専門的な検査で詳しく調べる必要があります」という、体からの重要な通知だと考えてください。この段階で大腸がんやポリープなど、出血を伴う病気の可能性を早期に探ることが、検査の本来の目的です。

国が推奨する大腸がん検診は40歳以上・年1回の便潜血検査
国は、40歳以上の方を対象に、年に1回の便潜血検査を大腸がん検診として推奨しています。※
大腸がんは40歳代から発症する方が増え始めますが、初期段階では自覚症状がほとんどないのが特徴です。だからこそ、症状がないうちから定期的に検診を受け、病気の芽を早期に発見することに大きな価値があります。
ただし、すでに以下のような症状がある方は、「検診」の対象ではありません。検診を待たずに、速やかに医療機関で「診療」として診察や検査を受けてください。
- 目で見てわかる血便(鮮血、暗赤色の便、便に血が混じる)
- 便秘や下痢を繰り返す、便通のリズムが変わった
- 便が以前より細くなった
- 原因不明の貧血を指摘された
- おなかの痛みが続く、おなかが張る感じがする
- 急に体重が減った
これらの症状は、体が発しているサインです。症状がある場合に「検診で異常がないか確認しよう」と考えるのは間違いであり、すぐに専門医に相談することが必要です。
2日法のうち1回だけ陽性でも精密検査が必要
便潜血検査は通常2日分の便を採取しますが、そのうち1回でも「陽性」と出た場合は、精密検査が必要です。「2回中1回だけなら大丈夫だろう」という自己判断は、非常に危険な考え方です。
なぜなら、大腸がんやポリープは、常に出血しているわけではないからです。出血したり止まったりを繰り返すため、検査した日にたまたま出血していなかった可能性も十分にあります。
- 1日目:陽性、2日目:陰性
- 1日目:陰性、2日目:陽性
どちらのパターンであっても、大腸内に何らかの出血源が存在する可能性は否定できません。重要なのは「2回のうち1回でも陽性反応が出た」という事実です。この事実を軽視せず、必ず精密検査に進んでください。
便潜血検査をもう一度受けて陰性でも「精密検査の代わり」にはならない
「陽性と言われたので、念のためもう一度検査をしたら陰性でした。精密検査は受けなくても大丈夫ですよね?」
このような質問をいただくことがありますが、答えは明確に「いいえ」です。再度の便潜血検査で陰性が出たとしても、それは決して「精密検査を受けなくてよい」という証明にはなりません。
前述のとおり、大腸の病変からの出血は、常にあるわけではなく「断続的」です。つまり、出たり止まったりを繰り返します。
一度陽性になった後に再検査で陰性となっても、それは「最初の陽性判定が間違いだった」ということではなく、単に「再検査のタイミングではたまたま出血していなかった」だけかもしれません。
便潜血検査は、あくまで精密検査が必要な可能性のある人を見つけ出すための「ふるい分け検査(スクリーニング検査)」です。一度陽性のふるいにかかった以上、その原因を突き止めるための精密検査を受けることが、ご自身の体を守るために重要な選択肢です。※
痔があっても「痔からの出血」と自己判断しない
「昔から痔があるから、今回の陽性もそのせいだろう」
このように自己判断してしまうのは、最も見過ごしてはならない危険な考え方の一つです。確かに、痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)からの出血で、便潜血が陽性になることは少なくありません。
しかし、重要なのは「痔があること」と「大腸にがんやポリープがないこと」は、全く別の問題だという点です。痔と大腸がんが同時に存在している可能性は、決してゼロではありません。
便潜血陽性の原因が本当に痔だけなのか、それとも奥に重大な病気が隠れているのかは、大腸の中を直接観察する精密検査(大腸カメラ)でしか判断できません。
むしろ、「痔があるからこそ」、その出血が本当に痔だけによるものなのかを確認するために、きちんと精密検査を受ける必要がある、と考えてください。
便潜血陽性後の精密検査で大腸カメラが重要な理由
便潜血が陽性だった後の精密検査で大腸カメラが最も重要視されるのは、出血の原因を正確に突き止め、必要ならその場で治療までできる可能性があるからです。
便潜血検査は、あくまで大腸からの出血の有無を調べる「ふるい分け検査」に過ぎません。なぜ出血しているのか、その原因がどこにあるのかを特定するためには、大腸の粘膜を直接観察できる大腸カメラが最適な検査といえます。
大腸カメラなら大腸がん・ポリープを直接観察できる
大腸カメラは、先端にカメラが付いた細いスコープを肛門から挿入し、大腸全体の粘膜を医師が直接目で見て観察する検査です。
便潜血検査が「血が出ているか」を間接的に調べるのに対し、大腸カメラは「なぜ出血しているのか」その原因を突き止めるための検査といえます。これにより、大腸がんやポリープはもちろん、以下のような出血の原因となりうるさまざまな病気を見つけ、確定診断につなげます。
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
- 大腸憩室からの出血
- 虚血性腸炎
- 感染性腸炎
- 痔核(いぼ痔)
国立がん研究センターも、便潜血検査で陽性となった場合の精密検査として、原因を特定するために大腸カメラが不可欠であると位置づけています。※
ポリープを発見した場合はその場で切除できることもある
大腸カメラの大きな利点の一つは、検査中にがんになる可能性のあるポリープ(腺腫やSSLなど)を発見した場合、その場で切除できる場合があることです。
これは「検査」と「治療(がん予防)」を一度で完結できる可能性を意味します。改めて治療のために入院したり、別の日に予約を取り直したりする手間が省けるため、体や時間の負担を大きく減らせます。
ただし、以下のようなケースでは安全を最優先し、その場では切除せず、後日入院して治療を行うこともあります。
- ポリープが非常に大きい場合
- がんの浸潤が疑われる場合
- 血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)を服用している場合
腫瘍マーカー(CEA・CA19-9)だけでは大腸がんを診断・否定できない
「採血でわかる腫瘍マーカーでがんの有無がわからないか?」という質問をよく受けますが、CEAやCA19-9といった腫瘍マーカーの検査だけでは、大腸がんの診断も否定もできません。
その理由は以下の2点です。
- 早期がんでは上がらない:早期の大腸がんでは、腫瘍マーカーが正常範囲内にあることがほとんどです。
- がん以外でも上がることがある:喫煙や他の病気(肝炎、膵炎など)の影響でも数値が高くなるため、「高値=がん」とは限りません。
このように、腫瘍マーカーは診断の精度が十分ではないため、「正常だから安心」「高いからがん」といった判断はできません。学会の指針でも、大腸がんの診断の中心はあくまで大腸カメラであると明記されています。※
腫瘍マーカーは、主に診断がついた後の治療効果の判定や、再発のチェックなどに補助的に使われる指標であり、便潜血陽性後の精密検査の代わりにはならないことをご理解ください。
大腸カメラが難しい場合は状態に応じて他の検査を検討することもある
便潜血陽性後の精密検査は、大腸カメラが基本ですが、まれに技術的な理由で検査が難しい場合があります。
例えば、以下のようなケースです。
- 過去の腹部手術による強い癒着がある
- 大腸が非常に長い、あるいは曲がりくねっている
- 狭窄があってスコープが通過できない
このような場合、代替検査として大腸CT(CTコロノグラフィ)が検討されることがあります。これは、CTで撮影した画像から大腸の3D画像を構築し、仮想的に内部を観察する検査です。
ただし、大腸CTには大きな限界があります。もしポリープやがんを疑う病変が見つかっても、組織を採って確定診断したり、その場で切除したりすることはできません。そのため、異常が見つかれば、結局は診断や治療のために大腸カメラが必要になります。
あくまで精密検査の主役は大腸カメラであり、それが難しい場合に他の検査を検討するというのが基本的な考え方です。
便潜血検査と大腸カメラの利益・限界を正しく知る
「便潜血検査」と「大腸カメラ」は、それぞれに得意なことと限界があり、両方の特性を正しく理解したうえで検査を受けることが大切です。
便潜血検査は、多くの人の中から病気の可能性のある方を見つけ出す「ふるい分け」として非常に優れた検査です。一方で大腸カメラは、診断を確定し、時にはその場で治療まで行える「精密検査」ですが、体への負担や費用、まれなリスクも伴います。
それぞれの役割と限界を知ることは、ご自身の体と向き合い、適切な検査を選ぶための第一歩です。
便潜血検査には偽陽性・偽陰性がある
便潜血検査は100%正確な検査ではなく、実際とは異なる結果が出ることがあります。これを「偽陽性(ぎようせい)」と「偽陰性(ぎいんせい)」と呼びます。
- 偽陽性:大腸にがんやポリープがないのに「陽性」と判定されるケースです。痔や硬い便による切れ痔など、大腸以外の出血が原因で起こります。
- 偽陰性:大腸にがんやポリープがあるのに「陰性」と判定されるケースです。病変からの出血は常に起こるわけではないため、検査した日にたまたま出血していなかった場合に起こります。
検診には、偽陽性による精密検査の負担や精神的な不安といった不利益(デメリット)も確かに存在します。※ しかし、陽性という結果は「精密検査で確かめる価値のあるサイン」です。そのサインを無視するリスクの方がはるかに大きいと考えることが重要です。
便潜血陰性でも大腸がんが完全に否定されるわけではない
便潜血検査で「陰性」と判定されても、「大腸がんの可能性はゼロになった」と考えるのは早計です。
なぜなら、大腸がんやポリープからの出血は、蛇口から水が出続けるように常に起こっているわけではないからです。出血したり止まったりを繰り返すため、検査した日がたまたま出血していないタイミングであれば、病気が隠れていても結果は「陰性(偽陰性)」となってしまいます。
このため、たとえ検査結果が陰性であっても、以下のような気になる症状が続く場合は、次の検診を待たずに必ず消化器内科を受診してください。
- 目で見てわかる血便(便器が赤くなる、便に血が混じるなど)
- 便が細くなった、便秘や下痢を繰り返すなど、排便のリズムが変わった
- 原因不明の貧血を指摘された、急に体重が減った
- おなかの痛みが続く、おなかが張る感じが取れない
これらの症状がある場合、受けるべきは「検診」ではなく、原因を突き止めるための「診療」です。症状は体からのサインであり、それを無視してはいけません。※
大腸カメラには出血・穿孔などの偶発症がまれに起こる
大腸カメラは安全性の高い検査ですが、医療行為である以上、リスクがゼロではありません。ごくまれに、下記のような偶発症(予期せぬ合併症)が起こる可能性があります。
| 偶発症の種類 | 内容 |
|---|---|
| 出血 | ・組織を採ったり、ポリープを切除したりした部分から後日出血することがある ・多くは自然に止まるが、内視鏡による止血処置が必要になる場合もある |
| 穿孔(せんこう) | ・腸の壁に穴が開くこと ・過去の手術による癒着が強い場合などに起こりうる ・発生した際は、緊急手術が必要になることがある |
| 薬剤の影響 | ・鎮静剤(麻酔)を使った場合に、呼吸が浅くなったり血圧が下がったりすることがある |
こうした偶発症は、大腸内視鏡検査における「不利益(リスク)」といえます。※
内視鏡検査では、専門医が細心の注意を払って検査を行い、検査中は血圧や呼吸の状態を常に監視するなど、万が一の事態に迅速に対応できる体制が整えられています。リスクを正しく理解し、安心して検査に臨んでいただくことが大切です。
安全に検査を行うために持病・服用薬・過去の手術歴を事前に確認する
大腸カメラを安全に受けていただくためには、ご自身の健康状態を事前に詳しく医師へお伝えいただくことが不可欠です。これは、偶発症のリスクを最小限に抑えるための重要なステップです。
特に、以下の情報については、お薬手帳をご持参のうえ、問診や診察の際に必ずお申し出ください。
【特に重要な確認事項】
服用中の薬
- 血液をサラサラにする薬(抗血小板薬、抗凝固薬): ポリープ切除時の出血リスクに関わります。自己判断での中止は絶対にしないでください。
- 糖尿病の薬やインスリン注射: 検査前の食事制限により、低血糖を起こす危険があります。
持病(治療中の病気)
- 心臓の病気(狭心症、心筋梗塞、不整脈など)
- 呼吸器の病気(喘息、COPDなど)
- 緑内障、前立腺肥大症、腎臓病など
その他
- 過去のおなかの手術歴(腸の癒着の可能性)
- 薬や食べ物のアレルギー歴
- 以前の内視鏡検査で気分が悪くなった、つらかったなどの経験
これらの情報をもとに、薬の休薬・継続の判断や、下剤の種類の選択、鎮静剤の使用方法など、お一人おひとりの状態に合わせた安全な検査計画を立てていきます。ささいなことと思わずに、遠慮なくお伝えください。
家族に大腸がんがいる人は注意|家族歴と遺伝性大腸がんの違い
ご家族に大腸がんを経験された方がいると、ご自身のリスクについて心配になるのは当然のことです。
大腸がんには、食生活などの影響だけでなく、家族内で発症が集中する「家族集積性」という特徴があります。そのため、血縁者に大腸がんの方がいる場合、そうでない方よりリスクが高まるのは事実です。
しかし、「家族にがん経験者がいる」という事実と、特定の遺伝子が原因で起こる「遺伝性大腸がん」は、分けて考える必要があります。ご自身の状況を正しく理解し、適切なタイミングで適切な検査を受けることが、何よりも大切です。

血縁者に大腸がんがある場合は自分のリスクについて医師に相談する
血縁者、特に親・兄弟姉妹・子といった第一度近親者に大腸がんになった方がいる場合は、一度、消化器内科の医師に相談することをおすすめします。
ご家族の病歴は、ご自身のがんリスクを評価し、今後の検査計画を立てるうえで非常に重要な情報です。
診察の際には、以下の2点をできるだけ正確にお伝えください。
- 誰が:父、母、兄など
- 何歳のときに:大腸がんと診断されたか
特に、ご家族が50歳未満の若さで大腸がんと診断されたケースは、より慎重な評価が必要です。
医師に相談することで、一般的な40歳からの検診でよいのか、あるいはより若いうちから定期的な大腸カメラを検討すべきかなど、あなたに合わせた個別の健康管理プランを立てる第一歩となります。※
Lynch症候群・家族性大腸腺腫症(FAP)では一般の検診とは異なる管理が必要
遺伝が強く関わる大腸がんの中には、特に注意が必要なタイプがあります。その代表が「Lynch(リンチ)症候群」と「家族性大腸腺腫症(FAP)」です。
これらの病気と診断されている、あるいは家系的に強く疑われる場合、国が推奨する「40歳から年1回」の便潜血検査だけでは不十分です。専門医による特別な健康管理が不可欠となります。
| 遺伝性大腸がんの代表例 | 特徴 |
|---|---|
| Lynch(リンチ)症候群 | ・大腸がんのほか、子宮体がん、胃がん、卵巣がんなど、さまざまな臓器のがんを発症しやすい ・一般的な大腸がんより若い年齢で発症しやすい |
| 家族性大腸腺腫症(FAP) | ・若い頃から大腸に数百〜数千個という膨大な数のポリープ(腺腫)ができる ・治療せずにいると、ほぼ100%の確率で大腸がんを発症する |
これらの体質を持つ方は、一般的ながん検診の開始年齢よりもずっと早く、10代や20代といった若年から定期的な大腸カメラを開始する必要があります。家系に心当たりがある場合は、それがご自身の体を守るための重要なサインです。必ず専門医に相談してください。※
「家族に大腸がんがいる=遺伝性大腸がん」とは限らない
「親が大腸がんだったから、自分も遺伝でがんになるのでは…」と、大きな不安を抱えている方もいるかもしれません。
しかし、知っておいていただきたいのは、大腸がんの多くは特定の遺伝子とは直接関係のない「散発性」のがんであるという事実です。ご家族に大腸がんの方がいるからといって、必ずしもそれがLynch症候群のような「遺伝性大腸がん」を意味するわけではありません。
家族内でがんが多い背景には、遺伝的な要因だけでなく、長年共有してきた食生活や運動習慣といった、似たようなライフスタイルが影響している「家族集積性」のケースも多く含まれます。
ただし、ご家族に以下のような特徴が見られる場合は、遺伝的な要因について一度専門医に相談することを検討した方がよいかもしれません。
- 50歳未満など、若い年齢で大腸がんになった血縁者がいる
- 血縁者の中に、大腸がんになった人が複数人いる
- 一人の家族が、大腸がんと子宮体がんなど、複数の種類のがんを経験している
過度に心配する必要はありませんが、これらの特徴は無視すべきではないサインでもあります。気になる点があれば、ぜひ診察の際にお聞かせください。
大腸カメラ後はいつ次の検査を受ける?結果によって間隔は異なる
大腸カメラ後の次の検査時期は、今回の検査結果によって一人ひとり異なります。「一度受けたから数年は安心」と一律に決められるものではなく、検査で得られた情報をもとに、あなた専用の健康管理プランを立てていく、と考えるのが適切です。
具体的には、検査の質(大腸全体をしっかり観察できたか)、腸の洗浄度、ポリープの有無、そしてポリープがあった場合はその数・大きさ・組織の種類といった複数の要素を総合的に評価し、次回の最適な検査時期を判断します。
異常がなければ年1回の便潜血検査による検診を継続する
質の高い大腸カメラで、がんやポリープなどの病変が何も見つからなかった場合、基本的には国が推奨する「年1回の便潜血検査」による検診に戻ります。毎年大腸カメラを受ける必要はなく、まずは便潜血検査で大腸からの出血サインがないかを確認していくのが基本方針です。
ただし、これはあくまで原則論といえます。例えば、腸の洗浄が不十分で観察しきれなかった部分がある場合や、ご家族に大腸がんの既往歴があるなど個別のリスクを考慮し、医師が「念のため○年後にもう一度カメラで確認しましょう」と、より短い間隔での検査を提案することもあります。
特に遺伝的に大腸がんのリスクが高いと判断される方は、一般的な検診とは異なる専門的な管理が必要となる場合があります。※
検査後のフォローアップは、自己判断せずに担当医と相談のうえで進めることが重要です。
ポリープ切除後は数・大きさ・病理結果によって次回の大腸カメラ時期を決める
大腸カメラでポリープを切除した場合、次回の検査時期はポリープの性質によって細かく変わります。「ポリープを取ったら次は1年後」のように、誰でも同じ間隔になるわけではありません。
次回の検査間隔を決定するためには、主に以下の情報を総合的に評価します。
- ポリープの数:1個だけだったか、複数あったか
- ポリープの大きさ:1cm未満の小さなものか、それ以上の大きさか
- ポリープの種類(病理検査の結果):がん化のリスクが低い「過形成性ポリープ」だったか、将来がんになる可能性のある「腺腫」や「SSL」だったか
- がん化の度合い(異型度):腺腫の中でも、がん細胞に近い顔つき(異型)をしていなかったか
例えば、がん化リスクの低い小さなポリープが1つだった場合は3〜5年後、一方で複数あったりサイズが大きかったり、あるいはがん化に近い顔つきをしていたりした場合は1年後の検査が推奨される、といった具合に個別で判断されます。
日本でも増加傾向にある大腸がんの早期発見につなげるため、このようなポリープの評価に基づいた定期的な検査が推奨されています。※
大腸がん治療後や多数・大型ポリープではより短い間隔で検査することがある
大腸がんの治療を受けた方や、多数・大型のポリープが見つかった方は、より短い間隔での大腸カメラ検査が不可欠です。これは、治療した部位の再発をチェックするだけでなく、大腸の別の場所に新しいがん(異時性大腸がん)が発生するリスクに備えるという、2つの重要な目的があるためです。
特に、以下のような方は、より慎重な経過観察が必要と判断されます。
- 大腸がんの内視鏡治療や外科手術を受けた
- 2cmを超えるような大きなポリープを切除した
- 一度に多数のポリープ(特に腺腫)が見つかった
- 遺伝的に大腸がんのリスクが高いと診断されている※
上記に該当する場合、1年後、あるいは状態によっては半年後といった短い間隔での再検査が推奨されることもあります。
医師が提示するフォローアップ計画は、科学的根拠に基づき、あなたの大腸の未来を守るために立てられた最適なスケジュールです。ご自身の判断で間隔を空けず、計画に沿って検査を継続してください。
大腸がんは早期発見が重要|大腸カメラで見つかる病変とは
大腸がんは、早期に発見できれば体への負担が少ない治療で根治を目指せる病気です。しかし、初期には自覚症状がほとんどないため、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。
だからこそ、便潜血陽性という「症状のない段階でのサイン」をきっかけに、大腸カメラで直接粘膜を観察することが極めて重要になります。大腸カメラは、がんの早期発見はもちろん、将来がんになる可能性のあるポリープ(前がん病変)を見つけ、その場で切除する「がん予防」の役割も担っているのです。

早期大腸がんは条件を満たせば内視鏡で治療できる
特定の条件を満たした早期の大腸がんは、お腹を切る外科手術ではなく、体への負担が少ない内視鏡治療で根治を目指せます。開腹手術と比べて入院期間が短く、社会復帰が早いのが大きな利点です。
内視鏡を使った主な治療法は、病変の大きさや形に応じて使い分けられます。
| 治療法 | 内容 |
|---|---|
| ポリペクトミー | ・ポリープのくびれた部分にスネアという金属の輪をかけ、高周波電流で焼き切る方法 |
| EMR(内視鏡的粘膜切除術) | ・病変の下に液体を注入して浮き上がらせ、スネアをかけて切除する方法 ・平坦な形の病変に適している |
| ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術) | ・専用の電気メスを使い、病変の周りの粘膜を少しずつ丁寧に剥がして切除する方法 ・EMRでは難しい大きな病変も一括で切除できる可能性がある |
ただし、がんが粘膜の深い層まで達している場合や、リンパ節転移の可能性がある場合は、内視鏡治療の対象にはなりません。また、内視鏡で切除した組織を詳しく調べた結果(病理検査)、追加で外科手術が必要になることもあります。
ステージが早いほど良好な経過が期待できるからこそ、早期発見が何よりも大切なのです。
腺腫やSSLは将来がんになる可能性のある大腸ポリープ
大腸ポリープの中には、「腺腫(せんしゅ)」や「SSL(無茎性鋸歯状病変)」といった、放置すると将来がんになる可能性を秘めた「前がん病変」と呼ばれるタイプがあります。
現在、大腸がんの多くは、まず良性のポリープである「腺腫」ができ、それが数年かけてゆっくりと大きくなる過程でがん化すると考えられています。また、近年では「SSL」という、ギザギザした特殊な形をしたポリープから発生するタイプのがんも注目されています。
大腸カメラの最大の利点の一つは、これらのがんに進行する前の「芽」の段階でポリープを発見し、その場で切除できることです。がんの芽を早めに摘み取ることは、将来の大腸がんを未然に防ぐ「予防」そのものといえます。
便潜血陽性をきっかけとした大腸カメラは、単に今あるがんを探すだけでなく、「未来のがんを予防する」という、非常に重要な意味を持っているのです。
すべての大腸ポリープががんになるわけではない
「ポリープが見つかりました」と聞くと、すぐに「がんではないか」と心配になるかもしれませんが、見つかったポリープのすべてががん化するわけではありません。
ポリープには、主に以下の2種類があります。
| ポリープの種類 | 特徴 |
|---|---|
腫瘍性ポリープ(腺腫、SSLなど) | ・将来がんになる可能性があるため、基本的には切除が推奨される |
非腫瘍性ポリープ(過形成性ポリープなど) | ・基本的にはがん化しないと考えられており、大きさや場所によっては経過観察となることもある |
内視鏡専門医は、検査中にポリープの大きさや形、表面の模様などを詳細に観察し、がん化するリスクが高いかどうかをその場である程度判断しています。
最終的な診断は、切除した組織を顕微鏡で調べる病理検査で確定します。ポリープが見つかったからといって過度に不安になる必要はありませんが、将来のリスクを減らすために、医師の判断に基づいて適切に対処することが大切です。
便潜血陽性をきっかけに症状のない段階で病変を見つけることが重要
便潜血陽性という結果は、自覚症状が何もない段階で大腸の病気を発見し、早期治療につなげるための、体からの非常に大切な「お知らせ」です。
日本でも増加傾向にある大腸がんは、腹痛や血便といった症状が現れる頃には、病気が進行してしまっているケースも少なくありません。※
だからこそ、症状がないうちから検診を受け、病気のサインを早期に捉えることに大きな価値があります。
「陽性」という結果は、決して「がんの確定診断」ではありません。むしろ、それは「がんかどうかを確かめる入口」であり、ご自身の体を守るための絶好のチャンスと捉えるべきです。※
「怖いから」と検査を先延ばしにせず、この機会を前向きに活かし、必ず消化器内科で大腸カメラによる精密検査を受けましょう。
まとめ
便潜血検査で陽性という結果は、大腸の病気を自覚症状のない早期段階で発見するための大切なサインです。
「1回だけだから」「痔のせいだろう」といった自己判断は、早期発見の機会を逃す原因になりかねません。
精密検査である大腸カメラは、出血の原因を特定するだけでなく、将来がんになる可能性のあるポリープをその場で切除できるという「がん予防」の役割も期待できます。
陽性の結果は不安に感じるかもしれませんが、ご自身の体を守るための重要な機会と前向きに捉えましょう。
結果を放置せず、まずは消化器内科を受診し、専門医に相談することが大切です。

吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長
佐々木 洋
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
- 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
- 日本肝臓学会認定 肝臓専門医
- 日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定難病指定医
