バイアグラの副作用|症状・対処法・飲んではいけない人を徹底解説

バイアグラ(有効成分:シルデナフィル)は、世界で初めて登場したED治療薬として広く知られています。
その効果の高さから多くのEDに悩む男性を助けていますが、医薬品である以上、副作用の可能性はゼロではありません。
バイアグラを安全かつ効果的に使用するためには、その副作用について正しく理解しておくことが非常に重要です。「バイアグラ 副作用」というキーワードで検索されている方も多いと思いますが、インターネット上の情報には誤りや古いものも含まれていることがあります。
この記事では、バイアグラの副作用について、その種類、発生頻度、注意すべきケース、そして万が一副作用が出た場合の対処法まで、医師の視点から詳しく解説します。
バイアグラの服用を検討している方、すでに服用していて副作用が気になる方は、ぜひ最後までお読みいただき、安全なED治療にお役立てください。

バイアグラの副作用について知っておくべきこと

バイアグラの有効成分であるシルデナフィルは、体内の「PDE5(ホスホジエステラーゼタイプ5)」という酵素の働きを阻害することで効果を発揮します。
PDE5は、勃起に関わる生理的な物質であるcGMP(環状グアノシン一リン酸)を分解する酵素です。
PDE5を阻害すると、cGMPの分解が抑えられ、性的な刺激があった際に陰茎海綿体の血管が拡張しやすくなり、血流が増加して勃起をサポートします。

しかし、PDE5は陰茎だけでなく、全身の血管や平滑筋、網膜などにも存在しています。
そのため、シルデナフィルがPDE5を阻害すると、陰茎以外の部分のPDE5にも作用し、血管拡張作用などが全身に及ぶ可能性があります。
これが、バイアグラの副作用として現れる主な原因です。
副作用の多くは、この血管拡張作用に関連したもので、一過性であり、薬の効果が薄れるとともに自然に軽快することがほとんどです。
ただし、稀に重篤な副作用が発生する可能性もあるため、事前にリスクを理解し、適切に対処することが重要です。
副作用の発生頻度や程度には個人差があり、体質やその日の体調、服用量などによっても異なります。

目次

バイアグラで起こりうる主な副作用

バイアグラの副作用は、比較的頻繁に起こりやすいものから、非常に稀なものまでさまざまです。
まずは、多くの人が経験する可能性のある「主な副作用」について詳しく見ていきましょう。
これらの副作用は、多くの場合、軽度で一時的なものです。

バイアグラの代表的な副作用とその頻度

バイアグラの臨床試験データや市販後の調査によると、報告される副作用のほとんどは軽度から中等度であり、服用を中止する必要があるケースは少ないとされています。
主な副作用は、服用後数十分から数時間以内に現れ、バイアグラの効果が持続する時間帯に重なることが多いです。

バイアグラ錠の添付文書に記載されている副作用の発現頻度は、以下のような報告があります(承認時及びその後の調査結果より)。

副作用の種類 発生頻度(目安) 主な症状
顔のほてり(潮紅) 10%以上 顔や体が赤くなる、熱っぽく感じる
頭痛 10%以上 頭が痛い、重く感じる
視覚異常(色覚変化、かすみ目など) 10%以上 物が青みがかって見える、ぼやける
消化不良 1〜10%未満 胃もたれ、むかつき
鼻づまり 1〜10%未満 鼻が詰まる感じ
動悸 0.1〜1%未満 心臓がドキドキする、脈が速いと感じる
目の充血 0.1〜1%未満 白目が赤くなる
めまい 0.1〜1%未満 ふらつき感
眠気 頻度不明 眠たい、だるい
筋痛、背部痛、手足の痛み 頻度不明 筋肉や関節の痛み

※上記の頻度は一般的な目安であり、体質や用量などによって異なります。
特に10%以上の副作用は、多くの人が経験しうる比較的よくある副作用です。

これらの副作用について、さらに詳しく見ていきましょう。

顔のほてり(紅潮)

バイアグラを服用した際に最も多くみられる副作用の一つです。
顔や首、上半身などが赤くなり、熱っぽく感じることがあります。
これは、バイアグラの血管拡張作用により、皮膚の毛細血管が広がるために起こります。
アルコールを飲んだ時に顔が赤くなるのと似た現象です。
通常は薬の効果時間内でおさまります。
気になる場合は、涼しい場所で休憩したり、冷たい飲み物を飲んだりすることで症状が和らぐことがあります。
多くの場合は心配いりませんが、あまりにひどい場合は医師に相談しましょう。

頭痛

顔のほてりと同様に、非常によく見られる副作用です。
バイアグラの血管拡張作用が、頭部の血管にも影響を与えることで起こると考えられています。
拍動性の頭痛(ズキズキする痛み)として感じることが多いです。
通常は薬の効果が切れるとともに改善します。
市販の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)が有効な場合もありますが、他の薬との飲み合わせが気になる場合は医師や薬剤師に相談してください。
痛みが強い場合や続く場合は、医療機関を受診しましょう。

鼻づまり

鼻の粘膜の血管も拡張するため、鼻が詰まったような症状が出ることがあります。
風邪を引いた時の鼻づまりに似ていますが、バイアグラによる場合は一過性です。
特にアレルギー性鼻炎など、普段から鼻づまりがある人は感じやすいかもしれません。
多くの場合、特別な対処は必要ありませんが、息苦しさを感じるほどひどい場合は医師に相談してください。

目の充血・視覚異常(色の変化など)

目の血管も拡張するため、白目が赤くなる目の充血が起こることがあります。
また、バイアグラは網膜に存在するPDE6という酵素にもわずかに影響を与えるため、視覚に関する副作用が出ることがあります。
最も多いのは「色覚異常」で、特に青みがかって見える(青視症)と訴える方がいます。
これは、PDE6が視覚情報の色処理に関わっているためと考えられています。
その他、光がまぶしく感じたり、物がかすんで見えたりする(霧視)といった症状が出ることもあります。
これらの視覚異常は一過性で、通常は薬の効果が切れるとともに改善します。
運転中などに症状が出ると危険な場合があるため、注意が必要です。
もし視覚の異常が長引く、あるいは急激な視力低下や視野欠損(視野の一部が見えなくなる)が起きた場合は、重大な副作用の可能性もゼロではないため、直ちに服用を中止し、眼科を受診してください。

動悸

心臓がドキドキする、脈が速いと感じるなどの動悸が起こることがあります。
これは、血管拡張による血圧の変動や、軽い心臓への負担によるものと考えられています。
安静にしていれば多くは治まります。
もともと心疾患がある方や、心拍数が上がりやすい方は注意が必要です。
動悸が強く、息苦しさを伴う場合や、胸痛がある場合は、心血管系のトラブルの可能性も考えられるため、直ちに医療機関を受診してください。

消化不良(胃もたれなど)

胃の動きが鈍くなる、胃がもたれる、胸やけがするなどの消化器症状が出ることがあります。
これは、消化管の平滑筋にも存在するPDE5をバイアグラが阻害することによって起こると考えられています。
特に空腹時ではなく、食事の後に服用したり、脂っこい食事と一緒に服用したりした場合に起こりやすい傾向があります。
症状が軽ければ様子を見ても構いませんが、痛みが強い場合や嘔吐を伴う場合は医師に相談しましょう。

バイアグラの重大な副作用

ここまでに挙げた副作用は比較的よく見られますが、ほとんどは軽度で一時的なものです。
しかし、非常に稀ではあるものの、注意すべき「重大な副作用」も報告されています。
これらの副作用は、適切な処置をしないと後遺症が残ったり、命に関わる場合もあるため、症状が現れた場合は直ちに医療機関を受診する必要があります。

持続勃起症

性的な興奮がなくても、勃起状態が4時間以上続く状態を「持続勃起症」といいます。
バイアグラの添付文書では、4時間以上持続する場合はごく稀に発生する可能性があると記載されています。
また、6時間以上持続する場合は「持続勃起症」として医療処置が必要になる可能性があるとされています。
持続勃起症を放置すると、陰茎海綿体の組織に酸素が供給されず、永続的な勃起機能障害(ED)や変形などの後遺症につながる可能性があります。
もしバイアグラ服用後に勃起が4時間以上続いている場合は、躊躇せずに速やかに医療機関(泌尿器科など)を受診してください。
特に、鎌状赤血球貧血、多発性骨髄腫、白血病など、持続勃起症を起こしやすい基礎疾患がある方は注意が必要です。

重度の低血圧

バイアグラには血管を拡張させる作用があるため、血圧が低下する可能性があります。
通常、健康な方が正しい用法・用量を守って服用する限り、問題になるほどの低血圧は起こりにくいですが、稀に重度の低血圧を引き起こすことがあります。
特に、もともと血圧が低い方や、特定の降圧剤(特にα遮断薬)を服用している方はリスクが高まります。
重度の低血圧になると、めまい、ふらつき、意識が遠のくなどの症状が現れ、転倒や失神につながる危険性があります。
これらの症状が出た場合は、速やかに医療機関を受診してください。

心血管系の副作用(狭心症、心筋梗塞など)

バイアグラを含むED治療薬は、性行為という心臓に負荷のかかる活動をサポートするための薬剤です。
もともと心臓に病気がある方(狭心症、心筋梗塞など)や、心臓病のリスクが高い方(高齢、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙など)が、バイアグラを服用して性行為を行うと、心臓への負荷が増加し、心筋梗塞や狭心症の発作などを引き起こすリスクが高まる可能性があります。
これは、バイアグラ自体が直接これらの心臓病を引き起こすというよりも、性行為という活動と心臓の状態が組み合わさることでリスクが上昇すると考えられています。
すでに心疾患がある方や、心血管系のリスクが高い方は、バイアグラを服用しても安全かどうか、必ず事前に主治医と相談する必要があります。
性行為中に胸痛や息苦しさを感じた場合は、直ちに中止し、救急車を呼ぶなど速やかに医療機関を受診してください。

脳血管系の副作用(脳卒中など)

心血管系の副作用と同様に、バイアグラ服用後の脳卒中(脳梗塞や脳出血など)の報告も稀にあります。
これも、バイアグラが直接脳卒中を引き起こすというよりも、性行為という活動や、もともと脳血管系のリスクが高い方が服用した場合に、血圧変動などが引き金となる可能性が考えられます。
過去に脳卒中を起こしたことがある方や、脳血管系のリスクが高い方(高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙など)は特に注意が必要です。
バイアグラ服用後に、突然の激しい頭痛、手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、意識障害などの症状が出た場合は、脳卒中の可能性も疑われるため、直ちに救急医療機関を受診してください。

視覚障害(失明含む)のリスク

非常に稀ではありますが、バイアグラ服用後に「非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)」を発症したケースが報告されています。
NAIONは、視神経への血流が不足して視力低下や視野欠損が起こる病気で、場合によっては永続的な視力障害や失明に至ることもあります。
バイアグラとの因果関係は明確には証明されていませんが、関連の可能性が指摘されています。
NAIONを発症した方の多くは、もともとNAIONのリスク因子(年齢、糖尿病、高血圧、高脂血症、喫煙、特定の目の構造など)を持っていたという報告があります。
バイアグラ服用中に、急激な視力低下や視野の一部が見えなくなるなどの異常を感じた場合は、直ちに服用を中止し、眼科を緊急受診してください。
遺伝性の網膜疾患(網膜色素変性症など)がある方も、視覚系副作用のリスクが高まる可能性があるため、バイアグラの服用は禁忌とされています。

聴覚障害のリスク

バイアグラを含むPDE5阻害薬の服用後に、突然の難聴(感音性難聴)が報告されたケースも稀にあります。
片耳または両耳の聴力が急に低下したり、耳鳴りやめまいを伴ったりすることがあります。
多くの場合、一過性ではない可能性があり、永続的な聴力障害につながることもあります。
もしバイアグラ服用中に突然耳が聞こえにくくなった場合は、直ちに服用を中止し、耳鼻咽喉科を緊急受診してください。
早期に適切な処置を受けることが、聴力の回復につながる可能性があります。

死亡との関連性について

バイアグラ服用後に死亡したという報告がゼロではありませんが、バイアグラが直接的な死亡原因となったケースは極めて稀です。
多くの場合は、もともと持っていた重度の心臓病や脳血管疾患、あるいはバイアグラとの併用が禁忌とされている薬剤(特に硝酸剤)との飲み合わせによる急激な血圧低下などが原因と考えられています。
つまり、バイアグラ自体が健康な人の命を危険に晒すというよりも、不適切な使用方法や、服用すべきでない人が服用した場合にリスクが高まるということです。
バイアグラを安全に服用するためには、自身の健康状態を正確に把握し、必ず医師の診察を受けて、適切な指導の下で使用することが絶対に必要です。

バイアグラを服用してはいけない人・注意が必要な人

バイアグラは多くの人にとって安全に使用できる薬剤ですが、特定の健康状態にある方や、特定の薬剤を服用している方は、バイアグラを服用することで重篤な副作用を起こすリスクが高まります。
このようなケースでは、バイアグラの服用は「禁忌」とされたり、「注意が必要」とされたりします。
バイアグラを安全に服用するためには、これらの条件に自分が当てはまらないかを、必ず医師の診察時に正確に伝えることが不可欠です。

服用禁忌となるケース

以下のいずれかに該当する方は、原則としてバイアグラを服用してはいけません。

硝酸剤や一酸化窒素供与剤を使用している方

バイアグラの最も重要な禁忌の一つです。
ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビドなどの「硝酸剤」や、ニトロプルシドナトリウムなどの「一酸化窒素供与剤」は、狭心症の発作時などに使用される血管拡張薬です。
これらの薬剤もバイアグラと同様に血管を拡張させる作用がありますが、作用機序が異なります。
バイアグラとこれらの薬剤を併用すると、血管拡張作用が非常に強く現れ、急激かつ重度の血圧低下を引き起こす可能性があります。
これにより、意識を失ったり、心臓や脳に深刻なダメージを受けたりする危険があり、実際に死亡に至ったケースも報告されています。
たとえ少量であっても、これらの薬剤を定期的に、あるいは頓服で使用している場合は、バイアグラの服用は絶対に避けてください。
医師に処方された薬だけでなく、市販薬や健康食品、アロマ製品などにこれらの成分が含まれていないかも確認が必要です。

心血管系の既往歴がある方

以下のような心臓や血管に関する重い病気の既往歴がある方は、バイアグラの服用が禁忌となる場合があります。
不安定狭心症、または性行為中に狭心症を起こしたことがある方
最近3ヶ月以内に心筋梗塞を起こした方
コントロール不良の不整脈がある方
心血管系障害のため性行為が不適当と考えられる方

性行為は心臓に一定の負荷をかけます。
階段を駆け上がったり、早歩きをしたりするのと同程度の負荷がかかると言われています。
心臓に重い病気がある方が、バイアグラを服用して性行為を行うと、心臓への負担が過剰になり、心臓発作などを起こすリスクが高まります。
主治医から「心臓の状態から見て性行為は避けるべき」と言われている方も、バイアグラの服用はできません。

重度の肝機能障害・腎機能障害がある方

バイアグラは主に肝臓で代謝され、腎臓から排泄されます。
肝臓や腎臓の働きが著しく低下している場合、バイアグラの成分が体内に長く留まり、薬の血中濃度が必要以上に高くなってしまう可能性があります。
これにより、副作用が出やすくなったり、副作用が強く現れたりするリスクが高まります。
特に重度の肝機能障害や腎機能障害がある方は、バイアグラの服用は禁忌とされています。
中等度の障害がある場合は、医師の判断で少量から慎重に投与されることがあります。

低血圧または高血圧の方

コントロール不良の低血圧(安静時収縮期血圧90mmHg未満、または拡張期血圧50mmHg未満)や、コントロール不良の高血圧(安静時収縮期血圧170mmHg以上、または拡張期血圧100mmHg以上)がある方も、バイアグラの服用は禁忌とされています。
バイアグラは血管を拡張させる作用があるため、血圧に影響を与えます。
もともと血圧が不安定な方が服用すると、血圧が急激に変動し、めまい、失神、心臓や脳血管系のトラブルを引き起こすリスクが高まります。
日頃から血圧のコントロールが良好であれば服用できる場合もありますが、必ず医師の診察で現在の血圧の状態を正確に把握してもらう必要があります。

脳梗塞・脳出血・心筋梗塞の既往歴がある方

最近6ヶ月以内に脳梗塞、脳出血、または心筋梗塞を起こしたことがある方も、バイアグラの服用は禁忌とされています。
これらの病気から回復していない段階で性行為を行うこと自体が心臓や脳に負担をかける活動であり、再発リスクを高める可能性があります。
さらにバイアグラの影響が加わることで、リスクがより高まることが懸念されます。
6ヶ月以上経過している場合でも、病状が安定しているか、性行為を行っても安全かなどを主治医に確認し、バイアグラの服用が可能かどうかは改めて医師に判断してもらう必要があります。

遺伝性の網膜疾患(網膜色素変性症など)がある方

網膜色素変性症など、網膜に遺伝性の病気がある方もバイアグラの服用は禁忌とされています。
これは、バイアグラが作用するPDE5という酵素と類似したPDE6という酵素が網膜にも存在しており、バイアグラがPDE6に影響を与える可能性が指摘されているためです。
網膜色素変性症などの患者さんでは、PDE6の機能異常が病気に関わっている可能性があり、バイアグラを服用することで視覚系の症状が悪化したり、前述のNAIONのリスクが高まったりする懸念があります。

その他の禁忌事項

バイアグラの成分(シルデナフィル)や配合成分に対して、過去にアレルギー反応(発疹、かゆみ、呼吸困難など)を起こしたことがある方
可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬(リオシグアトなど)を使用している方:硝酸剤と同様に血圧を危険なレベルまで下げる可能性があります。
未成年者:国内では未成年者への有効性・安全性に関する十分なデータがないため、原則として処方されません。
女性:バイアグラは男性のED治療薬として開発・承認されており、女性に対する有効性・安全性は確認されていません。女性の服用は禁忌とされています。(女性向けED治療薬については後述します)

服用注意が必要なケース

以下のいずれかに該当する方は、バイアグラの服用が禁忌ではありませんが、服用にあたって医師の慎重な判断と注意が必要です。
必ず医師に既往歴や現在の服用薬を正確に伝えてください。

相互作用に注意すべき薬剤

バイアグラは、他の薬剤と一緒に服用することで、お互いの薬の作用に影響を及ぼすことがあります。
特定の薬剤との併用は禁忌ですが、それ以外にも注意が必要な薬剤があります。
α遮断薬(一部の前立腺肥大症治療薬や降圧剤): α遮断薬も血管を拡張させる作用があるため、バイアグラと併用すると血圧が下がりすぎる可能性があります。併用する場合は、少量から開始するなど慎重な対応が必要です。
CYP3A4阻害薬(一部の抗真菌薬、抗生物質、HIV治療薬など): これらの薬剤は、バイアグラを体内で分解する酵素の働きを妨げるため、バイアグラの血中濃度が上昇し、副作用が出やすくなる可能性があります。併用する場合は、バイアグラの用量を減らすなどの調整が必要です。
CYP3A4誘導薬(一部の抗てんかん薬、結核治療薬など): これらの薬剤は、バイアグラを分解する酵素の働きを強めるため、バイアグラの効果が弱まる可能性があります。

必ず医師に現在服用しているすべての薬剤(処方薬、市販薬、サプリメント、健康食品なども含む)を正確に伝えてください。「お薬手帳」を持参するとスムーズです。

高齢者への投与

一般的に、高齢者(65歳以上など)は、薬の代謝や排泄の機能が若い人に比べて低下している傾向があります。
このため、バイアグラの血中濃度が若い人よりも高くなりやすく、副作用が出やすい、あるいは強く出やすい可能性があります。
また、高齢者は心血管系の疾患やその他の基礎疾患を合併していることが多いです。
これらの理由から、高齢者へのバイアグラ投与は慎重に行う必要があり、少量から開始することが推奨される場合があります。

その他注意が必要な方

以下のような方も、バイアグラの服用に際して注意が必要です。
陰茎の構造に異常がある方(屈曲、線維化、ペイロニー病など):勃起時の痛みが強くなる可能性があります。
持続勃起症を起こしやすい病気(鎌状赤血球性貧血、多発性骨髄腫、白血病など)がある方:持続勃起症のリスクが高まります。
出血性疾患または消化性潰瘍のある方:バイアグラには血小板凝集を抑制する作用があるため、出血傾向が悪化する可能性があります。

これらの情報はあくまで一般的なものであり、個々のケースで服用が可能かどうかは、最終的には医師が判断します。
自身の健康状態について正確に医師に伝えることが、安全なバイアグラ服用への第一歩です。

バイアグラの副作用が出た場合の対処法

バイアグラを服用して副作用が出た場合、慌てず適切に対処することが大切です。
副作用の種類や程度によって対応は異なります。

軽微な副作用の場合の対応

顔のほてり、頭痛、鼻づまり、軽い消化不良など、比較的よくある軽微な副作用の場合、多くは一過性で、薬の効果が薄れるとともに自然に改善します。

  • 安静にする: 無理せず、楽な姿勢で休憩しましょう。
  • 水分を摂る: 頭痛やほてりは脱水によって悪化することもあるため、水分補給が有効な場合があります。
  • 症状を緩和する: 頭痛の場合は市販のアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬が有効なこともありますが、他の薬との飲み合わせは医師や薬剤師に確認してください。鼻づまりが辛い場合は、市販の点鼻薬の使用について相談してみることもできます(ただし、点鼻薬によっては相互作用に注意が必要なものもあります)。
  • 次回の参考に: どのような副作用がどの程度現れたかを覚えておき、次回の服用時に医師に相談すると、用量の調整や他のED治療薬への変更などが検討できます。

軽微な副作用であれば、基本的には様子を見て問題ありませんが、症状が辛い場合や、いつまでも続く場合は医療機関に相談しましょう。

重大な副作用が疑われる場合の対応

前述した持続勃起症、重度の低血圧、心血管系・脳血管系の症状、急激な視覚・聴覚の異常など、重大な副作用が疑われる症状が現れた場合は、直ちにバイアグラの服用を中止し、速やかに医療機関を受診することが必要です。

  • 直ちに服用を中止する: まずは薬の体内への吸収を止めることが重要です。
  • 緊急性の判断:

    持続勃起症(勃起が4時間以上続く):泌尿器科を受診してください。

    胸痛、息苦しさ、冷や汗など(心臓発作が疑われる):救急車を呼ぶなど、緊急で循環器内科を受診してください。

    激しい頭痛、手足の麻痺・しびれ、意識障害など(脳卒中が疑われる):救急車を呼ぶなど、緊急で脳神経外科や神経内科を受診してください。

    急激な視力低下、視野欠損、目の痛みなど(視覚異常が疑われる):緊急で眼科を受診してください。

    急な難聴、耳鳴り、めまいなど(聴覚異常が疑われる):緊急で耳鼻咽喉科を受診してください。

    重度のめまい、ふらつき、失神(重度の低血圧が疑われる):救急車を呼ぶなど、緊急で医療機関を受診してください。
  • 受診時の情報伝達: 医療機関では、バイアグラを服用したこと、いつ、どれくらいの量を服用したか、どのような症状が、いつから、どの程度現れているかを正確に伝えてください。可能であれば、服用したバイアグラのパッケージや薬自体を持参すると良いでしょう。

これらの重大な副作用は非常に稀ではありますが、万が一起きた場合に適切な対応ができるように、事前に知っておくことは重要です。

副作用が続く場合の相談先

軽微な副作用でも、症状が長引く場合や、不安を感じる場合は、一人で悩まず医療機関に相談しましょう。

  • バイアグラを処方してもらったクリニック/病院: 最も適切な相談先です。あなたの健康状態や服用している薬を把握しているため、的確なアドバイスや対応が受けられます。オンライン診療で処方された場合も、まずはそのクリニックの連絡先に相談しましょう。
  • かかりつけ医: ED以外の病気で通院しているかかりつけ医がいる場合、バイアグラの服用について相談してみるのも良いでしょう。他の病気や服用中の薬との関連についてアドバイスをもらえる可能性があります。
  • 薬剤師: 薬局の薬剤師に相談することもできます。バイアグラの一般的な副作用や、他の薬との飲み合わせについて情報提供を受けられます。ただし、薬剤師は診察や処方はできないため、最終的な判断は医師が行います。

副作用を恐れすぎる必要はありませんが、何か異常を感じたら早めに相談することが大切です。

バイアグラジェネリックの副作用について

バイアグラには、先発医薬品である「バイアグラ錠」と、そのジェネリック医薬品である「シルデナフィルODフィルム」「シルデナフィル錠」など、様々な製品が存在します。
ジェネリック医薬品は、先発医薬品の特許期間が切れた後に、厚生労働省の承認を得て製造・販売される医薬品です。

バイアグラとジェネリックの副作用の違いは?

結論から言うと、バイアグラ(先発品)とジェネリック医薬品で、副作用の種類や発生頻度に本質的な違いはありません。

項目 バイアグラ(先発医薬品) バイアグラジェネリック(後発医薬品)
有効成分 シルデナフィル シルデナフィル
効果・効能 先発品と同等(生物学的同等性が証明されている) 先発品と同等
副作用の種類 先発品で報告されているものと同様 先発品で報告されているものと同様
副作用の頻度 先発品で報告されているものと同程度 先発品で報告されているものと同程度
価格帯(目安) 高め(1錠 1,500円~2,100円程度) 安め(1錠 1,000円~1,600円程度)
添加物 先発品独自の添加物 メーカーによって異なる添加物を使用する場合がある
形状 錠剤(青色のひし形) 錠剤、ODフィルム(水なしで服用可能)など多様
製造・品質管理 厚生労働省の厳しい基準に基づき管理されている 厚生労働省の厳しい基準に基づき管理されている
入手方法 医師の処方(医療機関) 医師の処方(医療機関)

ジェネリック医薬品は、先発医薬品と「有効成分」「含有量」「効果・効能」「安全性(副作用の種類や発生頻度)」が同等であることが、国の基準(生物学的同等性試験など)によって厳格に証明されています。
そのため、副作用についても、先発品で起こりうるものと同じ種類の副作用が、同程度の頻度で起こると考えられます。

ただし、ジェネリック医薬品は、薬の形状、色、味、添加物(薬の成分を固めたり、溶けやすくしたりするための成分)などが先発品と異なる場合があります。
この添加物の違いによって、薬の溶け方や吸収速度にごくわずかな差が生じ、人によっては先発品とは異なる体感(例:効き始めるまでの時間、副作用の感じ方など)がある可能性も理論上はゼロではありません。
しかし、これは有効成分の作用による副作用の種類や頻度そのものが変わるということではありません。

重要なのは、ジェネリック医薬品も先発医薬品と同様に、医師の処方箋が必要な医療用医薬品であるということです。
正規ルートで処方されたジェネリック医薬品であれば、品質や安全性は国によって保証されています。
安価に入手できるジェネリックは、ED治療を継続する上で非常に有効な選択肢となります。

安全にバイアグラを服用するために

バイアグラは正しく使用すればEDに高い効果を発揮する優れた薬剤ですが、その効果の裏には副作用のリスクも存在します。
安全にバイアグラを服用し、最大限の効果を得るためには、以下の点に十分注意する必要があります。

偽造品・個人輸入のリスク

インターネットの個人輸入サイトなどで、「安価に」「手軽に」「処方箋なしで」バイアグラやそのジェネリック医薬品を販売しているのを見かけることがあります。
しかし、これらのサイトで販売されているED治療薬の多くは、偽造品である可能性が非常に高いです。

厚生労働省や製薬会社が行った調査によると、インターネットなどで流通しているED治療薬の約半数が偽造品であったという報告もあります。
偽造品には、以下のような危険性があります。

有効成分が全く含まれていない: 効果がないだけでなく、病気の治療の機会を逃す可能性があります。
表示量とは異なる量の有効成分が含まれている: 多すぎると重篤な副作用のリスクが高まり、少なすぎると効果が得られません。
バイアグラとは全く異なる成分が含まれている: 未承認の危険な成分や、人体に有害な不純物が混入している可能性があります。これにより、予期しない、あるいは重篤な健康被害を引き起こす危険があります。
品質管理が不十分: 不衛生な環境で製造されていたり、適切な保管がされていなかったりする可能性があります。

また、個人輸入した医薬品で健康被害が発生した場合、日本の公的な健康被害救済制度である「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となります。
つまり、万が一重篤な副作用が起きても、十分な補償が受けられないということです。

安全なED治療薬を入手できるのは、医師の診察を受けて、医療機関で処方してもらう場合のみです。
インターネットでの個人輸入は、安易に行わないようにしましょう。

医師の診察を受けることの重要性

バイアグラを安全に、そして効果的に服用するための最も重要なステップは、必ず医師の診察を受けることです。
医師の診察を受けることで、以下のことが可能になります。

EDの原因の正確な診断: EDは、単なる加齢だけでなく、糖尿病、高血圧、心血管疾患、神経系の病気、心理的な問題など、様々な原因で起こりえます。医師はこれらの可能性を診断し、バイアグラがあなたのEDに適した治療法であるかを判断します。
バイアグラを服用しても安全かどうかの判断: 前述したように、バイアグラの服用が禁忌となる病気や併用薬があります。医師はあなたの健康状態(既往歴、現在の病気、アレルギーの有無など)や服用しているすべての薬剤を確認し、バイアグラを服用しても安全かどうかを慎重に判断します。これにより、重篤な副作用のリスクを回避できます。
適切な用量設定と服用方法の指導: バイアグラには複数の用量があります(日本では通常25mgまたは50mg)。医師はあなたの状態に合わせて最適な用量を決定し、効果的な服用タイミングや食事・アルコールとの関係など、正しい服用方法について丁寧に指導します。
副作用についての説明と対処法の指導: 服用前に起こりうる副作用について十分に説明を受けることで、万が一副作用が出た場合でも慌てず対処できます。不安な点や疑問点があれば、その場で医師に質問し解消することができます。
正規の医薬品を入手できる: 医療機関で処方されるバイアグラは、国によって品質と安全性が保証された正規の医薬品です。偽造品のリスクなく、安心して服用できます。

近年では、オンライン診療を利用してバイアグラの処方を受けることも可能です。
オンライン診療であれば、自宅や都合の良い場所から、手軽に医師の診察を受けることができます。
対面診療と同じように医師があなたの健康状態を把握し、安全性を確認した上で処方してくれるため、個人輸入サイトのようなリスクはありません。
忙しい方や、クリニックに行くのが恥ずかしいと感じる方にとって、オンライン診療は非常に便利な選択肢と言えるでしょう。

入手方法 安全性 医師の診察 偽造品リスク 価格帯(目安) 手軽さ
クリニック/病院 高い あり ほぼなし 普通〜高め 予約・移動の手間あり
オンライン診療 高い あり ほぼなし クリニックによる 自宅から手軽に受診・配送が可能
インターネット個人輸入サイト 非常に低い なし 非常に高い 安い(偽物多し) 処方箋不要だが、リスク極大

安全なED治療のためには、必ず医師の管理下で正規のバイアグラを入手・服用することが不可欠です。

【まとめ】バイアグラの副作用を理解し、安全な服用を

バイアグラは、EDに悩む多くの男性にとって効果的な治療薬であり、人生の質を高める助けとなる可能性があります。
しかし、医薬品である以上、副作用のリスクは存在します。
この記事では、バイアグラの主な副作用(顔のほてり、頭痛、鼻づまり、視覚異常など)や、非常に稀ながら注意が必要な重大な副作用(持続勃起症、重度の低血圧、心血管系・脳血管系の副作用、視覚・聴覚障害など)について解説しました。

バイアグラの副作用の多くは軽度で一時的ですが、特定の健康状態にある方や、特定の薬剤を服用している方は、重篤な副作用を起こすリスクが高まります。
特に、硝酸剤との併用は絶対に禁忌であり、命に関わる危険があります。

バイアグラを安全かつ効果的に服用するためには、以下の点を必ず守ってください。

  1. 必ず医師の診察を受ける: 自身の健康状態、既往歴、現在服用している薬剤などを正確に医師に伝え、バイアグラを服用しても問題ないか、適切な用量と服用方法について確認してください。
  2. 正規の医薬品を入手する: クリニックや病院、または信頼できるオンライン診療を利用し、国が承認した正規のバイアグラを処方してもらいましょう。インターネットの個人輸入サイトは偽造品の温床であり、危険性が非常に高いため絶対に利用しないでください。
  3. 医師の指示通りの用法・用量を守る: 自己判断で用量を増やしたり、服用回数を増やしたりしないでください。
  4. 副作用が疑われる症状が出たら医師に相談する: 特に重大な副作用が疑われる場合は、ためらわずに直ちに医療機関を受診してください。

バイアグラは、正しい知識を持って安全に使用すれば、あなたのED治療にきっと役立つでしょう。
副作用について過度に恐れる必要はありませんが、リスクを理解し、適切な予防策を講じることが重要です。
もしバイアグラの服用に関して不安や疑問がある場合は、いつでも医師や薬剤師に相談してください。

免責事項

この記事はバイアグラの副作用に関する一般的な情報を提供するものであり、医学的な診断や個別の治療方針を示すものではありません。
バイアグラの服用に関しては、必ず医師の診察を受け、医師の指示に従ってください。
この記事の情報に基づいてご自身の判断で服用したり、治療を中断したりすることは危険です。
記載されている情報は記事公開時点のものであり、最新の医療情報とは異なる場合があります。
個別の症状や状態については、必ず医療専門家にご相談ください。

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