喘息の咳はうつる?感染症か医師が解説|原因・症状・咳喘息との違い

喘息は、多くの方が「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった苦しそうな呼吸や、しつこい咳に悩まされる病気です。
特に小さなお子さんや高齢者、周囲に喘息の人がいるご家族などからは、「もしかして、喘息ってうつるの?」「感染する病気なの?」といったご心配の声をよく聞きます。
結論から申し上げると、喘息は人にうつる病気、つまり感染症ではありません。
この記事では、「喘息はなぜうつらないのか」という点から、喘息の種類、原因、症状、そして他の病気との違いなどについて、医師が詳しく解説します。
ご自身の症状や、周囲の方の症状について不安がある方は、ぜひ参考にしてください。

目次

喘息は人にうつる病気ではありません

「喘息 うつる」というキーワードで検索される方の最も知りたい情報、それは「喘息は人にうつるのかどうか」でしょう。
繰り返しになりますが、喘息は感染症ではないため、人から人へうつることはありません。

風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症といった感染症は、ウイルスや細菌などが体内に侵入し、それが原因で病気が発症します。
これらの病原体は、咳やくしゃみ、接触などによって他の人に広がる性質があります。
一方、喘息は、気道(空気の通り道)が炎症を起こし、様々な刺激に対して過敏になることで発症する病気です。
この気道の炎症は、ウイルスや細菌が原因で起こる感染性の炎症とは異なり、アレルギー反応や体質などが関係しています。
そのため、喘息患者さんの咳や飛沫を浴びたり、同じ空間で過ごしたりしても、喘息が他の人に感染することはないのです。

喘息とは?気道のアレルギー性・非アレルギー性炎症

喘息は、正式には気管支喘息と呼ばれ、気道の慢性的な炎症を特徴とする病気です。
この炎症によって気道が狭くなり、呼吸が苦しくなったり、咳が出やすくなったりします。

気道の炎症は、主に以下のような原因で起こります。

  • アレルギー性の炎症: ダニ、ハウスダスト、花粉、カビ、ペットの毛など、特定の物質(アレルゲン)に対する過敏な免疫反応によって起こります。
  • 非アレルギー性の炎症: 風邪などのウイルス感染、たばこの煙、大気汚染、冷たい空気、運動、ストレス、特定の薬剤などが刺激となって起こります。

どちらのタイプの喘息であっても、気道の粘膜が腫れたり、分泌物が増えたり、周りの筋肉が収縮したりすることで、空気の通り道が狭くなります。
これが、喘息の発作時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という特徴的な呼吸音(喘鳴)や、呼吸困難を引き起こすメカニズムです。

気管支喘息とは

一般的に「喘息」と呼ばれるのは、この気管支喘息です。
小児期に発症することが多いですが、成人になってから発症することもあります。
一度発症すると慢性的な経過をたどり、適切な治療によって症状をコントロールする必要があります。

気管支喘息の主な症状は以下の通りです。

  • 喘鳴(ぜんめい): 呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がする。
  • 呼吸困難(息苦しさ): 特に息を吐き出すときに苦しくなる。
  • 咳: 夜間や明け方に多く、一度出始めると止まりにくい。
  • 痰: 粘り気の強い痰が出ることがある。
  • 胸の痛み・圧迫感

これらの症状は、特定の刺激(アレルゲンへの暴露、運動、冷たい空気など)によって悪化したり、夜間から明け方にかけて起こりやすかったりする特徴があります。
症状の程度は様々で、軽い咳で済むこともあれば、命に関わるような重篤な発作を起こすこともあります。

咳喘息とは

咳喘息は、気管支喘息と同じように気道が炎症を起こす病気ですが、喘鳴や呼吸困難といった症状がほとんどなく、慢性的な咳だけが続くのが特徴です。
乾いた咳が出ることが多く、特に夜間や早朝に悪化しやすいという特徴は気管支喘息と共通しています。

咳喘息はうつる?
咳喘息も、気管支喘息と同様に気道の慢性的な炎症が原因であり、ウイルスや細菌が原因の感染症ではありません。
したがって、咳喘息も人にうつることはありません。「咳が出ているからうつるのではないか」と心配される方もいるかもしれませんが、咳喘息による咳で他の方に感染させる心配はありません。

咳喘息は何日で治る?
「咳喘息はどれくらいで治るの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
残念ながら、「何日で治る」と明確に答えることは難しい病気です。
咳喘息は、適切な治療を行わずに放置すると、約30~40%が数年以内に気管支喘息へ移行すると言われています。

治療には、気道の炎症を抑えるための吸入ステロイド薬などが主に使われます。
これらの薬を指示通りに使用することで、数日から数週間で咳の症状が改善することが多いです。
しかし、症状が改善したからといって自己判断で治療を中断すると、再び咳が出始めたり、気管支喘息に進行したりするリスクが高まります。

そのため、咳喘息の治療は、症状がなくなった後も医師の指示に従って、数ヶ月間は治療を継続することが一般的です。
根気強く治療を続けることで、気管支喘息への移行を防ぎ、症状の再発を抑えることが期待できます。
長引く咳に悩んでいる方は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが非常に重要です。

喘息の主な原因

喘息の発症には、生まれ持った体質(遺伝的な要因)と、環境的な要因の両方が複雑に関係しています。
先述の通り、原因によってアレルギー性喘息と非アレルギー性喘息に分けられますが、両方の要素が混在している場合も少なくありません。

アレルギー性喘息の原因

アレルギー性喘息は、特定の物質(アレルゲン)を吸い込むことで、体の免疫システムが過剰に反応し、気道に炎症が起こるタイプの喘息です。
主なアレルゲンとしては以下のようなものがあります。

  • ハウスダスト: 家の中のほこり。繊維くず、カビ、細菌、人やペットのフケなどが混ざっています。
  • ダニ: 特にチリダニ(ヒョウヒダニ)。ハウスダストの主要な成分であり、死骸やフンがアレルゲンとなります。カーペット、寝具、布製のソファなどに多く生息します。
  • 花粉: スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサなど、様々な植物の花粉が原因となります。季節性のアレルギー性喘息の原因となります。
  • カビ: 浴室、台所、壁など、湿気の多い場所に繁殖するカビの胞子がアレルゲンとなります。
  • ペットの毛・フケ: イヌやネコなどの毛やフケ、唾液などがアレルゲンとなります。
  • 昆虫: ゴキブリなどのフンや死骸がアレルゲンとなることがあります。

これらのアレルゲンに触れる機会が多い環境にいると、喘息を発症したり、症状が悪化したりしやすくなります。
特に小児喘息では、アレルギーが原因となっていることが多い傾向があります。

非アレルギー性喘息の原因

非アレルギー性喘息は、アレルギー反応以外の様々な刺激が原因で気道に炎症が起こり、喘息の症状が現れるタイプです。
成人になってから発症する喘息に多い傾向があります。
主な原因としては以下のようなものがあります。

  • ウイルス・細菌感染: 風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症が引き金となって喘息が発症したり、症状が悪化したりすることがあります。
  • たばこの煙: 喫煙(受動喫煙も含む)は、気道に直接的な刺激を与え、炎症を悪化させる強力な要因です。
  • 大気汚染: 排気ガス、工場の煙など、PM2.5を含む汚染物質は気道を刺激し、喘息を悪化させます。
  • 冷たい空気・乾燥: 急激な温度変化や乾燥した空気は、気道を刺激して咳や喘鳴を引き起こすことがあります。
  • 運動: 運動中や運動後に咳や息苦しさが起こる「運動誘発喘息」があります。特に寒い時期や乾燥した環境での運動で起こりやすいです。
  • 精神的なストレス: ストレスは体の様々な機能に影響を与え、喘息の症状を悪化させることがあります。
  • 特定の薬剤: アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や、一部の降圧剤(β遮断薬)などが喘息発作を誘発することがあります。「アスピリン喘息」はその代表例です。
  • 気候や気圧の変化: 天候の変化や台風の接近など、気圧や湿度、気温の変化が喘息発作の引き金となることがあります。

非アレルギー性喘息の場合も、アレルギー性喘息と同様に気道は過敏な状態になっており、様々な刺激に対して反応しやすくなっています。
これらの原因を特定し、可能な限り避けることが喘息の管理には重要です。

喘息と間違えやすい病気

咳や息苦しさといった症状は、喘息だけにみられるものではありません。
他の様々な呼吸器疾患でも同様の症状が現れるため、正確な診断が非常に重要です。
「喘息 うつる」という疑問は、他の感染性の呼吸器疾患との混同から生じている可能性もあります。

気管支炎はうつる?喘息との違い

気管支炎は、気管や気管支に炎症が起こる病気です。
急性の気管支炎と慢性の気管支炎があります。

  • 急性気管支炎: 主にウイルスや細菌感染が原因で起こります。
    風邪に続いて発症することが多く、原因が感染性の場合は、人から人へうつる可能性があります。
    咳や痰、発熱などが主な症状です。
    通常は数週間で改善します。
  • 慢性気管支炎: 主に喫煙などが原因で、気道の炎症が慢性的に続いている状態です。
    感染が原因ではないため、人から人へうつることはありません。
    咳や痰が長期間(通常1年に3ヶ月以上、2年以上連続して)続くのが特徴です。

喘息と気管支炎は、どちらも気道の炎症が関わる病気ですが、その原因や病態、経過に違いがあります。

特徴 喘息(気管支喘息) 急性気管支炎 慢性気管支炎(COPDの一部)
原因 アレルギー、ウイルス感染、喫煙、気候など ウイルス、細菌感染 喫煙(圧倒的に多い)、大気汚染など
病態 気道の慢性炎症、過敏性亢進、可逆的な気道狭窄 気管・気管支の急性炎症 気管支の慢性炎症、分泌過多、非可逆的な気道狭窄
症状 喘鳴、呼吸困難、咳、痰。特に夜間・明け方悪化 咳、痰、発熱、のどの痛みなど。 慢性の咳、痰。進行すると呼吸困難
特徴的な呼吸音 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー) 特にないか、ヒューヒュー音が軽度聞かれることも 喘鳴は稀。重症化すると呼吸困難に伴う音がする
うつるか? うつらない 原因が感染性ならうつる可能性がある うつらない
経過 慢性。発作を起こす。治療で症状コントロール。 通常数週間で回復。 進行性。
治療 吸入ステロイドなどによる長期管理、発作治療 対症療法(咳止め、解熱剤など)。抗菌薬(細菌性の場合) 禁煙、気管支拡張薬、吸入ステロイドなど

このように、気管支炎の中でも感染性の原因によるものはうつる可能性があるのに対し、喘息や慢性気管支炎はうつらないという点が大きな違いです。
症状だけで自己判断せず、医師の診断を受けることが大切です。

風邪やその他の感染症との違い

風邪(普通感冒)は、ウイルス感染によって引き起こされる上気道の急性炎症です。
咳、鼻水、のどの痛み、発熱などが主な症状で、原因がウイルス感染であるため、人から人へ容易にうつります。
通常は数日から1週間程度で自然に軽快します。

風邪と喘息の主な違いは以下の通りです。

  • 原因: 風邪はウイルス感染、喘息は気道の慢性炎症(アレルギーや非アレルギー性の刺激)。
  • 感染性: 風邪はうつる、喘息はうつらない。
  • 症状: 風邪は上気道症状(鼻水、のどの痛み)が中心で発熱を伴うことが多い。
    喘息は下気道症状(喘鳴、呼吸困難、咳)が中心で発熱は伴わない(感染合併時を除く)。
  • 経過: 風邪は短期間で軽快、喘息は慢性的な経過をたどり、繰り返す。

ただし、風邪をひいたことで気道が刺激され、喘息の症状が悪化したり、隠れていた喘息が顕在化したりすることもあります。
「風邪だと思っていたら咳だけが長引いた」という場合に、咳喘息や気管支喘息が見つかるケースも少なくありません。

肺炎や百日咳などの呼吸器感染症も、咳や息苦しさといった症状を伴うことがあり、これらの病気は感染性があります。
しかし、喘息はこれらの感染症とは根本的に異なる病気です。
症状が長引く場合やいつもと違うと感じる場合は、安易に自己判断せず、医療機関で診察を受けることが重要です。

喘息の主な症状

喘息の症状は、軽いものから重いものまで様々です。
典型的な症状としては、以下のものが挙げられます。

  • 喘鳴(ぜんめい): 息を吐き出すときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という高い音や笛のような音が聞こえます。
    これは、狭くなった気道を空気が通る際に生じる音です。
  • 呼吸困難(息苦しさ): 特に息を吐き出すことが難しくなり、呼吸をするのが苦しく感じます。
    ひどい発作時は、会話が難しくなるほどの息苦しさを感じることがあります。
  • 咳: 乾いた咳や痰を伴う咳が出ます。
    一度出始めるとなかなか止まらず、夜間や早朝に悪化しやすいのが特徴です。
    運動後や冷たい空気を吸い込んだ時、特定の匂いを嗅いだ時などに誘発されることもあります。
  • 痰: 粘り気の強い痰が出ることがあります。
  • 胸の痛みや圧迫感: 胸が締め付けられるような感覚や、重苦しさを感じることがあります。

これらの症状は、日によって、あるいは時間帯によって変動することがあります。
特に、夜寝ている間から明け方にかけて症状が悪化しやすい傾向があります。
これは、夜間に気道の炎症が悪化しやすいことや、体を休めている間に気道が狭くなりやすいことなどが関係していると考えられています。

また、季節の変わり目や、天候の変化(特に低気圧の接近)、疲労やストレス、たばこの煙、風邪などの感染症をきっかけに症状が悪化し、「発作」と呼ばれる状態になることがあります。
発作時は、喘鳴や呼吸困難が強くなり、場合によっては救急処置が必要となることもあります。

一方、咳喘息の場合は、上記の症状のうち喘鳴や呼吸困難はほとんどなく、慢性的な咳だけが続くのが特徴です。
症状が咳のみであるため、風邪や気管支炎と間違えられやすいですが、咳喘息を放置すると気管支喘息に移行する可能性があるため、注意が必要です。

喘息の診断

喘息の診断は、医師による問診、診察、およびいくつかの検査に基づいて総合的に行われます。

  1. 問診:
    • 症状(咳、息苦しさ、喘鳴など)の種類、程度、頻度、症状が出やすい時間帯(夜間、明け方)、季節性があるかなどを詳しく聞きます。
    • 症状が現れるきっかけ(風邪、運動、アレルギー物質への暴露、喫煙、特定の薬剤など)について尋ねます。
    • 家族に喘息やアレルギー疾患を持つ人がいるかを確認します。
    • これまでの病歴、服用している薬、職業、生活環境なども重要な情報となります。
  2. 身体診察:
    • 聴診器を使って肺の音を聴き、喘鳴がないかを確認します。
    • 呼吸の状態(速さ、深さ、呼吸筋の使用状況など)を観察します。
  3. 呼吸機能検査:
    • スパイロメトリー: 肺に出入りする空気の量や速度を測定する検査です。
      息を勢いよく吐き出したときの1秒量(FEV1)や、肺活量などを測定し、気道が狭くなっている程度や、気道狭窄が可逆的(薬で改善するか)かどうかなどを評価します。
      喘息の診断に最も重要な検査の一つです。
    • ピークフロー測定: 最大の速さで息を吐き出したときの息の勢いを測定する検査です。
      喘息患者さん自身が自宅で測定することで、気道の状態や症状の変動を把握し、病状の管理に役立てます。
    • 気道過敏性試験: 気道を収縮させる物質(例: メサコリン)を吸入させ、FEV1がどの程度低下するかを測定することで、気道の過敏性を評価します。
  4. アレルギー検査:
    • アレルギー性喘息が疑われる場合に行われます。
      血液検査で特定の物質(ダニ、ハウスダスト、花粉など)に対するIgE抗体の量を測定したり、皮膚にアレルゲンエキスを少量つけて反応を見る皮膚プリックテストなどが行われます。
  5. その他の検査:
    • 胸部X線検査やCT検査:肺炎や肺気腫など、喘息以外の病気がないかを確認します。
    • 呼気NO(一酸化窒素)濃度測定:気道の炎症の程度を反映する検査として、診断や治療効果の判定に用いられることがあります。

これらの検査結果と問診・診察の内容を総合的に判断して、喘息であるかどうかの診断が確定されます。
特に咳喘息の場合は、呼吸機能検査で異常がみられないことも多く、気管支拡張薬を吸入して咳が改善するかどうか(治療的診断)も診断の重要な手がかりとなります。

喘息の治療と予防

喘息は慢性疾患であり、根治が難しい病気ですが、適切な治療と予防を行うことで、発作をコントロールし、健康な人と変わらない日常生活を送ることが十分可能です。
治療の目標は、症状がない状態を維持し、発作を予防することです。

喘息の治療法

喘息治療の中心は、気道の炎症を抑えるための薬物療法です。
薬には、毎日継続して使用する長期管理薬(コントローラー)と、発作が起きたときに症状を速やかに抑えるための発作治療薬(リリーバー)があります。

  1. 長期管理薬(コントローラー):
    • 吸入ステロイド薬: 喘息治療の最も中心となる薬です。
      気道の慢性的な炎症を抑える効果があり、毎日規則的に使用することで、気道の過敏性を改善し、発作を起こしにくくします。
      吸入薬なので、気道に直接届き、全身への影響は少ないとされています。
    • 長時間作用型β2刺激薬: 気道を広げる作用があり、効果が長時間持続します。
      吸入ステロイド薬と併用されることが多いです。
    • 長時間作用型抗コリン薬: 気道を広げる作用があります。
      主に成人喘息で、吸入ステロイド薬などを使用しても症状が十分にコントロールできない場合に使用されます。
    • ロイコトリエン受容体拮抗薬: 炎症を抑えたり、気道収縮を抑制したりする効果があります。
      錠剤や細粒の薬で、吸入薬が使いにくい小児や、アレルギー性鼻炎を合併している場合などにも用いられることがあります。
    • テオフィリン製剤: 気管支を広げる作用や抗炎症作用がありますが、副作用が出ることもあるため、他の薬で効果不十分な場合などに使用されます。
    • 生物学的製剤: 重症の喘息で、他の治療法で十分にコントロールできない場合に用いられる注射薬です。
      アレルギー反応に関わる特定の物質の働きを抑えることで効果を発揮します。
  2. 発作治療薬(リリーバー):
    • 短時間作用型β2刺激薬: 吸入すると数分以内に効果が現れ、狭くなった気道を速やかに広げる作用があります。
      発作が起きたときに使用し、症状を和らげます。
      ただし、これは対症療法であり、発作治療薬の使用回数が増える場合は、喘息のコントロールが不十分であることを示しているため、長期管理薬の見直しが必要です。

これらの薬は、喘息の重症度や患者さんの状態に応じて、医師が適切な種類や量を組み合わせて処方します。
最も重要なのは、症状が落ち着いているときでも、医師の指示通りに長期管理薬を継続して使用することです。
自己判断で治療を中断すると、再び症状が悪化したり、重い発作を起こしたりするリスクが高まります。

喘息の予防法

喘息の発作を予防し、病状を安定させるためには、薬物療法に加えて、日常生活での工夫も非常に重要です。

  1. 原因物質(アレルゲンや刺激物質)を避ける:
    • ハウスダスト・ダニ対策: 室内をこまめに掃除し、換気を十分に行います。
      寝具は丸洗いできるものを選んだり、防ダニシーツを使用したりするのも効果的です。
      カーペットや布製のソファはダニが繁殖しやすいため、できるだけ除去したり、掃除機で丁寧に掃除したりします。
      湿度を50%以下に保つこともダニの繁殖を抑えるのに役立ちます。
    • カビ対策: 浴室や台所など、カビが発生しやすい場所は換気を十分に行い、こまめに掃除します。
    • ペット対策: ペットのフケや毛がアレルゲンの場合、可能であればペットとの接触を減らすか、飼育場所を限定する、こまめにシャンプーするなどの対策が必要です。
    • 花粉対策: 花粉シーズンには、外出時にマスクや眼鏡を着用したり、帰宅時に服についた花粉を払ったり、うがい・手洗いをするなどの対策が有効です。
      窓を開ける時間を減らす、空気清浄機を使用するなどの効果的です。
    • たばこの煙対策: 喫煙者は禁煙が最も重要です。
      家族に喫煙者がいる場合は、家の中での喫煙を完全にやめてもらうなど、受動喫煙を避ける環境整備が必要です。
    • 大気汚染対策: 大気汚染がひどい日は、外出を控える、マスクを着用するなどの対策が考えられます。
  2. 体調管理:
    • 風邪やインフルエンザの予防: 手洗い、うがいを徹底し、人混みを避けるなどの基本的な感染予防が重要です。
      インフルエンザや肺炎球菌の予防接種も検討しましょう。
    • 適切な睡眠と休息: 十分な睡眠と休息をとり、疲労やストレスをため込まないように心がけましょう。
    • バランスの取れた食事: 栄養バランスの取れた食事を心がけ、健康な体づくりを維持することが大切です。
    • 適度な運動: 体調が良い時は、ウォーキングや水泳など、体に負担のかかりすぎない運動は喘息の改善に役立つことがあります。
      ただし、運動誘発喘息がある場合は、運動前に医師の指示に従って予防薬を使用するなどの対策が必要です。
      寒い時期や乾燥している場所での急な激しい運動は避けましょう。
    • 規則正しい生活: 生活リズムを整えることは、体調を安定させる上で重要です。
    • ストレスマネジメント: ストレスは喘息を悪化させる要因の一つです。
      自分に合ったストレス解消法を見つけ、上手にストレスを解消しましょう。
  3. その他の注意点:
    • 気候の変化への対応: 寒暖差の大きい時期や、急な気候の変化がある場合は注意が必要です。
      外出時にはマフラーやマスクなどで冷たい空気を直接吸い込まないように工夫しましょう。
    • 喘息手帳の活用: 自分の喘息の症状、発作時の対処法、使用している薬などを記録できる喘息手帳を活用し、日々の病状を把握することが大切です。
    • 定期的な受診: 症状が安定していても、定期的に医療機関を受診し、医師に病状を確認してもらい、必要に応じて治療計画を見直してもらいましょう。

喘息の予防は、薬物療法と同様に、症状を安定させて健康な生活を送るために欠かせない要素です。
ご自身の喘息の原因や悪化因子を把握し、可能な対策を継続して行うことが大切です。

長引く咳や気になる症状があれば医療機関へご相談を

この記事では、「喘息はうつるのか」という疑問から、喘息という病気そのものについて詳しく解説してきました。
喘息は感染症ではないため、人から人へうつる心配はありません。
しかし、咳や息苦しさといった症状は、喘息以外にも様々な呼吸器疾患で起こり得ます。
特に咳が長引く場合、「ただの風邪だろう」と自己判断せずに、医療機関を受診することが非常に重要です。

長引く咳(通常3週間以上続く咳)の原因としては、喘息(特に咳喘息)、感染後の咳、副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流症、薬剤による咳、肺結核、肺がんなど、様々な病気が考えられます。
これらの病気の中には、早期に診断して適切な治療を開始する必要があるものや、周囲に感染を広げる可能性がある病気(例: 肺結核)も含まれます。

ご自身の症状が喘息によるものなのか、それとも別の病気によるものなのかを正確に診断するためには、医師による診察や必要な検査が不可欠です。
早めに医療機関(呼吸器内科など)を受診することで、適切な診断に基づいた治療を受けることができ、症状の早期改善や、病気の進行予防につながります。

また、すでに喘息と診断されている方も、症状が悪化した場合や、これまでの治療で症状が十分にコントロールできない場合は、我慢せずに主治医に相談しましょう。
喘息は適切な管理を行うことで、健康な人と変わらない日常生活を送ることが可能な病気です。
不安な点や疑問点があれば、遠慮なく医師や医療スタッフに尋ねるようにしましょう。

免責事項

本記事に記載されている情報は、一般的な医学的知識に基づいて作成されており、特定の個人の症状や状況に対する医学的アドバイスを提供するものではありません。
ご自身の健康状態に関する具体的な診断や治療については、必ず医療機関を受診し、医師にご相談ください。
自己判断による治療の中断や変更は、病状を悪化させる可能性があります。
本記事の情報に基づいて生じたいかなる結果についても、当方は一切の責任を負いません。

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