頭の中で同じ悩みが何度も繰り返し再生され、考えたくなくても止まらない…。そんな「ぐるぐる思考」に悩まされていませんか?
過去の失敗や未来への不安が頭から離れず、集中できなかったり、夜眠れなくなったりするのは非常につらいものです。
この記事では、そんなぐるぐる思考の止め方について、具体的な方法を解説します。
なぜ思考が止まらなくなってしまうのか、その原因を理解し、今日から実践できる対処法を知ることで、心の負担を軽くしていきましょう。
ぐるぐる思考とは?反芻思考との違い
「ぐるぐる思考」とは、特定の考えや悩み、特にネガティブな内容が頭の中を何度も巡ってしまう状態を指す一般的な表現です。心理学の専門用語では「反芻(はんすう)思考」と呼ばれます。
反芻とは、牛などが一度飲み込んだ食べ物を再び口の中に戻して咀嚼するように、過去の出来事や感情を何度も繰り返し思い出し、考え込んでしまう心の働きを指します。
問題解決のための前向きな思考とは異なり、反芻思考は答えの出ない問いを繰り返すだけで、気分を落ち込ませたり、不安を増大させたりする傾向があります。
ぐるぐる思考が止まらない主な原因
では、なぜぐるぐる思考は止まらなくなってしまうのでしょうか。その背景には、いくつかの原因が考えられます。
過去の後悔や未来への不安
「あの時こうしていれば…」という過去への後悔や、「もし悪いことが起きたらどうしよう…」という未来への過度な不安は、ぐるぐる思考の主な火種となります。
特に、コントロールできない事柄について考え始めると、思考のループから抜け出しにくくなります。
ネガティブな感情に囚われやすい
物事を悲観的に捉える癖があったり、ネガティブな感情を引きずりやすかったりする人は、ぐるぐる思考に陥りやすい傾向があります。
一つの小さな失敗が、すべての物事がうまくいかない証拠のように感じられ、その考えが頭から離れなくなってしまいます。
自己肯定感の低さ
自分に自信が持てず、自己肯定感が低いと、「自分が悪い」「自分には価値がない」といった自己否定的な思考に陥りやすくなります。
他人の言動を過度に気にしてしまったり、自分の評価をネガティブに解釈したりすることが、ぐるぐる思考を加速させる原因となります。
発達障害や精神疾患との関連
ぐるぐる思考(反芻思考)は、特定の精神疾患や発達障害の特性と関連している場合があります。
反芻思考と発達障害(アスペルガー)
自閉スペクトラム症(ASD、旧称アスペルガー症候群)の特性の一つに、特定の物事への強いこだわりや、思考の切り替えが苦手という点があります。
この特性が、一度気になったことを繰り返し考えてしまう反芻思考につながることがあります。
反芻思考と強迫性障害
強迫性障害(OCD)は、強い不安や不快感(強迫観念)と、それを打ち消すための行為(強迫行為)を繰り返す疾患です。
例えば、「鍵を閉め忘れたかもしれない」という考えが頭から離れず、何度も確認に戻るといった行動も、反芻思考と密接に関連しています。
疲労や睡眠不足
心と体は密接につながっています。慢性的な疲労や睡眠不足は、脳の機能を低下させ、感情のコントロールを難しくします。
その結果、ネガティブな思考を断ち切る力が弱まり、ぐるぐる思考にはまりやすくなります。
ぐるぐる思考を止める具体的な方法・対処法
つらいぐるぐる思考ですが、抜け出すための方法はたくさんあります。自分に合ったものから試してみてください。
思考を書き出して整理する
頭の中だけで考えていると、同じ場所を堂々巡りしてしまいます。紙やスマートフォンなどに、今考えていることをすべて書き出してみましょう。
- 何に悩んでいるのか
- 何が不安なのか
- どんな感情か(悲しい、腹が立つ、怖いなど)
思考を「見える化」することで、客観的に自分の状況を把握でき、「意外と大したことではなかった」と気づけたり、問題点を整理して解決策を考えやすくなったりします。
意識的に注意をそらす・別のことに集中する
ぐるぐる思考が始まったら、強制的に注意を別の方向へ向けることが有効です。
- 好きな音楽を聴く、映画を観る
- 冷たい水で顔を洗う、ガムを噛む
- 難しい計算問題やパズルを解く
- 友人や家族と全く違う話をする
ポイントは、五感を使ったり、少し頭を使ったりする活動に切り替えることです。
これにより、思考のループを物理的に断ち切ることができます。
小さなことでも行動してみる
思考が止まらない時は、体を動かしてみましょう。悩みの解決に直接つながらなくても構いません。
- 部屋の片付けをする
- 散歩に出かける
- 簡単な料理を作る
行動に集中することで、悩んでいる思考から意識が離れます。また、「片付けが終わった」といった小さな達成感が、気分を前向きにする助けになります。
ぐるぐる考える時間を制限する
「考えるのをやめよう」と思うとかえって考えてしまうことがあります。そんな時は、あえて「悩む時間」を設けてみましょう。
「今日の19時から15分間だけ、この悩みについて徹底的に考える」と決めて、タイマーをセットします。時間内は存分に悩んで構いません。しかし、タイマーが鳴ったら、そこで強制的に終了し、別の活動に移ります。これを繰り返すことで、思考をコントロールする感覚を養うことができます。
マインドフルネスを実践する
マインドフルネスは、「今、この瞬間」の自分の状態に意識を向ける心のトレーニングです。過去や未来へ向かいがちな意識を現在に戻すことで、ぐるぐる思考を落ち着かせる効果が期待できます。
瞑想
- 静かな場所で楽な姿勢で座る。
- 目を閉じ、自分の呼吸に意識を集中させる。
- 息を吸って、吐いて…という呼吸の流れだけを感じる。
- 途中で他の考えが浮かんできたら、「考えが浮かんだな」と客観的に認識し、再び呼吸に意識を戻す。
これを1日5分からでも続けてみましょう。
今に意識を向ける練習
日常生活の中でも、マインドフルネスは実践できます。例えば、お茶を飲むときに「カップの温かさ」「お茶の香り」「口に含んだときの味」など、五感で感じることに集中します。食事や散歩の最中など、様々な場面で試せます。
適度な運動や自然との触れ合い
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、心を安定させる神経伝達物質「セロトニン」の分泌を促し、気分をリフレッシュさせる効果があります。また、公園を散歩したり、森林浴をしたりして自然に触れることも、ストレス軽減に繋がります。
自己肯定感を高める習慣
ぐるぐる思考の背景にある自己肯定感の低さにアプローチすることも大切です。
自己否定のパターンに気づく
「どうせ自分なんて…」という思考が浮かんだときに、「あ、また自己否定しているな」と気づく練習をします。気づくだけで、その思考と距離を置くことができます。
物事がうまくいった経験を振り返る
一日の終わりに、その日にあった「良かったこと」を3つ書き出す「スリーグッドシングス」は効果的です。
- 「挨拶をしたら、笑顔で返してもらえた」
- 「今日の昼食が美味しかった」
- 「仕事のタスクを一つ終えられた」
どんな些細なことでも構いません。ポジティブな側面に目を向ける習慣が、自己肯定感を育みます。
思考の原因から物理的に距離を置く
もし、特定の場所や人間関係がぐるぐる思考の引き金になっている場合は、物理的に距離を置くことも検討しましょう。SNSを見ていると他人と比べて落ち込んでしまうなら、少しの間アプリを消してみるのも一つの手です。
他者に相談する
一人で抱え込んでいると、視野が狭くなり、ネガティブな思考から抜け出せなくなります。信頼できる友人、家族、パートナーなどに話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になったり、自分では思いつかなかった視点に気づけたりすることがあります。
ぐるぐる思考が続く場合に専門機関へ相談するタイミング
セルフケアを試してもぐるぐる思考が改善せず、日常生活に支障が出ている場合は、専門機関への相談を検討しましょう。
- ぐるぐる思考が原因で、仕事や学業に集中できない
- 眠れない、食欲がないなど、身体的な不調が続いている
- 何をしても気分が晴れず、楽しめない
- 自分で思考をコントロールできないと感じ、強い苦痛がある
- 「消えてしまいたい」といった考えが浮かぶ
このような状態が続く場合は、心療内科、精神科、またはカウンセリングルームなどに相談してください。専門家は、あなたの状況に合わせた適切なサポートを提供してくれます。
まとめ:ぐるぐる思考の止め方を知り、心の負担を減らそう
ぐるぐる思考(反芻思考)は、過去への後悔や未来への不安、自己肯定感の低さなど、様々な原因によって引き起こされます。このつらい思考のループを断ち切るためには、まず自分に合った止め方を見つけて実践してみることが大切です。
- 思考を書き出して客観視する
- 運動や趣味で意識をそらす
- マインドフルネスで「今」に集中する
- 悩む時間を制限してみる
これらの対処法を試しながら、少しずつ思考の癖を改善していきましょう。もし、自分の力だけではどうにもならないと感じたら、決して一人で抱え込まず、専門家に相談する勇気を持ってください。あなたの心の負担が、少しでも軽くなることを願っています。
免責事項:
本記事は情報提供を目的としており、医学的診断や治療を代替するものではありません。心身の不調が続く場合は、医療機関や専門家にご相談ください。