
こちらの記事の監修医師
吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長
佐々木 洋
嘔吐物が赤い原因とは?考えられる病気と緊急性を解説
突然赤いものを吐いてしまい、「これは血なのだろうか」と不安や焦りを感じていませんか。その嘔吐物が消化管からの出血(吐血)なのか、単に食べ物の色なのか、ご自身での判断に戸惑うものです。
この記事では、赤い嘔吐物が出た際に考えられる原因を詳しく解説します。厚生労働省も注意喚起する緊急性の高いサインから、吐血と食べ物の見分け方、背景にある病気まで具体的に紹介します。
まずは確認を。救急車を呼ぶべき危険なサイン
赤い嘔吐物が出た際に真っ先に確認すべきは、救急車を呼ぶ必要がある危険なサインの有無です。
嘔吐物が赤い場合、それは食道や胃、十二指腸など消化管からの出血、つまり「吐血」かもしれません。出血量が多いと、血圧が急激に低下し、命に関わる「ショック状態」に陥る危険があります。
実際、厚生労働省も吐血は「ためらわずに救急車を呼ぶべき症状」として挙げています※。
もし、これから説明するサインが一つでも当てはまるなら、ご自身で判断せず、すぐに119番通報するか、周りの人に助けを求めてください。

大量の血を吐いている
コップ1杯(約200mL)を超える多量の血を吐いた場合や、一度止まっても何度も吐血を繰り返すときは、命の危険が迫っているサインと考えられます。
これは、胃潰瘍・十二指腸潰瘍からの多量出血や、肝臓の病気に伴い食道の血管が破れる「食道静脈瘤破裂」といった、緊急性の高い病気が背景にあるかもしれません。
出血量が多いと、体内を巡る血液量が急激に減って血圧が低下し、ショック状態に陥ります。
このような状態でご自身で車を運転したり、歩いて病院に向かったりするのは、途中で意識を失う危険があり大変危険です。迷わず救急車を呼んでください。
意識がもうろうとしている、または失神した
吐いた後に意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍い、あるいは気を失ってしまった場合は、一刻を争う緊急事態です。
これは、大量の出血によって脳へ送られる血液が不足しているサインであり、「出血性ショック」が進行していることを示唆します。厚生労働省も「意識のはっきりしない状態」は救急車を要請すべき症状としています※。
ご本人はもはや自分で判断できる状態ではありません。もし周りの方がこの状況に気づいたら、ためらわずに119番通報をお願いします。
救急隊が到着するまでは、嘔吐物が喉に詰まり窒息するのを防ぐため、体を横向きに寝かせる「回復体位」をとらせてあげてください。
激しい腹痛や胸痛を伴う
吐血と同時に、みぞおちやお腹全体に「これまでに経験したことのないような激しい痛み」や、胸が締め付けられるような強い痛みを伴う場合も、緊急性が高い危険なサインです。
特に、突然の激しい腹痛を伴う吐血は、厚生労働省も救急車を呼ぶべき症状として注意喚起しています※。
これらの激痛は、胃や十二指腸の壁に穴が開く「消化管穿孔」や、食道が破裂してしまう「ブールハーフェ症候群」など、緊急手術を要する重篤な病気の可能性があります。
「いつもの胃痛だろう」と軽く考えず、冷や汗や息苦しさ、背中にまで広がる痛みを伴うようであれば、迷わず救急車を呼んでください。
めまいや立ちくらみがひどい
吐血した後に、ふらふらする強いめまいや、立ち上がると目の前が暗くなるような立ちくらみが起こる場合、それは体内の血液が不足しているサインです。
出血によって全身を巡る血液の量が減り、血圧が下がっている状態、つまり「出血性ショック」の初期症状と考えられます。
特に、以下のような症状が伴う場合は危険度が高まります。
- 顔色が悪く、青白くなっている
- じっとりとした冷たい汗をかいている
- 心臓がドキドキと速く打つ(動悸)
このような状態で無理に立ち上がろうとすると、意識を失って転倒し、頭を打つなど二次的な大怪我につながる恐れがあります。まずは横になって安静を保ち、すぐに救急車を呼ぶか、周りの人に助けを求めてください。
その赤い嘔吐、本当に血?食べ物との見分け方
赤い嘔吐物が出たとき、それは消化管から出血している「吐血(とけつ)」か、あるいは単に赤い食べ物の色が混じっただけなのか、見分ける必要があります。
しかし、この2つを見た目だけで正確に判断するのは、時として専門の医師にとっても難しいものです。
「血かもしれない」と少しでも不安を感じたり、腹痛やめまいといった他の症状を伴ったりする場合は、ご自身の判断で様子を見ず、速やかに医療機関へご相談ください。
吐血(鮮血・暗赤色)の特徴
吐血とは、食道・胃・十二指腸といった上部消化管から出た血を、口から吐き出してしまう状態を指します。
吐いた血の色は、出血した場所や、血液が胃の中にあった時間によって変化するのが特徴です。
鮮血(鮮やかな赤色)
食道など、胃酸にあまり触れられていない比較的新しい出血が考えられます。出血が始まってから吐き出すまでの時間が短いことを意味します。
暗赤色・黒褐色(コーヒーかす様)
胃や十二指腸で出血し、血液が胃酸と混ざって時間が経つと、酸化して黒っぽく変色します。これを「コーヒー残渣(ざんさ)様」と呼びます。
どちらの色であっても、消化管から出血している危険なサインであることに変わりはありません。
また、吐血とあわせて「イカ墨」のような真っ黒な便(タール便)が出ていないかも確認してください。これは、吐血と同じくらい重要な消化管出血のサインです。
日本消化器病学会も、患者さん自身が症状を正しく理解し、医師に正確に伝えることの重要性を呼びかけています※。少量でも血を吐いた場合は、放置せずに受診を検討しましょう。
喀血との違い
口から血が出た場合、吐血とよく似た症状に「喀血(かっけつ)」があります。吐血は消化器からの出血ですが、喀血は気管支や肺といった呼吸器からの出血であり、原因も治療法も全く異なります。
両者の主な違いを、以下の表に整理しました。
| 吐血(とけつ) | 喀血(かっけつ) | |
|---|---|---|
| 出血元 | 消化管(食道、胃、十二指腸など) | 呼吸器(気管支、肺など) |
| きっかけ | 吐き気・嘔吐 | 咳・たん |
| 色・性状 | ・暗赤色、黒褐色、コーヒーかす様 ・食事の残りかすが混じることも | ・鮮やかな赤色、ピンク色 ・空気が混じり泡立っていることも |
とはいえ、咳き込んだ勢いで吐いてしまったり、吐いた後にむせて咳き込んだりすると、ご自身でこれらを区別するのは非常に困難です。
大切なのは、「口から血が出た」という事実そのものです。原因が消化器であれ呼吸器であれ、詳しい検査が必要なことに変わりはありませんので、必ず医療機関を受診してください。
赤い食べ物や飲み物が原因の場合
トマトジュースや赤ワイン、イチゴやスイカといった赤い色素を多く含むものを口にした後で吐くと、嘔吐物が赤く見えることがあります。
食べ物の色が原因かどうかを見分けるには、以下の点を確認してみましょう。
- 吐く直前に、赤い食べ物や飲み物を口にした覚えがあるか
- 嘔吐は一度きりで、腹痛やめまい、冷や汗などの他の症状が全くないか
もし体調も落ち着いているのであれば、食べ物の色が原因である可能性も考えられます。
ただし、最も注意すべきは「どうせ食べ物のせいだろう」という安易な思い込みです。たまたま赤いものを食べたタイミングと、胃潰瘍などによる実際の出血が重なってしまうケースもゼロではありません。
少しでも「いつもと違う」「おかしいな」と感じたり、体調が悪かったりするならば、自己判断はせず、必ず医師に相談してください。
赤い嘔吐物で考えられる消化器の病気
赤い嘔吐物は、食道や胃、十二指腸といった食べ物の通り道(上部消化管)からの出血が原因で起こります。
出血の原因となる病気は、自然に治まる比較的軽いものから、命に直結する緊急性の高いものまでさまざまです。代表的な病気として、マロリー・ワイス症候群、胃・十二指腸潰瘍、食道静脈瘤破裂、そして胃がん・食道がんなどが考えられます。
特に、以下に当てはまる方は吐血のリスクが高いため、より一層の注意が必要です。
- 肝臓の病気(特に肝硬変)を指摘されている方
- 血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)を飲んでいる方
- 痛み止め(特にロキソニンなどのNSAIDs)をよく服用する方
- ピロリ菌に感染している、または過去に胃潰瘍などを患った経験がある方
ご自身の判断で「大丈夫だろう」と決めつけず、必ず医療機関で出血の原因を特定することが重要です。

マロリー・ワイス症候群
マロリー・ワイス症候群は、激しい嘔吐を繰り返した際の圧力で、食道と胃のつなぎ目付近の粘膜が縦に裂けて出血する病気です。
お酒の飲み過ぎや食中毒、つわり(妊娠悪阻)などで、何度も強くえづいた後に、吐いたものに鮮やかな赤い血が筋状に混じることが典型的な症状です。
多くの場合、出血は自然に止まりますが、出血量が多い場合や吐血を繰り返すときは、内視鏡(胃カメラ)での治療が必要になります。内視鏡では、出血している場所を直接確認し、小さなクリップで裂け目を塞いだり、熱を加えて血管を焼灼(しょうしゃく)したりして、止血処置を行います。処置後は、胃酸の分泌を抑える薬を服用し、傷の治りを促します。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、胃酸によって粘膜が深くえぐられ、その下にある血管が破れて出血する病気です。アイキャッチ画像を設定
吐き気やみぞおちの痛みに加え、吐血や真っ黒な便(タール便)が特徴的なサインです。吐血の色は、コーヒーかすのような黒っぽい色になることもあります。
主な原因は、ピロリ菌感染と、ロキソニンに代表される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)という痛み止めの影響です。その他、ストレスや喫煙も発症のリスクを高めます。
出血量が多いと、めまいや動悸、冷や汗といった貧血のサインが現れ、ショック状態に陥る危険もあります。日本消化器病学会のガイドラインでも、出血を伴う潰瘍に対しては内視鏡による止血処置が治療の基本とされています※。病院では、血圧や血液検査の結果から重症度を速やかに判断し、緊急で内視鏡検査を行い、出血源を特定して止血処置を施します。
食道静脈瘤破裂
食道静脈瘤破裂は、吐血を引き起こす病気の中でも、命に直結する極めて危険な状態です。
この病気は、主に肝硬変などによって肝臓が硬くなることで起こります。本来肝臓へ流れるべき血液がスムーズに通れなくなり、食道の血管に迂回して流れ込むことで、血管がこぶのように膨らんでしまいます(食道静脈瘤)。このこぶが何かのきっかけで破裂すると、大量出血を引き起こすのです。
前触れもなく、突然大量の真っ赤な血を吐き、急速に血圧が低下してショック状態に陥り、意識を失うことも少なくありません。
肝臓の病気(慢性肝炎や肝硬変)を指摘されている方や、長年にわたり多量の飲酒を続けてきた方が大量に吐血した場合は、この病気の可能性が非常に高いと考えられます。ご自身で判断せず、ただちに救急車を要請してください。
胃がん・食道がん
胃がんや食道がんが進行すると、がん組織の表面がもろくなり、そこから出血して吐血や黒い便(タール便)の原因となることがあります。
多くの場合、一度に大量出血することはまれで、少量ずつじわじわと出血が続くのが特徴です。そのため、はっきりとした吐血よりも、「なんとなく疲れやすい」「顔色が悪い」といった貧血の症状で異変に気づかれるケースも少なくありません。
吐血や黒い便に加えて、以下のようなサインが見られる場合は特に注意が必要です。
- 理由もなく体重が減り続けている
- 食欲がわかない状態が続く
- 食べ物が飲み込みにくい、胸につかえる感じがする
これらの症状は、がんが進行しているサインかもしれません。少量の出血だからと見過ごさず、早急に消化器内科を受診し、内視鏡(胃カメラ)検査で原因を詳しく調べることが重要です。
病院を受診する前に。自分でできる対処法と注意点
赤い嘔吐物や吐血が疑われる場合、医療機関を受診するまでの間にご自身でできることは限られます。しかし、落ち着いて正しく対応することが、その後の診断や治療をスムーズに進める上で非常に重要になります。
自己判断で薬を飲んだり、無理に食事や水分を摂ったりすることは、かえって状態を悪化させたり、正確な診断の妨げになったりする危険があるため避けましょう。何よりもご自身の安全確保を最優先に行動してください。
楽な姿勢を保つ
吐き気や吐血があるときは、無理に動かず安静にすることが鉄則です。体は想像以上に消耗しているため、まずは楽な姿勢で休みましょう。
横になる際は、吐いたものが気管に入って窒息するのを防ぐため、顔を横に向けるか、体を横向きにする「回復体位」をとるのが安全です。特に、意識がはっきりしない方を介助する場合は、仰向けに寝かせたままにせず、必ずこの体勢をとらせてください。
めまいや立ちくらみがある時は、転倒して頭を打つなど二次的な怪我につながる恐れがあります。決して歩き回らず、救急車を待つ間も安全な姿勢を保つことが重要です。
口の中を清潔にする
嘔吐の後は、可能であれば水で口を軽くすすぎ、清潔に保つことをお勧めします。吐いた物には強い酸性の胃酸が含まれているため、口の中に残ったままだと不快なだけでなく、歯のエナメル質を傷つけたり、誤嚥(ごえん)を引き起こしたりする可能性があります。
ただし、以下の点には注意してください。
- 強くうがいをすると、再び吐き気を誘発することがあります。そっとゆすぐ程度にしましょう。
- 意識がもうろうとしている方に、無理に水を飲ませたり口をすすがせたりするのは窒息の危険があり大変危険です。
あくまでご自身の体調が落ち着いている場合に限り、行うようにしてください。
絶食を基本とし、水分補給は医師の指示を待つ
吐血が疑われる場合、自己判断で食事や水分を摂らず、絶食を守ることが極めて重要です。消化管からの出血が疑われる状況で飲食すると、出血を悪化させる恐れがあります。
また、病院では出血の原因を特定するために、胃カメラ(内視鏡検査)を行うことがほとんどです。胃の中に食べ物が残っていると正確な観察ができず、診断が遅れる原因になりかねません。
さらに、緊急で内視鏡を使って血を止める処置(内視鏡的止血術)や手術が必要になる可能性もあり、その際、安全に麻酔をかけるためにも絶食が絶対条件となります※。
口が渇いて辛くても、水をがぶ飲みするのは絶対に避け、まずは受診を優先してください。水分補給については、医師の診察を受けてから、その指示に必ず従いましょう。
吐いた物の色や量を記録しておく
吐いた物の色、量、回数などを記録しておくと、医師が診断する上で非常に重要な手がかりとなります。的確な情報が、より迅速で正確な診断につながるのです。
日本消化器病学会も、患者さん自身が症状を正しく理解し、医師に正確に伝えることの重要性を呼びかけています※。可能であれば、以下の内容をメモしたり、スマートフォンのカメラで撮影したりしておきましょう。
- 色:鮮やかな赤か、黒っぽい赤か、コーヒーの残りかすのようか
- 量:スプーン1杯程度か、コップ半分くらいか、など具体的に
- 回数:何時ごろに何回吐いたか
- その他の症状:腹痛、胸痛、めまい、黒い便(タール便)はなかったか
病院ではこれらの情報とあわせて、血圧や脈拍の測定、血液検査などを行い、出血の程度や原因を総合的に評価します※。ただし、記録に気を取られて安全確保や救急要請が遅れないよう、ご自身の安全を最優先してください。
何科を受診すればいい?受診後の検査と治療
赤い嘔吐物が出た場合、自己判断で様子を見るのではなく、適切な診療科を受診し、原因に応じた検査と治療を受けることが何よりも重要です。病院ではまず出血の有無や程度を評価し、原因を特定した上で、最適な治療法を選択していきます。

消化器内科、または救急外来へ
赤い嘔吐物で受診すべき診療科は、症状の緊急性に応じて「消化器内科」または「救急外来」のどちらかを選ぶことになります。
【比較的症状が落ち着いている場合 → 消化器内科】
- 吐いた物に少量の血が混じっているように見える
- 「救急車を呼ぶべき危険なサイン」はないが、吐血が心配
- 胃の不快感や黒い便が続いている
上記のように、意識がはっきりしていて、激しい症状がない場合は、まず日中の診療時間内に消化器内科を受診してください。
【危険なサインがある場合 → 救急外来(救急車も要請)】
- コップ1杯以上の大量の血を吐いた
- 意識がもうろうとしている、または失神した
- 我慢できないほどの激しい腹痛や胸痛がある
- めまい、冷や汗、動悸がひどい
夜間や休日であっても、これらの危険なサインが一つでもあれば、ためらわずに救急病院に連絡するか、119番通報で救急車を要請してください。様子を見ることで治療のタイミングが遅れるリスクを避けることが、ご自身の命を守ることにつながります。日本消化器病学会も、患者さんやご家族が病気を正しく理解し、適切に行動できるよう情報提供を行っています※。
病院で伝えるべきことのまとめ
的確な診断には、あなたの症状に関する情報が何よりの手がかりとなります。パニックになってしまうと、うまく伝えられないこともあるかもしれません。可能であれば、受診前に以下の内容をメモしておくと、診察がスムーズに進みます。
【医師に伝えてほしい情報リスト】
- いつから: 最初に吐いた正確な時間
- 吐いた状況: 回数、量(例:コップ半分くらい)、色(鮮やかな赤、黒っぽいなど)、血のかたまりの有無
- 他の症状: 腹痛や胸痛の有無・程度、めまい、失神の有無、黒い便(タール便)の有無
- きっかけ: 激しい咳や嘔吐を繰り返した後、お酒をたくさん飲んだ後など、思い当たるきっかけ
- 食事内容: 吐く前に赤い食べ物や飲み物を摂ったか
- 持病や既往歴: 肝臓の病気(肝硬変など)、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、ピロリ菌感染の有無
- 服用中の薬: 特に血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)や痛み止め(NSAIDs)。お薬手帳があれば必ず持参してください。
これらの情報は、出血の重症度を評価する上でも非常に重要です。例えば、日本消化器病学会の診療ガイドラインで用いられるスコアでも、失神や肝疾患の有無は重症度を判断する項目の一つとされています※。
主な検査(内視鏡検査、血液検査)
病院では、まず出血の程度を把握し、次に出血源を特定するための検査を進めます。主に「血液検査」と「内視鏡検査」が行われます。
血液検査
貧血の程度を示すヘモグロビンの値などを調べ、どのくらい出血したかを客観的に評価します。また、脱水や消化管出血の指標となるBUN(尿素窒素)の値や、肝機能、腎機能、血液の固まりやすさなども確認し、全身の状態を把握します。これらの項目は、治療方針を決める上で重要な判断材料となります※。
内視鏡検査(胃カメラ)
吐血の原因を特定するために、最も重要な検査です。口から細いカメラを挿入し、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察します。これにより、出血している場所や原因(潰瘍、粘膜の裂け目、がんなど)を正確に突き止めることができます。
医療機関によっては、鎮静剤を用いて眠っているような状態で検査を行うことも可能です。検査への不安が強い方は、事前に医療機関へ相談してみましょう。
その他、必要に応じてCT検査でお腹の中の他の病気の有無を調べることもあります。
代表的な治療法(薬物療法、内視鏡的止血術)
治療は、出血の原因や重症度に応じて、薬物療法や内視鏡を用いた処置などを組み合わせて行います。
薬物療法
胃潰瘍やマロリー・ワイス症候群などで出血が軽度の場合や、止血処置後の再発予防として行われます。胃酸の分泌を強力に抑える薬(PPIなど)を使い、傷ついた粘膜の治りを助け、再出血を防ぎます。
内視鏡的止血術
内視鏡検査の際、出血が続いている、または再出血のリスクが高いと判断された場合に行われる処置です。出血している血管を小さなクリップで挟んで圧迫したり、特殊な薬剤を注入したり、熱を加えて焼き固めたりして、止血処置を行います。出血を伴う胃潰瘍などの治療では、この内視鏡的止血術が中心となります※。
出血量が多い場合は、点滴で水分や栄養を補給したり、輸血を行ったりすることもあります。また、食道静脈瘤破裂のように特に緊急性が高い病気では、入院の上でさらに専門的な治療が必要になります。
まとめ
赤い嘔吐物は食道や胃からの出血(吐血)のサインかもしれず、背景に危険な病気が隠れていることがあります。
コップ1杯以上の大量の出血や意識がもうろうとするなどの危険なサインがあれば、ためらわずに救急車を呼びましょう。食べ物の色との区別は難しい場合もあり、原因は比較的軽いものから、命に関わる病気までさまざまです。
危険なサインがなくても、吐血が疑われる場合や不安が続くときは、自己判断で様子を見ずに消化器内科へご相談ください。早めの受診が、ご自身の体を守るための大切な一歩になります。

吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長
佐々木 洋
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
- 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
- 日本肝臓学会認定 肝臓専門医
- 日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定難病指定医
