十二指腸潰瘍の症状とは?みぞおちの痛み・黒い便は要注意


こちらの記事の監修医師
吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長
佐々木 洋
空腹時のみぞおちの痛みや、黒っぽい便(タール便)といった症状から、十二指腸潰瘍を心配していませんか。胃炎など他の病気とも症状が似ているため、自己判断で放置してしまい、後から悪化するケースも少なくありません。
この記事では、十二指腸潰瘍でみられる特徴的な症状から、命に関わる危険なサイン、さらには胃カメラ検査や治療の実際、再発予防策までを網羅的に解説します。
「この症状、もしかして?」気になるサインから調べる十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍といえば「みぞおちの痛み」を思い浮かべるかもしれませんが、その症状だけで病気を特定することはできません。なぜなら、胃潰瘍や胃炎、逆流性食道炎といった他の多くの病気でも、よく似た症状が現れるためです。
また、痛み止めの薬が原因となる潰瘍では、はっきりとした痛みを感じないまま進行しているケースも少なくありません※。「典型的な痛みがないから大丈夫」と自己判断せず、気になる症状があれば専門医に相談することが大切です。
ケース1 空腹時や夜中にみぞおちが痛む
空腹時や夜中になると、きりきりとみぞおちが痛むのは、十二指腸潰瘍でよく見られる症状のひとつです。
これは、胃から十二指腸へ送られた強い酸性の胃液が、食事という”緩衝材”がない状態で潰瘍を直接刺激するために起こります。
逆に、食事を摂ると胃酸が食べ物と混ざって薄まるため、一時的に痛みが和らぐというのも特徴的なパターンといえます※※。
しかし、「空腹時に痛むから十二指腸潰瘍だ」と決めつけるのは早計です。痛みの現れ方には個人差があり、食後に痛む胃潰瘍と症状が似ている場合や、他の病気の可能性も考えられます。正確な診断を下すには、胃カメラ(内視鏡検査)で直接十二指腸の粘膜を観察し、状態を確認することが欠かせません。
ケース2 黒っぽい便(タール便)が出た
便が「イカ墨」や「海苔の佃煮」のように真っ黒でドロリとしている場合、それは潰瘍からの出血を知らせる危険なサイン(タール便)かもしれません。
潰瘍が深くなって血管を傷つけると出血が起こります。十二指腸で出た血液は、小腸や大腸を通過する間に胃酸や消化液の影響を受けて黒く変化するため、このような特徴的な便になるのです。
ただし、便が黒くなる原因は潰瘍の出血だけではありません。以下のような心当たりがないか確認してみましょう。
- 鉄剤(貧血の薬)を服用している
- イカ墨料理など、黒いものを食べた
- ビスマスという成分を含む一部の胃薬を飲んでいる
これらの心当たりがなく黒い便が出たときは、自己判断で様子を見ないでください。特に、立ちくらみや動悸、息切れといった貧血症状を伴う場合は出血量が多い可能性があり、速やかな受診が求められます。
ケース3 市販の胃薬が効かない、またはやめると痛む
市販の胃薬を飲むと痛みが和らぐものの、薬をやめるとすぐにぶり返す場合、根本原因の潰瘍が治らずに残っているサインといえます。
多くの市販薬は、出過ぎた胃酸を一時的に中和したり、分泌を抑えたりして症状を緩和させるものです。しかし、それはあくまで対症療法であり、えぐれてしまった粘膜(潰瘍)そのものを修復するわけではありません。
薬の効果が切れれば、再び胃酸がむき出しの潰瘍を刺激し、痛みが再発します。次のような状態は注意が必要です。
- 薬をやめると痛みがすぐに戻ってしまう
- 数週間にわたり、良くなったり悪くなったりを繰り返している
- 夜中にみぞおちの痛みで目が覚めることがある
このような状態を放置すると、潰瘍が悪化して出血や穿孔(せんこう:腸に穴が開くこと)といった、より深刻な事態に進む恐れがあります。市販薬でごまかし続けず、一度、消化器内科で正確な原因を調べることが大切です。
今すぐ病院へ行くべき危険なサインは?
十二指腸潰瘍は、ただのみぞおちの痛みで終わるとは限りません。潰瘍が深くなると、出血や穿孔(せんこう:腸に穴が開くこと)といった、命に直結する合併症を引き起こすことがあります。これから挙げるサインは、ご自身で様子を見たり、市販薬でごまかしたりしてはいけない緊急事態の合図です。一つでも当てはまれば、すぐに医療機関を受診してください。
冷や汗やふらつき、意識が遠のく感じ
腹痛はさほど強くなくても、急に冷や汗が出たり、立ち上がるとクラっとしたり、意識が遠のくような感覚がある場合、それは潰瘍から大量に出血しているサインかもしれません。
出血量が多いと、体内を循環する血液が足りなくなり、血圧を正常に保てなくなる「出血性ショック」という非常に危険な状態に陥る可能性があります。
大量出血を疑う全身のサイン
- 顔色が悪く、真っ青になる
- 全身から冷たい汗が噴き出す
- 立ちくらみや、めまいがする
- 少し動いただけでも動悸や息切れがする
- 意識がぼんやりして、気が遠くなる感じがする
これらのサインは、痛みの強さとは関係なく現れることがあります。むしろ、痛みがなくてもこうした全身症状が出た時こそ、体内で深刻な出血が起きているおそれがあるため、ただちに医療機関を受診してください。
赤黒いものを吐いた(吐血)
口から血を吐く「吐血(とけつ)」は、食道・胃・十二指腸のいずれかから出血していることを示す、極めて危険なサインです。吐いたものが真っ赤な血とは限らない点に注意が必要です。
吐血の色と状態からわかることを、下表に整理します。
| 吐いたものの色・状態 | 考えられること |
|---|---|
| 鮮血(真っ赤な血) | ・比較的新しい出血を示唆 |
| 赤黒く、コーヒーの残りかすのようなもの | ・血液が胃の中に溜まり、胃酸で酸化された状態 ・吐血であることに気づきにくい場合がある |
吐いたものが鮮やかな赤色でなくても、「コーヒーの残りかす」のような黒っぽいものを吐いた場合は吐血と考えられます。出血量にかかわらず、吐血は緊急性の高い症状です。自己判断で様子を見ることはせず、ただちに消化器内科を受診してください。量が多い場合や意識がおかしいと感じる場合は、救急車の要請もためらわないでください。
胃カメラ・治療の「痛い?」「高い?」「長い?」に答えます
十二指腸潰瘍の検査や治療で鍵となるのが、胃カメラです。しかし、多くの方が「痛み」「費用」「期間」といった点で不安を感じるのも事実です。ここでは、安心して検査・治療に臨んでいただくために、これらの疑問について詳しく解説します。

鎮静剤で楽に受けられる胃カメラ検査の実際
鎮静剤(静脈麻酔)の使用は、胃カメラ検査に伴う苦痛を和らげる有効な選択肢です。多くの方が、うとうとと眠っているようなリラックスした状態で検査を受けられます。
当院では消化器内視鏡の専門医が、患者さん一人ひとりの年齢や体の状態を慎重に見極めたうえで、適切な量の鎮静剤を使用します。検査中は血圧や呼吸の状態を常に監視し、安全管理を徹底しています。
鎮静剤を用いることで、次のような利点があります。
- のどをスコープが通過する際の「オエッ」という嘔吐反射が起きにくくなる
- 検査中の不快感や不安が軽減される
- 体の力が抜けることで、医師は消化管の隅々までより精密に観察できる
検査後は、鎮静剤の効果が自然に覚めるまで専用のリカバリールームでお休みいただきます。なお、安全を確保するため、検査当日はご自身での車・バイク・自転車の運転はできませんので、あらかじめご了承ください。
治療にかかる費用の目安(保険適用)
十二指腸潰瘍が疑われる症状がある場合、検査や治療は健康保険の適用対象となります。そのため、窓口での自己負担は、医療費全体の1〜3割です。
ただし、最終的な費用は個々の状況によって変動します。費用が変わる主な要因は以下のとおりです。
- ご自身の健康保険証に記載された負担割合(1割・2割・3割)
- 検査の範囲(胃カメラでの観察のみか、組織を採る生検やピロリ菌検査を行うか)
- 治療の内容(出血を止める内視鏡的止血術など、特別な処置の有無)
- 処方される薬の種類や日数
例えば、3割負担の方が胃カメラ検査と診察を受けた場合、費用の目安は数千円から1万円台となります。もし生検やピロリ菌検査、あるいは止血処置などが追加されれば、その分の費用が加算されます。具体的な金額については、診察時に医師がご説明します。
薬はいつまで飲む?治療期間の全体像
十二指腸潰瘍の治療期間は、潰瘍の大きさや原因によって一人ひとり異なり、医師の指示通りに薬を飲みきることが重要です。一般的には、胃酸の分泌を強力に抑える薬(PPIやP-CAB)を6〜8週間ほど服用し、潰瘍が治るのを待ちます。
最も注意すべきなのは、痛みが消えたからといって自己判断で服薬をやめてしまうことです。症状がなくなっても、粘膜の傷はまだ完全に治っていない可能性があります。ここで治療を中断すると、潰瘍が再発するだけでなく、悪化して十二指腸の壁に穴が開く「穿孔(せんこう)」という命に関わる事態に進むこともあります※。
治療のゴールは、単に「痛みをなくすこと」ではありません。本当のゴールは「①潰瘍を完全に治し、②原因を取り除いて再発を防ぐこと」です。
そのため、原因がピロリ菌であるとわかった場合は、潰瘍の治療に続いてピロリ菌を取り除く「除菌治療」を行います。これが再発を防ぐための最も大切なステップとなります。根気強く治療を続けることが、将来の健康を守ることにつながります。
治療中の食事 何を食べていい?ダメ?
十二指腸潰瘍の治療において、主役は胃酸を抑える薬や原因を取り除く治療です。食事は、傷ついた粘膜をいたわり、薬の効果を最大限に引き出すための「名脇役」と考えるとよいでしょう。
かつてのように、長期間おかゆだけを食べ続けるような厳しい食事制限は、現代の治療では必ずしも必要ありません。痛みが強い急性期には胃腸に負担をかけない食事を心がけ、症状が改善するにつれて少しずつ普段の食事に戻していくのが基本的な進め方です。
積極的に摂りたい消化に良い食べ物リスト
症状が強い時期は、消化が良く、胃の中に留まる時間が短い食べ物を選びましょう。胃酸の分泌を過剰に刺激しないため、痛みの再燃を防ぐことにつながります。
調理法は、油を多く使う「揚げる」「炒める」は避け、「煮る」「蒸す」「ゆでる」といった方法が胃にやさしくおすすめです。
具体的には、以下のような食品を中心に献立を組み立ててみてください。
主食
- おかゆ、雑炊、やわらかく煮込んだうどん、食パンなど
タンパク質(粘膜の材料になります)
- 脂肪の少ない白身魚(たら、かれいなど)
- 鶏のささみや皮を取り除いた胸肉
- 豆腐、ひきわり納豆、茶碗蒸し、半熟卵
野菜
- 大根、かぶ、にんじん、キャベツ、ほうれん草などを、形が崩れるくらいやわらかく加熱したもの
果物・乳製品
- バナナ、すりおろしたり加熱したりしたりんご
- 牛乳、ヨーグルト
いずれも温かい状態で、慌てずゆっくり、よく噛んで食べることが消化を助ける大切なポイントです。
潰瘍を悪化させる避けるべき食べ物・飲み物リスト
胃酸の分泌を促すものや、ただれた潰瘍の表面を直接刺激する食べ物・飲み物は、痛みを悪化させたり、治りを遅らせたりする可能性があります。症状が強く出ている間は、特に以下のリストにあるものは避けるようにしましょう。
刺激の強いもの
- 香辛料(唐辛子、こしょう、カレー粉)
- 香味野菜(にんにく、ニラ)
- 酸味が強い食品(酢の物、柑橘系の果物)
カフェインを多く含むもの
- コーヒー、紅茶、濃い緑茶、エナジードリンク
アルコール飲料
- アルコールは胃酸の分泌を増やすだけでなく、胃や十二指腸の粘膜そのものを直接傷つけ、潰瘍の修復を妨げることがわかっています※。治療中は原則として禁酒してください。
脂肪の多い食事
- 揚げ物全般、脂身の多い肉(バラ肉など)、バターや生クリームを多用した料理
その他
- 極端に熱いものや冷たいもの
- 食物繊維が多く硬い野菜(ごぼう、たけのこなど)
- 塩分の濃い食品(塩辛、漬物など)
また、喫煙も胃の血管を収縮させて血流を悪化させ、粘膜が本来持つ修復能力を妨げる大きな要因です。この機会に禁煙に取り組むことを強くお勧めします。
症状が落ち着いた後の食事の進め方
治療によって痛みがなくなり、症状が安定してきたら、過度な食事制限を続ける必要はありません。「一度潰瘍になったら、一生辛いものやコーヒーは我慢しないといけない」というわけではないので、ご安心ください。
ただし、急に暴飲暴食をしたり、刺激の強いものばかり食べたりするのは再発のリスクを高めてしまいます。おかゆから軟らかめのご飯、そして普通のご飯へ、というように段階的に進めるのが安全です。
まずは少量から試してみて、ご自身の体調に変化がないかを確認しながら、少しずつ食べられる品目を増やしていきましょう。
今後も食事で大切にしたいのは、以下の3つの習慣です。
- 規則正しい時間に食事を摂る
- 「腹八分目」を心がける
- よく噛んでゆっくり食べる
この基本的な習慣が、あなたの十二指腸をいたわり、つらい症状の再発を防ぐための土台となります。
ピロリ菌は家族にうつる?パートナーや子どもも検査すべきか
ご自身がピロリ菌陽性と診断されると、「パートナーや子どもにうつしてしまったのではないか」とご心配になるかもしれません。
結論から言うと、ピロリ菌は主に衛生環境が十分に整っていなかった時代の乳幼児期に感染が成立するため、大人から大人へ、日常生活の中で簡単にうつるものではありません。家庭内での感染リスクについて、正しく理解しておきましょう。
ピロリ菌の主な感染経路と家庭内感染のリスク
ピロリ菌は、食べ物や水を介して口から体の中に入る「経口感染」で広がります。
特に、胃酸の分泌がまだ未熟で、菌が胃の中に住み着きやすい5歳以下の時期に感染するケースがほとんどです。主な感染ルートは、以下の2つと考えられています。
- ピロリ菌に汚染された水(特に井戸水など)や食べ物の摂取
- ピロリ菌に感染している親から子への家庭内感染(食べ物の口移しなど)
一度ピロリ菌が胃に住み着くと、粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、胃や十二指腸の潰瘍につながることがあります※。
一方で、胃酸の分泌がしっかりしている成人同士では、キスや食器の共有、鍋料理を一緒に食べるといった日常生活で新たに感染する可能性は、極めて低いと考えられています。パートナーへの感染を過度に心配する必要はなく、まずはご自身が処方された薬をしっかり飲み切り、除菌治療を完了させることが何より大切です。
家族の検査を検討するタイミング
ご家族にピロリ菌感染者が見つかっても、症状のない家族全員が急いで検査を受ける必要は必ずしもありません。先述のとおり、大人になってからの感染リスクは非常に低いためです。
しかし、ピロリ菌感染は胃がんのリスクを高めることも知られています。ご自身の健康状態を確認するため、以下のような方は一度ピロリ菌検査を検討することをおすすめします。
- 胃がんになった血縁者(親・兄弟姉妹など)がいる
- ご自身も原因のはっきりしない胃の不調(胃もたれ、痛みなど)が続いている
- 過去に胃潰瘍や十二指腸潰瘍と診断されたことがある
- 健康診断の胃カメラで「萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)」を指摘されたことがある
お子さんについては、特に症状がなければ一律で検査を行うことは一般的ではありません。ただし、ご家族に胃がんになった方が多いなど、ご心配な点があれば、一度かかりつけの医師に相談してみるとよいでしょう。
治療後に「繰り返さない」ための具体的なアクション
十二指腸潰瘍の治療によってつらい痛みが消えると、つい「もう大丈夫」と安心しがちです。しかし、治療の本当のゴールは、症状をなくすことだけではありません。潰瘍ができた根本的な原因を取り除き、「繰り返さない」状態を作ることが何より大切です。
痛みがなくなったとしても、原因という“火種”が残っていれば、ささいなきっかけで再燃するおそれがあります。ここでは、安心して毎日を送るために知っておくべき3つの重要なアクションを解説します。

根本原因を取り除くピロリ菌除菌の徹底
ピロリ菌が原因の十二指腸潰瘍において、除菌治療を完遂することは再発予防の最大の要です。ピロリ菌は胃の粘膜に住み着いて慢性的な炎症を引き起こし、潰瘍ができやすい土壌を作り出してしまいます※。
治療では、胃酸を抑える薬と2種類の抗生物質を1週間服用するのが基本です。ここで最も重要なのは、「薬を飲み終えたら治療完了」ではないという点です。
薬を飲み終えた後、一定期間をおいてから「尿素呼気試験」などの検査で、本当にピロリ菌がいなくなったかを確認する「除菌判定」が不可欠です。この判定で「陰性」を確認するまでが、一連の除菌治療といえます。
もし1回目の除菌で菌が残ってしまっても、薬の種類を変えて2回目の治療(二次除菌)に臨めます。除菌を成功させることが、将来の潰瘍再発リスクを大きく引き下げることにつながるのです。
痛み止め(NSAIDs)との上手な付き合い方
頭痛や関節痛、生理痛などで日常的に痛み止め(NSAIDs)を服用している場合、それが潰瘍の原因になっている可能性があります。自己判断で安易に使い続けず、医師と一緒に薬との付き合い方を見直すことが重要です。
市販薬にも含まれるロキソプロフェンやイブプロフェンなどのNSAIDsは、痛みを抑える一方で、胃や十二指腸の粘膜を守る大切な物質(プロスタグランジン)を減らしてしまう副作用があります。
もし、他の病気の治療でNSAIDsがどうしても必要な場合は、胃酸の分泌を強力に抑える薬(PPIなど)を一緒に服用し、潰瘍の発生を防ぐ対策をとります。
特に注意が必要なのは、心臓病や脳梗塞の予防のために「血液をサラサラにする薬(低用量アスピリンなど)」を飲んでいる方です。この薬をご自身の判断で中断すると、命に関わる血栓症のリスクが急激に高まるため、絶対にやめないでください。必ず処方医と消化器内科医の両方に相談し、安全な治療方針を一緒に考えましょう。
再発のサインを見逃さないためのセルフケア
一度治ったように見えても、再び潰瘍ができてしまうことがあります。重症化を防ぐため、ご自身の体が発する「再発のサイン」をあらかじめ知っておくことが大切です。
以下のような症状に気づいたら、早めに消化器内科を受診してください。
- 空腹時や夜中に、またみぞおちが痛むようになった
- 以前のように黒いタール状の便が出た
- 吐き気や胃もたれがぶり返し、続いている
特に、突然の激しい腹痛は、潰瘍が深くなって腸に穴が開く「穿孔(せんこう)」のサインかもしれません。これは命に関わる緊急事態であり、ただちに救急外来を受診する必要があります※。
また、生活習慣の見直しも再発予防を後押しします。
- 禁煙: 喫煙は胃腸の血流を悪化させ、粘膜の修復能力を妨げます。
- 節酒: アルコールは胃酸の分泌を増やすだけでなく、粘膜そのものを直接傷つけ、潰瘍の治りを遅らせる要因です※。治療後も過度な飲酒は控えましょう。
症状がなくても、定期的に胃カメラ検査を受けることは、自覚症状のない静かな再発を早期に発見するためにとても有効です。
まとめ
みぞおちの痛みや黒い便は十二指腸潰瘍のサインかもしれませんが、似た症状の病気も多く、自己判断は禁物です。
治療の主役は薬ですが、本当のゴールは痛みをなくすことではなく、原因を突き止めて再発を防ぐことにあります。ピロリ菌の除菌や痛み止めの見直し、食事といった生活習慣の改善も、潰瘍を繰り返さないために重要な役割を果たします。
気になる症状に心当たりがある方は、我慢せずに消化器内科へご相談ください。つらい症状を繰り返さないためにも、まずはご自身の状態を正しく知ることが回復への第一歩です。

吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長
佐々木 洋
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
- 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
- 日本肝臓学会認定 肝臓専門医
- 日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定難病指定医