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2026.10.8

健診でeGFRが低いと言われたら?再検査で確認することと受診の目安

こちらの記事の監修医師

吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長

佐々木 洋

健康診断の結果で「eGFR低下」を指摘され、ご自身の腎臓の状態に不安を感じていませんか。eGFRは腎臓の働きを示す重要な指標ですが、1回の結果だけを見て一喜一憂する必要はありません。

この記事では、eGFRや慢性腎臓病(CKD)の正しい知識、再検査で確認すべき点を解説します。CKDは3カ月以上続く腎臓の異常と定義され、進行すると心筋梗塞などのリスクを高めることが知られています。そのため、早期の適切な対応が重要といえます。

慢性腎臓病(CKD)とは?健診で見逃したくない腎臓の異常

慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)とは、腎臓の働きが数カ月〜数年かけてゆっくりと悪化していく、さまざまな腎臓病の総称です。

腎臓は、ただ尿を作るだけの臓器ではありません。体内の老廃物をろ過して排出するだけでなく、生命を維持するために欠かせない多くの役割を担っています。

【腎臓の主な働き】

  • 老廃物の排出(尿を作る)
  • 体内の水分量・電解質(塩分など)の調整
  • 血圧のコントロール
  • 血液を作るホルモン(エリスロポエチン)の分泌
  • 骨を丈夫に保つビタミンDの活性化

このように多くの役割があるため、CKDは腎不全や透析だけの問題ではなく、高血圧や貧血、心臓病といった全身の状態に深く関わります。特に高血圧や糖尿病などの生活習慣病との関連が深く、誰にでも起こりうる身近な病気といえます。※

CKDは「eGFR低下」または「蛋白尿などの腎障害」が3か月を超えて続く状態

CKD(慢性腎臓病)は、「腎臓の機能低下」または「蛋白尿などの腎臓の障害」のいずれか、あるいは両方が3カ月以上続いている状態と定義されています。※

診断で最も大切なのは「慢性的(Chronic)」という点です。健康診断で一度だけeGFRの数値が低かったからといって、すぐにCKDと診断されるわけではありません。脱水や発熱、服用している薬の影響などで一時的に数値が下がることもあるからです。

CKDの診断は、主に以下の2つの基準で行われます。

  • 腎臓の働きの低下

    • 腎臓が血液をろ過する能力を示す「eGFR」の値が、60mL/分/1.73m²未満の状態。
  • 腎障害を示す所見

    • 尿にタンパク質が漏れ出ている状態(蛋白尿やアルブミン尿)
    • 尿検査での異常(赤血球や白血球など)
    • 画像検査でわかる腎臓の形の異常
    • 血液検査でわかる電解質の異常

このどちらか一方、または両方が3カ月以上続いている場合にCKDと診断されます。ですから、「eGFRが59だった」とすぐに落ち込まず、まずは再検査でその状態が続いているかを確認することが重要です。

eGFRが60以上でも蛋白尿などがあればCKDのことがある

eGFRの数値が60以上で基準値内であっても、尿検査で蛋白尿などが続いている場合はCKDと診断されます。

「eGFRが正常だから腎臓は大丈夫」という自己判断は、実は危険な誤解です。腎臓のダメージは、血液をろ過する機能(eGFR)が低下するよりも先に、フィルターの役割を担う「糸球体(しきゅうたい)」という部分が傷つき、「蛋白尿」として現れることが少なくありません。

たとえば、以下のようなケースです。

  • eGFR:75(基準値内)
  • 尿蛋白:(+)が続いている

この場合、eGFRの数値は保たれていても、腎臓に何らかの障害が起きているサインであり、CKDに該当します。

特に、糖尿病や高血圧をお持ちの方では、eGFRが低下するよりも先に蛋白尿が出始めるケースが多く見られます。健康診断の結果は、eGFRの数値と尿検査の結果を必ずセットで確認することが、腎臓の異常を早期に発見するためにとても大切です。

CKDは腎不全だけでなく心血管病のリスクとも関係する

CKDは、進行すると腎不全に至るだけでなく、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる心血管疾患のリスクを高めることがわかっています。

腎臓は動脈硬化の危険因子とも考えられており、腎機能が低下すると体内の老廃物や余分な水分・塩分を十分に排出できなくなります。これが動脈硬化を悪化させたり、心臓に過剰な負担をかけたりする原因となるのです。※

具体的には、以下のような病気のリスクが高まります。

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 心不全
  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血)

このリスクは、eGFRの数値が低いほど、また蛋白尿の量が多いほど高くなる傾向にあります。

「CKDは透析になる怖い病気」とだけ考えるのではなく、全身の血管や心臓を守るためにも治療が必要な状態だと理解することが大切です。だからこそ、早期にCKDを見つけ、血圧の管理や蛋白尿を減らす治療を始めることが、あなたの腎臓と心臓、そして未来の健康を守ることにつながります。

健診で見るeGFRとは?クレアチニンと尿検査をセットで考える

健康診断の結果で目にするeGFRは、血液検査の「クレアチニン」という項目と、尿検査の「尿蛋白」とをセットで見ることで、ご自身の腎臓の状態を正しく理解できます。

eGFRは腎臓の働きを知るための便利な指標ですが、それ単体ですべてがわかるわけではありません。これらの検査結果を総合的に見ることで、腎臓からのサインを見逃さず、適切な次の行動につなげられます。

eGFRは血清クレアチニン・年齢・性別から推算する腎機能の指標

eGFR(推算糸球体ろ過量)とは、血液検査で測る「血清クレアチニン」の値に、ご自身の「年齢」と「性別」を当てはめて計算される、腎臓の働き具合を示す推定値です。

腎臓の主な仕事は、血液をフィルター(糸球体)でろ過し、老廃物を尿として体の外へ出すことです。eGFRは、このフィルターが1分間にどのくらいの血液をきれいにできるか(mL/分/1.73㎡)を示しており、健康な腎臓では100前後とされています。※

このeGFRの数値によって、腎機能は以下のステージに分けられます。

GFR区分eGFR値(mL/分/1.73㎡)腎機能の目安
G190以上正常または高値
G260~89正常または軽度低下
G3a45~59軽度~中等度低下
G3b30~44中等度~高度低下
G415~29高度低下
G515未満末期腎不全

注意点として、G1やG2のようにeGFRの数値が正常範囲でも、後述する蛋白尿など腎臓が傷ついているサインがあれば、慢性腎臓病(CKD)と診断されることがあります。

eGFRは1回の低値だけでCKDとは診断しない

健康診断でeGFRが基準値より一度低かったからといって、すぐに慢性腎臓病(CKD)と診断されるわけではありません。CKDの「C」はChronic(慢性)を意味しており、腎機能の低下や尿の異常が3カ月以上続いている状態を指します。※

eGFRの数値は、その日の体調によっても変動します。例えば、以下のような原因で一時的に低下することがあります。

  • 脱水(たくさん汗をかいた、下痢をしたなど)
  • 発熱や感染症
  • 一部の痛み止め(NSAIDsなど)の使用
  • 激しい運動の直後

このため、健診でeGFRの低下を指摘された場合は、まず慌てずに体調や生活習慣を整えたうえで再検査を受け、その値が本当に持続しているのかを確認することが重要です。過去の健診結果と比べて急に下がっていないか、低下のスピードも合わせて評価します。

尿蛋白・血尿の有無も腎障害を判断する重要な情報

尿検査でわかる尿蛋白や血尿の有無は、eGFRと同じくらい腎臓の状態を判断するうえで欠かせない情報です。

尿蛋白が陽性ということは、本来なら血液中に留まるはずのたんぱく質が、腎臓のフィルター(糸球体)の網目を通り抜けて漏れ出ているサインです。この状態が続く場合、腎臓に何らかの障害が起きている可能性を考えます。※

一方、血尿(尿潜血)は、腎臓の病気のほか、尿路結石、膀胱炎、あるいは膀胱や尿管のがんなど、さまざまな原因で起こります。女性の場合は月経血の混入で見られることも少なくありません。

「血尿=腎臓病」とすぐに結びつくわけではありませんが、尿蛋白と血尿が同時に陽性である場合は、腎炎などの病気が隠れている可能性が高まるため、より詳しい検査が必要です。

eGFRと尿蛋白を組み合わせてCKDの重症度とリスクを評価する

慢性腎臓病(CKD)の重症度や、将来、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患を起こすリスクは、eGFRの数値と尿蛋白の量を組み合わせて総合的に評価します。

例えば、

  • eGFRが比較的保たれていても、尿蛋白が多い人
  • eGFRが低く、さらに尿蛋白も多い人

上記のような方は、腎機能がさらに低下したり、心血管疾患を発症したりするリスクが高いと考えられます。CKDは動脈硬化の危険因子でもあるため、腎機能の低下は全身の血管に影響を及ぼすのです。※

逆に、eGFRが少し低くても尿蛋白が出ていなければ、リスクは比較的低いと判断されることもあります。

このように、eGFRという「腎臓の働き具合」と、尿蛋白という「腎臓のダメージ具合」の2つの指標を掛け合わせることで、より正確に現在の状態を把握し、今後の治療方針や生活習慣改善の目標を立てていくのです。

CKDは初期症状がほとんどない|症状より健診結果が重要

CKD(慢性腎臓病)は初期に自覚症状がほとんど現れないため、「沈黙の病気」とも呼ばれます。症状が出ていなくても腎機能が静かに低下していることは珍しくありません。

ご自身の体調だけで「大丈夫」と判断するのではなく、健康診断の結果を毎年きちんと確認することが、腎臓の健康を守るうえで何よりも重要になります。症状チェックだけでCKDを早期発見するのは困難、ということをぜひ覚えておいてください。

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むくみ・夜間頻尿・泡立つ尿がみられることはあるがCKDに特有ではない

足や顔のむくみ、夜中に何度もトイレに起きる、尿が異常に泡立つといった症状は、腎機能の低下でみられることがありますが、必ずしもCKDだけが原因とは限りません。

例えば、以下のように他の原因でも起こりえます。

  • むくみ: 長時間の立ち仕事、心臓や肝臓の病気、塩分の摂りすぎ
  • 夜間頻尿: 加齢による変化、水分の摂りすぎ、前立腺肥大症(男性の場合)
  • 尿の泡立ち: 尿の勢いが強い、尿が濃い、便器に付着した洗剤

「尿が泡立つから蛋白尿だ」と心配される方もいますが、すぐに結びつくわけではありません。

ただし、これらの症状が急に現れたり、ずっと続いたりする場合は、腎臓からのサインである可能性も考えられます。気になる症状があれば、自己判断せずに医療機関で相談し、尿検査などを受けることをお勧めします。※

だるさ・貧血・かゆみ・食欲低下は進行したCKDでみられることがある

なんとなく体がだるい、階段を上ると息切れがする、皮膚がかゆい、食欲がないといった症状は、CKDがある程度進行した段階で現れることがあります。

腎臓の働きが大きく低下すると、体の中でさまざまな異常が起こるためです。

  • だるさ・貧血(息切れ、顔色が悪い):

    腎臓は血液を作るホルモン(エリスロポエチン)を分泌しています。機能が落ちるとこのホルモンが減り、赤血球が作られにくくなる「腎性貧血」が起こります。
  • かゆみ・食欲低下・吐き気:

    本来尿として排出されるはずの老廃物(尿毒素)が体内に溜まる「尿毒症」が原因で起こります。

これらのサインは、腎機能がかなり悪化してからでないと現れないことが多いため、「症状が出てから病院へ行けばよい」という考えは非常に危険です。

症状がないから腎臓が正常とは限らない

結論として、自覚症状がまったくないからといって、腎臓が健康であるとは断言できません。CKDの早期発見において最も信頼できるのは、ご自身の感覚ではなく、客観的な検査データです。

特に、健康診断で測定されるeGFRや尿検査での蛋白尿の有無は、腎臓の状態を知るための重要な手がかりとなります。

以下のような方は、症状がなくても特に注意が必要です。

  • 高血圧や糖尿病の持病がある
  • 肥満気味である
  • 心臓病や脳卒中の経験がある
  • ご家族に腎臓病の方がいる
  • ご高齢の方

これらの項目に当てはまる方は、定期的に健診を受け、ご自身の数値を経年的に確認していくことが、将来の腎機能低下や心血管疾患を防ぐための鍵となります。

eGFR低下・蛋白尿を指摘されたらどんな検査をする?

健康診断でeGFR低下や蛋白尿を指摘された場合、それが本当に腎臓の慢性的(Chronic)な異常なのか、原因は何かを突き止めるための検査から始めます。1回の結果だけで病気と決めつけるのではなく、再検査で数値の再現性を確認し、他の検査結果とあわせて総合的に評価することが何より重要です。

これからご説明する血液検査、尿検査、腹部エコー検査などを通して、腎臓そのものの状態や、背景にある高血圧・糖尿病といった全身の状態を立体的に把握していきます。

血液検査で腎機能・電解質・貧血・糖尿病などを確認する

血液検査は、腎機能(eGFR)を再評価するだけでなく、腎臓の働きと深く関わる全身の状態を把握するために欠かせません。腎臓は体の「精密な調整役」であり、その働きが落ちると血液中のさまざまな物質のバランスが崩れ始めます。

具体的には、以下のような項目をチェックし、腎臓の状態を多角的に評価します。

  • 腎機能の再評価:

    クレアチニン(Cr)や尿素窒素(BUN)を再測定し、eGFRを再計算します。筋肉量が極端に少ない、または多い方では、筋肉量に影響されにくい「シスタチンC」という項目を追加で測定し、より正確な腎機能(eGFRcys)を評価することもあります。
  • 電解質のバランス:

    体液のバランスを調整する機能を見るため、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、リン(P)などを調べます。腎機能が低下すると、カリウムやリンが体内に溜まりやすくなるため、これらの値は重要です。
  • 貧血の有無:

    腎臓は血液を作るホルモン(エリスロポエチン)も作っています。機能が低下するとこのホルモンが減り、貧血(腎性貧血)が起こるため、ヘモグロビン(Hb)の値を確認します。※
  • 糖尿病の管理状態:

    CKDの最大の原因である糖尿病の状態をみるため、血糖値やHbA1c(過去1〜2カ月の血糖コントロール状態を示す指標)も必ず確認します。※

これらの結果を総合的に見ることで、あなたの腎臓が今どのような状態にあるのかを、より深く理解できるのです。

尿検査で蛋白尿・アルブミン尿・血尿を詳しく評価する

尿検査は、腎臓のフィルター機能に異常がないかを直接的に評価できる、非常に重要な検査です。健康な腎臓は、体に必要なタンパク質が尿に漏れ出るのを防いでいますが、フィルター役の「糸球体(しきゅうたい)」が傷つくと、このバリアが壊れてしまいます。

健診の簡単な尿検査(定性検査)で「蛋白尿が陽性(+)」と指摘された場合は、より詳しく調べるために、1日の尿蛋白量を正確に推定できる「尿蛋白/クレアチニン比」や「尿アルブミン/クレアチニン比」を測定します。

特に糖尿病をお持ちの方では、ごく初期の腎障害を示す「アルブミン尿」の評価が欠かせません。たとえeGFRの数値が60以上で正常範囲でも、このアルブミン尿や蛋白尿が持続している場合はCKDと診断されます。※

また、血尿が指摘された場合は、顕微鏡で尿中の赤血球の形などを詳しく調べる「尿沈渣(にょうちんさ)」という検査を行います。赤血球の形がいびつであれば腎炎、きれいな形であれば尿路結石や膀胱の病気など、原因を見極める手がかりになります。

腹部エコーで腎臓の大きさ・形・結石・嚢胞・尿路閉塞などを確認する

腹部エコー(超音波検査)は、腎臓そのものの形や構造に物理的な異常がないかを、直接目で見て確認するための検査です。体に害のない超音波を使い、ベッドに横になるだけで痛みなく行えます。

この検査では、主に次のような点を確認します。

  • 腎臓の大きさ:

    CKDが長く続くと、腎臓が小さく縮んでしまう「萎縮(いしゅく)」が見られることがあります。左右の腎臓の大きさを比較することも重要です。
  • 腎臓の形や内部構造:

    腎臓の表面がデコボコしていないか、皮質(ひしつ)と髄質(ずいしつ)と呼ばれる内部の構造がはっきりしているかなど、ダメージの程度を評価します。
  • 結石や嚢胞(のうほう)の有無:

    腎結石や、水のたまった袋である腎嚢胞がないか調べます。これらが腎機能低下の原因になることもあります。
  • 尿路の閉塞(へいそく):

    尿の通り道が塞がり、腎臓が腫れてしまう「水腎症(すいじんしょう)」が起きていないかを確認します。

腹部エコーは、腎機能低下の原因が腎臓自体の構造的な問題によるものなのか、それとも高血圧や糖尿病など内科的な問題によるものなのかを判断する上で、多くの情報をもたらしてくれます。

eGFRの低下速度や尿蛋白の程度から腎臓専門医への紹介を検討する

かかりつけ医は、eGFRの数値そのものだけでなく、その低下する速さや尿蛋白の量などを総合的に判断し、より専門的な評価や治療が必要な場合に腎臓専門医への紹介を検討します。

eGFRが基準値を少し下回ったからといって、すべての人がすぐに専門医を受診する必要があるわけではありません。しかし、以下のような場合は、腎臓を専門とする医師の診察が勧められます。

  • eGFRが年齢の基準と比べて著しく低い(例:45mL/分/1.73㎡未満)
  • 尿蛋白やアルブミン尿が多い状態が続いている
  • 短期間で急激に腎機能が悪化している(例:1年間でeGFRが5以上低下)
  • 血尿と蛋白尿が同時にみられる(腎炎の可能性)
  • 原因がはっきりしない腎機能障害

例えば、「数年間eGFRが55前後で安定している」場合と、「去年は70だったeGFRが今年は55になった」場合とでは、後者の方がより緊急性が高く、専門的な評価が必要です。

かかりつけ医が日々の管理を行い、必要なタイミングで腎臓専門医と連携する。かかりつけ医と腎臓専門医が連携することは、あなたの腎臓を将来にわたって守るために非常に大切です。

腎機能を悪化させる薬に注意|市販薬・サプリメントも確認する

腎機能が低下している方にとって、薬との付き合い方は非常に重要です。普段何気なく使っている市販薬やサプリメントが、知らず知らずのうちに腎臓へ負担をかけている可能性があるからです。

薬の多くは腎臓で処理されて体外へ排泄されるため、腎機能が落ちていると、薬の成分が体内に蓄積しやすくなったり、腎臓そのものにダメージを与えたりすることがあります。

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NSAIDsなどの鎮痛薬は腎機能を悪化させることがある

頭痛や生理痛などでおなじみの「ロキソニン」や「イブ」に代表されるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、腎臓の血流を減らし、機能を悪化させてしまうことがあるため注意が必要です。

これらの薬は、痛みの原因物質を抑える一方で、腎臓の血流を保つために血管を広げるという大切な働きまで妨げてしまうことがあるためです。

特に、以下のような方は慎重になる必要があります。

  • eGFRがすでに低い方
  • ご高齢の方
  • 脱水気味のとき(夏場の汗、下痢など)
  • 心臓や肝臓の機能が低下している方

一時的な使用であれば問題にならないことが多いものの、自己判断での長期連用は危険です。市販のかぜ薬や解熱鎮痛薬を飲む前には、かかりつけ医や薬剤師に一度相談することをお勧めします。※

CKDでは薬の種類や量を腎機能に合わせて調整する必要がある

慢性腎臓病(CKD)では、腎機能の程度(eGFRの値)に合わせて、処方される薬の種類を選んだり、量を減らしたりする調整が欠かせません。

腎機能が低下していると薬がうまく体外へ排泄されず、血液中に薬の成分が溜まりすぎてしまい、予期せぬ副作用を招く危険性が高まるためです。

特に、以下のような薬は、腎機能に応じた専門的な調整が必要になることがあります。

  • 一部の糖尿病治療薬
  • 一部の抗生物質(抗菌薬)
  • 血液をサラサラにする薬の一部
  • 痛みやしびれに使われる薬の一部

「eGFRが半分になったから、すべての薬を半分にすればよい」という単純な話ではありません。薬ごとに調整方法は細かく決められており、医師や薬剤師が専門知識に基づいて判断します。ご自身の判断で量を変えることは絶対にしないでください。

漢方薬・健康食品・サプリメントも含めて医師・薬剤師に伝える

「天然・自然由来だから安全」という思い込みは、腎臓にとっては危険な誤解かもしれません。漢方薬や健康食品、サプリメントの中にも、腎臓に負担をかける成分や、血圧に影響するカリウムを多く含むものがあります。

また、海外から個人輸入した製品などは、成分が不明確であったり、品質管理が不十分であったりする可能性も否定できません。

ご自身で良かれと思って続けているものが、かえって腎臓を疲れさせていることもあります。お薬手帳にすべて記載するか、受診の際に現物をお持ちいただくなど、服用しているものは残さず医師・薬剤師に伝えるようにしましょう。

処方薬を自己判断で中止するのも避ける

医師から処方されている血圧の薬や糖尿病の薬などを、ご自身の判断でやめてしまうことは極めて危険です。これらの薬は、単に血圧や血糖を下げるだけでなく、蛋白尿を減らして腎臓そのものを守るという、非常に大切な役割を担っているからです。

  • ACE阻害薬
  • ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
  • SGLT2阻害薬

これらの薬を飲み始めた際に、一時的にクレアチニンの値が少し上がることがありますが、これは腎臓を守るための治療過程で予測される変化の場合も少なくありません。

自己判断で中止すると、かえって腎機能の悪化を早めてしまうリスクがあります。もし服用中に不安なことや体調の変化を感じたら、中止する前に必ず主治医に相談してください。

CKDを早く見つけて進行を防ぐ|かかりつけ医と腎臓専門医の連携

慢性腎臓病(CKD)の管理では、まず身近な「かかりつけ医」に相談し、必要に応じて「腎臓専門医」と連携していくことが、あなたの腎臓を長く守るための大切な鍵となります。健診で異常を指摘されたとき、どこに相談すればよいのか、どのような流れで治療が進むのかを知っておきましょう。

国もCKDの早期発見・重症化予防と地域連携を進めている

CKDは個人の健康問題にとどまらず、厚生労働省も重症化予防に力を入れる国民的な健康課題と位置づけられています。

国は、健診などで腎臓の異常を早期に発見し、まずは身近なかかりつけ医が初期対応の窓口となり、必要に応じて腎臓専門医や専門医療機関へつなぐという「地域連携体制」の構築を推進しています。※

これは、すべてのCKD患者さんがいきなり大病院へ行くのではなく、まずは患者さん一人ひとりの状態をよく知るかかりつけ医が中心となり、きめ細かくサポートする仕組みです。この連携によって、早期からの適切な管理が可能になり、将来の透析導入を減らすことを目指しています。

すべてのCKD患者が腎臓専門医へ通院する必要があるわけではない

「CKDと診断されたら、すぐに専門医へ行かなくては」と考える必要はありません。すべての患者さんが腎臓専門医のいる大病院へ通院する必要はないのです。

なぜなら、CKDの重症度や進行速度は人によって大きく異なるからです。例えば、eGFRが軽度に低く、蛋白尿もごくわずかで、何年も数値が安定しているような場合は、かかりつけ医のもとで定期的に検査を受け、血圧や生活習慣を管理することで十分なケースが多くあります。

かかりつけ医は、あなたの全身の状態を把握しながら、腎臓だけでなく高血圧や糖尿病といった持病もあわせて管理する、まさに「健康のパートナー」です。まずは信頼できるかかりつけ医に相談し、ご自身の腎臓が今どのような状態にあるのかを正しく評価してもらうことが大切といえます。

eGFR・蛋白尿・血尿・腎機能低下速度などから専門医紹介を判断する

かかりつけ医から腎臓専門医への紹介は、eGFRの数値一つだけで決まるのではなく、さまざまな情報を総合的に見て判断されます。

かかりつけ医は、専門医に相談すべきかどうかを、以下のような複数の視点から慎重に検討します。

  • eGFRの絶対値:

    eGFRが45mL/分/1.73m²を下回るなど、腎機能が一定レベルまで低下した場合。
  • 蛋白尿の程度:

    尿検査で多くの蛋白が検出される場合。これは腎臓のフィルターが傷ついている直接的なサインです。
  • 血尿の有無:

    特に、蛋白尿と血尿が同時に見られる「尿蛋白血尿」は、腎炎などの病気が隠れている可能性があり、専門的な診断が重要になります。
  • 腎機能の低下速度:

    「数年間eGFRが55前後で安定している」場合と、「去年は70だったeGFRが今年は55になった」場合とでは、後者のほうが病気の勢いが強いと考えられます。1年間でeGFRが4〜5以上低下するなど、悪化のスピードが速い場合は専門医での精査が必要です。
  • 原因がはっきりしない腎機能障害:

    高血圧や糖尿病だけでは説明がつかない腎機能低下の場合。

これらの情報を総合的に評価し、より専門的な診断や治療が必要だと判断された場合に、かかりつけ医が最適なタイミングで腎臓専門医へ紹介してくれます。自己判断で様子を見るのではなく、まずはかかりつけ医と相談することから始めましょう。

腎臓を守る生活習慣|減塩・血圧・糖尿病・運動を総合的に管理する

腎臓の機能を守るためには、腎臓だけを特別扱いするのではなく、食事や運動、血圧、血糖といった全身の状態を総合的に管理する視点が何よりも大切です。CKD(慢性腎臓病)の進行をゆるやかにする治療は、いわば「全身の健康管理」そのものといえます。国もCKDの重症化予防を国民的な健康課題と位置づけ、生活習慣の見直しを通じた対策を推進しています。※

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CKDでは減塩が基本|食塩6g未満/日を目安にする

CKDの食事療法の根幹をなすのが、1日の食塩摂取量を6g未満に抑える「減塩」です。塩分を過剰に摂ると、体内に水分を溜め込んで血液量が増え、血圧が上昇します。この高い圧力が腎臓のフィルター(糸球体)に直接ダメージを与え、蛋白尿を悪化させる原因となります。減塩は、この悪循環を断ち切るための最も基本的な治療法といえるでしょう。

完璧を目指すのではなく、まずは日常の食生活で無理なく取り組める工夫から始めてみてください。

  • ラーメンやうどんの汁は飲まずに残す習慣をつける
  • 漬物や塩辛、加工肉(ハム・ソーセージなど)の頻度を意識的に減らす
  • 醤油やソースは直接「かける」のではなく、小皿に取って「つける」
  • 香辛料(こしょう、カレー粉)や香味野菜(しょうが、しそ)、酸味(酢、レモン)を活用し、味の物足りなさを補う
  • 食品の裏にある栄養成分表示で「食塩相当量」を確認する

これらの小さな習慣の積み重ねが、腎臓にかかる負担を着実に減らしていきます。※

たんぱく質制限はCKDのステージや栄養状態に応じて個別に判断する

たんぱく質制限は、すべてのCKD患者さんに一律で求められるものではなく、病気の進行度(ステージ)や栄養状態を考慮して、個別に判断されるべき治療法です。たんぱく質は体を作る必須の栄養素ですが、体内で利用された後の老廃物は腎臓から排泄されるため、摂りすぎは腎臓の仕事を増やしてしまいます。

しかし、自己判断で肉や魚、卵などを極端に減らすことは絶対に避けてください。特にご高齢の方では、必要なたんぱく質の不足が、筋肉量が減少し身体機能が低下する「サルコペニア」や「フレイル」といった状態を招きかねません。これらは転倒や寝たきりのリスクを高め、かえって全身の健康状態を悪化させる可能性があります。

たんぱく質制限が必要かどうか、またどの程度まで摂取量を調整すべきかは、必ず医師や管理栄養士と相談の上で決定することが大切です。

水分は「たくさん飲めば腎臓に良い」「全員制限する」のどちらも正しくない

水分の摂り方について、「たくさん飲めば腎臓がきれいになる」「腎臓が悪い人は全員水分を制限すべき」という両極端な話を耳にすることがありますが、どちらも正しくありません。CKDの患者さんが過剰に水分を摂っても、腎機能そのものが良くなるわけではなく、むしろ心臓に負担をかけたり、むくみを悪化させたりする恐れがあります。

その一方で、脱水は厳禁です。体内の水分が不足すると腎臓への血流が減り、急性腎障害を起こす引き金になりかねません。特に夏場や発熱時、下痢をしている時などは、こまめな水分補給が不可欠です。※

水分を制限すべきか、どのくらい摂るべきかは、あなたの腎機能、心臓の状態、むくみの有無、尿量などによって全く異なります。必ず主治医の指示に従ってください。

血圧・血糖・体重を適切に管理する

血圧、血糖、体重を適切な範囲にコントロールすることは、CKDの進行を抑える治療の柱です。

高血圧は、腎臓のフィルターである糸球体(しきゅうたい)に高い圧力をかけ続け、フィルターの網目を壊して蛋白尿を増やす最大の要因となります。また、糖尿病による高血糖は、全身の血管を硬くしてもろくし、腎臓の動脈硬化を加速させます。

処方された薬を正しく服用し、減塩を中心とした食事療法を守ることで、これらの負担を直接的に軽減できます。肥満もまた腎臓に負担をかけるため、運動を取り入れて適正体重を維持することも、腎臓を守るための重要な治療の一環です。※

禁煙と適度な運動で腎臓と心血管を守る

禁煙と適度な運動は、腎臓と、CKD患者さんで特にリスクが高まる心臓や血管を守るために欠かせません。喫煙は血管を収縮させて血圧を上げ、腎臓への血流を直接悪化させるため、CKDの進行を早めることがわかっています。腎臓を守る第一歩として、禁煙は必須といえるでしょう。※

また、かつては「腎臓が悪い人は安静第一」と考えられていた時代もありましたが、現在ではその考え方は大きく変わりました。安定した状態のCKD患者さんには、ウォーキングのような有酸素運動や軽い筋力トレーニング(腎臓リハビリテーション)が積極的に推奨されています。

運動には、以下のような多くの利点があります。

  • 血圧や血糖値の改善を助ける
  • 肥満の解消につながる
  • 筋肉量の維持・向上(フレイル予防)
  • 心血管疾患のリスクを低減する

ただし、体調がすぐれない時や心臓に持病がある場合は、決して無理は禁物です。どのような運動をどのくらい行えば良いか、主治医と相談しながら安全に進めていきましょう。

まとめ

健診でeGFRの低下を指摘されても、1回の結果で判断せず、まずは再検査で状態を確認することが大切です。
慢性腎臓病(CKD)は自覚症状がないまま進行するため、eGFRと尿検査の結果から腎臓の状態を正しく把握することが、進行予防の第一歩といえます。
腎臓を守ることは、将来の心血管疾患を防ぐことにもつながります。
健診結果で気になる点があれば、自己判断で放置せず、まずはかかりつけ医に相談しましょう。
生活習慣の見直しと適切な管理を続けることが、あなたの腎臓を長く守るための鍵です。

吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 院長

佐々木 洋

  • 日本内科学会認定 総合内科専門医
  • 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
  • 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
  • 日本肝臓学会認定 肝臓専門医
  • 日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 厚生労働省認定難病指定医
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