大腸癌の原因と治療法
を医師が解説|
消化器・内視鏡のクリニック
大腸癌とは
大腸の粘膜の表面にできるがんのことを言います。大腸がんの大半はポリープが大きくなる過程で発生します。徐々にポリープが大きくなる過程でポリープの細胞の一部が癌化し、ポリープががんに置き換わっていきます。これをadenoma-carcinoma sequence説といいます。ポリープががん化するのに一般的には10年ほど時間がかかるといわれています。ですので、ポリープを小さいうちに切除することは大腸がんの予防になると考えられているわけです。しかし、大腸がんはポリープを経てできるだけではありません。頻度はまれですが、正常の粘膜から直接がんができるde novo癌と言うものもあります。これは速いスピードでに進行癌となり悪性度が高い場合が多いです。ただし、de novo癌よりポリープを経由してできる大腸がんの方が圧倒的に多いと考えられており、大腸ポリープを内視鏡検査時に切除することは非常に重要です。
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正常な方の腸の粘膜です。粘膜はみずみずしく、血管が透き通って見えています。
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キノコのようなポリープの形状をしていた早期の大腸がんです。内視鏡で切除可能の病変であったため、外科手術をすることなく治癒いたしました。
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粘膜が一部盛り上がった部分が大腸癌です。便潜血検査で陽性となり大腸カメラ検査を行って見つかった進行大腸がんです。大腸がんの粘膜は正常粘膜と違い、接触によって容易に出血します。便が流れてくる過程で、便と大腸がんが擦れて出血したと思われます。外科手術が必要な病変です。
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大きな大腸癌です。大腸の内腔を占めてしまい便が流れにくくなっていました。腸閉塞になる寸前の状態で発見された大腸癌です。外科手術が必要な病変です。
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直腸の一番下、肛門に近い部分に見つかった大腸癌です。内視鏡の太さとほぼ変わらない10㎜程度の小さな病変でした。
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角度を変えてみると小さなポリープのように見えますが進行大腸がんでした。40代の患者様から便潜血検査をきっかけに発見されており、便潜血検査・大腸がん検診で陽性になった方は内視鏡検査を必ず行いましょう。
大腸癌の主な症状
早期の大腸がんではほぼ症状はないと思って頂いて構いません。進行癌になっても大きさにもよりますが、よほどサイズが大きくならない限りなかなか症状がありません。サイズが大きくなると出血したり、便の通りが悪くなったりするので便秘になったりすることがあります。また、がんが大腸の中を占拠し始め内腔が細くなるため、肛門の近くに大きながんができると、便が細くなったりします。ただやはり、これが大腸がんの症状といえる特徴的な症状があるわけではないので注意が必要です。
大腸癌の原因は?
大腸がんはポリープがもとになってできることが多くあります。大腸の粘膜の細胞にいくつかの遺伝子の変異が起きてポリープができて、大きくなり癌化していきます。このガン化の過程のスピードはほとんどがゆっくりしていて10年ほど時間がかかることが多いですが、とても早く癌化するものもまれにあります。遺伝子に異常を起こすのは、遺伝の問題もありますし、外的な要因もあります。果糖やソーセージなどの加工肉、乳化剤やトランス脂肪酸などは原因になっている可能性が示唆されています。
大腸癌の治療
早期の大腸がんは癌細胞が粘膜の表面近くに留まり、大腸壁内に深く入り込んでいない場合があります。早期大腸がんの一部は内視鏡にて切除することが可能で、お腹を切る手術は必要がない場合があります。
しかし、進行大腸がんや早期大腸がんでも粘膜の深くにがん細胞が入り込んでしまった場合には手術を行い、がんのある大腸の切除が必要になってきます。大腸がんの進行の程度によって抗がん剤による化学療法等が必要になることがあります。
大腸がんは早期で発見される場合、ほとんどが内視鏡による切除によって完治が見込めるがんです。内視鏡検査を受けるきっかけは様々ですが、「血便が出た」、「便潜血検査で陽性になった」が一番多いです。何年も出血していたが「痔があるから・・・」と自己判断して、来院されたときには進行癌でしたと言うこともしばしば経験いたします。40歳以上の方は、血便などがあれば一度、大腸内視鏡検査を受けましょう。しっかりと観察、診断させて頂ければ、その後の適切な内視鏡検査の頻度もお伝えいたします。
大腸癌の対策・対処法 |
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40歳を過ぎたら一度は大腸カメラ検査をすることをお勧めいたします。腹痛や血便などの症状があるときは保険診療で大腸カメラ検査を行うことが可能です。症状がない場合は人間ドックなどの自費診療にはなりますが、ポリープの有無などを確認する方が良いでしょう。 |
よくある質問
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大腸癌の初期症状を教えてください。
大腸がんは一定程度進行してもなかなか気が付かないことが多く、ほぼ症状はないといっても過言ではありません。進行がんになり出血すれば血便を起こしますし、がんが大きくなり大腸内を占めるようになると便秘や腸閉塞を起こすようになります。早期大腸がんやほとんどの進行がんは症状がありません。
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大腸癌はどのようなきっかけで発見されることが多いですか?
大腸内視鏡検査です。血便や健康診断での便潜血検査陽性が大腸内視鏡検査を受けるきっかけになる方がほとんどです。
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大腸癌の予防方法を教えてください。
大腸がんを予防できる確実な方法はありません。定期的な大腸カメラ検査でスクリーニング検査を行うことが重要です。