肝機能障害とは? AST,ALT,γGTPが高い原因とその対処法について専門医が解説
肝機能異常や肝臓疾患の
ための外来です
健康診断時に肝機能障害を指摘される方が増えてきています。生活習慣病の一つでもある「脂肪肝」が最も多く見受けられますが、ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎といった治療が必要な病気が自覚症状なく発見されることもよくあります。
基本的には精査のために2回来院していただきます。1回目の来院で詳細な問診と血液検査を行い、2回目の来院で血液検査の結果説明と診断結果をお伝えいたします。1,2回目のどちらかで腹部超音波検査を行います。6時間ほど絶食の状態で来ていただくと、より正確に腹部エコーを行うことができます。
肝臓は自覚症状が乏しい臓器です。健康診断で異常値を指摘されたら、専門医を受診し血液検査と超音波検査での精査をお薦めいたします。
肝機能障害でよく見つかる病気
高頻度
脂肪性肝障害(アルコール性脂肪肝、単純性脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎)
一般的に「脂肪肝」とよばれる疾患群です。健診の値でGOT、GPT、γGTPなどが上がることが多いです。脂肪肝とは肝臓の細胞に中性脂肪が異常に蓄積した状態をいいます。肝臓の細胞に脂肪が沈着すると、肝細胞がダメージを受け肝機能が悪化します。肝疾患の中でも脂肪肝の占める割合は多く、健診受診者の20-30%は脂肪肝を伴っており、男性に多く、30歳代から50歳代までは20%以上に合併しています。女性には40歳代後半から徐々に増加し50歳代後半では男性とほぼ同じ15%程に達します。
脂肪性肝障害は大きくわけて飲酒によるアルコール性の脂肪肝と、アルコールには無関係で肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に合併する代謝機能障害に伴う脂肪性肝疾患(MASLD)、またMASLDが重症化した代謝関連脂肪性肝炎(MASH)に分類されます。アルコール性脂肪肝は禁酒で大きく改善いたしますが、MASHの場合は肝硬変や肝臓がんへ進展する場合があり、正確な診断と治療、経過観察が必要です。
脂肪肝病理写真
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正常な肝臓の組織です
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脂肪肝になる脂肪が沈着してきます(緑の矢印)
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正常は腎臓と肝臓は同じ程度の色合いですが、脂肪肝になると肝臓がエコーで白っぽく見えるようになります。
アルコール性肝障害 | 読んで字のごとく、お酒による肝機能障害です。飲酒によりγGTP、GOT、GPTが上昇します。禁酒により値は改善しますが、長期間の飲酒によりアルコール性肝硬変まで進んでしまうと元に戻ることが難しくなります。 |
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体質性黄疸(Gilbert症候群) | 健診の値でビリルビンの値が上がり受診されることがあります。ビリルビンは1−5mg/dl以内で上昇することが多く、ほとんどが3mg/dl以下になります。自覚症状は全くなく、毎年ビリルビンが少し高目くらいで推移する方が多いです。 Gilbert症候群といい人口の約5%位の方が当てはまります。体質性黄疸であれば問題ありませんが、それ以外で黄疸を認める場合は重篤な疾患が隠れている場合があるので、専門医にご相談ください。 |
中頻度
ウイルス性慢性肝炎
ウイルス性肝炎とは肝炎ウイルスに感染することにより、肝細胞がダメージを受け壊れていく疾患です。肝臓が徐々にダメージを受け壊れていくので、ゆっくり進行し、肝硬変や肝臓がんへ悪化していきます。日本ではB型肝炎とC型肝炎が多くを占め、B型肝炎は110-140万人、C型肝炎は190-230万人ほどの持続感染者がいると推定されています。
B型肝炎は血液や体液を介して感染します。輸血や注射針の使い回し(入れ墨なども含む)、性交渉や出生時の母子感染により感染することがあります。C型肝炎は感染者の血液を介して感染します。こちらも輸血や注射針の使い回しなどで感染します。いずれも感染したことに気がつかず、肝硬変などに進行してから気がつくことも少なくありません。肝機能障害から精査し、感染がわかった場合には、B型肝炎はウイルスの増殖を抑える注射や薬の内服が必要ですし、C型肝炎はウイルスを退治する抗ウイルス薬の内服が必要です。いずれも専門医による正確な診断と治療が必要です。
低頻度
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自己免疫性肝炎
自己免疫性肝炎は自身の肝細胞を、自分以外の異物と間違えてしまった免疫細胞が攻撃し肝障害を起こしてしまう疾患です。患者数は2万人程度で女性に多く50歳前後より患者が増えていきます。始めに採血で調べていきますが、自己免疫性肝炎を強く疑う場合は高次医療機関にて肝臓の組織を採取し調べる必要がある可能性があります。
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原発性胆汁性胆管炎
原発性胆汁性胆管炎は肝臓の中の胆管と呼ばれる細い管が障害を受ける原因不明の疾患です。患者数は5万人程度で女性に多く50歳前後より患者が増えていきます。始めに採血で調べていきますが、原発性胆汁性胆管炎を強く疑う場合は高次医療機関にて肝臓の組織を採取し調べる必要がある可能性があります。
※上記疾患以外にも肝機能障害を起こす疾患はたくさんあります。自己判断をせず、医師へ必ずご相談ください。
吉祥寺みどり内科消化器クリニックでは日本肝臓学会専門医、日本消化器病学会専門医である医師が肝機能異常に対する治療を行っています。肝臓の病気はすぐには症状に現れる方は多くありません。始めは自覚症状のない、検査の異常値のみのことがほとんどです。健康診断でGOT、GPT、γGTPの異常値を指摘された方、ウイルス性肝炎を指摘された方やご両親や兄弟にウイルス性肝炎の感染者がいる方などは専門医への受診をお進めいたします。まずは一度お気軽にご来院ください。
よくある質問
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肝機能に関して注目しなければいけない数値を教えてください
AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTPが一般的に健康診断などで測定される値です。ASTは心臓や筋肉、肝臓の細胞に含まれる酵素の一つで、肝臓の病気でも上がりますが、運動後の筋肉痛などが原因であがることもあります。ALTは肝臓に最も多く含まれる酵素ですので、肝臓に炎症などがあるとALTの値は強く上昇します。ASTとALTが同時に測定することでどのような病気かを推定します。また、γGTPは飲酒によっても上がりますが、胆石や胆管癌などで胆汁の流れに影響するような病気でも上がります。また、脂肪肝や薬の副作用などでも上がります。何か一つでも上がっているようであれば医師にご相談下さい。
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肝機能が悪い時にはどのような検査を行いますか?
採血検査を行います。また、腹部超音波検査で肝臓の大きさや形、腫瘍の有無などを確認します。
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健康診断で肝機能に関して指摘を受けました。病院に行った方がいいですか?
一般的に肝臓の値が基準値をわずかに上回る程度では経過観察になることが多いですが、健康診断で要精査と指摘されたら病院で医師の詳しい説明、検査を受けるようにしましょう。健康診断結果から来院され、はじめて慢性肝炎を指摘される方もいらっしゃいます。