こんな症状があったら
睡眠時無呼吸症候群(SAS)かもしれません SYMPTOMS
寝ているとき
- 大きないびき
- 苦しげな呼吸
- 息苦しさ
- 夜間頻尿
おきているとき
- 頭痛
- 十分な睡眠時間をとってもスッキリしない
- 熟睡感がなく寝ても疲れがとれない
- 集中力が低下した
- 日中眠気に襲われて、一瞬寝てしまうことがある
SASセルフチェック CHECK
質問 | 点数 |
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しょっちゅう(常習的に)いびきをかく | 1.5点 |
肥満傾向がある | 1.5点 |
血圧がある (高血圧の薬を飲んでいる) |
1.5点 |
昼間の眠気・居眠りで困ることがある(仕事中、会議中、運転中など) | 1.5点 |
寝つきは悪くないが、夜間の眠りが浅い または、しばしば目が覚める(トイレで目が覚める場合も含む) |
1.0点 |
いくら寝ても朝疲れが取れていない感じがする もしくは、朝しばしば頭痛がある |
1.0点 |
お酒を飲んでいない日でも、夜間寝ているときに息が止まる日がある | 3.0点 |
<監修>東京医科大学睡眠学講座/公益財団法人神経研究所/医療法人絹和会 井上 雄一様
合計が3点以上の方は受診を睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性が高いため、病院を受診されることをお勧めします。
睡眠時無呼吸症候群と症状
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まったり、浅く弱い呼吸になる病気です。無呼吸や低呼吸と呼ばれるこの状態は、10秒以上続く場合を指し、1時間に平均して5回以上繰り返されたり、7時間以上の睡眠中に30回以上おきるとSASと診断されます。日中の眠気や中途覚醒、倦怠感などが症状として実感されます。
主な症状には、大きないびきや睡眠中に何度も呼吸が止まることが含まれます。無呼吸が続くと体が低酸素状態となり、毎晩のようにこの状態が続くと、心臓や血管系の病気、さらには多くの生活習慣病のリスクが高まります。具体的には、高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などが関係するとされています。
無呼吸が生じると、脳が呼吸を再開させるために目覚めますが、この状態が繰り返されることで熟睡できず、慢性的な睡眠不足になります。その結果、日中の強い眠気、倦怠感、起床時の頭痛、気分の落ち込みなどが現れ、仕事や学業の効率低下や性格の変化を引き起こすこともあります。また、運転中に交通事故を起こすリスクも高まり、その事故率は約2.6倍以上になるとされています。
SASは、健康だけでなく公共の安全にも影響を与える重大な病気です。激しいいびきを伴うことが多いですが、自分では気づかず、身近な人に指摘されて初めて発覚することがよくあります。日中の眠気や集中力の低下などの症状がある場合は、早期の受診と検査が重要です。
睡眠中に何度も呼吸が止まることで酸素不足になり、心拍数が増加し、脳や心臓をはじめ全身に大きな負担をかけます。放置すると、高血圧、心臓病、脳血管障害、不眠症などの合併症リスクが高まり、健康に重大な影響を及ぼします。特に心血管系の合併症は、突然死のリスクも伴います。
日本では約500万人がSASにかかっているとされていますが、適切に治療を受けているのはそのうち1−2割程度と言われています。SASは睡眠中に起こるため、自分で気づきにくく、多くの人が治療を受けていないのです。しかし、治療によって劇的に改善することが多いため、いびきや無呼吸を指摘された場合は、早めに医療機関を受診することが非常に重要です。早期発見と適切な治療が、健康を守るために不可欠です。
原因 CAUSE
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因は主に2つに分けられます。
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CAUSE
まず、最も一般的な原因は上気道が物理的に塞がることで呼吸が一時的に停止する閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)です。これには、肥満による首周りの脂肪蓄積、舌の大きさ、扁桃や口蓋垂の大きさ、小さい顎などが関与します。肥満は特に大きな要因で、SAS患者の60%以上に見られます。大きく口を開けてのどの奥が見えない人はSASのリスクが高いかもしれません。
しかし、痩せている人でも下顎が小さい、後退している、または扁桃腺が大きいなどの特徴がある場合は、OSAのリスクがあります。要はのどの奥が狭く、空気の通り道が細くなってしまう肩になりやすいということです。加えて、閉経後の女性や高齢者もリスクが高いです。OSAになると様々な合併症が増加することが判っており、脳卒中は3.51倍、高血圧は2.14倍、心不全は4.30倍、2型糖尿病は2.29倍とリスクが高くなります。
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CAUSE
もう一つの原因は中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)で、これは脳からの呼吸指令が出なくなることによって発生します。肺や呼吸筋、末梢神経に異常がないにもかかわらず、呼吸が止まるという特徴があります。CSAは比較的まれで、SAS患者全体の数%に過ぎません。CSAは脳卒中や心機能低下などが原因で発生することが多いですが、そのメカニズムはまだ完全には解明されていません。
SASの症状としては、大きないびきや無呼吸が典型的ですが、日中の強い眠気や倦怠感、夜間の中途覚醒、起床時の頭痛、気分の落ち込みなども見られます。これらの症状が日常生活に支障をきたすことが多いため、早期の診断と治療が重要です。
FLOW 検査の流れ
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簡易アプノモニター検査
まず、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われる患者には、自宅で実施可能な簡易アプノモニターを用いたスクリーニング検査が行われます。機械を身体に装着し一晩眠っていただくことで検査が可能です。鼻や口での呼吸の状態、いびきや脈拍、血液中の酸素濃度等を測定、解析します。これにより、10秒以上の無呼吸・低呼吸の1時間あたりの回数(AHI)や酸素の低下状態を評価します。簡易アプノモニターは、自宅で普段の睡眠に近い状態で検査ができるため、非常に利便性が高いです。AHI≧40でCPAP療法の適用となります。 AHI<40の場合は、精密検査の対象となります。
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ポリソムノグラフィー(PSG)検査
簡易アプノモニターでSASの疑いが強い場合、さらに詳しい精密検査としてポリソムノグラフィー(PSG)が行われます。PSGは、脳波、筋電図、心電図、呼吸状態、血液中の酸素濃度など、さまざまな生体信号を同時に測定する検査です。当院では自宅で検査をしていただくことが可能になっており、無呼吸や低呼吸の回数だけでなく、SASの種類(閉塞性・中枢性)や睡眠の質(睡眠の深さ・分断の有無)、不整脈の有無、その他の睡眠障害の有無も診断できます。PSGは、総睡眠時間を計測できるため、AHIをより正確に算出することが可能です。
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検査結果の評価
簡易アプノモニターやPSG検査で得られたAHIを基に、SASの重症度を判定します。また、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)の区別も行います。これにより、それぞれの病状に応じた適切な治療方針を提示することが可能となります。
治療 THERAPY
治療方法
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THERAPY
CPAP療法
治療が必要と判断された場合、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)を行います。この療法では、専用の鼻マスクを装着し、睡眠中に気道に一定の圧力をかけた空気を送り込みます。これにより気道が広がり、無呼吸や低呼吸を防ぎます。CPAP療法は高い効果があり、多くの患者が「よく眠れるようになった」と実感しています。ただし、装置が気になって眠れない場合もあり、その場合はマウスピース治療に変更することもあります。CPAP療法を行っている間は、定期的な通院と装置の適切な使用が必要です。
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THERAPY
マウスピース療法
軽症から中等症のSASには、マウスピースを用いた治療が有効です。睡眠中にマウスピースを装着し、気道を確保することで無呼吸を防ぎます。この治療法は特に顎の形状や大きさによって無呼吸を起こしやすい場合に効果的です。
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THERAPY
減量
肥満が原因でSASを発症している場合、減量が症状の緩和・改善に効果的です。体重を減らすことで気道の圧迫が減り、口腔内のスペースも広がり、無呼吸の発生が減少します。減量によって無呼吸が改善された場合、その体重を維持することが重要です。
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THERAPY
外科的手術
扁桃腺肥大やアデノイドなど、物理的な要因で気道が狭くなっている場合、外科的手術が検討されます。ただし、手術後の再発リスクがあるため、術前の評価が重要です。
合併症の予防と生活習慣の改善
SASの治療中は、生活習慣の改善も必要です。特に肥満の解消やアルコールの摂取制限、適切な睡眠環境の整備が重要です。CPAP療法を受けている患者は、定期的に医師の診察を受け、治療効果や体調の変化を報告することが求められます。また、鼻炎や副鼻腔炎がある場合は、耳鼻咽喉科での治療が必要です。SAS以外の呼吸器疾患が見つかる場合は呼吸器科専門医にご紹介する場合もございます。