脂肪肝の原因、治療・検査を医師が解説|吉祥寺みどり内科消化器クリニック武蔵野院
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脂肪肝 MASLD / MASH

その脂肪肝放置で大丈夫?原因・検査・治療を医師が解説|
吉祥寺みどり内科・消化器クリニック 武蔵野院

こんな症状で
困っていませんか?
CHECK

  • 糖尿病である
  • 高血圧である
  • 脂質異常症である
  • 20歳の時から体重が10キロ以上増えた

上記の症状が多数当てはまる方は脂肪肝の可能性があります。

脂肪肝(MASLD / MASH)とは

 脂肪肝とは肝臓の細胞に中性脂肪が異常に蓄積した状態です。具体的には肝臓の細胞の内、中性脂肪が沈着しているの割合が30%を超える状態を脂肪肝と言います。血液検査の値でAST(GOT)、ALT(GPT)、γGTPなどの上昇を指摘されて発見されることが多くあります。肝臓の細胞に脂肪が沈着すると、脂肪が肝細胞に炎症を起こし、採血検査で肝機能の数値が悪化します。肝疾患の中でも脂肪肝の占める割合は多く、健診受診者の20-30%は脂肪肝を認めます。男性に多く、30歳代から50歳代までは20%以上に合併しています。女性には40歳代後半から徐々に増加し50歳代後半では男性とほぼ同じ15%程に達します。

 脂肪肝は大きくわけて飲酒によるアルコール性の脂肪肝と、アルコールには無関係で肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に合併する代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、またMASLDが進行し、重症化した代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に分類されます。アルコール性脂肪肝は禁酒で大きく改善いたしますが、MASHの場合は肝硬変や肝臓がんへ進展する場合があり、正確な診断と治療、経過観察が必要です。

コラム:NAFLDとNASH は MASLDとMASHと違うんですか? 
 2024年8月に非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に名称変更されました。
 NAFLDの「F」はFatty(肥満)を意味するFでしたが、Fattyという言葉が差別や偏見を生むのではないかという考えより、名称変更となっています。もともと、NAFLDはメタボリックシンドロームの人に起こりやすく、糖尿病や脂質異常症の患者さんに合併しやすいことから、代謝機能障害(いわゆる生活習慣病)に関連した脂肪性肝疾患ということでMASLDと名前が変更になっています。もともと非アルコール性という概念がわかりづらいという指摘もありましたが、今後は生活習慣病を合併した脂肪肝の人はMASLDと考えられるようになりました。

脂肪肝の主な症状

 自覚症状はありません。健康診断で指摘されることがほとんどです。
ただし、生活習慣病を合併することが多いので、糖尿病、高血圧、脂質異常症などをもっている方や、体重が20歳の時より10㎏以上増えていたり、短期間で急激な体重増加がある方などは脂肪肝になっている可能性が高いです。

脂肪肝の原因は?

 食事で摂取したエネルギーが消費するエネルギーを上回ると、使いきれなかったエネルギーは中性脂肪として肝臓に蓄積していきます。エネルギーとは具体的には「糖質」です。余計に取りすぎた糖質(炭水化物)は肝臓で中性脂肪に変化し、肝臓内に蓄積します。もちろん肝臓だけに蓄積せず内臓脂肪や皮下脂肪としても蓄積し肥満の原因となります。
 糖質を取りすぎる人は、糖尿病にもなりやすくなります。糖尿病と脂肪肝は密接に関係しており、脂肪肝になるとインスリンというホルモンが効きづらくなります。インスリンは血糖値を下げる重要なホルモンで、これが効きづらくなると糖尿病になります。ですので、糖尿病にならないようにすることは、脂肪肝にならないようにすることとほぼ同義です。また、アルコールも糖質ですので脂肪肝の原因になります。アルコールを代謝する過程で中性脂肪が作られますが、これが肝臓に蓄積して脂肪肝になります。

脂肪肝の検査はどうするの?

 健康診断で肝臓の値であるAST(GOT)やALT(GPT)、γ‐GTPが基準値を超えている場合、脂肪肝は原因の一つです。脂肪肝はまず、腹部超音波検査を行います。超音波検査は痛みなく検査可能で、肝臓に脂肪が沈着しているかどうかを客観的に判断することが可能です。しかしながら、超音波検査だけでは「どのくらい」脂肪が沈着しているかがわかりません。超音波検査だけでは脂肪肝の程度、重症度がどのくらいかをはっきり把握することが難しいのです。当院では、フィブロスキャン検査を同時に行います。フィブロスキャンはどの程度の脂肪肝かを把握することができますので、軽い脂肪肝なのか、しっかり治療を検討すべき脂肪肝化を判断できます。フィブロスキャンは痛みもありません。精度の高い脂肪肝検査をお勧めします。

FIBROSCAN 肝生検の代わり
フィブロスキャン

来院時に検査可能、結果もすぐにわかります。
フィブロスキャンはエコー検査と同じように、体の表面にプローブという道具をあててそこから発せられる振動と超音波の伝わり方から肝臓の硬さや肝臓組織内の脂肪量を測ることができる検査です。エコーと同じく検査は痛みが全く無く、繰り返し安全に検査を行うことができます。検査の時間も1分程度です。フィブロスキャンは稀な機械で都内でもクリニックでは数件しかありません。

フィブロスキャン検査
対象疾患 脂肪肝、肝硬変を疑う慢性肝疾患、肝硬変
費用 費用 3割負担 約600円 
1割負担 約200円
  • 肝臓の脂肪量がわかります

    肝臓の脂肪量の度合いを示しており 脂肪肝の検査として有用です

    CAP dB/m (デシベルパーメーター)
  • 肝臓の硬さがわかります

    肝臓の硬さの度合いを示しており肝疾患 進展度や肝硬変の検査として有用です

    E kPa (キロパスカル)

 

脂肪肝の治療は?

 脂肪肝の治療は基本的に生活習慣の改善がメインになります。ダイエット・運動・食べ過ぎを控えることは重要です。2024.9月現在で保険適応のある脂肪肝の薬はありません。

◎生活習慣
とりわけ重要なのは「ダイエット」です。脂肪肝という病気は「脂肪」という言葉があるため、脂っこいものを食べて脂肪肝になるとお考えの患者様が多いですが、脂肪肝で一番減らしたいのは「糖質(炭水化物)」です。食事で取った糖質(炭水化物)はブドウ糖に分解・吸収され、生きるためのエネルギーとして使われます。しかし、食べすぎや運動不足により余ってしまった糖質は中性脂肪に変換されて肝臓に蓄積されます。また中性脂肪そのものも肝臓で作られ、蓄積されていきます。飲酒によって体内に入ったアルコールが分解されるときに中性脂肪が作られます。
 しかし、肝臓は体にエネルギーが足りなくなった時に蓄えられた中性脂肪を再度、糖質にもどしてエネルギーとして使うこともできるのです。体内では基本的に糖質(炭水化物)を第一にエネルギーとして使うので、糖質や中性脂肪の摂取を減らすことで、足りない分のエネルギーを肝臓に蓄えられていた中性脂肪で補うようになります。結果、肝臓の脂肪が減少し、肝機能が改善するというわけです。食事療法や運動療法を組み合わせた減量によって7%の体重が減少すると肝臓の炎症は改善するといわれています。

◎薬物療法
 残念ながら、2024年9月現在、保険適応のある脂肪肝の薬はありません。しかし、他の疾患の薬で脂肪肝に効果があると考えられる薬はあります。脂肪肝に脂質異常症や高脂血症を合併している患者さんには保険診療で使用可能です。

・ビタミンE(薬品名:ユベラ)
 末梢循環を改善したり、脂質異常症を改善する補助的な役割を果たす薬です。
 ビタミンEの抗酸化作用は脂肪肝患者の肝機能改善や、肝臓の組織が改善されると報告されています。

・一部の糖尿病の薬 チアゾリジン誘導体・SGLT2阻害薬
 チアゾリジン誘導体はインスリンというホルモンの効果を効きやすくする効果がありますが、この薬において肝臓の脂肪蓄積を減らすことが判っています。また、SGLT2阻害薬は血液中の糖を尿中に排泄し体重減少を促す効果があり脂肪肝にも有用であることが判っています。
 

脂肪肝の対策・対処法、セルフケア 
飲酒の習慣がある人は、アルコールの過剰摂取に注意しましょう。間食や脂肪分の多い食事、運動不足は糖尿病や脂質異常症の原因になります。一番は糖質(炭水化物)の取りすぎに注意することです。特に清涼飲料水や果物は吸収が良く、急激に血糖値を上げることになるため、過剰な糖質が肝臓に中性脂肪に変換されて蓄積されます。注意してください。血糖値の上昇を緩やかにすることは脂肪肝の予防には有効です。ご飯やメインとなるおかずを食べる前に、サラダやキャベツの千切りなどを食べると血糖値の上昇が緩やかになるため効果的です。もちろんストレスや喫煙などは脂肪肝に限らず様々な病気の原因になるため、避けたほうが良いでしょう。
また筋肉を強化し、基礎代謝を上げることは非常に有効です。筋トレは体を大きくするイメージがありますが、体を大きくしなくても、体の大きな筋肉を意識して使う運動を行うことは大切です。
よくある質問
  • 脂肪肝を改善させる期待ができる食事メニューを教えてください

    低糖質、低脂質の食事が良いと思います。肝臓に蓄積した中性脂肪を燃やすためには、摂取する糖質を減らすことが重要です。

  • 脂肪肝の指標となる数値を教えてください。

    基本的にはALT(GPT)やγGTPが高くなった状態ですが、これらが高くなる病気は脂肪肝以外にもたくさんあります。脂肪肝と診断するには、詳細な問診とその他の肝臓病でないことを確認すること、腹部超音波検査などで総合的に判断します。採血結果だけで評価することはほぼありませんので、医師にご相談ください。

  • 脂肪肝の場合、疲れやすくなりますか?

    脂肪肝がひどくなり炎症が強くなると疲れやすくなることはありますが、かなり肝炎が強くないと症状は出ないと思います。ただし、脂肪肝がかなりひどい状態だと、糖尿病なども合併していることもあり脂肪肝単独で疲れがひどくなることは多くないと思います。

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