食べ物が飲み込みにくい・夜間に吐いてしまう方へ
60秒でわかる この記事の要点
- 下部食道括約筋がゆるまず、食べ物が胃に落ちていかなくなる病気です。
- 固形物より液体がつかえる、夜間に嘔吐して枕を汚すという症状が特徴的です。
- 診断は胃カメラ・バリウム検査・食道内圧測定で行います。
- 根本的な治療はPOEMなどの内視鏡治療で、実施可能な専門施設へご紹介します。
執筆・監修 PROFILE
日本内科学会認定 総合内科専門医/日本消化器病学会認定 消化器病専門医/
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医/日本肝臓学会認定 肝臓専門医/
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
食道アカラシアの症状チェック
- 食べ物・飲み物を飲み込んでも胸のあたりで止まってしまう
- 固形物より液体の方がつかえる感じがする(アカラシアの特徴:逆流性食道炎と逆)
- 胸の痛み・圧迫感がある
- 食べていないのに嘔吐してしまう・未消化のものを吐く
- 夜間に嘔吐して枕を汚す・誤嚥性肺炎を繰り返している
- 体重が減ってきた(食事が十分に取れないため)
- 年齢や性別を問わず起こり得るため、若い方でも上記の症状が続く場合はご相談ください
受診タイミング目安
早めに受診を
- 全く食べ物が通らない(完全閉塞)
- 誤嚥性肺炎を繰り返している
受診をお勧め
- 食べ物がつかえる感じが2週間以上続く
- 体重が減ってきた・食事が十分に取れない
- 夜間に無意識に嘔吐する事がある
吉祥寺みどり内科・
消化器クリニックを選ぶ理由
消化器内視鏡専門医による食道アカラシアの正確な診断
食道アカラシアは胃カメラ検査中に「食道内に液体が貯留している」という特徴的な所見で疑う事ができます。食道がんとの鑑別も重要で、内視鏡専門医として正確な初期評価を行います。
POEM専門施設への速やかな紹介連携
食道アカラシアの根本的な治療はPOEM(経口内視鏡的筋層切開術)です。POEMは大学病院等の専門施設での実施となりますが、当院での診断後に信頼できる専門施設へ速やかにご紹介します。「どの病院に行けばよいかわからない」という不安を解消します。
診断から治療後の経過観察までを一貫して担当
治療そのものは専門施設で受けていただきますが、診断前の評価から、治療後の経過観察、日常のお食事の相談まで、かかりつけとして継続的に対応してまいります。
院長メッセージ
「夜中に嘔吐して枕を汚してしまう」という症状は、食道アカラシアの患者様に非常に多い症状です。食べ物が胃に落ちていかずに食道に貯まり、寝ている間に逆流してくるのです。
食道アカラシアは10万人に2〜3人と比較的まれな疾患で、原因不明の下部食道括約筋の弛緩障害が病態です。POEM(経口内視鏡的筋層切開術)という内視鏡治療は、良好な治療成績を上げています。
当院では胃カメラで食道アカラシアを疑い、必要な追加検査(バリウム・食道内圧測定)へのご案内と、POEM実施施設への紹介連携を行っています。診断後も、経過観察やお食事の相談をかかりつけとして継続して行ってまいります。
佐々木洋(執筆・監修)
消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・
肝臓専門医・総合内科専門医
最終更新:2026年10月
食道アカラシアとは
食道アカラシアは、食道の神経に原因不明の異常が起こり、下部食道括約筋という筋肉が十分にゆるまなくなる事で、食べた物や飲んだ物が胃へ落ちていかず、食道にたまってしまう病気です。つかえ感や胸の痛み、嘔吐、体重の減少といった症状があらわれます。頻度は10万人に2〜3人程度とされ、年齢や性別を問わず起こり得ます。通常、胃カメラ検査の際に食道の中へ液体がたまっている事はありません。ところがアカラシアの患者様では、内視鏡を挿入した時に食道が拡張し、液体がたまっている様子がしばしば確認されます。
嘔吐の原因を調べる目的で行った胃カメラで、のどから挿入した途端に多量の液体がたまっている場合には、私共はまずアカラシアを疑います。胃と食道のつなぎ目が強く締まっているため、液体はもちろん固形物も胃へ落ちていきにくく、内視鏡を通すのにも苦労する事があります。
| 主な症状 | 食道から胃へ食べた物が落ちていかないため、食事が入っていかない、胸が痛む、嘔吐する、といった症状が中心になります。食道にたまった物が気道へ流れ込む事で、むせや咳、誤嚥性肺炎につながる事もあります。ご自身の意思とは関係なく嘔吐してしまうため、「眠っている間に嘔吐して枕を汚してしまった」とお話しされる患者様もいらっしゃいました。特に横になっている時間帯の嘔吐は、この病気に比較的みられやすい症状と考えています。 |
|---|---|
| 原因 | 食道の神経の異常が関与していると考えられていますが、なぜその異常が起こるのか、根本的な原因は今のところ分かっていません。食べた物を胃へ運ぶ食道の蠕動運動も障害されます。なお、ストレスが直接の発症原因になる事はありません。 |
| 検査・診断 | 胃カメラだけで診断がつく事もありますが、確定のためにはバリウムを用いた食道造影検査や、食道内圧検査を組み合わせて総合的に判断する事が少なくありません。胃カメラだけでは診断がつかない事もあり、はじめからアカラシアを念頭に置いて観察していないと、見逃してしまう可能性があります。嘔吐を繰り返す、特に就寝中に嘔吐してしまうといった症状が続く場合には、消化器内科・消化器内視鏡専門医への受診をお勧めいたします。 |
| 治療 | 下部食道括約筋のしめつけをゆるめてあげる事が症状の改善につながります。外来では内服薬による治療が基本となりますが、効果は限定的で、改善しない事の方が多いというのが私共の正直な印象です。以前は内視鏡から風船を入れて括約筋を物理的に広げる治療も行われていましたが、改善が一時的にとどまったり、再発したりする事がありました。現在は、内視鏡で下部食道括約筋の一部を切開するPOEM(経口内視鏡的筋層切開術)という治療が行われています。POEMは大学病院など限られた施設で行われる治療のため、当院でアカラシアと診断された患者様は、実施可能な施設へご紹介いたします。 |
| 日常生活で 心がけていただきたい事 | ご自身でとれる対策は多くありませんが、一度にたくさん召し上がらず、ゆっくりよく噛んで食べていただく事、就寝前のお食事を控えていただく事などが、症状の軽減につながる場合があります。気になる症状が続くときには、早めにご相談いただければと思います。 |
よくあるご質問
食道アカラシアは指定難病ではなく、医療費助成の対象にもなりません。病名の響きからご心配される方がいらっしゃいますが、厚生労働省の指定難病には含まれていません(食道の病気では好酸球性食道炎などが指定難病に該当します)。まれで専門的な対応を要する病気ですので、診断がついた際は適切な施設と連携して対応いたします。
どちらも食べ物が飲み込みにくくなる「嚥下困難」が症状で、鑑別が重要です。アカラシアは下部食道括約筋の弛緩障害が原因で炎症・腫瘍はなく、胃カメラで食道内に液体貯留・食道の拡張・下部括約筋の開かない所見が特徴です。食道がんは粘膜に腫瘍病変が見られます。バリウム検査・食道内圧測定(HRM)を組み合わせて確定診断します。
POEM(経口内視鏡的筋層切開術)は、内視鏡を口から挿入して食道壁の筋層を切開する低侵襲な治療法です。長期成績が良好で、現在アカラシアの標準的な治療のひとつです。当院では診断と術前評価を行い、POEM実施可能な大学病院等へご紹介します。
ストレスは食道アカラシアの原因ではありません。原因は食道の神経(アウエルバッハ神経叢)の変性で、なぜ神経変性が起こるかは現時点では不明です。ストレスで症状が変動する事はあっても、発症原因ではありません。
薬の効果は限定的です。硝酸薬・カルシウム拮抗薬が下部食道括約筋をゆるめる効果を持ちますが、持続性が低く根本的な治療にはなりません。外来での治療は内服が中心ですが、POEM等の処置がより確実な治療です。
はい。食道内に食べ物・液体が貯留し、それが夜間に逆流して誤嚥すると誤嚥性肺炎を引き起こす事があります。繰り返す誤嚥性肺炎の原因が食道アカラシアだったというケースもあります。「夜間に嘔吐する」「繰り返す肺炎がある」という方は消化器内科への受診をご検討ください。
長期にわたり罹患している食道アカラシアでは、食道内での食物停滞による慢性的な刺激から、食道がん(扁平上皮がん)のリスクが一般の方より高くなる事が報告されています。アカラシアと診断されている方は、定期的な胃カメラをお勧めします。
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初めての方もお気軽にご相談ください。「食べ物が飲み込めない」「夜間に嘔吐してしまう」「食道アカラシアと診断されたが治療を受けていない」方のご相談も歓迎します。
診断から専門施設との連携、その後の経過観察まで対応いたします。