HBs抗原陽性を指摘された方へ B型肝炎の診断と長期管理
60秒でわかる この記事の要点
- B型肝炎は、ウイルスを完全に排除する事はできませんが、抑え込む事はできます。
- 治療の目標は、肝臓の炎症を鎮め、肝硬変や肝がんに進まないよう定期的に確認していく事です。
- 慢性肝炎の方が全員お薬の対象になるわけではありません。経過観察となる方もいらっしゃいます。
- 内服治療は国と都の医療費助成の対象です。当院で申請のお手伝いをいたします。
症状チェック
B型肝炎は多くが無症状です。
以下に当てはまる方は検査を
お勧めいたします
- 健診で「HBs抗原陽性」「肝炎ウイルス陽性」を指摘された
- 母親がB型肝炎のキャリアである(母子感染の可能性)
- ご家族にB型肝炎の方がいる
- 過去に輸血・入れ墨・ピアスの穴あけ・注射器の共用などの経験がある
- HBs抗原陽性を指摘されたが、その後の精密検査・通院をしていない
- これから免疫を抑える治療(抗がん剤・生物学的製剤など)を受ける予定がある
- 倦怠感・食欲不振が続いている
- 黄疸がある・尿が紅茶色になった(お早めにご受診ください)
B型肝炎とは
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)が血液や体液を介して感染して起こる肝臓の病気です。幼少期(3歳くらいまで)の免疫が十分でない時期に感染すると、ほぼ生涯にわたって感染が持続する事があります。これをB型慢性肝炎といいます。
B型慢性肝炎に症状はありませんので、健康診断でASTやALTの上昇から気づく事もあります。
母子感染は、
ほぼ防げるようになりました
かつて日本のB型肝炎の多くは、出産の際に母親から赤ちゃんへ感染する母子感染によるものでした。1986年(昭和61年)から国のB型肝炎母子感染防止事業が始まり、妊婦健診でHBs抗原を調べ、陽性であった方から生まれた赤ちゃんには、生まれた直後から免疫グロブリンとワクチンを計画的に投与するようになりました。
この取り組みにより、母子感染はほとんど防げるようになっております。ですから、HBVをお持ちの方でも、赤ちゃんへの感染を過度にご心配いただく必要はございません。妊娠がわかった時点で、必ず医師にお伝えください。
一方で、この事業が始まる前、おおよそ1985年以前にお生まれの方の中には、母子感染によってウイルスをお持ちのまま、気づかずに過ごしていらっしゃる方がおられます。お母様がB型肝炎とわかっている方、これまでHBs抗原の検査を受けた事がない方は、一度調べておいていただきたいと考えております。
思春期以降の感染
思春期以降の感染は、性交渉や入れ墨、注射の回し打ちなど、他者の体液を介するものがほとんどです。免疫がしっかりできている状態でHBVが体内に入ると、無症状のまま収束する事もありますが、発熱・黄疸・全身倦怠感などを起こすB型急性肝炎を発症する事があります。
診療の流れ
- 01
初回来院
問診と採血(HBs抗原・HBs抗体・HBe抗原・HBe抗体・HBc抗体・HBV-DNA定量、肝機能、血小板)
- 02
結果説明
現在の感染状態、ウイルスの活動性、治療の対象になるかをご説明いたします。腹部超音波検査・フィブロスキャンで肝臓の線維化の程度も評価いたします
- 03
方針の決定
ウイルスが静かにしている方・量が少ない方は経過観察となる事があります。治療が必要な方には核酸アナログ製剤による治療をご提案し、医療費助成の申請をご案内いたします
- 04
経過観察
治療の有無にかかわらず、定期的な採血と6ヶ月ごとの腹部超音波検査・腫瘍マーカーによる確認を継続いたします
治療について
B型慢性肝炎では、肝臓に潜むHBVを完全に排除する事はできません。治療の目的は、ウイルスが肝臓に炎症を起こさないようできるだけ鎮静化させ、そのうえで慢性肝炎の先にある肝硬変や肝臓がんになっていないかを定期的に検査していく事です。
慢性肝炎の方が必ずしもお薬を飲む対象になるわけではなく、ウイルスが静かにしている方や量が少ない方は経過観察となる事があります。炎症が強い場合は、ウイルスを減らし炎症を抑えるために核酸アナログ製剤(内服の抗ウイルス薬)を基本的に長く飲み続けていただく必要があります。
費用と医療費助成について
B型慢性肝炎に対する核酸アナログ製剤(内服の抗ウイルス薬)による治療は、国と都道府県による「肝炎治療特別促進事業」の助成対象です。
この制度を利用すると、世帯の所得に応じて自己負担額に月額の上限が設けられ、負担を大きく抑える事ができます。B型肝炎の抗ウイルス薬は長期にわたって内服を続ける事が多いため、この制度をご存じかどうかは生活に直結いたします。
申請には医師の診断書等が必要で、東京都にお住まいの場合は保健所が窓口となります。当院で必要書類の作成と手続きのご案内をいたします。毎年の更新申請にも対応いたします。
「治療費が心配で受診をためらっていた」という方こそ、一度ご相談ください。
※制度の詳細・自己負担限度額は改定される事があります。最新の内容は診察時にご確認ください。
免疫抑制療法・
がん薬物療法を受ける前の
HBV再活性化リスク評価
過去にB型肝炎に感染した方(現在HBs抗原が陰性でも、HBc抗体やHBs抗体が陽性の「既感染」の方を含みます)が、がんの治療や関節リウマチなどで免疫を抑える治療を受けると、体内に残っていたウイルスが再び増え出し、重い肝炎を起こす事があります。これをHBV再活性化といいます。
当院では、他院で治療を始める前のスクリーニング採血(HBs抗原・HBc抗体・HBs抗体、必要に応じてHBV-DNA定量)と、治療中のHBV-DNAの定期的な確認に対応いたします。主治医の先生への情報提供書もお出しいたします。
「これから抗がん剤治療や生物学的製剤を始めるので、肝臓の方を確認しておきたい」というご相談も歓迎いたします。
日常生活で
心がけていただきたい事
健康診断で肝機能異常を指摘されたら、一度医師にご相談ください。お母様がHBVに感染している方は、ご自身がB型慢性肝炎でないか調べていただいた方がよいでしょう。B型肝炎は体液を介して感染するため、性交渉のパートナーがB型肝炎の場合は、ご自身がワクチンを接種する必要があります。
握手や抱擁などのスキンシップ、食器の共用で感染する事はありません。
なお、感染がわかっている場合は献血ができません。
執筆・監修 PROFILE
日本内科学会認定 総合内科専門医・日本消化器病学会認定 消化器病専門医・日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医・日本肝臓学会認定 肝臓専門医・日本ヘリコバクター学会認定医・難病指定医(東京都知事指定)