食後にみぞおちが痛む方へ 胃潰瘍の診断と治療
胃潰瘍は「食後に痛む」ことが多いのが特徴です。原因の多くはピロリ菌感染と痛み止め(NSAIDs)で、出血すると吐血や黒い便(タール便)が出ることがあります。胃カメラで潰瘍の深さと出血の有無を確認し、必要な止血処置と根本原因(ピロリ菌)への対応まで行います。
60秒でわかる この記事の要点
- 胃の粘膜が深く傷つく病気で、食後にみぞおちが痛むのが典型的な症状です。
- 原因の多くはピロリ菌感染と鎮痛薬(NSAIDs)で、出血すると吐血や黒色便が現れます。
- 治療はPPI・P-CABによる潰瘍の治癒と、原因に応じたピロリ除菌または薬剤の見直しです。
- 胃がんと見た目が似る事があるため、当院では生検による鑑別と除菌治療まで一貫して行ってまいります。
執筆・監修 PROFILE
日本内科学会認定 総合内科専門医/日本消化器病学会認定 消化器病専門医/
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医/日本肝臓学会認定 肝臓専門医/
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
症状チェック
すでに症状がある方
- 食後30分〜2時間程度でみぞおちが痛む(胃潰瘍の典型的なタイミング)
- 食欲不振・体重減少がある
- 胸やけ・げっぷがある
- 吐血した・コーヒーかす様のものを吐いた
- 便が黒くタール状(出血のサイン)
- 鎮痛薬(ロキソニン・アスピリン等NSAIDs)を常用している
- ピロリ菌陽性を指摘されたことがある
- 中高年で強いストレスにさらされている
受診タイミング目安
早めの受診を
- 吐血が続く/大量の黒色便と立ちくらみ・冷や汗(出血性ショックの可能性)
- 突然の激しい腹部全体の痛み(穿孔の可能性)
受診をお勧め
- 食後のみぞおちの痛みが続く/黒色便が出た
- 鎮痛薬服用中に胃痛が出てきた
定期胃カメラとして
- 過去に胃潰瘍・ピロリ菌感染の既往があり除菌後の確認をしたい
吉祥寺みどり内科・
消化器クリニックを選ぶ理由
潰瘍かがんかを生検で確かめ、治ったかどうかの確認まで行います
胃潰瘍は、見た目の似た胃がんとの見分けが欠かせません。
当院では消化器内視鏡専門医が胃カメラの際に生検を行い、悪性の可能性を確認いたします。治療開始後は潰瘍が実際に治癒したかを再度の胃カメラで確かめるところまで担当いたします。オリンパス EVIS X1 による観察と、鎮静下での負担の少ない胃カメラ
当院の胃カメラは、オリンパス社の内視鏡システム EVIS X1 を使用しております。NBI(狭帯域光観察)などの特殊光を併用すると、通常光では捉えにくい粘膜の色調や模様の変化が観察しやすくなります。必要と判断した場合には、色素散布や拡大観察を追加して詳しく確認いたします。
胃潰瘍では、潰瘍そのものだけでなく周囲の粘膜まで観察し、胃がんとの見分けに役立てております。ご希望に応じて鎮静剤を使用し、負担の少ない検査を行っております。検査で終わりにせず、その後も同じ医師が続けて診てまいります
当院は1954年に杉並区宮前で開院し、2023年に吉祥寺へ移転いたしました。
検査や治療を行って終わりにするのではなく、その後の経過まで主治医として続けて拝見してまいります。潰瘍が実際に治ったかどうかの確認と、再発予防までを担当いたします。出血を伴う潰瘍について
診療時間内に受診いただいた場合、出血を伴う潰瘍に対してクリップによる止血や薬剤局注などの内視鏡的止血処置に対応しております。
止血が困難な場合や、診療時間外は、連携する医療機関へ速やかにご紹介いたします。
院長メッセージ
胃潰瘍の患者さんに必ずお伝えしているのは「原因を突き止めること」の大切さです。多くの胃潰瘍はピロリ菌感染が原因で、除菌しなければ何度も再発します。また、痛み止めを常用している方の胃潰瘍は薬剤性のことが多く、薬の見直しが必要です。
「食後に胃が痛む」という症状だけで自己判断せず、まずは胃カメラで潰瘍の有無・出血の有無を確認し、根本原因に対応することが再発を防ぐ最善の方法です。
佐々木洋(執筆・監修)
消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・
肝臓専門医・総合内科専門医・
日本ヘリコバクター学会
ピロリ菌感染症認定医
最終更新:2026年10月
胃潰瘍とは
胃潰瘍は、胃の粘膜が深くえぐれ、粘膜の下の層まで傷ついてしまった状態です。急性胃炎から続いて起こる事もありますが、多くはピロリ菌の感染や、痛み止め(NSAIDs)の使用が原因です。食後にみぞおちが痛む事が多いのが特徴で、出血すると吐血したり、便が黒くタール状になったりします。
| 主な症状 | みぞおちの痛みが中心で、胃潰瘍では食後に痛みが強くなる傾向があります。潰瘍から出血すると、血液が胃酸で黒くなるため、便が黒くなったり、吐血したりする事があります。 出血が続くと貧血を起こしてふらつく事もあります。痛みがはっきりしないまま、黒い便や貧血をきっかけに見つかる方もいらっしゃいます。まれに潰瘍が深くなり胃に穴があく穿孔を起こすと、強い痛みを伴い緊急の対応が必要になります。 |
|---|---|
| 原因 | 二大原因はピロリ菌の感染と、痛み止め(NSAIDs)の使用です。ピロリ菌は胃の粘膜に慢性的な炎症を起こし、粘膜の防御力を落とす事で潰瘍をつくります。 NSAIDsも胃粘膜の血流を悪くして潰瘍の原因になります。そのほか、強いストレス(精神的なものだけでなく手術などの肉体的ストレスも含みます)でも起こります。当院では、ピロリ菌に感染していない方の胃潰瘍で、お仕事のストレスが強かった事が原因と考えられた例も経験しています。 |
| 検査・診断 | 胃カメラで潰瘍の有無と深さ、出血しているかを直接確認します。同時に、潰瘍の底などから組織を採取し、がんが隠れていないかを調べる事も大切です。胃潰瘍とよく似た見た目で進行胃がんが潰瘍をつくる事があるためです。あわせてピロリ菌感染の有無も確認いたします。 |
| 治療 | 胃酸を抑えるお薬(PPI・P-CAB)で潰瘍の治りをはかります。出血している潰瘍に対しては、胃カメラで止血の処置を行う事があり、出血がひどい場合は入院のうえ絶食・点滴が必要になる事もあります。 ピロリ菌が原因の場合は、潰瘍が落ち着いた後に除菌治療を行う事で、再発を大きく減らす事ができます。痛み止めが原因の場合は、可能であればその薬剤の見直しを行います。 |
| 日常生活で 心がけていただきたい事 | 痛み止めを常用されている方は、胃を守るお薬の併用や薬剤の見直しについて医師にご相談ください。 ピロリ菌感染がある場合は除菌が再発予防の要になります。黒い便や吐血に気づいた時は、出血のサインですので、我慢せず速やかに受診してください。 |
よくあるご質問
主な原因はピロリ菌感染とNSAIDs(鎮痛薬)です。ピロリ菌感染者の胃潰瘍は除菌により再発率が大きく下がります。NSAIDsが原因の場合は薬剤の見直しが重要です。
胃潰瘍と胃がんは似た見た目になることがあるため、内視鏡での生検(組織検査)で鑑別することが重要です。またピロリ菌は胃潰瘍・胃がん共通の主要原因であるため、潰瘍治療と併せて除菌・胃がんの経過観察を行います。
吐血や黒色便は出血のサインです。少量でも早めの受診が必要で、大量出血・立ちくらみ・冷や汗がある場合は救急受診してください。
多くはPPI/P-CABなどの薬物療法で治癒します。出血している場合は内視鏡的止血処置を行い、止血困難・穿孔など特殊な場合のみ外科手術が必要になります。
ピロリ菌が原因の場合、除菌しないと高率で再発します。除菌に成功すれば再発率は大幅に下がります。NSAIDs常用が原因の場合は薬の中止・変更で再発を防げます。
香辛料・カフェイン・アルコールなど胃粘膜を刺激するものは控えめにし、規則正しい食事を心がけてください。厳格な制限食は必須ではありませんが、刺激物・過食は避けることをお勧めします。
症状が良くなっても、潰瘍が実際に治癒したか・悪性でないかを確認するため治療後の胃カメラでの確認をお勧めすることがあります。またピロリ菌陽性だった方は除菌判定・その後の定期的な胃がんサーベイランスも重要です。