大腸ポリープの日帰り切除
入院の必要はありません。
60秒でわかる この記事の要点
- 大腸ポリープの多くは腺腫と呼ばれる良性の腫瘍ですが、放置すると大腸がんへ進行する可能性があります。
- 当院では大腸カメラ検査中に切除の要否を判断し、対象となる病変はその場で切除いたします。入院は必要ありません。
- 費用は健康保険3割負担で20,000〜26,000円前後です。切除した個数や方法によって前後いたします。
- 切除後の生活の制限は、切除の方法によって大きく変わります。全ての方に同じ制限をお願いする事はいたしません。
大腸ポリープを
切除する理由
大腸ポリープとは、大腸の粘膜が盛り上がった病変の総称です。その全てががんになるわけではありませんが、一定の割合を占める腺腫は、時間の経過とともに大腸がんへ進行する事が知られています。大腸がんの発生には、主に3つの経路があると考えられています。
1つ目は、腺腫が徐々に大きくなり、その内部にがんが発生する経路です。大腸がんの多くはこの経路をたどるとされており、腺腫の段階で取り除く事が、そのまま大腸がんの予防につながります。
2つ目は、腺腫を経ずに、正常な粘膜から直接がんが発生する経路です。平坦であったり、くぼんだ形をとる事が多く、盛り上がった病変に比べて発見が難しい類型です。
3つ目は、鋸歯状病変(きょしじょうびょうへん、SSL)を経由する経路です。かつては切除の必要がない過形成性ポリープと同じものとして扱われていましたが、現在では右側の大腸に多く、一部はがん化すると考えられています。表面が平坦で粘液に覆われている事が多く、注意深い観察が必要な病変です。 大腸カメラは、がんを見つけるための検査であると同時に、がんになる前の病変を取り除く事で発症そのものを減らし得る、数少ない検査でもあります。
切除するポリープと、
切除しないポリープ
見つかったポリープを全て切除するわけではありません。
当院では検査中に病変の大きさ、形、色、表面の模様を観察し、切除の要否を判断いたします。
切除の対象となる事が多い病変
- 腺腫
- 鋸歯状病変のうち、大きさや部位から経過観察が適当でないと
判断されるもの - 出血の原因となっている病変
経過観察とする事が多い病変
- 直腸やS状結腸にみられる小さな過形成性ポリープ
- 炎症に伴う隆起など、腫瘍性でないと判断されるもの
観察には通常の光に加えてNBI(狭帯域光観察)を用います。
青と緑の特殊な光を当てる事で、粘膜の表面にある細い血管や模様が濃く見えるようになり、切除すべき病変かどうかの判断に役立ちます。
| コールドフォーセプス ポリペクトミー(CFP) | 数ミリ程度の小さな病変を、鉗子でつまみ取る方法です。電気を使いません。 |
|---|---|
| コールドスネアポリペクトミー(CSP) | ワイヤーの輪(スネア)を病変にかけ、電気を流さずに機械的に切り取る方法です。おおむね10mm未満の、平らな、または軽く盛り上がった病変が対象となります。電気を使わないため熱による周囲組織への影響が少なく、後から出血する事が少ないと報告されています。当院で行う切除の大半がこの方法です。 |
| ホットスネアポリペクトミー(HSP) | スネアに電気を流して切除する方法です。茎のある病変などで選択いたします。 |
| 内視鏡的粘膜切除術(EMR) | 病変の下に生理食塩水などを注入して持ち上げてから、スネアに電気を流して切除する方法です。平坦な病変や、10mmを超える病変が対象となります。 |
| 内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)について | 大きな病変や、粘膜の下の層に及ぶ可能性のある病変に対して行われるESDは、当院では実施しておりません。適応と判断した場合は、治療が可能な連携医療機関へご紹介いたします。当院で完結させる事にこだわり、適応を超えた治療を行う事はいたしません。 |
当院で切除する場合と、
ご紹介する場合
切除するかどうか、そして当院で切除するかどうかは、次の3つを組み合わせて判断いたします。
- 01
病変の大きさと形
おおむね10mm未満の、平らな、または軽く盛り上がった病変は、電気を使わない方法で切除いたします。当院で切除するポリープの大半がこれにあたります。
これより大きな病変には、粘膜の下に生理食塩水などを注入してから切除する方法などを用います。
おおむね20mmを超える病変、表面が広がるように育つ病変、茎が太い病変、がんが疑われる病変については、当院では切除を行わず、連携医療機関へご紹介いたします。無理に当院で完結させることはいたしません。
- 02
電気を使うかどうか
電気を使わない切除は、後から出血することが少ないと報告されています。そのため、お薬を内服されている方や、ペースメーカーを留置されている方でも実施できる場合があります。
一方、電気を使う切除では、お薬や体内の機器への配慮が必要になります。
- 03
患者様のご状態
血液をさらさらにするお薬(抗血小板薬、抗凝固薬)を内服されている方については、お薬の種類、内服されている理由、そして行う切除の方法によって、個別に判断いたします。学会のガイドラインでは、電気を使わない切除については、お薬を続けたまま実施できる場合があることが示されております。
自己判断でお薬を中止することは、脳梗塞や心筋梗塞といった血栓症を引き起こす危険があり、絶対におやめください。
当院には総合内科を専門とする医師が複数名在籍し、循環器を専門とする医師も診療にあたっております。休薬の可否を「処方元にご確認ください」とお返しするのではなく、当院で判断したうえで検査の計画を立てることができます。必要に応じて処方元の医療機関と連絡を取り、方針をすり合わせてまいります。
ペースメーカーや植込み型除細動器を留置されている方も、電気を使わない方法で切除できる病変であれば、当院で対応できる場合がございます。電気を使う切除が必要と判断した場合は、連携医療機関へご紹介いたします。ご予約の際のお願い
ご予約の際には、お薬手帳を必ずお持ちください。内服中のお薬を正確に把握することが、判断の出発点になります。
その場で切除しない場合
以下の場合には、その日の切除を行わず、日を改めるか、連携医療機関へご紹介する事がございます。
- 腸の洗浄が十分でなく、切除した後の観察や止血の妨げになると判断した場合
- 全身のご状態から、その日の切除が適当でないと判断した場合
- 切除の後しばらくの間、遠方へのご出張やご旅行のご予定がある場合
3つ目については、ご予定がお決まりであれば検査の前にお知らせください。移動そのものが出血を起こすわけではありませんが、出血した際に医療機関へすぐかかれない状況は避けていただきたいためです。切除の方針を含めて、ご一緒に考えてまいります。
ポリープを切除した後の過ごし方
大腸ポリープを切除した後は、いくつか生活の上での注意をお願いしております。ただし、その内容は、切除したポリープの大きさ、形、そしてどの方法で切除したかによって大きく変わります。当院では、全ての患者様に同じ制限をお願いする事はいたしません。検査の後に、その方に必要な内容を書面でお渡ししております。
なぜ制限をお願いするのか
制限をお願いする理由は、大きく2つございます。
ひとつは、切除した部位からの出血を起こしにくくするためです。もうひとつは、万一出血が起きたときに、すぐ対応できる状態でいていただくためです。ご出張やご旅行のご予定をお伺いしているのは、後者の理由からです。移動そのものが出血を起こすというよりも、出血した際に医療機関へすぐかかれない場所にいらっしゃると、対応が難しくなるためです。出血の可能性が高い切除を行った場合には、この点を特にご確認させていただいております。
制限の内容は、
切除の方法によって変わります
| 電気を使わずに 切除した場合 | 電気を使って 切除した場合 | 出血の可能性が高いと 判断した場合 | |
|---|---|---|---|
| お食事 | 制限はありません | 当日は消化の良いものを | 2〜3日は消化の良いものを |
| お酒 | 当日と翌日 | 当日と翌日 | 当日と翌日(延長する事があります) |
| 軽い活動・ お仕事 | 当日から | 翌日から | 翌日から |
| 強い運動 | 翌日から | 2〜3日お控えください | 1週間お控えください |
| 入浴 | 当日はシャワー、翌日から湯船 | 当日はシャワー、翌日から短時間 | 2〜3日はシャワー |
| 遠方への お出かけ | 制限はありません | 2〜3日はお控えください | 1週間はお控えください |
| 注意していただく期間 | 2週間 | 2週間 | 2週間 |
どれに当てはまるかは、検査の後に医師からお伝えいたします。ご自身でご判断いただく必要はございません。
食事について、
当院の考え方
「ポリープを切除したので、1週間はおかゆやうどんにしてください」というご案内をよく耳にされると思います。近年、この点を検証した臨床試験がいくつか行われております。10mm未満のポリープを電気を使わずに切除する方法については、国内で行われた無作為化比較試験で、3日間の低残渣食をとった方と、通常の食事に戻した方とで、出血の頻度に差がなかった事が報告されています。
そのため当院では、この方法で切除した場合には、食事の内容を制限していただく事はいたしません。気分が悪くなければ、いつもどおりのお食事に戻していただいて差し支えありません。一方で、飲酒、運動、入浴の制限については、その必要性を直接確かめた臨床試験がまだ十分にございません。
現在、国内でこれらの制限を外して安全性を検証する研究が進められている段階です。当院では、根拠が確かめられている部分については制限を緩め、まだ確かめられていない部分については、切除の内容に応じて必要最小限の期間をお願いする、という考え方をとっております。
出血に気づいたときは
切除した後、2週間ほどは出血の可能性がございます。多くは数日以内ですが、それ以降に起こる事もあります。
次のような場合は、我慢せずご連絡ください。
- 便器の水が赤くなるような出血があった
- 血便が繰り返し出る
- 立ちくらみ、冷や汗、動悸を伴う
- 強い腹痛や発熱がある
紙に少量の血が一度つく程度であれば、多くは様子をみていただいて差し支えありません。ご判断に迷われる場合は、遠慮なくお電話ください。
診療時間外について
切除の内容から出血の可能性が高いと判断した場合には、検査の後に緊急連絡先をお渡ししております。お渡しした方は、時間帯を問わずご連絡ください。 それ以外の方は、診療時間内に当院までご連絡ください。ただし、便器の水が赤くなるような出血が続く、立ちくらみや冷や汗を伴うといった場合は、当院の診療開始をお待ちにならず、お近くの救急外来を受診してください。意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が鈍いといった場合は、ためらわず救急要請をお願いいたします。
お仕事について
デスクワークであれば、翌日から通常どおりで差し支えない事がほとんどです。一方で、重い物を扱うお仕事、長時間の運転を伴うお仕事、遠方への出張が続くお仕事の場合は、期間を空けていただく事がございます。また、鎮静剤を使用した場合は、当日は一日中、車・バイク・自転車の運転ができません。危険を伴う作業や、重要な判断を要する業務も、翌日以降に予定される事をおすすめいたします。お仕事の内容をお聞かせいただければ、いつから通常どおりに戻していただけるかを個別にご案内いたします。
起こり得る偶発症
内視鏡による切除は広く行われている処置ですが、お体への負担がまったくないわけではありません。あらかじめご理解いただきたい事項をお伝えいたします。
| 後から起こる出血 | 切除した部位から、後日出血する事があります。多くは数日以内ですが、2週間ほど経ってから生じる場合もあります。対応については前の項をご覧ください。 |
|---|---|
| 穿孔(せんこう) | きわめてまれですが、腸に穴があく事があります。強い腹痛や発熱を伴います。この場合は入院のうえ治療が必要となるため、連携医療機関と速やかに連携いたします。 |
| 切除後凝固症候群 | 電気を使う切除の後に、腸の壁に炎症が及び、腹痛や発熱を生じる事があります。 |
当院では、どのような症状が出た場合にご連絡いただきたいかを、検査の後に書面でお渡ししております。
病理検査の結果と、
次回の検査時期 Pathology Results
切除した組織は病理検査に提出し、顕微鏡で詳しく調べます。これにより、腺腫であったか、がんが含まれていたか、含まれていた場合はどの深さまで及んでいたかが判明いたします。結果が出るまでには一定の期間を要しますので、後日改めてご来院いただき、内視鏡の画像と病理の結果をご一緒にご覧いただきながらご説明いたします。
そして、当院がここを最も重視している点ですが、ポリープを切除して終わりではありません。大腸ポリープは切除した後も新たに発生する事があり、いつ次の検査を受けるかが、その後の大腸がんの発症を左右いたします。
次回の検査時期は、切除した病変の数、大きさ、病理の結果によって一人ひとり異なります。全員に一律の間隔をお伝えする事はいたしません。なぜその時期なのかという理由とあわせて、個別にご説明いたします。当院は消化器内科のみならず、内科全般を担うかかりつけ医としての診療を行っております。検査だけを受けて終わりにするのではなく、その後の経過を継続して診てまいります。
費用目安(健康保険適用)
大腸ポリープの切除には健康保険が適用されます。以下は自己負担額の目安です。
| 検査・施術内容 | 1割負担 | 3割負担 |
|---|---|---|
| 大腸内視鏡検査 (観察のみ) | 2,500円前後 | 7,500円前後 |
| 大腸内視鏡検査+ 病理組織検査 | 3,000〜5,000円前後 | 10,000〜16,000円前後 |
| 大腸内視鏡+ ポリープ切除 | 7,000〜10,000円前後 | 20,000〜26,000円前後 |
※上記は検査のみの費用です。診察料、下剤のお薬代などは別途かかります。
※切除した場合の金額は、個数や切除の方法によって前後いたします。
※検査前の事前受診の際の診察料・処方料は別途かかります。
なお、内視鏡によるポリープの切除は、ご加入の生命保険や医療保険において手術給付金の支払対象となる場合がございます。給付の可否や必要書類は保険会社ごとに異なりますので、保険会社へ直接ご確認ください。診断書等が必要な場合は当院で作成いたします。
よくあるご質問
当院で行う切除は日帰りで完結いたします。入院の必要はありません。ただし切除の内容によっては、当日の安静や生活上の制限をお願いする事がございます。
大腸の粘膜には痛みを感じる神経がないため、切除そのものによる痛みは通常ありません。検査中の腹部の張りなどがご心配な方には、鎮静剤を使用した検査もご用意しております。
当日と翌日はお控えください。翌々日から差し支えありません。切除の方法にかかわらず同じご案内としております。
多くの医療機関では1週間の禁酒をご案内しておりますが、飲酒の制限が本当に必要かどうかを直接確かめた臨床試験は、実はまだございません。当院では、根拠のない期間を長くお願いする事は避け、念のための期間として翌日までとしております。
出血の可能性が高いと判断した場合には、個別にもう少し長くお願いする事がございます。お薬の種類と切除の方法によって判断が異なります。当院では、抗血栓薬を内服されている方の切除に院内で対応しております。ご予約の際にお薬手帳をご持参のうえ、ご相談ください。自己判断でお薬を中止する事は絶対におやめください。
個数だけで一律に決まるものではなく、大きさ、部位、患者様のご状態を踏まえて検査中に判断いたします。多数の病変がある場合は、複数回に分けて切除する方針とする事がございます。
切除の内容によります。小さなポリープを電気を使わずに切除した場合は、通常お差し支えありません。
一方、出血の可能性が高いと判断した切除を行った場合は、出血が起きたときにすぐ受診できない事が問題になりますので、日程のご相談をさせていただく事がございます。
ご予定がお決まりの場合は、検査の前にお知らせください。はい、土曜日も通常どおり切除を行っております。血液をさらさらにするお薬を内服されている方も同様です。
日曜日は休診となりますので、出血の可能性が高いと判断した場合には、緊急連絡先をお渡ししたうえでお帰りいただいております。
大腸カメラ検査のご予約 CONTACT
大腸カメラは、検査の前に一度ご来院いただき、医師の診察と下剤の処方をお受けいただく必要がございます。ご予約の際は、検査日とあわせて事前受診のご予約もお取りください。
ご予約はWEB・LINE・お電話(0422-29-3876)から承っております。
事前にWEB問診(Symview)へご協力いただきますと、当日がスムーズです。
参考にした主なガイドライン・文献
- 大腸ポリープ診療ガイドライン(日本消化器病学会)https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/CPGL2020_.pdf
- Mochida K, et al. Dietary restriction after cold snare polypectomy of colorectal polyp for prevention of delayed bleeding. JGH Open. 2023;7:777-782.
- Chang LC, et al. Cold versus hot snare polypectomy for small colorectal polyps: a pragmatic randomized controlled trial. Ann Intern Med. 2023;176:311-319.