胸やけ・げっぷが続く方へ
食道裂孔ヘルニアとは
食道裂孔ヘルニアは50歳以上の成人に非常にありふれた疾患ですが、多くは無症状で治療不要です。問題は「胃酸の逆流が起こりやすい状態」になる事で、長期化するとバレット食道(食道がんの前段階)に移行するリスクがあります。胃カメラでヘルニアの程度を評価し、適切な経過観察計画を立てます。
60秒でわかる この記事の要点
- 胃の一部が横隔膜を越えて胸側にずれた状態で、50歳以上の方では珍しくない所見です。
- 多くは無症状で治療を必要としませんが、胃酸が逆流しやすくなり胸やけ・げっぷの原因になります。
- 治療は生活習慣の改善が基本で、症状に応じてPPI・P-CABを内服します。
- 当院ではヘルニアの程度に加え、逆流性食道炎やバレット食道の有無も同時に評価してまいります。
執筆・監修 PROFILE
日本内科学会認定 総合内科専門医/日本消化器病学会認定 消化器病専門医/
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医/日本肝臓学会認定 肝臓専門医/
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
食道裂孔ヘルニアの症状チェック
- 胸やけがする(食後・就寝中・前かがみ時に悪化)
- 酸っぱいものが上がってくる(呑酸)
- げっぷの回数が多い
- 食後に嘔吐しやすい
- 飲み込んだ後に胸のあたりで食べ物が止まる感じがある
- 健診の胸部X線で「胃が胸のあたりに見える」と指摘された
- 肥満・妊娠中・腹圧がかかる仕事をしている(リスク因子)
受診タイミング目安
受診をお勧め
- 胸やけ・逆流症状が2週間以上続く
- 以前に食道裂孔ヘルニアを指摘されたが胃カメラを長期間受けていない
- 胸部X線で「胃が胸に見える」と指摘された
定期胃カメラ
- ヘルニアがあり逆流症状をPPIでコントロール中
- バレット食道を伴う食道裂孔ヘルニアがある(バレット食道の経過観察が重要)
吉祥寺みどり内科・
消化器クリニックを選ぶ理由
ヘルニアの型と程度を内視鏡で評価
食道裂孔ヘルニアは、滑脱型か傍食道型か、またどの程度の大きさかによって、経過観察でよいのか注意が必要なのかが変わります。当院では消化器内視鏡専門医が、反転観察を含めて胃と食道のつなぎ目の状態を確認し、ヘルニアの型と程度を評価いたします。
逆流性食道炎・バレット食道の有無を同じ検査で同時に確認
食道裂孔ヘルニアそのものよりも問題になるのは、胃酸が逆流しやすい状態が続く事です。当院では同じ胃カメラの中で、逆流性食道炎の有無とその重症度、そしてバレット食道への変化がないかまで併せて確認し、経過観察でよいのか、お薬が必要か、定期的な確認が必要かを具体的にご説明いたします。
地域のかかりつけ医として、わかりやすい説明と継続的な診療を
当院は1954年に杉並区宮前で開院し、2023年に吉祥寺へ移転いたしました。地域のかかりつけ医としての矜持を持ち、患者様に分かりやすく丁寧にご説明し、適切な医療をご提供する事で、信頼していただけるよう努めてまいります。胃カメラで見つけて終わりにするのではなく、逆流症状の管理から、逆流性食道炎やバレット食道への進行がないかの定期的な確認まで継続して対応いたします。
食道裂孔ヘルニアに特化した付加価値
食道裂孔ヘルニアと逆流性食道炎は密接に関連しており、「ヘルニアが大きいほど逆流しやすい」という関係があります。当院では胃カメラでヘルニアの大きさ・タイプ・バレット食道の有無を同時に評価し、「経過観察のみでよいか」「薬が必要か」「バレット食道の定期フォローが必要か」を判断します。
院長メッセージ
胃カメラをすると非常に多くの方に食道裂孔ヘルニアが見つかります。「ヘルニアが見つかった」と聞くと驚く患者さんも多いですが、軽度のものは特別な治療が必要な事はほとんどありません。問題になるのは「ヘルニアがある事で胃酸が逆流しやすくなり、長期的に逆流性食道炎→バレット食道→食道がんという連鎖が起こる事」です。
私が毎回の胃カメラで確認するのはヘルニアの程度だけでなく、「バレット食道に変化が起きていないか」「逆流性食道炎の重症度はどうか」という食道全体のリスク評価です。「食道裂孔ヘルニアと言われたが、その後何もしていない」という方は一度胃カメラで現状を確認する事をお勧めします。
佐々木洋(執筆・監修)
消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・
肝臓専門医・総合内科専門医
最終更新:2026年10月
食道裂孔ヘルニアとは
食道裂孔ヘルニアは、胃の一部が横隔膜の食道裂孔という穴を越えて胸腔側に上がってしまい、胃の内容物が食道に逆流しやすくなっている状態です。軽度のものがほとんどで無症状の事も多いのですが、ヘルニアが大きくなると、げっぷや胸やけの原因になる事があります。症状が非常に強い場合には、稀に手術が必要になる事もあります。
| 主な症状 | 軽い食道裂孔ヘルニアではほとんど症状がありませんが、程度が進むと胃の内容物が逆流し、逆流性食道炎に似た症状が出てきます。胸やけがする、酸っぱいものが上がってくる、げっぷの回数が多い、すぐに戻してしまう、といった症状があらわれます。 |
|---|---|
| 原因 | 胸とお腹を分ける横隔膜には、食道が通るための食道裂孔という穴があります。この穴が生まれつき大きかったり、加齢に伴って広がったりすると、お腹の圧力によって胃が胸側へ押し出され、はまり込んでしまいます。お腹の圧力が高まる要因としては、肥満や妊娠などがあります。胃が胸側に上がる事で、胸のレントゲンに胃が写る事もあります。 |
| 検査・診断 | 胃カメラやバリウムの検査で診断が可能です。食道裂孔ヘルニアの有無や程度に加えて、逆流性食道炎やバレット食道を伴っていないかも、同じ胃カメラの際に併せて確認いたします。 |
| 治療 | 症状があるかどうかが重要です。症状がある場合は、逆流性食道炎に準じて生活指導や内服治療を行います。症状が強い場合には、胃が胸側へ押し出されないようにする手術を検討する事があります。 |
| 日常生活で 心がけていただきたい事 | ご自身でできる工夫として、お食事は腹八分目にし、脂質を摂りすぎないようにする事で、胃酸が逆流しにくい状態をつくりましょう。食後すぐに横にならない事、寝るときに頭側を少し高くする事も有効です。肥満のある方は減量が逆流症状の改善につながります。お腹をベルトで締め付けない事、妊娠中はできるだけお腹に圧力がかからない姿勢を心がける事も役立ちます。 |
よくあるご質問
無症状のものは経過観察のみで治療は不要です。症状(胸やけ・逆流)がある場合は生活習慣改善とPPI/P-CABで管理します。手術(腹腔鏡下ニッセン噴門形成術など)が必要になるのは、薬でも症状コントロールができない重症例や、大きな傍食道型ヘルニアで嵌頓(胃が詰まる)リスクがある場合などです。
食道裂孔ヘルニアは「解剖学的な状態」(胃が横隔膜を超えている)で、逆流性食道炎は「粘膜の炎症状態」(胃酸で食道がただれている)です。食道裂孔ヘルニアがあると逆流性食道炎を起こしやすくなりますが、ヘルニアがあっても逆流性食道炎がない方も多く、逆もあります。
食道裂孔ヘルニアがあると胃酸の逆流が起こりやすくなり、長期間の逆流が続くとバレット食道(食道粘膜が胃の粘膜に置き換わる状態)に移行するリスクが高まります。バレット食道があるとまれに食道がんが発生するため、定期的な胃カメラでの経過観察が重要です。
①滑脱型(sliding type):最も一般的(90%以上)。胃の入り口部分が上に滑り出る型で、逆流性食道炎を起こしやすい。②傍食道型(paraesophageal type):胃の噴門部は正常位置のまま胃の一部だけが横隔膜を超える型。逆流は少ないが嵌頓(胃が詰まる)のリスクがあり、大きいものは手術を検討します。
直接的には食道がんのリスクではありませんが、食道裂孔ヘルニア→逆流性食道炎→バレット食道という連鎖で間接的にリスクが高まります。「食道裂孔ヘルニア+長年の逆流症状がある方」は定期的な胃カメラが重要です。
肥満が原因の場合は減量で改善する事があります。加齢による横隔膜の弛緩が原因の場合は自然治癒は困難です。症状のコントロールに重点を置いた管理が基本です。
妊娠中は子宮が大きくなる事で腹圧が上昇し、食道裂孔ヘルニア・逆流症状が悪化しやすくなります。就寝時の頭部挙上・食後2〜3時間は横にならないなどの生活習慣改善が基本です。薬が必要な場合は産婦人科主治医と相談しながら対応します。
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