慢性の腹痛・下痢・体重減少・
繰り返す痔瘻 クローン病の診断と長期管理
クローン病は若い男性に多く、口腔から肛門まで消化管のどこにでも炎症が起こる指定難病です。若い男性に繰り返す痔瘻(じろう)があった場合、クローン病の可能性を考える事が重要です。大腸カメラ・採血・栄養評価を組み合わせ、患者様に合った長期管理プランを立てます。
60秒でわかる この記事の要点
- 口から肛門まで消化管全体に炎症が起こる指定難病で、若い男性に多く見られます。
- 慢性の腹痛・下痢・体重減少に加え、繰り返す痔瘻が最初のサインになる事があります。
- 治療は薬物療法と栄養療法(エレンタールなど)が両輪で、喫煙は病状を悪化させます。
- 当院では管理栄養士と連携した栄養療法に対応し、重症例は専門施設へご紹介してまいります。
執筆・監修 PROFILE
日本内科学会認定 総合内科専門医/日本消化器病学会認定 消化器病専門医/
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医/日本肝臓学会認定 肝臓専門医/
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医/難病指定医(東京都知事指定)
症状チェック
- 慢性的な腹痛(特に右下腹部)と下痢が続く
- 体重が減少し、栄養状態が悪い
- 繰り返す痔瘻(肛門周囲膿瘍・瘻孔)がある
- 20〜30代の男性で上記の症状がある(クローン病は若年男性に多い)
- 発熱・倦怠感・貧血がある(活動期)
- 大腸カメラで腸の狭窄・深い潰瘍を指摘された
- 関節痛・目の痛み(虹彩炎)・口内炎が消化器症状と同時にある
受診タイミング目安
早めに受診を
- 腹痛が激しく食事がとれない・発熱と腹痛が強い(狭窄・穿孔の可能性)
受診をお勧め
- 慢性的な下痢・腹痛・体重減少が3ヶ月以上続いている
- 若い男性で繰り返す痔瘻がある
- クローン病と診断されているが最近症状が悪化している
定期受診
- 寛解維持中の定期管理(炎症が抑えられている確認)
吉祥寺みどり内科・消化器
クリニックを選ぶ理由
大腸カメラと採血で診断を進め、
小腸の評価は連携施設と
分担いたします
クローン病は小腸にも病変が及ぶ疾患です。当院では大腸カメラによる回腸末端までの観察と組織生検、採血(CRP・アルブミン・血算)、便中カルプロテクチンなどで評価を進めます。小腸造影・カプセル内視鏡・CTエンテログラフィーといった小腸の精密検査が必要な場合は、連携する専門医療機関へご紹介し、結果をふまえて当院で治療を継続いたします。
お薬と栄養の両輪で、
長期の管理を組み立ててまいります
クローン病の治療は、薬物療法(5-ASA製剤・ステロイド・免疫調節薬・生物学的製剤)と栄養療法が両輪です。当院には管理栄養士が在籍しており、成分栄養剤(エレンタール等)の使い方や、脂質・食物繊維の調整といった具体的な食事の組み立てを、外来栄養食事指導として医師の診察と一体で行っています。生物学的製剤の導入が必要な場合は連携施設と分担いたします。
地域のかかりつけ医として、
わかりやすい説明と継続的な診療を
当院は1954年に杉並区宮前で開院し、2023年に吉祥寺へ移転いたしました。地域のかかりつけ医としての矜持を持ち、患者様に分かりやすく丁寧にご説明し、適切な医療をご提供する事で、信頼していただけるよう努めてまいります。診断して終わりにするのではなく、お薬と栄養の調整、合併症の確認、医療費助成の更新手続きまで継続して対応いたします。
院長メッセージ
クローン病は比較的まれな疾患ですが、特に気をつけていただきたいのが「若い男性の繰り返す痔瘻」です。肛門科で痔瘻の治療を繰り返しても再発する場合、クローン病が背景にある可能性があります。クローン病は消化管のどこにでも炎症が起こる疾患で、正確な診断には大腸カメラだけでなく、小腸の評価も必要な事があります。根本的な治療法はありませんが、薬物療法と栄養療法を組み合わせる事で、多くの患者様が通常の生活を送る事ができます。自己判断で治療を中断せず、定期的な管理を続ける事が長期的な生活の質を守る最善策です。
佐々木 洋
消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・肝臓専門医・総合内科専門医
最終更新:2026年10月
クローン病とは
クローン病は、小腸や大腸を中心に、口から肛門までのあらゆる消化管に炎症を起こし、びらんや潰瘍をつくる原因不明の病気です。若い方に多く、男性にやや多く、患者数は増加しています。潰瘍性大腸炎とあわせて炎症性腸疾患と総称され、ともに指定難病です。肛門に痔瘻を起こす事もよくあり、痔瘻からクローン病が見つかる事も珍しくありません。症状が落ち着く寛解期でも、自覚症状のないまま進行する事が多いため、治療を続け定期的な検査を受ける事が必要です。
| 主な症状 | 主な症状は腹痛と下痢です。炎症が強くなると発熱、下血、体重減少、倦怠感、貧血を伴う事があります。潰瘍ができたり治ったりを繰り返すうちに腸が細くなる狭窄を起こしたり、炎症が腸の壁全体に及んで穴があいたり(穿孔)、膿のたまり(膿瘍)をつくったりする事もあります。腸以外にも、痔瘻・肛門周囲膿瘍(若い男性の痔瘻はクローン病を疑います)、関節炎、虹彩炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症などの合併症を起こす事があります。 |
|---|---|
| 原因 | 詳しい原因は不明です。遺伝的な素因を背景に、食事や腸内細菌に対して免疫が過剰に反応する事で発症・悪化すると考えられ、遺伝要因と環境要因が複合的に関わっているとされます。 |
| 検査・診断 | 大腸カメラや小腸の検査で、飛び飛びにできる炎症や縦走潰瘍などを確認し、組織検査とあわせて診断します。肛門病変(痔瘻)から見つかる事もあります。 |
| 治療 | 根本的な治療はなく、炎症を抑えて症状や合併症をできるだけ起こさない事が目標です。基本の内服薬は5-ASA製剤で、ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤を用いて寛解を維持します。あわせて、動物性脂肪や繊維質の多い食物を控える栄養療法も重要で、炎症が強い時は消化態栄養剤や点滴(中心静脈栄養)で腸を休ませます。狭窄・穿孔・膿瘍などには手術が必要になる事が多く、これらの専門的な治療は連携施設と協力して対応します。 |
| 日常生活で 心がけていただきたい事 | 喫煙はクローン病の発症や悪化に影響するため、禁煙が必須です。寛解期でも自覚症状のないまま進行する事があるため、自己判断で治療を中断せず、定期的な検査で状態を把握する事が大切です。 |
よくあるご質問
はい。クローン病は厚生労働省の指定難病です。重症度基準を満たす場合に特定医療費助成制度の対象となります。申請には医師の診断書等が必要ですので、診察時にご相談ください。
潰瘍性大腸炎は大腸のみに炎症が起き、粘膜表面だけが障害されます。クローン病は口腔から肛門まで消化管全体に炎症が起こり、腸壁全層に及ぶため、狭窄・穿孔・膿瘍・痔瘻などの合併症が多い点が大きな違いです。
消化態栄養剤(エレンタールなど)を摂取する事で腸を極力休ませ、炎症を抑える治療法です。クローン病では薬物療法と同等以上の寛解導入効果があると報告されており、特に活動期には重要な治療選択肢です。飲み方や量については担当医の指導に従ってください。
はい。痔瘻(肛門周囲膿瘍・痔瘻)はクローン病の肛門病変として現れる事があり、腸の症状より先に発症する事もあります。20〜30代の男性で繰り返す痔瘻がある場合は、クローン病の可能性を考え消化器内科を受診する事をお勧めします。
はい。喫煙はクローン病の発症・再発・重症化リスクを高める事が明確に示されています。クローン病と診断された方には禁煙を強くお勧めします。潰瘍性大腸炎と異なり、クローン病では喫煙が病状を悪化させる方向に働きます。
活動期には低脂肪・低残渣・高エネルギーの食事が基本です。動物性脂肪・食物繊維の多い食品(きのこ・もやし・海藻類)は悪化させる可能性があります。寛解期は通常の食事でよい事が多いですが、個人差があるため担当医・管理栄養士にご相談ください。