検査では異常がないのに続く
腹痛・下痢・便秘 それはIBSかもしれません
IBSは大腸がん・潰瘍性大腸炎ではない事を確認したうえで診断する疾患です。まず内視鏡・採血・超音波で器質的疾患を除外し、あなたの症状パターン(下痢型・便秘型・混合型)に合った治療を組み立てます。「重篤な病気ではない」と理解する事が治療の第一歩です。
60秒でわかる この記事の要点
- 検査で異常がないのに腹痛・下痢・便秘を繰り返す病気で、日本人の約10人に1人が該当するとされます。
- 下痢型・便秘型・混合型に分類され、タイプによって有効な薬が異なります。
- 診断は大腸カメラで大腸がんや炎症性腸疾患などを除外した上で確定します。
- 当院では除外診断から症状パターン別の薬物療法、栄養療法のご相談まで対応してまいります。
執筆・監修 PROFILE
日本内科学会認定 総合内科専門医/日本消化器病学会認定 消化器病専門医/
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医/日本肝臓学会認定 肝臓専門医/
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
症状チェック
- 排便すると腹痛が楽になる
- 下痢と便秘を交互に繰り返す(混合型)
- 毎朝出勤前・試験前・大事な場面でお腹が痛くなる(ストレスで悪化)
- 検査をしても「異常なし」と言われた
- 感染性胃腸炎・食中毒が回復した後から症状が続いている(感染後IBS)
- 腹鳴(お腹がグルグル鳴る)が気になる・恥ずかしい
- 便の形状が毎回異なる(水様便・コロコロした便・細い便)
受診タイミング目安
早めに受診を
- 血便・体重減少・夜中に症状で目が覚める(大腸がん・炎症性腸疾患の可能性)
受診をお勧め
- 腹痛・下痢・便秘が6ヶ月以上繰り返している
- 大腸カメラを一度も受けた事がない(40歳以上)
- 血便が混じる(IBSではなく器質的疾患の可能性)
定期受診
- IBSと診断されており薬でコントロールできている
吉祥寺みどり内科・消化器
クリニックを選ぶ理由
大腸カメラによる器質的疾患の除外診断からIBS確定診断まで一貫対応
IBSの確定診断には、大腸がん・潰瘍性大腸炎・クローン病・感染性腸炎などを除外する事が必要です。消化器内視鏡専門医が大腸カメラ(大腸内視鏡)を実施し、「重篤な病気ではない」事を確認したうえでIBSとして治療を開始します。
症状パターン別(下痢型・便秘型・混合型)の個別対応
IBSは症状パターンによって有効な薬が異なります。下痢型にはイリボーやポリフル、便秘型にはリナクロチド、混合型にはトリメブチンなど、患者様の症状に合わせた薬物療法を行います。一つの薬が効かなくても、患者様と二人三脚で最適な治療を探します。
地域のかかりつけ医として、
わかりやすい説明と継続的な診療を
当院は1954年に杉並区宮前で開院し、2023年に吉祥寺へ移転いたしました。地域のかかりつけ医としての矜持を持ち、患者様に分かりやすく丁寧にご説明し、適切な医療をご提供する事で、信頼していただけるよう努めてまいります。検査で重い病気がない事を確認した後も、生活習慣の見直しからお薬の調整まで、その方に合う治療を二人三脚で探しながら継続して対応いたします。
院長メッセージ
「検査をしたら何もなかった」と言われたのに、腹痛と下痢・便秘を繰り返す、そのような患者様が多く来院されます。過敏性腸症候群(IBS)は消化器疾患の中でも非常に一般的で、外来受診者の4〜5割はこのような機能性の腸の問題を抱えていると言われています。重篤な病気ではありませんが、毎朝の通勤・大切な場面でのお腹の不調は、生活の質を著しく下げます。私が最初に行う事は「IBS以外の病気がない事」を内視鏡・採血・超音波で確認する事です。その安心感が治療の出発点になります。患者様に合った薬を一緒に見つけていきましょう。
佐々木 洋
消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・肝臓専門医・総合内科専門医
最終更新:2026年10月
過敏性腸症候群(IBS)とは
過敏性腸症候群は、腸そのものには原因が見当たらないのに、慢性的に腹痛や腹部の不快感があり、下痢や便秘などの便通異常を伴う病気です。命にかかわる病気ではありませんが、生活の質を大きく下げるため、患者様の不安や苦痛は大きいものです。10人に1人ほどにみられ、ストレスや感染性腸炎をきっかけに発症する事が多いとされます。大腸カメラやCT、採血で明らかな異常が見つからないのも特徴です。機能性ディスペプシアや胃食道逆流症、気分の落ち込みなどを合併している方も少なくありません。
| 主な症状 | 主な症状はお腹の痛みです。痛む場所は人それぞれで、毎回変わって特定できない事も少なくありません。排便で軽くなる事が多く、男性は下痢型、女性は便秘型が多い傾向で、下痢と便秘を繰り返す方もいらっしゃいます。 |
|---|---|
| 原因 | はっきりした原因はわかっていませんが、ストレスや感染がきっかけになると考えられています。腸の蠕動運動は脳が調整していますが、不安などのストレスでこの調整が乱れると、腸が動きすぎたり知覚過敏になったりします。感染性腸炎のあとに、腸内細菌の変化とともに同じような状態が起こる事もあります。お腹の痛みがさらに不安を呼ぶ悪循環に陥っている事も少なくありません。 |
| 検査・診断 | 排便に関わるお腹の痛みが、最近3か月で少なくとも週1日以上あり、半年以上続いている事が一つの目安です。大切なのは、IBS以外の病気が隠れていないかを確認する事で、これまで大腸カメラや超音波、採血を受けた事がない方には検査もあわせて行います。重い病気ではないと知っていただく事自体が治療の一歩になります。 |
| 治療 | まずは生活習慣の改善から始め、次に薬物療法を行います。腸の動きを整えるお薬を基本に、便秘型には排便を促すお薬、下痢型には下痢を抑えるお薬を用い、なかなか改善しない場合は抗不安薬などを使う事もあります。焦らず適切なゴールを定め、患者様に合う治療を二人三脚で探してまいります。 |
| 日常生活で 心がけていただきたい事 | 3食を規則正しくとり、暴飲暴食を避けましょう。脂質の多い食事やコーヒー、アルコール、香辛料は便通を乱しやすく、便秘型の方は食物繊維や発酵食品(ヨーグルト等)が役立つ事があります。睡眠と休養、禁煙も大切です。 |
よくあるご質問
大腸がんとIBSは症状(腹痛・下痢・便秘)が似る事があります。決定的な違いは大腸内視鏡検査(大腸カメラ)です。IBSは内視鏡で粘膜に異常が見られませんが、大腸がんは内視鏡でポリープ・腫瘍として確認できます。40歳以上の方や血便・体重減少がある方は一度大腸カメラ検査をお勧めします。
ローマ基準IV(2016年)に基づき、硬便の割合が多い場合は便秘型(IBS-C)、軟便・水様便が多い場合は下痢型(IBS-D)、両方が混在する場合は混合型(IBS-M)に分類されます。タイプによって有効な薬が異なるため、正確なタイプ判定が治療のポイントです。
FODMAPとは発酵性の糖類(乳糖・果糖・フルクタンなど)の総称で、IBS患者に低FODMAP食(これらを減らした食事)が有効な事が報告されています。小麦・牛乳・リンゴなどを減らす事で症状が改善する方もいます。ただし、なかなか実行が難しいのも事実です。詳しくは担当医または管理栄養士にご相談ください。
「感染後IBS(PI-IBS)」として知られており、ノロウイルスやカンピロバクターなどの腸炎後に発症する事があります。感染による腸内環境の変化・腸粘膜のバリア機能低下・腸の知覚過敏が原因と考えられています。感染後2〜3ヶ月以上症状が続く場合はご相談ください。
はい。腸と脳は「腸脳相関」と呼ばれる密接な連携があり、ストレスや不安がIBSを悪化させます。通常の消化器系薬でコントロールが難しい場合は、少量の抗不安薬や抗うつ薬が症状を改善する事があります。
完全に症状が消える方もいますが、慢性的な経過をたどる方も少なくありません。生活習慣の改善(食事・睡眠・ストレス管理)と適切な薬物療法を組み合わせる事で、症状をコントロールしながら生活の質を改善する事が現実的な目標です。