左脇腹の急な痛みの後に
血便が出た方へ 虚血性腸炎の診断と治療
虚血性腸炎は大腸への血流が一時的に途絶える事で起こります。便秘・脱水・生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症)のある中高年女性に多い疾患です。多くは保存的治療で回復しますが、ごくまれに腸管壊死などの重症例があるため、腹痛を伴う血便は必ず医師にご相談ください。
60秒でわかる この記事の要点
- 大腸への血流が一時的に途絶えて起こる病気で、突然の左下腹部痛の後に血便が出ます。
- 便秘・脱水・高血圧・糖尿病のある中高年の女性に多く見られます。
- 多くは安静と水分補給により数日から2週間程度で回復しますが、まれに腸管壊死を起こします。
- 当院では大腸カメラで縦走潰瘍を確認し、大腸がんや感染性腸炎と鑑別してまいります。
執筆・監修 PROFILE
日本内科学会認定 総合内科専門医/日本消化器病学会認定 消化器病専門医/
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医/日本肝臓学会認定 肝臓専門医/
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
症状チェック
- 突然の左脇腹〜左下腹部の激しい痛み
- 痛みの後に赤褐色〜鮮血の血便・血性下痢が出た
- 痛みは数時間続き、波がある
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病がある
- 便秘傾向がある・最近便秘が続いていた
- 脱水(激しい運動・下痢・発汗)の後に症状が出た
- 中高年の女性(虚血性腸炎のリスクが高い)
受診タイミング目安
すぐに救急受診を
- 腹痛が非常に激しく(お腹全体・動けない)
- 血便が大量で血圧が下がる感じがある
- 痛みが全く引かない(腸管壊死の可能性)
早めの受診を
- 左下腹部の激しい痛みの後に血便が出た(量に関わらず)
- 痛みは少し楽になってきたが、血便が続いている
受診を検討してください
- 症状は軽度で、血便の量も少なく、痛みも治まってきた
吉祥寺みどり内科・消化器
クリニックを選ぶ理由
左下腹部の痛みと血便の原因を
大腸カメラで鑑別診断
同様の症状は感染性腸炎・潰瘍性大腸炎・大腸癌・憩室出血でも起こります。消化器内視鏡専門医が大腸カメラで縦走する潰瘍・びらんを確認し、虚血性腸炎と他疾患を正確に鑑別します。同じ「腹痛の後に血便」という症状でも、腸間膜の動脈が詰まる急性腸間膜虚血(上腸間膜動脈閉塞症など)は緊急手術を要する全く別の病気です。心房細動や動脈硬化のある方、痛みの強さに比べて診察所見が乏しい方では、この可能性を必ず念頭に置いて評価いたします。
重症度評価と入院基準の判断
軽症は外来治療(安静・水分補給)で回復しますが、広範囲の粘膜壊死や重症例は入院が必要です。採血・腹部エコー・大腸カメラで重症度を評価し、入院が必要かどうかを適切に判断します。
地域のかかりつけ医として、
わかりやすい説明と継続的な診療を
当院は1954年に杉並区宮前で開院し、2023年に吉祥寺へ移転いたしました。地域のかかりつけ医としての矜持を持ち、患者様に分かりやすく丁寧にご説明し、適切な医療をご提供する事で、信頼していただけるよう努めてまいります。血便の原因を大腸カメラで見極める事から、多くを占める一過性型の経過観察、再発予防のご相談まで継続して対応いたします。
院長メッセージ
「急に左のお腹が痛くなり、その後に血便が出た」、これが虚血性腸炎の典型的な症状です。救急車で救急病院に受診される方も少なくありません。多くの場合は腸の血流が一時的に悪くなっただけで、安静と水分補給で数日〜10日程度で回復します。しかし、全く同じ症状が腸管壊死(腸に血液が届かず壊死する)でも起こり、こちらは外科的な緊急手術が必要です。採血・超音波・大腸カメラで迅速に評価する事が最も重要です。「左のお腹が急に痛くなって血便が出た」という症状は、自己判断せず必ず医師に相談してください。
佐々木 洋
消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・肝臓専門医・総合内科専門医
最終更新:2026年10月
虚血性腸炎とは
虚血性腸炎は、大腸の中でも特にお腹の左側から左下にある下行結腸とS状結腸の血液の流れが一時的に悪くなり、十分な酸素が大腸に届かなくなる事で、腸の粘膜がダメージを受け、びらんや潰瘍を起こしてしまう病気です。中高年の女性に比較的多くみられます。
| 主な症状 | 左脇腹から左下腹部に痛みを感じ、その後に赤褐色から鮮血の血液が混じった下痢を起こします。痛みは数時間ほど続く事が多く、強い痛みのため救急車で搬送される方も少なくありません。軽症であれば、強い痛みは1〜2日でおさまります。 |
|---|---|
| 原因 | 大腸への血液の流れが一時的に滞る事が原因ですが、その最も多いきっかけは便秘です。また、脱水で血液が濃くなる事や、血管が細くなりやすい高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病をお持ちの方も、虚血性腸炎を起こしやすい傾向にあります。 |
| 検査・診断 | 痛みが出て間もない時期であれば、大腸カメラで虚血による炎症を起こした粘膜を確認する事ができます。粘膜が赤くただれ、腸の長軸に沿って縦走する潰瘍がみられるのが特徴です。粘膜の炎症は膝の擦り傷のように時間をかけて治り、治癒したあとは内視鏡でもわからなくなります。腹痛を伴う血便は他の病気でも起こりますので、自己判断せず検査で確かめる事が大切です。 |
| 治療 | 痛みが軽く出血も少ない軽症の場合は、そのまま経過を見ていくうちに治っていく事が多いです。痛みが強く出血量が多い場合は、広範囲に粘膜の潰瘍を起こしている事があり、入院して大腸を休ませなければならない事もあります。腸の粘膜の潰瘍は膝の擦り傷などと同じで治るのに時間がかかり、特効薬はなく、数日から10日前後をかけて徐々に良くなっていきます。なお、虚血性腸炎は一時的な血流の障害ですが、似た症状で腸の血管が完全に詰まってしまう病気があり、その場合は非常に重篤で手術が必要になる事がほとんどです。腹痛を伴う血便は自己判断せず、医療機関を受診してください。 |
| 日常生活で 心がけていただきたい事 | 便秘のある方や、高血圧・糖尿病をお持ちの方は起こしやすい傾向にあります。特に便秘は、生活習慣の見直しや内服治療で改善できる事も多いので、日頃から便通を整えておく事が予防につながります。とはいえ誰にでも起こりうる病気ですので、下腹部や左側腹部に痛みを伴う血便が出た時には、医療機関を受診してください。 |
よくあるご質問
軽症では痛みは数時間〜1日で落ち着き、粘膜の炎症は数日〜2週間で回復します。重症では入院が必要で、腸を完全に休ませる絶食・点滴管理が必要になる事があります。
再発する事があります。便秘・脱水・高血圧・糖尿病の管理が再発予防に重要です。特に便秘は便秘薬で改善できるため、虚血性腸炎を起こした方には積極的な便秘治療をお勧めします。
大腸カメラで鑑別できます。虚血性腸炎は大腸の長軸に沿って縦走する潰瘍が特徴で、大腸がんとは形態が大きく異なります。ただし、血便の原因確認には必ず内視鏡検査が必要です。
高血圧・糖尿病自体が血管を細くするため、虚血性腸炎のリスク因子です。また、一部の薬(便秘を起こす薬)が間接的に関与する場合もあります。服用中の薬を医師にお伝えください。
多くは手術不要ですが、腸管壊死・穿孔・広範囲の壊死を起こした場合は外科手術が必要になります。このような重症例は比較的まれですが、「激しい腹痛が全く引かない」場合はすぐに救急受診をお勧めします。