脂肪肝で本当に減らすべきなのは、
脂肪ではなく糖質です
「脂肪肝」という名前のせいで、脂っこい物を控えれば良くなると思っていらっしゃる方がとても多いのですが、外来でお話を伺うと、原因は別の所にある事がほとんどです。肝臓にたまる中性脂肪の多くは、食事から摂った糖質が使いきれずに作り替えられたものです。ですから、脂肪肝で最初に見直していただきたいのは、脂質ではなく糖質(炭水化物)です。そしてこの事は、血糖値や糖尿病と切り離せない関係にあります。
60秒でわかる この記事の要点
- 脂肪肝は、肝臓の細胞の5%以上に脂肪がたまった状態です。健診を受けた方の20〜30%に見つかります。
- 原因として最も大きいのは、脂質ではなく糖質(炭水化物)の摂りすぎです。
- 脂肪肝になるとインスリンが効きづらくなり、糖尿病になりやすくなります。その逆も同じです。
- 体重を5%減らすと肝臓の脂肪が、7%で炎症が、10%で線維化まで改善が期待できます。
こんな方は、脂肪肝の可能性があります CHECK
- 健診で AST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTP の異常を指摘された
- 腹部超音波検査で脂肪肝と言われた
- 糖尿病、または血糖値やHbA1cが高いと言われている
- 高血圧である
- 脂質異常症である
- 20歳の頃から体重が10kg以上増えた
- 甘い飲み物を毎日のように飲む
脂肪肝とは
脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が過剰にたまった状態をいいます。医学的には、肝臓の細胞のうち脂肪が沈着している細胞の割合が5%以上になった状態を脂肪肝といいます(かつては30%以上を目安とする定義も用いられていました)。自覚症状はほとんどなく、健診で AST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTP の上昇を指摘されて見つかる事が大半です。
肝臓の病気の中でも脂肪肝の占める割合は大きく、健診を受けた方の20〜30%に認められます。男性に多く、30歳代から50歳代では20%以上に見られます。女性は40歳代後半から増え始め、50歳代後半には男性とほぼ同じ15%程度に達します。
ALTが30を超えていたら。
日本肝臓学会「奈良宣言2023」
2023年、日本肝臓学会は「健康診断の血液検査でALT(GPT)が30 U/Lを超えていたら、まずかかりつけ医を受診してください」という提言を発表いたしました。「奈良宣言2023」と呼ばれています。
健診票の基準値は施設ごとに設定されており、40や50を上限としている所も少なくありません。しかし肝臓の病気という観点から見た正常値は30未満と考えられています。つまり「基準値内」と書かれていても、慢性肝臓病が隠れている可能性があるという事です。
30を超えたからといって、すぐに治療が必要という意味ではありません。治療が必要な方を早い段階で見つけ出すための入口です。
出典:日本肝臓学会「奈良宣言2023」
(第59回日本肝臓学会総会・2023年6月)
https://www.jsh.or.jp/medical/nara_sengen/ippan.html
なぜ脂肪肝になるのか。
原因は脂質ではなく糖質です
食事から摂ったエネルギーが、体で使う量を上回ると、余った分は中性脂肪として肝臓にたまっていきます。そのエネルギーの中心が糖質です。食べた糖質(炭水化物)はブドウ糖に分解されて吸収され、体を動かすために使われます。しかし、食べ過ぎや運動不足で余ってしまうと、中性脂肪に作り替えられて肝臓に蓄えられます。肝臓だけでなく、内臓脂肪や皮下脂肪としても蓄えられ、肥満につながります。
また、アルコールも脂肪肝の原因になります。アルコールは1gあたり約7kcalとエネルギー量が高く、さらに肝臓で分解される過程で中性脂肪が作られるため、これが肝臓に蓄積して脂肪肝を引き起こします。糖質そのものではありませんが、余ったエネルギーが中性脂肪に変わるという点では同じ経路をたどります。
特に注意していただきたいのが、
甘い飲み物です
糖質の中でも、液体で摂る果糖は肝臓に脂肪をためやすい事が知られております。清涼飲料水やスポーツドリンクに含まれる果糖ブドウ糖液糖は、脂肪肝のリスクとして無視できません。
外来では、痩せていらっしゃるのに脂肪肝という方にもお会いいたします。そうした方が甘い飲み物をやめただけで、脂肪肝が良くなる事は珍しくありません。
20歳の頃から10kg以上増えた方
今の体重そのものより、20歳の頃からどれだけ増えたかの方が、脂肪肝との関係では重要です。10kg以上増えている方は、たとえ現在の体格が標準の範囲でも、肝臓に脂肪がたまっている可能性があります。急激に体重が増えた時期がある方も同様です。
脂肪肝と血糖値、
糖尿病との関係
脂肪肝と糖尿病は、切り離して考える事ができません。両方向に影響し合っているためです。
まず、糖質を摂りすぎる方は血糖値が上がりやすく、糖尿病になりやすくなります。そして脂肪肝になると、今度はインスリンというホルモンが効きづらくなります。インスリンは血糖値を下げる大切なホルモンですので、これが効きづらくなると血糖値が下がりにくくなり、糖尿病に近づいていきます。
ですから、糖尿病にならないようにする事は、脂肪肝にならないようにする事とほとんど同じ意味を持ちます。逆に、脂肪肝を良くしていく事は、糖尿病の予防にもつながります。
健診で一緒に
見ていただきたい数値 DATA
- 空腹時血糖 100mg/dL以上
- HbA1c 5.7%以上
- 中性脂肪 150mg/dL以上
- HDLコレステロール 男性40mg/dL以下、女性50mg/dL以下
- 血圧 130/85mmHg以上
- BMI 23以上、または腹囲が男性94cm超・女性80cm超
これらは後述する分類でも用いる項目です。肝機能の異常とこれらが重なっている場合、単なる脂肪肝として様子を見るのではなく、一度きちんと調べておく事をおすすめいたします。
脂肪肝の分類
脂肪肝は、心臓や血管に関わる危険因子の有無と、飲酒量によって分類されます。
危険因子とは、前の項で挙げた血糖・血圧・中性脂肪・HDL・体格の5項目を指します。女性の基準が男性より低いのは、同じ量を飲んでも肝臓への負担が大きくなりやすいためです。
| MASLD (代謝機能障害関連脂肪性肝疾患) | 危険因子が1つ以上あり、飲酒量が純アルコールで男性30g/日未満、女性20g/日未満 |
|---|---|
| MetALD (代謝機能障害アルコール関連肝疾患) | 危険因子が1つ以上あり、飲酒量が男性30〜60g/日、女性20〜50g/日 |
| ALD (アルコール関連肝疾患) | これを超える飲酒量 |
MASH
(代謝機能障害関連脂肪肝炎)
MASLDの中には、単に脂肪がたまっているだけでなく、肝臓に炎症が起きている方が含まれます。この状態をMASHといいます。炎症が繰り返されると肝臓は線維化して硬くなり、進行すると肝硬変や肝がんにつながる事があります。
問題は、脂肪肝とMASHを採血と腹部超音波検査だけで見分けるのが難しいという点です。ご自身が単なる脂肪肝なのか、MASHなのかを把握しておく事が大切だと考えております。
痩せているのに脂肪肝と
言われた方へ
体格が標準あるいは痩せ型でも脂肪肝になる方がいらっしゃいます。甘い飲み物の習慣が背景にある事もありますが、体質が関わっている場合もあります。MASHになりやすいPNPLA3という遺伝子の型が知られており、日本人はこの型を持つ方が多く、欧米の方に比べて脂肪肝になりやすい事が分かっております。 太っていないから大丈夫、とは限りません。
NAFLD・NASHと
MASLD・MASHは違うのですか Disease Differences
2023年に、欧米の肝臓関連学会を中心とした国際的な合意により、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)へ、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)へと名称が変更されました。
日本語の正式名称は、日本消化器病学会・日本肝臓学会が2024年8月に定めています。NAFLDの「F」はFatty(脂肪)のFですが、この言葉が偏見を生むのではないかという考えから見直されました。また「非アルコール性」という否定形の定義では病気の本質が伝わりにくいという指摘もありました。
もともとNAFLDはメタボリックシンドロームの方に起こりやすく、糖尿病や脂質異常症に合併しやすい事から、代謝機能障害に関連した脂肪性肝疾患という意味でMASLDと名づけられています。
さらにMASLDでは、肝臓に脂肪が溜まっているだけでなく、心血管代謝リスク因子を1つ以上お持ちである事が診断の条件になりました。「アルコールを飲まない脂肪肝」という除外による定義から、「代謝の異常を伴う脂肪肝」という積極的な定義へ変わったのが最大のポイントです。 2026年4月には「MASLD診療ガイドライン(改訂第3版)」が発刊され、当院ではこれに沿って診療を行ってまいります。
脂肪肝の検査
まず採血で肝機能を確認し、肝炎ウイルスやお薬による肝障害、その他の肝臓の病気でない事を確かめます。 次に腹部超音波検査を行います。痛みなく行える検査で、肝臓に脂肪がたまっているかどうかを客観的に判断できます。ただし超音波検査だけでは、脂肪がどのくらいの量なのか、肝臓が硬くなり始めていないかまでは分かりません。
FIB-4 index。採血の数値から
線維化を見積もる
年齢・AST・ALT・血小板数という、健診でも測定される4つの値から計算できる指標です。追加の検査をしなくても、肝臓の線維化が進んでいる可能性を大まかに見積もる事ができます。
| 1.3 未満 | 線維化が進んでいる可能性は低いと考えられます |
|---|---|
| 1.3〜2.67 | 判断がつかない領域です。フィブロスキャンによる評価をお勧めいたします |
| 2.67 以上 | 線維化が進んでいる可能性があり、精密な評価が必要です |
当院では、まずFIB-4indexでリスクを見積もり、判断がつかない方・高い方にフィブロスキャンで実際の硬さを測るという二段階の流れで評価しております。この考え方はMASLD診療ガイドライン(改訂第3版)でも中心に置かれています。健診結果をお持ちいただければ、その場でおおよその見積もりをお伝えする事も可能です。
※65歳以上では判定が高めに出やすいなど年齢の影響を受けるため、数値のみで判断せず診察所見とあわせて評価いたします。
フィブロスキャン
そのうえで、肝臓の硬さと脂肪の量を数値で測るフィブロスキャンを行います。痛みも被曝もなく、10分ほどで終わります。採血・腹部超音波検査とあわせて、同じ日に結果までご説明する事が可能です。
肝生検について
MASHかどうかを最も正確に判断する方法は、今も肝生検です。ただし入院を伴い、針を刺す負担がありますので、すべての方に行う検査ではございません。当院では肝生検は行っておらず、必要と判断した場合には連携する医療機関へご紹介いたします。
脂肪肝の治療
治療の中心は生活習慣の見直しです
食事と運動による減量が基本になります。どれだけ体重を減らせたかによって、期待できる効果が段階的に変わってまいります。おおよその目安として、体重の5%が減ると肝臓に溜まった脂肪そのものが減り、7%が減ると肝臓の炎症が改善し、10%が減ると線維化(肝臓が硬くなる変化)の改善まで期待できると報告されています。体重70kgの方であれば、5%は約3.5kg、7%は約5kg、10%は約7kgです。いきなり10%を目指す必要はありません。まず5%、次に7%と段階を踏んでいただく方が、結果として長く続きます。
食事では、脂質より先に糖質を見直してください。体はまず糖質をエネルギーとして使いますので、糖質の摂取を減らすと、足りない分を肝臓にたまっていた中性脂肪から補うようになります。その結果、肝臓の脂肪が減り、肝機能が改善してまいります。
筋肉を増やす事にも意味があります
筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、使うエネルギーが増えます。体を大きくする必要はありません。太ももや背中など、大きな筋肉を意識して使う運動を続けていただく事が大切です。
薬について
脂肪肝の治療の中心は、今も減量を含む生活習慣の改善です。まず、この点に変わりはございません。そのうえで、2026年6月、MASHに対する治療薬が国内で初めて承認されました。ただし、どなたにでも使える薬ではございません。対象となるのは、肝硬変には至っていない方のうち、肝臓の線維化が中等度から高度(F2・F3)まで進んでいる方に限られます。生活習慣の改善に取り組んでいただく事が前提となる点も変わりません。
また、この薬には厚生労働省が定めた「最適使用推進ガイドライン」があり、処方する医療機関に施設の要件が設けられています。学会が認定した教育研修施設である事などが求められるため、現時点で保険診療として処方できるのは、大学病院や地域の基幹病院など、限られた医療機関に事実上とどまっております。当院はこの要件を満たしておりませんので、現在この薬を処方する事はできません。
一方で、ご自身がその対象となる段階にあるかどうかを確かめるには、肝臓の線維化がどこまで進んでいるかを評価する必要があります。当院ではFIB-4 indexとフィブロスキャンによる線維化の評価を行っております。対象となる可能性が高いと判断した場合には、処方が可能な医療機関へご紹介いたします。
なお、糖尿病・脂質異常症・肥満症などを併せてお持ちの方については、それぞれの疾患に対する保険診療の中でお薬を選択してまいります。肝臓の状態は、これら併存疾患の管理が整う事で結果的に改善していく事が多くあります。どのお薬を用いるかは、肝臓の状態だけでなく、合併症・年齢・腎機能などを踏まえて個別判断いたします。
| 肝機能を 含む採血 | 約5,000円 (検査項目により変動いたします) |
|---|---|
| 腹部超音波 検査 | 約1,600円 |
| フィブロ スキャン | 約600円 (1割負担:約200円) |
| 外来栄養 食事指導 (管理栄養士) | 約650円〜850円 程度 |
※上記は目安です。実施する検査の内容や診療報酬の改定により変動いたします。正確な金額は診察時にご確認ください。
※健診で異常を指摘されている場合など、医師が必要と判断した場合は保険診療で実施できます。
日常生活で
気をつけていただきたい事 CHECK
- 糖質の摂り過ぎに気をつけてください。特に清涼飲料水や果物は吸収が速く、血糖値を急に上げます。
- 食べる順番を工夫してください。ご飯やパンより先に、野菜から食べる「ベジファースト」、油を使ったおかずから食べる「オイルファースト」は、いずれも食後の血糖値の上がり方を緩やかにすると報告されています。ただし油を足すのではなく、同じ食事の中で順番を変えるという意味です。
- 間食と、脂肪分の多い食事を控えてください。
- お酒を飲む習慣のある方は、量にご注意ください。
- 大きな筋肉を使う運動を、続けられる範囲で取り入れてください。
- 喫煙とストレスは、脂肪肝に限らず多くの病気の原因になります。
よくあるご質問
糖質を控えていただく事が第一です。肝臓にたまった中性脂肪を使わせるには、まず摂る糖質を減らす必要があります。脂質を減らす事も大切ですが、順番としては糖質が先です。甘い飲み物をやめるだけでも変わる方がいらっしゃいます。
主にALT(GPT)とγ-GTPです。ただしこれらが高くなる病気は脂肪肝以外にも数多くあります。脂肪肝と診断するには、詳しい問診と、他の肝臓の病気でない事の確認、腹部超音波検査などをあわせて総合的に判断いたします。採血の結果だけで決める事はほとんどありません。
炎症が強くなると疲れやすさが出る事はありますが、かなり進んだ状態でないと症状は現れません。脂肪肝が強い方は糖尿病を併せてお持ちの事も多く、脂肪肝だけで強い疲れが出る事はそれほど多くないと考えております。
甘い飲み物の習慣が背景にある事があります。また、体質が関わっている場合もあり、PNPLA3という遺伝子の型を持つ方は、太っていなくても脂肪肝になりやすい事が分かっております。日本人にはこの型の方が比較的多く見られます。
2026年6月にMASHに対する治療薬が国内で初めて承認されましたが、対象となるのは肝硬変には至っておらず、線維化が中等度から高度まで進んでいる方に限られます。また国の指針により処方できる医療機関に施設の要件があり、現時点では大学病院や基幹病院など限られた医療機関にとどまっております。当院では処方できませんが、対象となる段階にあるかどうかの評価は行っており、可能性が高い場合はご紹介いたします。脂肪肝の多くの方にとって、治療の中心は今も生活習慣の改善です。
MASHから肝硬変へ進行した場合、そこから肝がんが発生する頻度は年1〜3%程度と報告されています。C型肝炎による肝硬変(年5〜8%程度)と比べれば低い数字ですが、無視できるものではありません。だからこそ、今どの段階にあるのかを確かめておく事が大切だと考えております。
体重が減る事による改善は期待できますが、国内で脂肪肝そのものへの効能が承認された薬はありません。また、お薬はあくまで出発点であり、最終的には生活習慣が身について、お薬から卒業していただく事を目標としております。
コーヒーの摂取と肝機能の関連を示す報告はあります。ただし砂糖やミルクを加えて飲むのであれば、その分の糖質と脂質が加わりますので、意味が薄れてしまいます。コーヒーを増やす事より、糖質の摂りすぎを控える方が確実です。
お問い合わせ CONTACT
脂肪肝そのものより、肝臓が硬くなり始めていないかどうかが大切です。当院では採血・腹部超音波検査・フィブロスキャンを同じ日に行い、その場で結果をご説明いたします。
常勤の管理栄養士による食事のご相談も承っております。ご予約・WEB問診は24時間承っております。
健診の結果をお手元にご準備ください。お電話は 0422-29-3876 まで。
執筆・監修 PROFILE
日本内科学会認定 総合内科専門医・日本消化器病学会認定 消化器病専門医・日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医・日本肝臓学会認定 肝臓専門医・日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医・難病指定医(東京都知事指定)
参考文献
- MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)
- 日本肝臓学会「奈良宣言2023」
- 日本消化器病学会/日本肝臓学会「脂肪性肝疾患の診断基準に関して」(2026年2月)
- Vilar-Gomez E, et al. Gastroenterology 2015